ソードアート・オンライン『疾風の狂戦士』   作:神滅

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英雄

「店長戻ってきたぞ」

 扉を開いたら目の前に椅子に座っている店長がいた。

「もどったか…」

 いつもと違う。弱弱しい声で話す。

「全部そろえてきたぞ」

 頼まれていたアイテムをすべてオブジェクト化する。

「これから、作るから、入ってくるな。気が散る」

 立ち上がりふらふらと歩く姿をみて俺は出て行った。

 

 本来、剣を作り上げるのに20分である。

 

 扉に背を預けて、時が経つのを待つ。

 扉越しで、剣を打つをとが聞こえる。

 なんとなく、空を見上げる。

「この世界も、空は青いんだよな」

 俺にはわからない…。この世界の意味が…。

 ゲームマスターである茅場(かやば)晶彦(あきひこ)が作り出したこの世界。

 ゲームで人を殺す。この世界は何の意味があるのだろうか…。

『最初に言っておく。諸君らが今存在している世界は最早単なるゲームではない。諸君らにとっての、唯一の現実だ』

 このゲームマスターの言った言葉にどんないみがあったのだろう。

 ゲームが現実…。これは、ゲームであっても現実と言いたいのだろうか…。

 このゲーム対する。疑問を考え続ける。

 いろいろ考え事をして気を紛らわせても、頭のどこかで、店長の様態が気になる。

 

 時間が長く感じた。20分ほどで扉は開かれ、もたれかかっていた俺は倒れながら店内にはいる。

「ずっと待ってたのか」

「音が途切れたら突撃するつもりだったからな」

「いらない心配だ。中に入れ」

 店長は中に入ってく、その後に続く。

 店長は周りの武器を蹴り払い。座るスペースを確保する。俺も周りの武器を退けてスペースを確保する。

「これが、俺の作る最強で最後の剣になるだろう」

 俺の前に置いたのは刀身が黒い剣。

「魔剣エージス。最近渡した片手剣に能力が付いたものだ」

「あぁ、そんな名前だったな」

 正直、覚えていない。

「モンスターがドロップする魔剣とは違う。絶対的な力を持つ剣だ。本物の魔剣ともいえるな。持つ勇気があるなら、その剣を受け取れ」

「かっこいいことを言い残したいのか?痛々しいだけだぜ。そんな勇気ではここまで生き残れない」

 柄を握る。

「な!?」

 握った柄から痛みを感じる。思わず手を離してしまった。

「なら、お前は生き残れないな」

「生き残れないな、今のままじゃ」

 もう一度、剣を取る。

 再び痛みが走る。

「魔剣の代償とでも言いたいのか…。驚きはしたが、心臓に剣を刺す俺に痛みなんてな」

 剣をもって言う。

「これで、生き残れるかな」

 店長は俺を見て笑った。

「面白い奴だ。死にたいと言って今も生き続けるなんてな」

「飢えてるが死にたいのとは違うんだな」

「口だけなんだろ?死を求める奴はいない」

「まぁ、そうなんだろうな」

「今は、死よりも守るべき人が心配か?」

「いちいち、詮索するなよ。解ってるならな」

「まだ、忘れなられないのか。軍での事が」

 店長は酒をオブジェクト化して2つのコップに注ぐ。

「忘れられないんじゃない。忘れちゃいけない。罪とかの前に、あいつらが必死に生きたことを忘れちゃいけないんだよ」

「だから、そいつらの所に逝きたいってか。必死に戦って死ぬ。そんな場面を見つけたいか…」

 酒を一気に飲む。

「お前も飲めよ」

「未成年に酒とタバコを勧めるなって学校で習わないのか?」

「ここはゲームの世界だ。関係ないだろ」

「ゲームの世界か…。ゲームマスターは、なんでこんな世界を作って、閉じ込めたんだろうな」

「さぁな」

 店長は、コップを俺の前において、再び酒を勧めた。

 ため息をついて、一気に飲み干す。

「俺は、ゲームマスター茅場は、この世界が現実だといいたんじゃないかと思ってる」

「現実か…。ありかもな」

 しゃべりながら、コップに酒を注いで一気に飲み干す。

「ゲームは遊び。本来はそういうものだろうが、ここは違う。ということか、さしずめ、ゲームであっても遊びではない。と言ったところか」

「そんなことを考えて、俺達はここに閉じ込められてるのかもな」

「どうだ?怒りの感情でも沸いて来たか?」

 店長はさっきからどんどん酒を飲んでる。

「そんなに飲んで大丈夫なのかよ…」

「だめだろうな…。しかし、しょせんゲームだ。現実には影響しない。この程度のことはな…。しかし、現実の俺は、もうだめだ。明日まで生きていられないだろう」

「弱気になって、自棄酒か…」

「自棄酒さ、死ぬんだそれくらい良いだろ」

「そうかよ」

 俺も酒を飲んでいく。

「なぁ、死ぬ前に聞かせてくれよ」

「あぁ?」

「いつもお前の隣にいる娘とは、どういう関係だよ」

「恋人だな。最初は、あいつからの一方的なものだったがな」

「いつのまにか、好きになっていたか…。若いのはいいな」

「まぁ、そんな感じだと思ってくれ」

「はっきりしないなおい」

 店長が俺の方を叩こうとして、エラーコードがでる。

「現実であるようなスキンシップも取れないんだな…」

「そうだな…」

「しっかりと、守ってやれよ。力は渡したんだからな」

「当たり前だ」

「じゃ、そろそろ行け。そして、戻ってくるな」

 いきなり、しんみりとした雰囲気になる。

「もう、時間が無いのか…」

「そうだな、後5時間もすれば、現実世界の俺の心臓は止まるだろ。案外、人間は自分の死期がわかるもんだ」

「でもよ…。辛くなさそうじゃないか…。いつもより元気な感じがするぞ…」

「感じだけだ。解ってるだろ。普段しゃべらないのは…。しゃべる事が辛いからだ」

 もちろん知っている。出会った頃から日に日に店長の口数は減っていくのには気づいていた。

 最初はマシンガンのような勢いで会話をする人だったのに、俺が来ても目的と一言を話すだけになった。

「解った…。後少しの時間、ゆっくりとすごせよ…」

 立ち上がり、扉の前まで行く。

 扉の前で、振り返り、魔剣を抜く。

「約束する。俺が行き続ける限り、この剣を振り、敵を蹴散らすと」

 店長はコップに残ってる酒を飲み干して満足そうに言う。

「なら、お前は『勇者』で止まるな。俺の剣を持つなら、勇気ある者ではなく。人々を救った『英雄』になれ!」

 店長の言葉を聴き、俺は…。

「嫌だね」

 そっけなく返してやった。

「最低だよ。死んだら面倒見てやら無いからな」

「当然だ。出会った時、言っただろ?俺は、正義の味方なんてものじゃない。てな」

 最後に俺と店長の出会った時の会話の一部分を言った。

 店長はため息をしてから、同じくあの時と同じことを言う。

「面白いことを言う奴だ…」

 それだけを聞いて、俺は店を出て行った。

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