宿に戻ってきた俺はベットに座って、机に置いた魔剣を見つめる。
「能力は、一分間に300のダメージを受ける。敵防御力を一定量無視しする。命を喰らい。敵を切るか…」
店長が残した最後の剣…。この剣の疑問は、HP1の俺の命を喰らうのか…。
「クオン君、帰ってきてたんですか?」
「あぁ」
「この剣が、例の剣ですか?」
「あぁ、そうだ。店長の最強で最後の一振り。魔剣エージス」
魔剣に興味を持ったのか、手に取ろうとする。
「魔剣ですか…」
「やめろ!」
スラルが剣を持とうとするのをとめた。驚いて手を引っ込める。
「え…?」
「魔剣を手にするには命を削るしかない。その覚悟があるか?」
「何を言ってるんですか?」
「その魔剣の能力の1つだ。一分間に300HPを吸い取る。つまり、1秒に5の0.2秒で1を吸い取っていく。痛みの中で剣を振るしかない魔剣だ」
それを聞き、一歩引く。
「こんな、呪われた剣をこれから使うんですか!?」
魔剣を指差し言う。俺は素早く魔剣を取りスラルに向ける。
「お前でも、許せない言葉がある。撤回してくれ。そうでなければ、切ってしまうぞ…」
必死に自身の中からの衝動を押さえる。剣先は揺れる。思わずスラルを切ってしまう所だった。
「これは、ただの剣じゃない。店長が生きた証だ。店長の命を使って作られた品物だ。この剣を侮辱しないでくれ」
俺の威圧に負けたのか、一歩後ろに下がって、おびえている。
「ご、ごめんなさい」
「いや、俺も悪かった。ごめん」
俺も謝り、気まずい雰囲気になる。
お互いに、自分が悪いと自覚しているからこそ、話を切り出すことができない。沈黙が続く。
「それで…。店長は…?」
「本人が言うには5時間も生きれない。そして、もう来るなって言われた」
「そうですか…」
「さて、もう夜だ。眠るよ」
俺の言葉を聴き、スラルは時計を見た。針が刺す時間は俺がいつも寝る時間より3時間ほど速い。
「そうですね。おやすみなさい」
スラルは何も聞かずに扉に向かって歩き出す。
「かぎ掛けておきますね。後、なんでも相談してくださいね」
そういって出て行った。
まるで、心が見透かされているようだ。
かぎが閉められ、部屋の外から聞こえるわずかな足跡が聞こえなくなった。
それと同時に俺の目から涙が零れ落ちた。
袖で涙をふき取るがいくらでも、流れていく涙、拭くのをやめ、眠りに付いた。
翌日、いつものようにスラルに起こされ、朝食を取る。
「さて、今日はどうしようか…」
「予定がないなら、最前線でレベル上げですか?」
「あぁ、そうだな」
昨日のことなどお互いなんとも思わず会話をする。
「昼間でいるなら、お弁当作りますけど?」
「じゃ、頼む。俺のほうで他の準備をするよ」
お互いに準備をして、迷宮に入る。
49階層では、土岩木といった物が人の形をして襲ってくる。まぁ、ゴーレムだ。
「木だと思っていたら、いきなり襲ってきて、驚いたな」
ふと、すこし、前の事を思い出した。
「そうですね。あのときの慌てた姿…」
笑いをこらえている。言っておきながらだが、恥ずかしくなってきた。
「えっと、『のわぁー!』でしたっけ」
笑いをこらえながら、あの事を思い出している。
「あー。言うんじゃなかった」
少し前、まだ、材料探しをする前にあったことだ。
「この辺で、休むか」
ある程度、木にもたれて休憩をとる。
スラルが弁当を広げようとしたときに気づいた。
「クオン君、後ろ!」
振り向くと木のゴーレムが俺に襲い掛かってきた。
「のわぁー!」
マジで驚いた。とっさ過ぎて避けれなかったし。
といったことがあった。
「静かに」
未だに、笑い続けていたので止める。恥ずかしいからではない。足音が近づいている。モンスターでない、プレイヤーだ。
本来のゲームであるなら、プレイヤーはモンスターのように構える必要は無い。しかし、このデスゲームでは知らないプレイヤーの方がモンスターより厄介である。
「プレイヤーだ。近づいてる」
真剣な話に変わって、笑うのをやめ。お互いに身を隠す。
足音からして4~6名。戦闘になった場合かなり厄介である。
近づいてきて、話し声が聞こえる。
「キリトの奴どこにいったんだよ」
聞き覚えのある。その声に、脱力感を感じたのは言うまでも無い。