次の日の朝。
「ミナ、パンひとつ取って!」
「ほら、余所見してるとこぼすよ!」
「あーっ、先生ー! ジンが目玉焼き取ったー!」
「お前ら、黙って食え!」
「これは……すごいな……」
「そうだね……」
アスナとキリトは、目前で繰り広げられる戦場さながらの朝食風景に、呆然とつぶやき交わした。
始まりの街、東七区の教会一階の広間。巨大な長テーブル二つに所狭しと並べられたスラルの料理を三十人の子供たちが盛大に騒ぎながらぱくついている。
「でも、凄く楽しそう」
「騒がしいだけだぞ」
俺、キリト、アスナ、ユイ、サーシャは少し離れた丸テーブルでお茶を飲む。ちなみに、スラルは料理の追加を作っている。
「俺なんか、耳が良いから、耳が痛くてしょうがない」
それを聞いて、キリトが苦笑する。
それから、軍についての話が始まった。俺も詳しくは、聞いていないので話に集中した。
徴税は、軍が分裂してからのことのようだ。きっと50階層でのことがあってだろう。対立しての権力争いとは…。まとめていた大将の存在がすごく感じられる。
ヒースクリフはそのことを知っているようだが、何も手を打っていないとアスナが言った。
スラルが料理の追加を作り終えて、食事をし始めた頃。
俺の耳が足音を聞き取った。
「誰か来る。1人だ」
「え……。またお客様かしら……」
サーシャの言葉に重なるように、館内にノックの音が響いた。
俺と、付いてきたキリトを前に現れたのは、軍服を来た見覚えのある女性。
俺が睨み付けるように相手を見た。
「みんな、この方は大丈夫だから。食事を続けなさい」
軍服を見て驚く、子供たちに、冷静に声をかけるサーシャさん。
子供達は安心して、食事に戻る。
軍服はサーシャさんに勧められた席に座る。
「お久しぶりです。疾風」
「あぁ、久しぶりだな。ユリエール。そして、疾風とは呼ばないでいただきたい」
「すいません…」
「いや、いい」
この女性はユリエールアインクラッド解放軍の名前を嫌う。女性だ。
人と通り、自己紹介が終わったところで、俺が問いただす。
「昨日、俺が追い返した奴らは何だ?」
「やはり、貴方でしたか、ありがとうございます」
俺とスラル以外はわからない会話に軽く説明をした。
「クオンさんは知っている事ですが、軍が今の名前になったのは、かつてのサブリーダーで今の軍の実質的支配者、キバオウという男が実権を握ってからのことです…。最初はギルドMTDって名前で…、聞いたこと、ありませんか?」
キバオウの名前を聞いて俺は過去のことを少し思い出しいやな顔になる。
MTDのことをアスナとスラルは解らなかったようだが、キリトが答えた。
「MMOトゥデイだろう。SAO開始当時、日本最大のネットゲーム情報サイトだった…。ギルドを結成したのは、そこの管理者だったはずだ。たしか、名前は…」
「ラスクだ。軍の中では大将と呼ばれていた。まぁ、それも、サブリーダーのシンカーに変わったがな」
名前が出てこなさそうだったので俺が口を挟む。変わった理由はいわなくても解るだろう。
「彼ら二人は…決して今のような、独善的な組織を作ろうとしたわけじゃないんです。ただ、情報とか、食料とかの資源をなるべく多くのプレイヤーで均等に分かち合おうとしただけで…」
「しかし、多くの人間が集まりすぎ、それとは違う意思を持つ者も出てきたと。言ってしまうと、40階層あたりからは軍と呼ばれることの方が多かったがな」
団体行動と統括力は軍と呼ぶに相応しかった。それに、俺も軍と読んでいたからな。
「シンカーのせいというわけではないが。シンカーに変わってからは、得たアイテムの秘匿が横行し、粛清、反発が相次ぎ、リーダーは徐々に指導力を失っていった。このあたりが分裂のきっかけだろ?」
ユリエールに問う。
「はぃ…。その通りです…」
ユリエールは言いにくそうに言った。それもそうだろう…。シンカーを慕っているのだから…。
「そこにキバオウは体勢の強化を打ち出し、ギルドの名前をアインクラッド解放軍に公式的に変更、さらに公認の方針として犯罪者狩りと効率のいいフィールドの独占を推進しました。それまで、一応は他のギルドとの友好も考え狩場のマナーは守ってきたのですが、人数を傘にきて長時間の独占を続けることでギルドの収入は激増し、キバオウ一派の権力はどんどん強力なものとなっていったのです。最近ではシンカーはほとんど飾り物状態で……。キバオウ派のプレイヤー達は調子に乗って、街区圏内でも徴税、と称して恐喝まがいの行為を繰り返すようにすらなっていました。痛い目に会わせたのはそんな連中の急先鋒だった奴等です」
ユリエールは一息いれ、お茶をひとくち飲み、続きを話す。
「でも、キバオウ派にも弱みはありました。それは、資財の蓄積だけにうつつを抜かして、ゲーム攻略をないがしろにし続けたことです。本末転倒だろう、という声が末端のプレイヤーの間で大きくなって……。その不満を抑えるため、最近キバオウは無茶な博打に打って出ました。ギルドの中で、もっともハイレベルのプレイヤー十数人で攻略パーティーを作って、最前線のボス攻略に送り出したんです」
アスナとキリトは顔を見合わせた。何か知っているのだろう。
「いかにハイレベルと言っても、もともと私達は攻略組の皆さんに比べれば力不足は否めません。パーティーは敗退、隊長は死亡という最悪の結果になり、キバオウはその無謀さを強く糾弾されたのです。もう少しで彼を追放できるところまで行ったのですが……」
ユリエールはしわを寄せ、唇をかんだ。
「こともあろうに、キバオウはシンカーをだまして、回廊結晶を使って彼をダンジョンの奥深くに放逐してしまったのです。ギルドリーダーの証である<<約定のスクロール>>を操作できるのはシンカーとキバオウだけ、このままではギルドの人事や会計まですべてキバオウにいいようにされてしまいます。むざむざシンカーを罠にかけさせてしまったのは彼の副官だった私の責任、私は彼を救出に行かなければなりません。でも、彼が幽閉されたダンジョンはとても私のレベルでは突破できません。そこに、昨日、恐ろしく強い人が来たと聞いていてもたってもいられずに、お願いに来た次第です。クオンさん」
ユリエールは深く頭を下げ、いった。
「どうか、私と一緒にシンカーを救出に行ってください」
本来なら、信じられない話であるが…。事情が違う。俺は内部関係を知っている。
「解った。俺は手伝おう。まぁ、他は知らんがな」
「クオン、信じるのか今の話?」
キリトが疑う。
「知らないだろうが、俺は元軍だ。内部関係は知っているからな」
「ひどい事を言うけど、今と昔は違うよ。関係が変わっていたらどうするの?」
??その時だった。今まで沈黙していたユイが、ふっとカップから顔を上げ、言った。
「だいじょうぶだよ、ママ。その人、うそついてないよ」
その場に居た全員がはあっけにとられ、アスナはキリトと顔を見合わせた
「ユ……ユイちゃん、そんなこと、わかるの……?」
アスナはあっけにとられ、キリトと顔を見合わせた。
「うん。うまく……言えないけど、わかる……」
その言葉を聞いたキリトは右手を伸ばし、ユイの頭をくしゃくしゃと撫でた。アスナを見て、にやっと笑う。
「疑って後悔するよりは信じて後悔しようぜ。行こう、きっとうまくいくさ」
「あいかわらずのんきな人ねえ」
首を振りながら答えると、アスナはユリエールに向き直って微笑みかけた。
「……微力ですが、お手伝いさせていただきます。大事な人を助けたいって気持ち、わたしにもよくわかりますから……」
ユリエールは、空色の瞳に涙を溜めながら、深々と頭を下げた。
「もちろん、私も付いていきますよ」
黙っていた、スラルも付いてくる。俺からしたらいつものことだがな。
「ありがとう……ありがとうございます……」
「それは、シンカーさんを救出してからにしましょう」
いままで黙って事態のなりゆきを見守っていたサーシャが両手を打ち合わせ、言った。
「そういうことなら、しっかり食べていってくださいね!あ、私が作ったわけでもないのにすいません」
サーシャの言葉にみんなが笑った。
「私が作りました、お口に合えばいいんですけど」
スラルが名乗り出て食事を続ける。
どうやら、ユイも来るようだ。キリトたちは預けようとしたが聞かなかった。
その間に話を進める。
「ダンジョンはどこだ?」
「ここです」
思わず首をかしげた。
「この、始まりの街の…。中心部の地下に、大きなダンジョンがあるんです。シンカーは…多分、その一番奥に…」
「地下か」
「クオン君どう見ます?」
スラルが意見を聞いてくる。
「まぁ、隠しダンジョンでレベルは相当いるだろう。最悪俺達4人でもだめかもな」
「ベータテストの時にはそんなのなかったぞ。不覚だ……」
話を聞いていたキリトが言う。
「そのダンジョンの入り口は、王宮…軍の本拠地の地下にあるんです。発見されたのは、キバオウが実権を握ってからのことで、彼はそこを自分の派閥で独占しようと計画しました。長い間シンカーにも、もちろん私にも秘密にして…」
「なるほどな、未踏破ダンジョンには一度しか湧出しないレアアイテムも多いからな。そざかし儲かったろう」
「それが、そうでもなかったんです」
ユリエールの口調が、わずかに痛快といった色合いを帯びる。
「基部フロアにあるにしては、そのダンジョンの難易度は恐ろしく高くて……。基本配置のモンスターだけでも、60層相当くらいのレベルがありました。キバオウ自身が率いた先遣隊は、散々追いまわされて、命からがら転移脱出するはめになったそうです。使いまくったクリスタルのせいで大赤字だったとか」
「そりゃいい話だ。悪いが、アイテムはこっちで貰うぞ」
「クオン君!」
スラルが注意する。
「いえ、良いんですよ。アイテムくらい貰っていってください。でも、レベル的に大丈夫ですか?失礼ながら皆さんは…」
「疾風と呼ばれてた俺でも余裕だ。他も大丈夫だ」
皮肉を言うが事実でもある。
「まぁ、60層くらいなら…」
「何とかなると思います」
「大丈夫です」
「…それと、もう一つだけ気がかりなことがあるんです。先遣隊に参加していたプレイヤーから聞き出したんですが、ダンジョンの奥で…巨大なモンスター、ボス級の奴を見たと…」
「…」
思わず全員が無言になる。
キリトたちは60層のボスの話をし始める。
「お前が、転移結晶を使えよ」
そういって、オブジェクトかして、スラルのポケットに入れる。
お互いのアイテムは共有してるので残数はわかっている。残り1つだ。
「でも…」
「足なら、自信あるからな」
そういって納得させる。
「大丈夫だ」
「そうですか、よかった!」
ようやく口許をゆるめたユリエールは、何かまぶしい物でも見るように目を細めながら、言葉を続けた。
「そうかぁ…。クオンさんも、ボス戦を経験してらしてるんですね…。すみません、貴重な時間を割いていただいて…」
「いや、いい。シンカーには世話になったこともある」
アスナたちも休暇中と言った。
久々に来た。巨大な建造物、4つの塔が上の層に届くほどの勢いで立っている。郡の本拠地で、黒鉄宮のある場所だ。
数分歩き続けたあと、ユリエールが立ち止まったのは、道から堀の水面近くまで階段が降りている場所だった。覗き込むと、階段の先端右側の石壁に暗い通路がぽっかりと口を開けている。
「ここから城の下水道に入り、ダンジョンの入り口を目指します。ちょっと暗くて狭いんですが…」
ユリエールはそこで言葉を切り、気がかりそうな視線をちらりとキリトの腕の中のユイに向けた。するとユイは心外そうに顔をしかめ、
「ユイ、こわくないよ!」
と主張した。元気な子供だ。
「キリト達は後ろを歩いてろ。俺とスラルで前を歩いて、敵を切る」
「あぁ、すまない」
「ごめんね。ラル」
「いいよ。アスナ。ユイちゃんをしっかり守ってあげてね」
ちなみに、アスナはスラルのことをラルと呼ぶ。
「これで安心だろ?」
ユリエールに言うと。ユリエールは大きくひとつ頷いた。
「では、行きましょう!」
「やぁ!」
「せい!」
前を歩く俺とスラルは調子よく得物を振っていた。
正直言って、俺達には余裕だ。俺でも、3連撃で倒すことができる。
スラルなら1撃だ。
「強くなったね。クオンさん」
「あぁ」
軽く答える。
暗く湿った地下水道から、黒い石造りのダンジョンに侵入してすでに数十分が経過していた。予想以上に広く、深く、モンスターの数も多かったが、俺達二人がいれば他の4名は何もせずに進んでいける。
「がんばれー」
ユイが応援をする。
「な……なんだか、すみません、任せっぱなしで……」
申し訳なさそうに首をすくめるユリエールに、アスナは苦笑しながら答えた。
「あいつは戦闘狂だから、やらせとけばいいんですよ」
「10歩譲って、俺がそうだったら、お前もそうだ」
「クオン君。自覚してたんですか?」
「ひどくない!?」
スラルの言葉に傷付いた。
「ちょっとくらいは自覚してるっての…」
そんなことをしているとふと、気づいたことがある。
「そういえば、シンカーは大丈夫なのか?」
「それは、大丈夫です。数日間動いていないのを考えると安全エリアがあるんでしょう。後は結晶で脱出できれば…。すいません。もう少しお願いします」
「いいんだが、もうひとつ、フークスはどうしてるんだ?」
今まで忘れていたが奴がこんなことを許すはずが無い…。何か動くはずである…。
「…。フークスさんは、このダンジョンに入って、死んでしまいました…」
「え…?」
思わず。俺とスラルの声がハモル。
「フークスさんが…?」
「馬鹿な…。あいつが簡単に死ぬなんて…」
「私も最初は信じれませんでした…」
俺の中でこの依頼はなんとしてでも成功させなければならないものに変わっていた。
「そういえば、いいアイテムでてるのか?」
キリトが空気を読んで話を変えた。
「いや、こんな肉だけだ」
スカベンジトードの肉というアイテムをオブジェクト化する。
「カエルの肉か、ゲテモノなほど旨いって言うからな、何個か分けてくれよ」
「そうか?」
ウィンドにある肉をキリトに渡す。
「料理できるのかお前?」
「アスナ」
ユイと話していたアスナが呼ばれてキリトの方を向く。
「何?」
「あとでこれを料理してくれよ」
カエルの肉を見せると顔を引き攣らせる。
「ぜったい嫌よ!」
アスナは叫ぶと、自分もウインドウを開いた。キリトのそれと共通になっているアイテム欄に移動し、スカベンジトードの肉という表示をドラッグして容赦なくゴミ箱マークに放り込む。
「あっ! あああぁぁぁ……」
世にも情けない顔で悲痛な声を上げるキリトを見て、我慢できないといったふうにユリエールがお腹をおさえ、くっくっと笑いを洩らした。その途端。
「お姉ちゃん、初めて笑った!」
ユイが嬉しそうに叫んだ。彼女も満面の笑みを浮べている。
「やっとか、なかなか安心しないからな…」
ダンジョンに入ってからしばらくは水中生物型が主だったモンスター群は、階段を降りるほどにゾンビだのゴーストタイプのオバケ系統に変化し、スラルがキリトと交代した。
後ろではスラルとアスナにユイ、ユリエールが楽しく会話をしている。
「すまないな」
キリトにしか聞こえないようにつぶやく。
「なんだ?いきなり」
「軍のことにつき合わせることになってすまない」
小さく頭を下げる。
「気にするなよ。俺達が係わっただけだろ」
「そういってくれるとありがたい」
どんどん奥に進んでいく。
暖かな光の漏れる通路が目に入った。各ダンジョンで共通の色あいとなっているそのオレンジ色は、間違いなく安全エリアの照明だ。
「シンカー!」
もう我慢できないというふうに一声叫んだユリエールが、金属鎧を鳴らして走りはじめた。剣を両手に下げたキリトと、ユイを抱いたアスナもあわててその後を追う。
右に湾曲した通路を、明かり目指して数秒間走ると、やがて前方に大きな十字路と、その先にある部屋が目に入った。
部屋は、暗闇に慣れた目にはまばゆいほどの光に満ち、その入り口に一人の男が立っている。逆光のせいで顔は良く見えないが、こちらに向かって激しく両腕を振り回している。
「ユリエーール!!」
こちらの姿を確認した途端、男が大声で鞭使いの名を呼んだ。ユリエールも左手を振り、一層走る速度を速める。
「シンカーー!!」
涙まじりのその呼び声にかぶさるように、男の声が??
「来ちゃだめだ!!その通路は…!!」
それを聞いて、走る速度をゆるめる。だがユリエールにはもう聞こえていないらしい。部屋に向かって必死に駆け寄っていく。
その時。
部屋の手前数メートルで、走る通路と直角に交わっている道の右側死角部分から、何かが動く音が聞こえた。
「っち」
舌打ちし、走り出す。その速度はこの世界で一番だろう。ユリエールの前にでて止める。
「戻れ!」
叫ぶとユリエールは我に返ってアスナたちのところに戻る。
スラルとキリトが俺を追って前に出る。
死角から出てきたのはぼろぼろの黒いローブを纏った骸骨。
簡単に言えば死神をイメージさせるものだ。
隣に立つキリトがかすれた声で言う
「こいつ、やばい。俺の識別スキルでもデータがわからない。強さ的には90層クラスだ……」
「!?」
全員が驚く。
死神は空中を移動し、俺達に近づく。
次の瞬間、死神は俺の目の前に出てくる。
「いったん引くぞ!」
俺が素早く言って剣を鞘に収め、スラルとキリトを抱えて後ろに飛ぶ。
俺達が居た場所に死神の鎌が振られた。
「あぶね…」
死神が追ってこない、行動範囲が決まっているのだろう。
「こんなの…。シンカーは目の前なのに…」
ユリエールは座り込む。
「シンカー。覚えてるか?クオンだ!」
大声で安全エリアにいるシンカーに声をかける。
「クオンか!来てもらってすまない!だが、帰ってくれ!こいつは強すぎる!」
「フークスは!こいつにやられたのか?」
シンカーは言いにくそうに言った。
「そうだ…」
「なら良かった。あいつの仇を取れる!」
俺は引く気など無かった。
「クオンくん。無茶よ!ここは引こう」
「嫌だ」
アスナの提案を断る。
「これ以上、俺の仲間を殺させない。スラル、久々にあれやるぞ。キリト、お前は下がってろ」
今にも突進しそうなキリトを止め。大量に片手剣をオブジェクト化する。
「クオン君。死んだら許しませんよ」
「何をする気だ?」
「俺は、1人でボスを攻略したことがある。その方法で奴を殺す」
スラルがオブジェクト化した剣を回りに散らばるように投げる。俺も投げる。
「それに、俺なら1度だけなら、絶対に死なない」
周りに剣を投げ、死神の周りには剣が刺さっていたり落ちていたりする。
「まさか!無茶よ!そんなの!」
唯一、この方法を少し知っているアスナがとめようとするが遅い。
「行くぞ死神!」
《リニアー・スラッシュ》
一直線に移動する。ダンジョンで強くなった俺の速度は誰も見ることができない。
一瞬にて、死神を切り、後ろを取る。そこで剣を捨て、他の剣を拾い剣技を放つ。
《リニアー・スラッシュ》
それを無限に続ける。
「速い…」
スラルが思わずつぶやく。
徐々にでもこれで殺せると思ったが、死神がこちらを見ていた。
死神が鎌を振る。避けれず直撃。
アスナや、キリト、ユリエールが叫ぶ。スラルは驚いて何もいえない。
「がは」
壁に叩き付けられ空気を一気に漏らす感覚。
HPは1。死神が追撃を放ちに来る。動けない。
「クオン君!」
スラルが叫びながらキリトと共に俺に向かって駆け出す。
俺は、自分の死を感じて、意識が途絶えた。
最後に聞こえたのは
「だいじょうぶだよ、パパ、ママ」
というユイの言葉。
目覚めた俺は、どこにいるかわからなかった。
「どこだ…ここ」
「クオン君が目を覚ました」
ベットに横になっていて、隣にはスラルが泣いていた。
扉が勢い良く開き、キリト達が入ってきた。
それから、俺が気絶している間に起こったことを聞いた。
ユイがAIで死神を倒したことやキバオウのこと…。
俺がおきたことを見て安心して、キリトたちが出て行った。残ったのは俺とスラル…。
「すまない。心配かけたな」
「クオン君が目覚めなかったらと、ずっと考えてました」
「すまない…」
「クオン君は、感情的になりすぎです」
「申し訳ない…」
頭が上がらない。
「でも、起きてくれて本当に良かったです」
「苦労をかけてすまない」
「いつものことです」
「本当にすまない…」
スラルは俺に抱きつき涙を流して言う。
「どんなに無茶をしても、遠くに行かないでくださいね…」
「あぁ、約束する」