案内された水妖精(ウンディーネ)の領土はあちらこちらに噴水やらがあって綺麗だ。
PTのメンバーは報告やら、用事やらで、離れて行き、今は俺とリーダーと弓使いの3名である。
「ここ、綺麗だな」
「水の都市だ。いいだろ?お前も水妖精(ウンディーネ)でキャラクターを作っていたらここに住めたんだがな」
リーダーは「こっちだ」と誘導してくれる。
「結構、遠いんだな」
道ですれ違う水妖精(ウンディーネ)の視線を良く感じる。別の妖精が珍しいのだろう。
「あぁ、都市の中心部にうまい飯屋があるんだ」
うれしそうに、笑顔で答える。
俺は、都市の地形などを覚えたり、スクリーンショットで記録していく。
「いやー、いいな。水の都市」
そういっていると、飯屋についた。
「これがお勧めだ」
そういって、リーダーは二人分の飯を奢ってくれた。
「それでは、ゆっくりしていってくれ」
「ん?あんたは食べないのか?」
「あぁ、忙しくてな」
そういって、出て行った。
用意された魚の料理を食べる。おいしかったが、バーチャルで物を食べると、スラルの料理を思い出した。
きっと、スラルも世界樹に…。
「あの…」
「ん?」
突然、弓使いの子が声をかけてくる。ここまで一言もしゃべらないから声をかけてきたのには、少し驚いた。
「ありがとうございました」
そういって、軽く頭を下げる。
「あぁ、あの時な、気にしなくていいよ」
「いえ、こちらから、攻撃を仕掛けたのに、助けていただいて…」
「ん?。あんた、あの連中と組むの初めてだろ」
「え?はぃ…そうですけど。それが…?」
突然の問いに動揺している。
「いやー。誤っておこうと思ってな。ごめん」
「え?」
俺の急な謝罪に動揺する。
「これ、罠だから」
そういって、料理の最後の1口を口に放り込む。
「どういう…「ここか!」
水妖精(ウンディーネ)が何人かぞろぞろと店に入ってきた。
「ここに、風妖精(シルフ)が居ると聞いた水妖精(ウンディーネ)は速やかに非難していただきたい」
「こういうことだからさ」
俺は驚くことも無く、席を立つと弓使いの子も立ち上がる。
「この方は…」
言おうとする、彼女に静かにしろと合図を送る。
「うまくやれよ」
そう呟いて、入り口の奴らに見えないように、離れろと合図する。
「何が目的だ」
入り口に居る奴が聞いた。良く見れば先ほどの奴らが居る。
「水妖精(ウンディーネ)は綺麗だからね。ちょっと、ナンパをね」
冗談を言う。相手は、俺の周りに水妖精(ウンディーネ)が居なくなると入り口の奴が「殺せ」といえば、一斉に攻撃を仕掛けてくる。
俺は冷静に詠唱する。詠唱し終わった。次の瞬間、駆ける。妖精たちの隙間を走りぬけ、一瞬で店の外に出る。
「追え、追え!」
追いつけることなどできない。俺の速度は奴らの何倍もある。
街の中で何人かが俺に向かって魔法を詠唱したりしたが、素早すぎる俺に攻撃など当てることはできなかった。
俺の魔法は1分間継続する。クールタイムは2分。この1分で逃げることができるかが問題だ。
街を出たところで魔法は切れた。
空を飛ぶことで街を最短で出れることを考えれば追ってはすぐ来る…。町を出たのだから、迎え撃つことも考えるが数がわからない、無駄だろう。
リーダー達のことを話すというのは論外だ。他人の振りをするに決まっている。
弓使いの子には、迷惑をかけるだけだ。
俺が生きるために導き出した答えは…。ログアウトだ。
これで逃げれば、と操作しているとログアウトの横にすぐには消えれないといった意味が書かれているのに気づく。
追ってはすぐに来る。
………
2分後、何とか追っ手を撒いたらしい。
俺が取った行動は単純だ。街と狩場を繋ぐ橋の下、表現としては海に飛び込んだのだ。飛ぶことができれば張り付いてられたのだろうが、できないので仕方が無い。海に飛び込んだらできるだけ水妖精(ウンディーネ)領土に近づいた。
逃げた奴が近くに居るとは誰も思わないだろうからだ。推測は正しく、誰にも見つかることは無かった。後は海から出て、適当に世界樹を目指せばいい。あの辺はプレイヤーが集まるのだから、街で襲われることは無いだろう。
海から出て、とぼとぼと歩く、ずぶぬれで体が重く。走る元気が無い。休める場所を探そう…。
「おーい」
歩くこと5分くらいで上から声が聞こえた。水妖精(ウンディーネ)の姿を見て、単体なら殺れるかなど算段する。
「追っ手を撒くなんてすごいですね」
近づいてきた彼女は武装をしていない。
「あぁ、簡単だ。それで、何のようだ?」
「約束…」
彼女は言いにくそうに言う。
「約束を守りに来ました」