そういった、彼女は、俺にこの世界での飛行のしかたを教えてくれた。
ハンドル操作による飛行はできるようになったが、ハンドルなし操作はできない。
ハンドルなしで羽で飛ぶことを随意飛行というらしい。
それに、ハンドルがあっても、真っ直ぐに飛ぶのがやっとだ。
しかも、俺の速さのせいで急ブレーキなどできない速度で飛ぶことになる。
「教えてもらってからだが、いいのか?」
弓使いに聞く、
「私は、約束は守りたいので」
「約束を守ってくれるのはいいが、こんな姿見られたら水妖精(ウンディーネ)領土で居場所なくすぞ」
「良いんですよ。私の友達は気にしないと思うんで」
「そうか、友達は大切にな」
そういって、飛行練習を続ける。
これ以上、ハンドル操作はうまくならないと感じ始めたところで言う。
「これ以上は無理だな。ありがとう」
「いえいえ。…これから、領土に戻るんですか?」
彼女は興味ありそうに聞いた。
「いや、領土に戻らない。俺は世界樹を目指す」
世界樹のある方を指差す。
「光妖精(アルフ)になりたいんですか?」
「いいや、違う。はっきり言ってやる。俺はこの世界が嫌いだ」
「え?」
突然の俺の言葉に、戸惑う。当たり前だ。嫌いならゲームをしなければいい。
「この世界の種族での交戦なんて、つまらない。そして、交戦を仕向けている運営側も気に食わない」
「…」
自分達が襲ったことに罪悪感を感じているのか黙る。
「俺がそれでもこの世界にいるのは…」「メイアから離れろ!」
話そうとしたときに、空中から声がした。上を見れば、水妖精(ウンディーネ)の男が槍を持って襲ってくる。
俺は、一歩下がって、空中からの攻撃を避けた後に、先ほどの闇妖精(インプ)たちから奪った片手剣を取り出す。
「メイア大丈夫?」
杖を持った水妖精(ウンディーネ)が弓使い改め、メイアのそばに行く。
周りの状況を見て判断する。
この二人が領土に戻れば、風妖精(シルフ)と会話していたことが領土で話される…。
倒すしかない。そう判断した。
向かってくる槍使いの攻撃を見切り、ぎりぎりで避ける、あの世界で生き抜いたものなら余裕だ。
剣で使い手を攻撃する。奴は槍をこ、横に振って攻撃を続けようとするが、遅すぎる。
「やめて!」
弓使いの言葉に剣が止まってしまった。
槍が叩きつけられる衝撃に襲われる。反動で飛ばされ地面を転がる。
起き上がろうとする俺に追撃の魔法が来る。
水の矢を打ち落とす。
横から叩き落したはずの矢が俺を貫いた。
「打ち落としたはず…」
魔法は、斬れないようだ…。
「やめて二人とも!」
弓使いの言葉に、水妖精(ウンディーネ)も攻撃をやめた。
「メイア。どうしてだ?こいつは風妖精(シルフ)だぞ」
「くだらないなー。本当にその考えはくだらない」
俺の言葉に、攻撃を仕掛けようとする。
「別種族なら、殺しあう。その考えがくだらないって言ってんだよ」
「風妖精(シルフ)は違うとでもいうのかよ!」
「違わないだろうな。風妖精(シルフ)がそれをしていても、個人がそうとは限らないだろ」
俺は剣を鞘に収めた。水妖精(ウンディーネ)達は得物をしまわない。
「それじゃ、嫌われ者はいなくなるとしよう」
皮肉を言って、立ち去る。
待ってといっていたように聞こえたが無視をして、走った。
いつの間にか、メッセージが返ってきている。
『タイトル:いたずらメール
本文:この名前にいきなりメールを飛ばすなんて、馬鹿なのか?
気づいているだろうが、ここはソードアートオンラインの世界だ。
スキルや、所持金があの世界のデーターと一緒だ。
後、俺のナーヴギアの中にいたユイが復活した。今度あってくれ。
本題だが、俺は今、風妖精(シルフ)領土の近くにいる。
運良く、ゲーム内のことを教えてくれる人がいる。
お前のことだ。風妖精(シルフ)だろ?どこにいる?』
俺は、メッセージを見て、驚いたことがある。
まず、ユイのことだ。あのときの少女がデータとしてキリトのナーヴギアに入ったのは聞いたが復活するとは思わなかった。そして、あいつが風妖精(シルフ)領土近くにいることだ。
キリトなら、初期武器は剣系を選ぶと思っていたが長刀の風妖精(シルフ)を選ぶとは…。いや、それは軽率な考えだ。俺のように、変なところに出たのだろう…。
周りを確認して、安全だと判断し、メッセージを書く。
『タイトル:タイトルは無い
本文:復活おめでと。また、今度合うとしよう。
想像通り、風妖精(シルフ)を選んだがお前と一緒で、自分の領土に飛ばなかった。
今、水妖精(ウンディーネ)領土から世界樹を目指している。
別の種族だといきなり襲ってくるから、気をつけろ。
明日、リアルで会おう。』
書いて、飛ばす。
「さて、目指すか…」
この世界の中心にある。世界樹を目指す。
今、俺は立ち止まっている。
世界中に向かって進んでいるのだが、断崖絶壁が俺の前に立ちはだかる。
「何これ…」
先ほど、ハンドルを使う飛行方法で進めるか試したが、頂上に達しなかった。
今は次に飛ぶために羽を休ませている。
次は大ジャンプした後に、飛行する。
ちなみに、崖に剣を刺して上っていこうとしたが、崖は平らな壁扱いにされていて剣を刺すことも掴んで上っていくこともできなかった。
羽の回復ができたので試す。
移動速度を上げる呪文を詠唱して、飛ぶ。
そして、落ちる前に飛行する。
それでも、絶壁の頂上が見えるだけで、頂上にはまだまだ遠い。
そこで気づいた…。
この崖を上ることは不可能で、別の道があるのでないのか?
崖の周りを歩いていくが、洞窟のようなものは見つからない…。
「どこだよ…」
歩き始めて30分程度・・・。洞窟のようなものは見つからない。
とぼとぼ、歩いている俺の近くに誰かが着地してきた。
「ここにいたんですね」
先ほどの三名が現れた。
「何のようだ?」
冷たく聞く。
「メイアを助けてくれたそうじゃないか」
槍使いが言った。
「それで、この子があんたを手伝いたいって言うから、1人じゃ心配だから私達も付いてきたわけ」
杖を持った水妖精(ウンディーネ)が続けて言った。
「そういうことで、手伝いはいりませんか?」
最後に弓使いが聞く。俺はため息をついて、
「領土に居場所がなくなっても知らないぞ」
彼女たちに協力してもらうことにした。
「まずは自己紹介としようか、俺はクオン。片手剣を使う」
「ウォルバだ」
「テルナよ」
「私は、メイアです」
槍使いがウォルバ、魔法使いがテルナ、弓使いがメイア。
「それで、世界樹の道はどこにある?」
「今日は遅くなるから、明日にしませんか?」
「もう、22時だから今から行くと中途半端なところになるよ」
「解った。明日の何時に集合にする?」
それから、集合時間を決めた。
近くの中立町に案内され、宿でログアウトする。
なんでも、街外でログアウトは危険すぎるようだ。消える前のその時間で殺されることが多いらしい。
ログアウトして、リアルに帰ってきた俺は時計を見た。
22時半か…。
今日のことを振り返りながら、飯を用意する。
明日こそ、世界樹に…。