ソードアート・オンライン『疾風の狂戦士』   作:神滅

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弟子

 28階層。

 この時、俺は軍に所属し始めたころだった。

 軍に所属していても俺一人で行動していた。

「軍なんて意味のないものだな」

 そうぼやきながら圏外を進む。今回の目的はボス部屋を探すこと。

 しかし、広いマップを見つけれる気がしない。

 ただぶらぶらと進む。

「来ないで!」

 俺のスキルで強化された耳にかすかに聞こえた。

 自慢の素早さで声のした方へと駆ける。

 声の主は銀髪の女性だった。これが俺とスラルの出会いだった。

 女性は7人ほどの人に囲まれているので先ほどの声の主だと思った。

「さて、昼間から何やってるんですかー」

 暢気な声で全員に言った。

「っち、虫が一匹」

 7人の内3名がこちらを向く。

「逃げてください!」

 銀髪の女性が叫ぶ。

「なるほどなるほど。これがうわさの犯罪(オレンジ)ギルドか」

 冷静に言う。剣の柄に手を置く。

 合図もなく近くの男性が切りかかってきた。

 「遅い」と呟きながら剣を避けて進み。3人を抜いていく。

「どうやら死にたいようだな!」

 敵さんのリーダー格が言う。

「死にたいわけじゃないよ。ただ、俺は目の前で救える者を救う」

 「ふざけやがって」と前から2人後ろから3人が襲ってくるが難なく避けて銀髪の女性の横まで行く。

「もう、大丈夫だよ」

 そういって安心させる。

「何が大丈夫だ!死にやがれ!」

 後ろから風を切り裂き近づく音がする。いや、全方向から武器が動いて音を発している。

 その中からもっとも隙がある点を…。銀髪の子を抱きかかえ走りぬく!

 オレンジギルドはその場を動けず。去っていく俺たちを見ていた。

「さて、ここまで来たら安心だ」

 そういって、離れていった。

「ありがとう。あなたの名前は?いつかお礼を」

「名乗る価値はない。御礼をされたくないんでな」

 それから、当分会うことはなかった。次に出会い師匠と呼ぶようになったのは40階層でのこと…。

 

 

 

「昔も今も変わらない。お前を一人にしてこんなことになってしまったけど…。俺はお前を救う!」

 小さな洞窟で叫ぶので反響する。

「なら、動くなよ動けば…。解るな?」

 スラルの髪を掴んでる奴が言う。

「へへ、お前も俺たちをかぎつけたのが運の尽きだ」

「バァーカ。運なんか尽きてないよ。いや、絶好調かもな」

 舌を出して馬鹿にすれば短気な奴が襲い掛かってくる。

 俺も動く、近づく連中を押しのけ、スラルの髪を持った手に向かって剣を投げる。

「な!?」

 驚いてスラルを掴む手を放すが剣はその腕に刺さる。

 その間に俺は近づいており腕に刺さった剣の柄を取っていた。

「女性の髪は大切に扱うんだぜ、それ以上にスラルの綺麗な髪はもっと大切にな」

 そういって剣を強引に上に向かって振り上げる。

 リアルであれば即座にR-15か18タイムである。

「この野郎!」

 腕を切られ大ダメージを受けているが俺に向かって剣を振る。

 俺が位置調整をすることで奴の攻撃を心臓で受け止める。

「こいつ正気か…?」

 俺の薄布の防具を見れば防御力の高さはそれほどではないことは容易に解るだろう。

 それを弱点である心臓に当てれば死ぬのが当然。しかし、俺にはそんな正論は通じない。

「痛いなおい」

 そういって洞窟の奥のほうへと蹴り飛ばす。そうして他の敵が来る前にスラルに服と拘束アイテムを渡す。

「俺が弱めるから、弱ってる奴を捕まえてくれ。後、服を着ろ。目のやり場に困る」

 ライフは限界ぎりぎりの男が余裕を持ってるかのように言う。いや、余裕なのだこの程度の奴らに俺を殺すことなど出来はしないのだから。

「こいつ速い…」

 敵の1人が呟く。

「もしかして、あんたが疾風か…」

 軍所属のラースが言った。

「あぁ、そう呼ばれたこともある」

 後ろのスラルを守るように立つ。

「一斉にかかれ!相手は1人だ!」

 ラースの一声で2人が動いた。

 一人は俺に向かって来て、もう一人はジャンプし、後ろのスラルを狙う、いい作戦である。相手が俺でなければの話だが…。

 真上にジャンプしてとんだ敵を叩き落す。その間に俺に向かっていた奴がスラルに向かう。

 体を半回転させて天井に足をつける。

「ここは、洞窟なんだぜ」

 《リニアー・スラッシュ》

 天井からスラルに向かう敵に勢い良く飛ぶ。

 俺の気配を感じたのか敵は後ろに飛ぶ。

「弱き者を狙うなんて、怖いねー」

 スキルによる攻撃を空振りして笑う。

「何だ。この桁違いの速さは…」

「最初で最後の忠告だ。ここで自首をするというのなら、命の保障をする。だが、しないというのなら…。どうなっても恨むなよ?」

 俺の実力を見せつけ、その後にこの問いをする。効果的な方法ではあると思う。これでも、あきらめない奴はそれなりの覚悟をしている奴だ。

「…」

 全員が黙り、互いを見つめている。その沈黙を破ったのは…。

「数だ!数で押し込め!あの素早さをもって力を持っているわけがない!」

 ラースが前に出る。そして、周囲を納得させる理由もいう。

 他の2人もラースの後ろにつく。

「っち、自首はしないってか。スラル、受け取れよ」

 そういって、振り向かずに剣を放り投げる。

 驚きながらもうまくキャッチした音が聞こえた。

「敵の前で得物を手放すとはわな!」

 ラースが突っ込んでくる。それにあわせて二人も続く。

 地面を蹴り、ラースに向かってこちらも突進する。ラースに肘で突く。怯んだ瞬間を逃さず突いた肘を上げ顎を叩く。

 一歩下がり、ラースを他の二人の方へ向かって蹴る。

 アイテムウィンドを素早く開き氷の剣を取る。

「少し離れる。行けるか?」

「ついては行けない。でも、足手まといにはならないです」

 スラルは俺の言葉に力強く答えた。

「いい答えだ」

 敵は体勢を立て直して、来る!

 先頭のラースが斧を振り下ろす。体勢を低くして斧の柄の部分を切る。柄は木で出来ていてあっさりと刃先が切り落とされた。

「なんだ…。その力は…!?」

 素早さだけで力がないと見ていたラースが俺の行動に怯える。

「速さと力、二つを両立してからこそだろ?」

 そういってラースの腕を切り裂く。悲鳴を出すラースの背中を飛び越え、槍を俺に向かって投げる。

 軽くしゃがんで通り過ぎてから槍を投げた奴に剣を投げる。肩に深く刺さり痛そうに叫ぶ。

 俺が投げるのを待っていたかのようにもう一人がラースの横をすり抜けて突進してくる。後ろに飛び先ほどの槍を掴み取り、横に振る。だが、槍は腕ではじかれた。

 そいつは持っている剣を俺に向けて突く。後ろに下がろうとしたのだが…。何かに引き寄せられて後ろに飛べなかった。

 俺の持っている槍を持ったラースが見えた。

 剣が目の前まで来ている。手を離し、しゃがもうにも間に合わない。後ろにも飛ぶのも手遅れだ。どんな避け方でもかすり傷を負う。今の俺にかすり傷は死を意味する…。

 死を覚悟したその時、剣が剣によってはじかれた。

「師匠、危ないですよ」

 横から、スラルが剣で攻撃を弾いてくれていた。

「助かった」

 礼を言いながら剣を持った奴を蹴る。槍を捨ててアイテムウィンドから新たな剣を取り。

「そこまでだ!」

 洞窟内に声が響いた。

 

 

 その声にすべての者が動きを止めた。

 洞窟の入り口に立っていたのは、フークスと軍の部隊だった。

「やっときやがったか。遅かったな」

 体勢を崩さずいつでも反撃をすることが出来るようにしている。

「フークス隊長…?」

 ラースがフークスを見る。

「これはどういうことだ」

 あたりを見渡し言う。

「これは…。あいつらが襲撃してきたんです」

「見れば解るだろ?フークス」

 ラースと俺が答える。

「わ、私はこの人たちに捕まって、それを助けに「もう、いい」

 スラルの言葉をフークスが切る。

「さぁ、投降しろ。ラース」

 フークスと部下たちが武器を取る。

「な!なぜですか!あいつらが襲ってきたんですよ」

 ラースが必死に言う。

「見張りの者がいて、話を聞いてみれば真実を教えてくれたよ」

 フークスの話を聞いてラースがフークスに向かって駆ける。

 役に立たない元斧を捨てて掴んでいた槍をフークスに向ける。

 部下たちは反応できていない。

「手を出すな。俺の争いだ」

 動こうとしたフークスを俺が止める。

 《リニアー・スラッシュ》

 トップスピードでの移動でラースの横を通り過ぎる。そのまま、槍を切り裂く。

 振り返り剣をラースに向ける。

「まだやるか?」

 俺の目を見て威圧されたのか、ラースは一歩下がり、武器を捨てた。

 それに続いて、2人が武器を捨てて投降した。

 これで、スラルの誘拐事件は幕を閉じたのである。

 

 

 

 50階層の宿屋

「ふぁぁ」

 眠くてあくびをしてしまう。ここ最近は睡眠時間をかなり削って情報などを調べていたからだ。

「師匠、眠そうですね」

 スラルは横から俺の顔を覗き込む。

「当たり前だ。最近、睡眠時間削ってるんだよ。寝不足だよ。寝不足」

「可愛い弟子を探すために頑張ってくれたんですね」

 元気いっぱいスマイルで言う。

「あぁ、どっかの馬鹿をほっとけなくてな。言うだろ?馬鹿な奴ほど可愛いてさ」

「え、そんなに可愛いですか…」

 恥ずかしそうに頬に手を当てて言う。

「いや、馬鹿なだけだった」

「あ、酷いです!今の発言を撤回してください」

「真実は曲げちゃいけないんだよ…」

「え、何でそんな遠くを見つめてるんですか!?ねぇ、師匠ー」

 スラルは訂正クオンの掴み揺らす。今までが何事もなかったような日常。

 扉が開き、二人は入ってきた人を見る。

「えっと…。邪魔した」

 フークスがものすごい勘違いをして扉を閉めた。

 俺は持ち前の素早さを活かし扉を即座に開ける。

「違うからな!お前の想像とまったく違うからな!」

 

 

 

「いやー。そういうことだったのか。悪い悪い。そういうことにしておけばいいんだな」

 何とか捕まえたのだが、話をぜんぜん信じようとしない。

「まぁ、今は違うだけですけどね。いずれ、師匠と私は…」

「うん。誤解しか生まない発言はやめようか」

 この2人がそろうと色々厄介そうだ。ちなみに二人が会ったのは始めてである。

「はぁ…。何だよ。何しに来たんだよ」

「あぁ、思い出した。あいつ等の処分が決まった。黒鉄宮(こくてつきゅう)に監禁されている」

 あいつら、と言った時。スラルの肩が震えた。

「そ、そうですか」

 俯かせて表情を見せないようにしている。

「恨むところはあるだろうが「やめろ」

 俺は剣を抜きそうになっていた。フークスは驚いた顔をする。

「フークス、その口を閉じろ」

 俺は、この行動が正しかったのかは知らない。その迷いの言葉に気づいたのかフークスは「悪い」と言って外に出た。

「大丈夫だ。もう、何も恐れるな」

 そう言い聞かせた。

「何言ってんですか。師匠」

「もう、無理をするな。俺の前で無理してんじゃない。そんなに不安か?俺が」

 俺は問う。問う事しかできないから。

「師匠はまるで、何でも知っているようですね」

 震えた声でいう。

「何も知らないよ…。俺は愚かだ…。救うなんて言葉…。何かあってからじゃないと行動できないんだよ」

「そんなことないです。師匠には2度も助けてくれました」

「でも、2回目は俺がそばについていれば起こる事はなかった。守ってやれたんだ」

 俯く。こんな表情を見せたくないから。

 スラルは、震えた手で俺の顔を自分のほうへと向けさせる。目と目が合う。

「なら、経験を活かし今度は[救う]のではなく[守って]ください。私のことを…守ってくれますか?」

 震えた声のまま言った。恥じらいか、頬赤く染め。真剣な瞳が俺を映す。

「俺は…。弟子を守る師匠としてこれからを生きよう」

 そう言うといつものようにスラルは笑った。

「好きな人とか言ってくれたら。いいのに、師匠は相変わらずですね」

 スラルの声に震えはなくなった。いつものスラルに戻ったのだ。

「それじゃだめかな?」

「だめだけど、しかたないね。大目に見てあげましょう」

「偉そうな弟子だ…」

 二人は笑った。何事もなかったかのように…。明日を生きる。

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