魔法少女リリカルなのはStrikerS~機動六課と妖精の尻尾~ 作:ZEROⅡ
エリオとキャロから緊急連絡を受けたナツやティアナ達はサードアベニューF-32の路地裏に来ていた。
「エリオ! キャロ!」
スバルの呼び声に反応した二人は顔をそちらに向ける。
「みなさん!」
「連絡にあったのはこの娘か」
そう言ってグレイはしゃがみ込み、金髪の女の子の容態を見る。
「随分とボロボロだな……」
「地下水路を通って、かなり長い距離を歩いたんだと思います」
「まだこんなにちっちゃいのに……」
「ケースの封印処理は?」
「キャロちゃんがしてくれました。ガジェットが見つかる心配はないと思います。それから、これ…」
そう言ってウェンディが掲げたケースには鎖が付いており、その先には他のケースが締められていたと思われる輪が出来ていた。
「こりゃあ、ケースがもう一つあったと見て間違いないかもな」
「今ロングアーチに調べてもらっています」
「隊長達とシャマル先生、リィン曹長がこっちに向かってくれてるそうだし、とりあえず現状を確保しつつ、周辺警戒ね」
「うん!」
「はい!」
「おう!」
ティアナの指示に三人が返事を返すと、ティアナは一つの違和感を覚えた。
「あれ?ナツは?」
そう、先ほどまで一緒だったナツの姿がないのだ。
「あぁ、あのバカならそこで伸びてるぞ」
と、グレイが指差す方向には……
「おぶぅ……」
苦しそうな表情でダウンしているナツがいた。原因は当然、乗り物である。
「あ、あはは……そう言えば、随分飛ばして来たもんね…」
スバルの言葉にグレイとティアナは呆れ、エリオとキャロとウェンディは苦笑いを浮かべていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
それからしばらくして……
「…うん、バイタルは安定してるわね。」
「顔色も正常です。心配無いと思います」
「はい!」
「よかった~」
シャマルとウェンディの診断結果に全員が胸を撫で下ろした。
「ごめんね、みんな。お休みの最中だったのに」
「あ、いえ」
「平気です」
「ケースと女の子はこのままヘリで搬送するから、みんなはこっちで現場調査ね」
「「「「はい!」」」」
「「おう!」」
なのはの指示にナツ達が返事を返すと、全員はすぐに行動を開始した。
「さて、みんな! 短い休みは堪能したわね!」
「お仕事モードに切り替えてしっかり気合いを入れていこう!」
「「はい!」」
「「おう!」」
そう言うと、ティアナ達はバリアジャケットを身に纏う。そして六人は地下水道に降り立ち、レリックの捜索を開始した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、街のどこかのポールの上では一人の少女、ルーテシアが立っていた。すると、彼女の側に女性の姿が映った空間モニターが出現する。
『ヘリに確保されたケースとマテリアルは、妹達が回収します。お嬢様は地下の方に』
「…うん」
『騎士ゼストとアギトさんは?』
「別行動」
『お一人ですか?』
「一人じゃない」
そう言うと、ルーテシアのデバイスの宝玉から小さな黒い塊が出現する。ルーテシアはそれを愛おしそうに両手で包み込む。
「私にはガリューがいる」
『失礼しました。それと、大変勝手ながら、協力者を一人そちらに寄越してあります』
「協力者?」
「オレだよ」
突如聞こえた声にルーテシアをそちらに視線を向ける。するとそこには、同じくポールに立っているガジルと彼の肩に乗っているリリーの姿があった。
「……貴方は?」
「オレはガジル。さっき言ってた協力者だ。よろしくな、お嬢様……」
「オレはこいつの相棒のパンサー・リリーだ。よろしくな」
「うん…よろしく…」
邪悪な笑みを浮かべながら自己紹介するガジルと礼儀正しく自己紹介するリリーに、ルーテシアはそう返した。
「……それじゃあ、行こう」
ルーテシアがそう言うと、二人の足元に魔法陣が出現し、次の瞬間には二人の姿は消えていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「火竜の…鉄拳!」
「アイスメイク…〝
その頃、地下水道のナツ達は襲い掛かってくるガジェットを破壊しつつ、レリックを探していた。
「空の上は何だか大変みたいね」
「うん」
「ケースの推定位置まで、もうすぐです!」
「んじゃあ、さっさと済まして帰るぞ!」
そう言って、ナツが歩き出そうとした瞬間……
ドゴォォォォォン!!!
「「どわぁぁぁぁああ!!?」」
「「「「っ!!?」」」」
突然壁が爆発し、近くにいたナツとグレイは吹き飛ばされる。残ったメンバーもその爆発に身構える。すると、そこから現れたのは青い髪の女性だった。
「ギン姉!」
「ギンガさん!」
女性…ギンガの登場に歓喜の声を上げるスバルとティアナ。
「一緒にケースを探しましょう。ここまでのガジェットは殆ど叩いてきたと思うから」
「うん!」
ギンガの言葉に頷くスバル。すると……
「あの~」
キャロが手を上げてティアナに話しかける。
「ん? どうしたのキャロ?」
「あの…さっきの爆発で、ナツさんとグレイさんが……」
「「え?」」
キャロの言葉を聞いたティアナとスバルはすぐさまナツとグレイが居る方角を見た。そこには……
「「……………」」
頭にタンコブを生やし、白目を剥いて気絶しているナツとグレイの姿があった。
どうやら先ほどの爆発で吹き飛ばされた際に思いっきり頭を打ち付けたらしい。
「ちょっ、ナツ!? しっかりしなさい!!」
「グレイさん! 大丈夫ですか!?」
ティアナはナツを、スバルはグレイの身体を揺さぶるが、二人の反応はなかった。
「……ダメね。完全に伸びてるわ」
呆れた表情をするティアナにギンガがおずおずと声をかける。
「えっと、その人達は?」
「ほら、前にメールで話したでしょ?
「あぁ、あの次元漂流者の……」
スバルの説明に納得するギンガ。
「それで、ティア……この二人はどうする?」
「……仕方ないわね。起きるまで待ってられないし、このまま放って行きましょう」
「え? 大丈夫なの?」
ティアナの決断にギンガは目を丸くする。
「大丈夫ですよ。この二人は殺しても死なない生命力の塊みたいなものですから」
「そ、そう……」
笑顔でそう言うティアナに顔を引きつらせるギンガ。
そして一同は本気で気絶したナツとグレイをその場に取り残し、レリックの捜索を再開した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
それからティアナ達は、ガジェットと戦いつつも水路を進んで行き、やがていくつかの水路がまとまっている場所に出る。そこで各自散開してケースの捜索を行なっていると……
「ありましたー!」
キャロがケースを抱えてそう言う。
目的の物を見つけた一同は安堵の息を吐く。
だがその時……
「
「え? きゃあ!!」
突然どこからか鉄棒が伸びてきて、キャロが持っていたケースを叩き落した。
「そのケース、貰ったぜ!!」
すると、奥から一人の男性がケースを奪おうと襲い掛かってきた。
「でぇえええええい!!!」
その時、エリオが男性の前に飛び出し、ストラーダで男性を斬ろうとした。だが……
「ギヒッ」
ガキィィィィィン!
「なっ!?」
男性は不気味な笑いを上げると、なんと素手でエリオのストラーダを受け止めた。
「槍の使い方がなってねえなぁ、ガキ……」
そう言うと男性は、自分の右手を槍のような形に変形させた。
「っ、手が……!?」
「鉄竜槍・
エリオが変形した男性の手に驚愕していると、男性は槍状になった手を使い、エリオに向かって連続で突きを繰り出した。
「くっ…ぐあぁぁぁぁああ!!」
エリオはそれをストラーダで何とか受け止めようとするが、余りのスピードに身体が追いつかず、肩に傷を負ってしまった。
「エリオ君!」
エリオの傷を見てキャロが近付くが、エリオは腕を横に振り上げ、無言で後ろに下がるように指示する。
「ほう……アレをその程度の傷で済ませるか。中々やるじゃねえか、ガキ」
そう言って男性は楽しそうな笑みを浮かべる。すると……
「あぁ!」
何かの気配に気がついたキャロが後ろを振り向くと、そこにはケースを持っていこうとする少女の姿があった。キャロはケースを取り返そうと少女に駆け寄るが…
「……邪魔」
「っ……!」
少女はキャロに向かって砲撃を放った。キャロはそれをバリアで防ごうとするが、威力が大きくて防ぎきれず、後ろに吹き飛ばされてしまった。
「きゃぁぁぁああ!!」
「キャロ!? うわぁぁぁあ!!」
その後ろに居たエリオも巻き込まれ、二人は壁に叩きつけられた。
「おいおい、お嬢様よぉ……オレの獲物を取るんじゃねえよ」
と、男性が少女に向かって不満を言う。
「うおぉぉぉぉぉぉぉおお!!」
すると、男性の横からスバルの飛び蹴りが飛んでくる。
「おっと……」
男性はそれを軽々と避ける。しかし……
「てぇぇぇぇぇぇええい!!!」
「っ!」
その後ろからギンガの拳が迫ってくる。それに気付いた男性はそちらへ振り返る。
ドガァァァァァァン!!
しかし、避ける事は叶わず、ギンガの拳が男性の顔面に叩き込まれた。
「やった!」
それを見たスバルは歓喜の声を上がる。だが…
「っ……あぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」
「えっ…ギン姉!!?」
なんと、攻撃を加えたはずのギンガの方が拳を押さえて悲鳴を上げたのだ。
「ギヒッ…小娘にしては中々いいパンチだったぜ」
逆に男性の方はピンピンしていた。
「お前!ギン姉に何した!?」
スバルは男性に怒鳴り問うが、男性はどこ吹く風と言った表情だ。
「オレは何もしてねえよ。しいて言うなら、オレの身体は少し特別でな……」
「っ!?」
そう言う男性の顔を見たスバルは驚愕した。何故なら、男性の身体の一部分が鱗のような鉄に覆われていたからだ。
「鉄竜の鱗は全ての攻撃を無力化する。テメェらごときじゃ、この
そう言う男性……ガジルは「ギヒヒヒ」と不気味な笑い声を上げる。
「おいお嬢様ぁ!! そのケースを持ってさっさと行け。こいつらはオレの獲物だ」
「…………(コク)」
ガジルの言葉に少女…ルーテシアは頷き、その場を去ろうとするが、突然その動きが止まった。何故なら、幻術で姿を消していたティアナがルーテシアの背後に回り、首元にダガーモードにしたクロスミラージュを突きつけていた。
「ゴメンね、乱暴で。これは危ないモノなんだよ」
「っ……」
無表情であるルーテシアが僅かに顔をしかめる。
《ルー…一、二、三で目ぇ瞑れ》
すると、ルーテシアに誰かからの念話が入る。
《一、二……》
ルーテシアは念話に従って目を閉じる。そして……
「スターレンゲホイル!」
ドゴォォォォォォォォン!!!
その瞬間、辺りには赤い閃光と凄まじい爆発音が響いた。余りの轟音にルーテシア以外の全員が耳を塞ぐ。
そしてその間に立ち去ろうとするルーテシア。すると、いち早く復活したティアナがルーテシアに向かってクロスミラージュを構える。しかし……
「鉄竜棍!!」
「っ、きゃぁぁぁぁぁあああ!!!」
横から現れたガジルの攻撃が直撃し、吹き飛ばされるティアナ。
「ってぇ~……くそっ、何だ今の爆音は? 耳がイカれちまうぜ」
と、ガジルが文句を言っていると、起き上がったティアナは再びクロスミラージュを構え、ルーテシアに向かって発砲した。
「
「っ…!」
するとガジルは腕を刺々しい剣に変形させ、それを盾にしてルーテシアを守った。
「たくもぉ~。あたし達に黙って勝手に出かけちゃったりするからだぞ。ルールー」
その時、突然聞き慣れない声が響き、全員の視線がそちらに向く。そこには、赤い髪をした少女がいた。
しかしその少女の身長は余りに小さく、六課にいるリィンと同じ位である。
「……アギト」
「おう! ところでそこの人相の悪いお前!」
「人相の悪いは余計だ!」
アギトと呼ばれた少女はガジルを指差し、そんなアギトにガジルは怒鳴る。
「さっきルールーを守ってくれたみたいだが、何モンだ?」
アギトは警戒している目でガジルを睨む。
「あぁ? オメェらが協力しているところのモンだよ。コイツを傷つけたら、小娘共がうるせぇんでな」
「……そうか」
ガジルの説明に、アギトは納得したような表情を浮かべると、ルーテシアに向き直った。
「まぁ、もう大丈夫だぞ。何しろこのアタシ、烈火の~剣精! アギト様が来たからな!」
アギトがそう言うと、彼女の背後に小さな花火が咲き誇る。それをルーテシアは無表情、ガジルは呆れた表情で見ていた。
「オラオラ! お前らまとめて、かかってこいやぁぁ!!」
と、アギトがティアナ達に向かってそう言ったその時……
ドゴォォォォォォォオン!!
『っ!!?』
突如響いた轟音と共にガラガラと壁が崩れ始める。するとそこから二つの人影が現れた。
「まとめてかかってこいだぁ? 上等じゃねえか……」
「オレ達は今虫の居所が悪いんだ。どうなっても知らねえぞ?」
それは、怒りに満ちた表情をしたナツと、同じく怒りに満ちた表情で上半身が裸となったグレイだった。
「ナツ! グレイさん!」
それを見たスバルは嬉しそうな声を上げる。他のメンバーの表情を明るくする。しかし、当の二人は怒りの表情でメンバーを睨む。
「テメェらぁ! よくも置いていきやがったな!!」
「お陰でこの地下水路の中を彷徨い歩くハメになったじゃねえか!!」
どうやらこの二人は置いていかれたことを怒ってるようだ。二人の言葉にティアナが反論する。
「アンタ達が気絶したのが悪いんでしょ!!」
「うるせぇ! 帰ったら覚えてろよ!!」
そう怒鳴ったナツは視線をルーテシア達……いや、ガジルに向けていた。
「よお……嗅ぎ覚えのある匂いがしたと思ったら、やっぱりテメェか…ガジル」
「ギヒッ…まさかテメェらもこの世界にいたとはな、
ナツとガジルは好戦的な笑みを浮かべる。
「今のテメェは敵ってことで良いんだよな?」
「あぁ……本気でかかってきなぁ!!」
「上等ぉお!!」
そう言ってナツは拳に炎を纏ってガジルに向かって行った。
今ここに、二頭の竜が激突する。
つづく