魔法少女リリカルなのはStrikerS~機動六課と妖精の尻尾~   作:ZEROⅡ

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ナンバーズ

 

 

 

 

 

「うおぉぉぉぉおお!!!」

 

 

「うらぁぁぁぁああ!!!」

 

 

ドゴォォォォオン!!

 

 

地下水路に響くとてつもない轟音。

 

その音源は、ナツとガジル…両者の拳が互いの顔面を捉えた音だった。

 

 

「「ぐあぁぁぁぁああ!!」」

 

 

その衝撃で両者は同時に吹き飛ばされるが、二人ともすぐに体勢を立て直す。

 

 

「っあぁぁあ!!」

 

 

「オラァァア!!」

 

 

そしてすぐに拳を構え、どつき合いを始めた。互いの攻撃がぶつかり合うたびに辺りにかなりの衝撃が巻き起こる。

 

この光景にギンガを加えたティアナ達FWメンバー、そしてルーテシアやアギトも愕然としていた。

 

 

「な、なんて戦いをするの…あの二人……!」

 

 

「じ、次元が違う…!」

 

 

「あの人、ナツさんはガジルって呼んでましたけど、知り合いなんですか?」

 

 

エリオはいつの間にか近くに来ていたグレイにそう尋ねる。

 

 

「アイツの左肩をよく見てみろ」

 

 

グレイにそう言われ、スバル達はナツと戦っているガジルの左肩を凝視する。そして気がついた。ガジルの左肩に見慣れた紋章が刻まれていることに…

 

 

「アレって…もしかして!」

 

 

「そうだ…アイツはオレ達と同じ妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士であり、鉄の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)……鉄竜(くろがね)のガジルだ」

 

 

『えぇぇぇぇぇえ!!?』

 

 

ガジルが妖精の尻尾(フェアリーテイル)であることと滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)であることに驚愕する一同。

 

 

「本当ですかグレイさん!? あんな人相の悪い人が本当に妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員なんですか!?」

 

 

「そうですよ! あんな悪人みたいな顔した人がナツ達と同じ妖精の尻尾(フェアリーテイル)だなんて信じられません!」

 

 

「ぶっ潰すぞ小娘共!!」

 

 

ティアナとスバルの言葉に反応したガジルは戦いを一時中断して二人に怒鳴る。

 

 

「余所見してんじゃねえ!!」

 

 

「おおっと!」

 

 

そんなガジルの背後からナツが殴りかかるが、ガジルはそれをギリギリで避ける。

 

 

「火竜の……」

 

 

「鉄竜の……」

 

 

すると二人は大きく息を吸い込み、頬を膨らます。それを見たグレイは慌て始める。

 

 

「やべぇ…みんな伏せろぉお!!」

 

 

『っ!?』

 

 

グレイの異様な慌てようにティアナ達、そしてそれを見ていたルーテシアとアギトも物陰に隠れる。

 

 

 

「「咆哮!!!」」

 

 

 

ドゴォォォォォォォオオン!!!

 

 

その瞬間、ナツの灼熱のブレスとガジルの鉄の破片を含んだブレスが激突し、辺りに信じられない程の衝撃が拡がり、地下水道全体が震える。

 

 

「「「うわぁぁぁあああ!!」」」

 

 

「「「きゃぁぁぁぁああ!!」」」

 

 

「っ……!!」

 

 

その衝撃にティアナやルーテシア達は吹き飛ばされないように必死に耐える。

 

 

「……へっ」

 

 

「……ギヒッ」

 

 

そして衝撃は止むと、二人はお互いを睨み合い、のちに楽しそうな笑みを浮かべた。そして……

 

 

「「うおぉぉぉぉぉぉおお!!!」」

 

 

二人は再び殴り合いを始める。それを見ていたティアナ達は作戦会議を始める。

 

 

「ティア、どうする?」

 

 

「あのガジルって人はナツに任せましょう。任務はあくまでケースの確保よ。撤退しながら引きつける」

 

 

「こっちに向かってるヴィータ副隊長とリイン曹長に上手く合流できれば、あの子達も止められるかも。だよね?」

 

 

「そう!」

 

 

二人が作戦を決めたその時、グレイ以外の全員にヴィータからの念話が送られる。

 

 

【よし。中々いいぞスバルにティアナ】

 

 

【【ヴィータ副隊長!?】】

 

 

【私も一緒です。二人とも、状況をちゃんと良く読んだ、ナイス判断ですよ!】

 

 

【副隊長、リィン曹長。今どちらに?】

 

 

エリオがそう尋ねると、向こう側のアギトが何かに気がついたようだ。

 

 

「っ…ルールー、何か近付いて来てる。魔力反応……でけぇ!」

 

 

アギトがそう言った瞬間、天井が大きな轟音を立てて崩れ落ち、そこからヴィータとリィンが姿を現した。そしてリィンはすぐに手を翳して魔法陣を展開させた。

 

 

「捕らえよ、凍てつく足枷! フリール・フェッセルン!!」

 

 

「「っ!?」」

 

 

その瞬間、ルーテシアとアギトの周囲に風が巻き起こり、一瞬で二人を氷の中に閉じ込めた。

 

 

「なんだ!?」

 

 

この事態にナツと戦っていたガジルも戦いを一時中断し、辺りを見回す。すると、そんなガジルの懐にアイゼンを構えたヴィータが現れ……

 

 

「ブッ飛べえぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」

 

 

思いっきりアイゼンを振るい、ガジルを吹き飛ばそうとした。しかし……

 

 

ガキィィンッ!

 

 

「なっ、なにぃ!?」

 

 

ヴィータは驚愕した。何故なら、ヴィータの渾身の一撃をガジルは片手一本で受け止めたのだから。

 

 

「チッ…ごちゃごちゃしてきやがった。めんどくせぇ、ここは一旦引くか……おい火竜(サラマンダー)! この勝負は預けた!!」

 

 

「な、なんだと!?」

 

 

「ふざけんじゃねえ! 逃がすと思ってんのか!?」

 

 

ガジルの言葉を聞いたナツは驚愕し、ヴィータはガジルを逃がすまいとする。だが……

 

 

「オラァァア!!」

 

 

ドゴォォォォオン!

 

 

『っ!!?』

 

 

ガジルは自分の足元の床を鉄の鱗を纏った拳で思いっきり殴り、辺りに土煙を巻き上げた。

 

そして土煙が晴れると、そこにはガジルの姿はなく、床にはガジルが逃げたと思われる穴が開いていた。

 

 

「チッ!」

 

 

「こっちもです! 逃げられた、ですね」

 

 

魔法を解いて氷塊を消すと、そこにはルーテシアやアギトの姿はなく、ガジルと同様に床には穴が開いている。

 

 

「ガジルのヤロー!! 逃げやがって!!」

 

 

ナツはガジルに逃げられたことに悔しそうに拳を握っていた。すると……

 

 

ゴゴゴゴゴ……!

 

 

『っ!?』

 

 

突然地下道が揺れ始める。

 

 

「何だ!? 地震か!?」

 

 

「違います…大型召喚の気配がします。たぶん、それが原因で……」

 

 

グレイの疑問に答えたのは、いつの間にか目を覚まし、エリオに支えられているキャロだった。

 

 

「ひとまず脱出だ! スバル!!」

 

 

「はい! ウィング、ロード!」

 

 

スバルはヴィータに言われると、地面にリボルバーナックルを叩きつける。すると地面からウイングロードが螺旋状に伸びていき、ヴィータとリィンが出てきた天井の穴に入ってそのまま伸びていく。

 

 

「スバルとギンガが先頭で行け! アタシは最後に飛んで行く!」

 

 

「「はい!」」

 

 

ヴィータの指示を聞いた二人はウィングロードに乗った。そんな中、ティアナはキャロに話しかけていた。

 

 

「キャロ。ほら、帽子」

 

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 

ティアナから受け取った帽子を深々と被るキャロ。

 

 

「ねぇ、レリックの封印処理、お願いできる?」

 

 

「え、はい。やれます」

 

 

「ちょっと考えがあるんだ、手伝って!」

 

 

「はい!」

 

 

キャロは元気よく返事をし、ティアナ達はウィングロードに乗って登って行った。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃、地上では脱出したガジルとルーテシア、そしてアギトが居た。そして三人の目の前にはルーテシアが召喚したと思われる黒い虫のような生物が身体に電気を纏い、地下を揺らしていた。どうやらこれが地震の原因らしい。

 

 

「ダメだよルールー! これはマズいって! 埋まった中からどうやってケースを探す? アイツらだって局員とはいえ、潰れて死んじゃうかもなんだぞ!」

 

 

「落ち着けよチビ女」

 

 

興奮するアギトに話しかけたのはガジルだった。

 

 

「誰がチビ女だ!!?」

 

 

チビ女と呼ばれたことにアギトは憤慨するが、ガジルはそれを無視して続ける。

 

 

「アイツらがこの程度で死ぬかよ」

 

 

「うん。それに、ケースはクアットロとセインに頼んで探してもらう」

 

 

ガジルとルーテシアはそう言うが、アギトは反論する。

 

 

「よくねーよルールー! あの変態医師とかナンバーズ連中と関わっちゃダメだって! それに、この人相の悪いヤツも怪し過ぎるだろ!?」

 

 

「人相悪いって言うんじゃねえよ!!」

 

 

ガジルが怒鳴ると、ルーテシアはアギトの言うことを否定するように首を横に振る。

 

 

「大丈夫。ガジルはいい人」

 

 

「っ……!」

 

 

まさか『いい人』と言われると思っていなかったガジルは呆気に取られる。

 

 

「怪我…大丈夫?」

 

 

すると、ルーテシアはナツとの戦いで少々負傷したガジルにそう問い掛ける。

 

 

「あぁ? この程度なんともねーよ」

 

 

ガジルは素っ気無い態度でそう返す。次にルーテシアは視線を黒い虫へと移す。

 

 

「地雷王も……!」

 

 

「「っ!?」」

 

 

地雷王と呼ばれる召喚獣を戻そうとしたその時、地雷王の足元に魔法陣が展開され、何本ものピンク色の鎖が地雷王を縛る。

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

「気ぃつけろ! さっきのヤツ等の匂いがする! 近くにいるぞ!!」

 

 

ガジルがそう言うと同時に、三人に向かって二本のウィングロードが伸びて来る。それぞれにはスバルとギンガが走ってきており、間にはヴィータが飛んでくる。

 

それを見たルーテシアとアギト、ガジルは身構える。すると、ガジルは少し離れたビルからティアナが狙っていることに気がついた。

 

 

「っ、狙われてるぞ! 散れ!」

 

 

「「っ!」」

 

 

ガジルの言葉を聞いた二人はティアナの砲撃を避ける。

 

 

「ハァァア!」

 

 

そしてすぐにアギトはティアナに向かって火炎弾を、ルーテシアは向かってくるヴィータ達に向けてクナイのようなダガーを発射した。

 

 

しかしそれは意味を成さず、アギトの炎は簡単に避けられ、ルーテシアの方はヴィータ達の勢いを止めることすら叶わなかった。それを見ながらルーテシアは近くの高架の手摺部分に着地、アギトはその近くに飛んできた。

 

だがその瞬間、高速で移動していたエリオがルーテシアの胸元にストラーダを突きつけ、アギトの周りには氷で出来た無数のダガーが浮かぶ。

 

 

「ルーテシア! アギト!!」

 

 

それを見たガジルは二人を助け出そうとするが……

 

 

氷欠泉(アイスゲイザー)!!」

 

 

「なっ!? うぉぉぉおおお!!?」

 

 

その瞬間、いつの間にか近くに来ていたグレイがガジルの身体を凍りつかせ、完全にガジルの動きを封じた。

 

 

「よぉガジル…テメェいつの間にロリコンになったんだ?」

 

 

「……言ってろ、氷クズが…」

 

 

グレイの嫌味を嫌味で返すガジル。

 

 

「……あれ? ナツは?」

 

 

ティアナは地下から出るまで一緒だったはずのナツがいつの間にか消えていることに気がつく。

 

 

「ナツならさっき『妙な匂いがする』とか言ってどっかに言ったよ」

 

 

スバルの返答にティアナ「あのバカ…」と呟きながら頭を押さえた。そこへ、ヴィータとリィンが降りてくる。

 

 

「子供を虐めてるみてーで、いい気分はしねーが。市街地での危険魔法使用に公務執行妨害、その他諸々で逮捕する」

 

 

掴まった三人にヴィータはそう言い放つ。しかし、彼女達は気付かなかった。ガジルの口が僅かに釣りあがっていることに……

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方、あるビルの屋上に二つの人影があった。

 

1人は眼鏡をかけてケープを羽織った、髪を二つ結びにしている女性。もう片方はマントの様な物に身を包み、自分の身長ほどもある巨大な何かを持ち、首の後ろで髪を一つに纏めている少女。

 

 

「ディエチちゃ~ん。ちゃんと見えてる?」

 

 

眼鏡をかけた女性は少女、ディエチに声をかける。

 

 

「ああ。遮蔽物もないし、空気も澄んでる。………よく見える」

 

 

そう言うディエチの視線の先には、シャマルとウェンディ、そしてスバル達が保護した少女が乗っているヘリが存在していた。

 

 

「でもいいのかクアットロ?撃っちゃって。ケースは残せるだろうけど、『マテリアル』の方は破壊しちゃう事になる」

 

 

ディエチの問いに眼鏡の女性、クアットロは「うふふ」と微笑しながら答える。

 

 

「ドクターとウーノ姉さま曰く、あの『マテリアル』が当たりなら……本当に『聖王の器』なら、砲撃くらいでは死んだりしないから大丈夫…だそうよ?」

 

 

「ふぅん」

 

 

そう返事をしながら、ディエチは持っていた巨大な物を包む布を取る。すると、小柄な彼女に扱えるとは思えない程の巨大な砲身が姿を見せた。

 

 

すると、クアットロの横に空間モニターが出現し、一人の女性の姿を映し出した。

 

 

『クアットロ。ルーテシアお嬢様とアギト様、それにガジルが捕まったわ』

 

 

「あぁ~。そういえば、例のチビ騎士に捕まってましたねぇ」

 

 

どこか楽しそうにに言うクアットロ。

 

 

『今はセインが様子を窺っているけど……』

 

 

「フォローします?」

 

 

そう言ったクアットロの目には、惚けた口調とは裏腹に鋭い光があった。

 

 

『お願い』

 

 

女性がそう言うと、空間モニターが消える。それと同時にクアットロはセインと呼ばれる少女に念話を送った。

 

 

【セインちゃん】

 

 

【あいよークア姉】

 

 

【こっちから指示を出すわ。お姉さまの言う通りに動いてね】

 

 

【んー了解~】

 

 

セインからの返事を聞いたクアットロは次に掴まったルーテシアに念話を送った。

 

 

【は~いお嬢様♪】

 

 

【クアットロ?】

 

 

【何やらピンチのようで。お邪魔でなければクアットロがお手伝い致します♪】

 

 

【……お願い】

 

 

【は~い。ではお嬢様? クアットロが言うとおりの言葉を、その赤い騎士に】

 

 

自分を見つめているヴィータを見つめ返し、ルーテシアはクアットロの言葉を待った。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

同時刻、なのはとフェイトはヘリを目指して全速力で移動していた。あからさまな陽動に、敵の狙いがヘリに乗る少女と、レリックである可能性が高いと判断したからだ。そして、風を切って空を飛ぶ2人の視界に無事な姿のヘリが映る。

 

 

「見えた!」

 

 

「よかった、ヘリは無事!」

 

 

ヘリの無事な姿になのは達が胸を撫で下ろした瞬間、いきなり大きな魔力反応が現れた。魔力反応の元は、ディエチとクアットロの居たビルからディエチが構えたあの巨大な大砲からだった。

 

 

『砲撃のチャージ確認!! 物理破壊型、推定Sランク!!』

 

 

ロングアーチからの通信に、なのはとフェイトの顔に緊張が走った。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

IS(インヒューレントスキル)・ヘヴィバレル、発動」

 

 

構えた砲身の先に橙色の巨大な魔力の塊を浮かべ、ヘリに狙いを定めながらディエチが呟く。それをディエチ後ろに立って眺めつつ、クアットロは楽しそうにルーテシアへの伝言を口にする。

 

 

「逮捕は、いいけど……」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「大事なヘリは、放っておいていいの?」

 

 

『っ!!?』

 

 

突然ルーテシアが発した言葉を聞いて、一同に緊張が走る。しかしルーテシアはそのまま言葉を続ける。

 

 

「貴女はまた……守れないかもね」

 

 

「っ!!!?」

 

 

その言葉にヴィータの目が大きく見開かれた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「……発射!」

 

 

その言葉と同時に、ディエチが構えた砲身から凄まじい砲撃が放たれ、それは真っ直ぐにヘリへと向かった。

 

それを阻止しようとなのはとフェイトは全速力でヘリへと向かうが……

 

 

「……ダメ!間に合わない!!!」

 

 

 

ドゴォォォォォォオン!!!!

 

 

 

無情にも、放たれた砲撃が轟音と共に爆発した。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

『砲撃……ヘリに、直撃……』

 

 

『そんな筈ない! 状況確認!』

 

 

『ジャミングが酷い……精査できません!』

 

 

ロングアーチからの言葉にヴィータ達一同は愕然としていた。

 

 

「そんな……」

 

 

「ヴァイス陸曹と、シャマル先生が……」

 

 

「嘘だろ……あのヘリにはウェンディも……!!」

 

 

「っ……テメェ!!」

 

 

エリオとティアナとグレイが呟いた瞬間、ヴィータがルーテシアに掴みかかる。

 

 

「ふ、副隊長! 落ち着いて!」

 

 

「うるせぇ!!」

 

 

ヴィータを押さえようとするスバルだが、呆気なく振り払われる。

 

 

「仲間がいんのか!? どこに居る!? 言え!!」

 

 

興奮しているヴィータがルーテシアに問いただしている一方で、ギンガは何かを感じ取り、後ろを振り返った。

 

 

「っ!?」

 

 

そこには何と、人の手が地面から生え、ゆっくりとエリオの接近していた。

 

 

「エリオ君! 足元に何か!」

 

 

「えっ!?」

 

 

そう言われ、慌てて足元を見るエリオ。しかし、時既に遅く……

 

 

「うわっ!?」

 

 

「いただき♪」

 

 

突如地面から現れた青い髪の少女…セインがエリオからケースを掠め取ったのだ。

 

それを見たティアナはクロスミラージュを構えて発砲するが、セインは再び地面の中に潜ってそれを回避した。

 

そしてそれを確認したガジルはここぞとばかりに声を張り上げる。

 

 

「今だ! 来い、リリー!!」

 

 

「ぬおぉぉぉぉぉぉおお!!!」

 

 

ガシャァァァァアン!

 

 

ガジルの声に反応して現れたのは戦闘モードシフトで巨体になり、まさに「パンサー」の名に相応しい姿となったリリーだった。そしてリリーは自身と同じ刀身の剣で、ガジルを拘束していた氷を粉々に砕いた。

 

 

「っ、しまった!!」

 

 

「遅せぇよ!!」

 

 

そして次の瞬間にはガジルはすでに行動に移っていた。

 

 

「鉄竜槍・鬼薪(きしん)!!!」

 

 

『うわぁぁぁぁあああ!!!』

 

 

ガジルの突然の攻撃に対処出来ずに吹き飛ばされるメンバー。

 

 

「セイン!!」

 

 

「あいよーガジル!」

 

 

ガジルの言葉に反応してルーテシアの前に現れるセイン。そしてセインはルーテシアを抱きしめると、再び地面に潜り、そのまま橋の下に突き抜ける。

 

 

「……アギトが…」

 

 

「あぁアギトさんなら、さっきの一瞬で離脱しました。さすが、良い判断です♪」

 

 

そう言ってもう一度地面の中に潜り、その場から去った。

 

 

「ギヒッ…んじゃあ、オレらも戻るぞリリー」

 

 

「あぁ」

 

 

そう言うとリリーは普段の小さな姿に戻り、背中に羽を生やしてガジルと共に超スピードでその場を離れて行った。

 

 

「反応……ロストです……」

 

 

「くそぉ!!……ロングアーチ、ヘリは無事か? あいつら、落ちてねぇよな!!?」

 

 

確認と言うよりも、願いが込められたヴィータの問いかけ。果たしてロングアーチからの答えは…

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「うふふ~のふ~♪どう?この完璧な計画」

 

 

「黙って。今命中確認中……」

 

 

クアットロを黙らせて砲撃が当たったかどうかを確認するディエチ。そして、煙が徐々に晴れていくと……

 

 

「あれ? まだ飛んでる……!」

 

 

「あら?」

 

 

なんとヘリはまだ飛行していた。そして煙が全て晴れ、そこに居たのは……

 

 

 

「どうやら……間に合ったようだな」

 

 

「あい!」

 

 

 

装甲が分厚い鎧を身に纏ったエルザと、そのエルザを支えて飛んでいるハッピーの姿があった。

 

 

「エルザさん!」

 

 

「よかった…!」

 

 

エルザの元へ行き、ヘリの無事を喜ぶなのはとフェイト。

 

 

「でもエルザさん、今までどこに?」

 

 

「すまない、空中戦が主になると思い、一度隊舎に戻ってハッピーを呼びに行っていたのだ」

 

 

「あい! いきなり尻尾を捕まれて連れ去られた時は何事かと思ったよ……」

 

 

「なるほど……」

 

 

エルザとハッピーの言葉を聞いて、納得するなのはとフェイト。

 

 

「あら~」

 

 

「こっちもフルパワーじゃないとはいえ、あんな鎧一つで止められるなんて…!」

 

 

予想外の事に驚くクアットロとディエチ。

 

因みにエルザが身に纏っているのは超防御力を誇る『金剛の鎧』である。

 

 

「敵は……あっちか」

 

 

そう言うとエルザは砲撃が飛んできた方を睨みながら『天輪の鎧』に換装する。そして……

 

 

循環の剣(サークルソード)

 

 

静かにそう呟き、数本の剣を飛ばした。

 

 

「「っ!?」」

 

 

それを見たクアットロとディエチはすぐに飛んで避け、別のビルに着地した。だが……

 

 

「あの砲撃は貴様らの仕業だな?」

 

 

その後ろにはエルザの姿があった。

 

 

「こっちも!?」

 

 

「速い!?」

 

 

それを見た二人はすぐにその場から離れる。

 

 

「追うぞハッピー!」

 

 

「あいさー!」

 

 

当然エルザとハッピーはそれを追いかけ、その後ろにフェイトが続く。

 

 

「私たちの仲間を危険に晒した貴様らは、絶対に逃がさん!!」

 

 

「市街地での危険魔法使用、及び殺人未遂の現行犯で逮捕します!」

 

 

「今日は遠慮しときます~! IS発動『シルバーカーテン』」

 

 

クアットロは自分のISを発動し、ディエチと共にその姿を消した。しかし……

 

 

「そこだぁ! 火竜の翼撃!!」

 

 

「えっ!?」

 

 

近くのビルから突然ナツが飛び出し、両手に纏った炎で姿を消した二人を的確に狙った。

 

 

「きゃっ!」

 

 

「くっ…!」

 

 

二人はそれを何とか回避し、地面に着地した。

 

 

「どうして私達の居場所が!?」

 

 

「オレは鼻が利くんだよ。さっきからしてた妙な匂いはテメェらか。ガジェットと同じ、機械みてーな匂いだ」

 

 

そう言って二人の行く手を阻むナツ。すると……

 

 

「ナツ君! すぐにそこから退避して!!」

 

 

「っ、おう!!」

 

 

なのはが上空からナツに呼びかけ、それを聞いたナツは足から炎を噴射して、近くのビルまで飛び移る。

 

 

「何?」

 

 

「はやて!!」

 

 

それを確認したフェイトは、出撃していたはやてに呼びかける。

 

 

「了解!」

 

 

フェイトとナツはその場から離れる。

 

 

「離れた!? 何で!?」

 

 

「まさか!?」

 

 

フェイト達が離れたのを見て、ディエチが不思議そうに呟くのと同時に、クアットロは慌てて後方を向く。

 

そこには、巨大な黒い魔力の塊が現れていた。

 

 

「広域…空間攻撃!!?」

 

 

「うっそ~ん」

 

 

そう言っている間にもはやてが呪文を詠唱する。

 

 

「遠き地にて 闇に沈め! デアボリックエミッション!!」

 

 

その瞬間、はやての広域空間攻撃魔法デアボリックエミッションが発動し、巨大な魔力の塊が周囲一帯を覆うように広がる。

 

 

「「うわぁぁぁぁあああ!!!」」

 

 

クアットロとディエチは一瞬球体に呑まれるが、ギリギリで脱出する。しかしダメージがない訳ではなく、肩を損傷している。

 

 

「くっ!!」

 

 

何とか二人は何とかその場を離れようとするが……

 

 

「逃がさんぞ」

 

 

既に二人はナツとエルザ、そしてなのはとフェイトの四人に囲まれていた。

 

 

[Will Not Surrender…In danger of runaway.Catch on fire will be faint(投降の意志なし…逃走の危険ありと認定。砲撃で昏倒させて捕らえます)]

 

 

バルディッシュがそう言うと同時に、四人はそれぞれ攻撃の構えを取る。

 

 

「火竜の……」

 

 

循環の(サークル)……」

 

 

「エクセリオン……」

 

 

「トライデント……」

 

 

そして、一気にそれを放った。

 

 

「咆哮!!」

 

 

(ソード)!!」

 

 

「バスターー!!」

 

 

「スマッシャーー!!」

 

 

そしてそれらがクアットロとディエチのもとに飛んで行き、大爆発を起こした。

 

 

『やった!』

 

 

『ビンゴ!』

 

 

それを見たロングアーチは喜ぶが……

 

 

「くそっ! 避けられた!!」

 

 

『っ!?』

 

 

ナツの言葉ですぐに驚愕に変わる。

 

 

「直前で救援が入った。アルト、追って!」

 

 

フェイトはすぐに指示を出すが…

 

 

「その必要はねぇよ」

 

 

「だね!」

 

 

それをナツとハッピーが止めた。

 

 

「え? どういうこと?」

 

 

なのはの問いに、ナツとハッピーはニカッと笑い……

 

 

「もうエルザのヤツが追ってっからな!」

 

 

「あい!!」

 

 

と、言ったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃、町外れでは……

 

 

「ふぅ~。トーレ姉様、助かりました~」

 

 

「感謝…」

 

 

クアットロとディエチは自身を助けてくれたトーレと呼ばれる長身の女性に感謝の言葉を口にする。

 

 

「ボーっとするな、さっさと立て。バカ者共め……監視目的だったが、来ていてよかった。セインはもう、お嬢とケースの確保を完遂したそうだ。ガジルとリリーも撤退した。合流して戻るぞ」

 

 

「させると思うか?」

 

 

「「「っ!!?」」」

 

 

突然後ろから聞こえた声に三人は驚愕しながら振り返る。そこには、チーターのような模様が入っており、自身の速度を上げる『飛翔の鎧』を身に纏ったエルザが立っていた。

 

 

「バカな!? 私のライドインパルスに追いついただと!?」

 

 

エルザの登場にトーレは驚愕し、クアットロとディエチは身構える。

 

 

「お前たちを捕縛し、目的などを洗いざらい吐いてもらうぞ」

 

 

エルザは剣を構え、一番前にいたトーレを睨む。

 

 

「……お前たちは逃げろ。こいつは私がやる」

 

 

「……わかりました。IS発動『シルバーカーテン』」

 

 

トーレの言葉をあっさりと了承したクアットロはISを発動し、ディエチと共にその場から姿を消した。

 

 

「「……………」」

 

 

その場に残ったエルザとトーレは互いにジッと睨み合い…

 

 

 

………カラン

 

 

 

瓦礫が落ちる音と共に動き出した。

 

 

「「ハァァァァァァアア!!!」」

 

 

エルザの剣とトーレの虫の羽に似たエネルギー翼、インパルスブレードが激突し、あたりに衝撃が巻き起こる。

 

 

「IS発動!『ライドインパルス』!!」

 

 

「飛翔の鎧!!」

 

 

すると、二人は一瞬で姿を消す。

 

というより、速すぎて見えないのだ。それでも確かに剣とインパルスブレードが激突する音は響いている。

 

 

「くっ……!」

 

 

「っ……!」

 

 

しばらくの激突のあと、二人は高速移動を止め、お互いに距離を取った。

 

二人の頬には、あの激しい斬り合いの中でついたのでろう一筋の切り傷が刻まれ、血を垂らしている。

 

 

「やるな……」

 

 

「貴様もな……」

 

 

二人は微笑を浮かべながら互いを称える。

 

 

「名を聞いておこうか…」

 

 

「私はエルザ・スカーレット。貴様は?」

 

 

「ナンバーズ3のトーレだ」

 

 

「そうか。行くぞ、トーレ!」

 

 

「来い! スカーレット!」

 

 

自己紹介のあと、二人は武器を構え、再び激突……するかと思われたその時…

 

 

 

「鉄竜の咆哮!!!」

 

 

 

「「っ!!?」」

 

 

突如上から二人の間に向かって強力な攻撃が叩き付けられた。そしてそれに巻き上げられた土埃にエルザとトーレは目を覆う。

 

 

「っ…ガジル!!」

 

 

「なにっ!? ガジルだと!!?」

 

 

トーレとエルザがほぼ同時に上空を見上げると、そこにはリリーに抱えられて空を飛んでいるガジルの姿があった。

 

 

「こんな時に遊んでんじゃねぇよ!! セイン!!」

 

 

「あいよ!」

 

 

すると、トーレの足元からセインが現れた。

 

 

「さ、トーレ姉。逃げるよ」

 

 

「……わかった」

 

 

セインの言葉にトーレは渋々と言った感じで頷くと、セインと共に地面の中に消えて行った。

 

 

「くっ……逃がしたか……!」

 

 

そう呟きながらエルザは未だ上空にいるガジルとリリーを見上げ、睨みつける。

 

 

「ガジル…リリー……貴様ら、何故そちら側にいる!?」

 

 

「ギヒッ……オレ達がこの世界でどうしようがオレ達の勝手だ」

 

 

「すまないエルザ。お前たちにはお前たちの都合があるように…オレ達にはオレ達の都合がある」

 

 

それだけ言い残すと、ガジルとリリーは飛んで行き、その場から離れていった。

 

 

「…………」

 

 

エルザはそれを、ただジッと見つめていたのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

その頃、ヴィータははやてに報告をしていた。

 

 

「こっちは最悪だ。召喚士一味には逃げられ、ケースは持っていかれちまった。逃走経路も攫めねぇ……」

 

 

「あ、あのヴィータ副隊長……」

 

 

報告しているヴィータに向けてスバルが声をかけるが、言葉を続ける前にグラーフアイゼンを向けられて押し黙る。

 

 

「あぁ、フォワード陣はベストだった。今回は完全にアタシの失態だ」

 

 

「リィンもです……」

 

 

「オレもリリーの事をすっかり忘れてたしな……」

 

 

「副隊長! あの!」

 

 

落ち込む二人に今度はティアナが声をかけた。

 

 

「何だよ!? 報告中だぞ!?」

 

 

「いや、あの……ずっと緊迫してたんで切り出すタイミングがなかったんですけど…」

 

 

「レリックには私たちで一工夫してまして……」

 

 

「「「??」」」

 

 

ティアナとスバルの言葉にヴィータとグレイとリィンは首を傾げた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方、スカリエッティがアジトとしている地下施設では……戻って来たナンバーズとルーテシア、そしてガジルとリリーが通路を歩いていた。

 

 

「はぁ、やっと戻ってこれた……」

 

 

「お嬢の集団転送のおかげですね。ありがとうございます」

 

 

「……うん」

 

 

「あぁセインちゃん。ケースの中身確認♪」

 

 

「はいよ~」

 

 

そう言ってセインは近くの台座にケースを置き、指先を光らせてケースをなぞると、ケースが音を立てて開かれた。そしてセインは蓋を持ち……

 

 

「じゃじゃ~ん!」

 

 

と、勢い良く蓋を開いた。しかし……

 

 

「っ、からっぽ!?」

 

 

ケースの中にレリックはなかった。

 

 

「どういうことだ!?」

 

 

「セインちゃん! 貴女まさか……」

 

 

「って、私はちゃんと運んできた!」

 

 

「ディープダイバーの使い方間違えて、中身だけ落としてきたとか?」

 

 

「間違えねぇ!!」

 

 

ナンバーズが口論している間に、ルーテシアは空のケースを見つめ、残念そうに目尻を下げていた。

 

 

「ちゃんとスキャンして、本物のケースだと確認して……ほれ!」

 

 

セインはその場にいくつかの空間モニターを出し、確認させる。

 

 

「ま、確かにこのケースにはあのガキどもの匂いがついてる。ケースは本物だな」

 

 

「………っ!!」

 

 

ガジルは空のケースを持ち上げながらそう言う。すると、モニターを見ていたトーレが何かに気がついた。

 

 

「んーおかしいわねぇ?」

 

 

「バカ共が! お前らの目は節穴か!? ここだ!!」

 

 

と、トーレが指差したのは……キャロの帽子の中だった。

 

 

「なるほどな。中身だけを取り出して隠し、カモフラージュの為にケースを持ち歩いていたと言うワケか。敵ながら見事な作戦だ」

 

 

「ギヒッ……してやられたってわけか」

 

 

そう言ってリリーは感心し、ガジルは笑みを浮かべながら持っていたケースに噛り付き、そのままケースを食い始めたのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ケースは、シルエットではなく本物でした。私のシルエットは衝撃に弱いんで、奪われた時点でバレちゃいますから」

 

 

「なので、ケースを開封してレリック本体に直接厳重封印をかけて……」

 

 

「その中身は……」

 

 

説明しながらスバルはキャロの帽子を取ると、そこには一輪の花が咲いたカチューシャがあった。

 

 

「こんな感じで……」

 

 

ティアナがパチンと指を鳴らすと、カチューシャはレリックへと姿を変えた。

 

 

「敵との直接接触の一番少ないキャロに持っててもらおうって」

 

 

「な~るほど~!」

 

 

「考えたもんだ」

 

 

「は、ははは……」

 

 

感心するリィンとグレイとは別に、ヴィータは顔を引きつらせながら笑っていたのだった。

 

 

 

 

 

つづく

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