魔法少女リリカルなのはStrikerS~機動六課と妖精の尻尾~   作:ZEROⅡ

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予言

 

 

 

 

「……んあ?…朝か……」

 

 

どこかの山の中……そこで野宿をしていたガジルは目を覚ました。

 

 

「ん?」

 

 

ふと、ガジルは服に違和感を感じたので見てみると、そこにはガジルの服を掴みながら寄り添って眠っているルーテシアの姿があった。さらに彼女の膝にはリリーが眠っており、その隣りにはゼストも眠っている。

 

 

「ったく……何でオレがガキのお守りをしなきゃなんねえんだ…」

 

 

そう…ガジルは先日の一件以来、何故かルーテシアに懐かれてしまい、その後行動と共にするようになった。もちろんリリーも一緒である。

 

最初は当然ゼストとアギトはガジルを警戒していたが、ゼストはガジルの目を見て「悪いヤツではない」と判断し、共に行動することを許したのである。

 

 

「うーくっそぉ……やな夢だ……」

 

 

すると、ルーテシアの胸元で眠っていたアギトが目を擦りながら起きてきた。

 

 

「よお、起きたかよ」

 

 

「ガジル……」

 

 

「随分うなされてたみてぇだな」

 

 

「あぁ……ちょっと昔の夢をな…」

 

 

「……そうかよ」

 

 

それ以上ガジルは何も言わなかった。するとアギトは「ちょっと頭冷やしてくる」と言って、そのまま上空に飛び上がっていった。

 

 

「…………」

 

 

それを見送ったあと、ガジルは未だに眠っているルーテシア達に視線を移す。

 

そして、ガジルは以前聞いたメンバーの過去などを思い出していた。

 

 

ルーテシアは意識不明の母親を目覚めさせるレリックを見つけるため、例え犯罪であろうと手を染める。

 

ゼストは八年前、率いていた部隊ごと抹殺されているが、最高評議会の依頼を受けたスカリエッティによって人造魔導師として蘇生させられる。

 

アギトは非合法組織の研究所で貴重なサンプルとしてさまざまな実験を受けており、ロードも既に亡くなっていた。

 

リリーは怪我をした人間の子供を救ったがために、故郷を追放された。

 

そしてガジル自身も、妖精の尻尾(フェアリーテイル)を破壊した過去を持つため、一時期はメンバーからは恐れられ、孤立していた。

 

 

「ギヒッ……ようするにオレ達はこの世のはみだし者集団ってわけか……」

 

 

ガジルは嘲笑うかのように笑みを浮かべ、眠っているルーテシアの頭をそっと撫でる。

 

 

「だが……悪くはねえな……」

 

 

ガジルのその呟きは、アギトの「絶対燃やしてやるぅー!!」という叫びにかき消されたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方、街中の道路を走る一台の車の中では……

 

 

「すみませんシグナムさん。車出してもらっちゃって…」

 

 

「なに、車はテスタロッサからの借り物だし、向こうにはシスター・シャッハがいらっしゃる。私が仲介した方がいいだろう。それより、あの二人は連れてくる必要があるのか?」

 

 

シグナムが後部座席にチラリと視線を向ける。

 

 

「む?」

 

 

「う……おぷ……」

 

 

シグナムの視線に気がつき、首を傾げているエルザ。そして乗り物酔いでダウンしているナツとの姿があった。

 

 

「スカーレットはわかるが、何故ドラグニルまで?」

 

 

「にゃはは……ほら、何となくナツ君は子供と気が合いそうじゃない?」

 

 

「そ、それ……オレが子供と同レベルって聞こえるんだ…が……おぷぅ」

 

 

「ふう……まったく仕方がないな」

 

 

相変わらず乗り物酔いをしているナツにエルザは溜め息を一つつくと……

 

 

ボスッ!!

 

 

「ぶほっ!」

 

 

「「!!?」」

 

 

何といきなりナツの腹部を殴ってナツを気絶させ、頭を自分の膝の上に置いた。いわゆる膝枕である。

 

 

「これで少しは楽になるだろう」

 

 

「「……………」」

 

 

エルザのメチャクチャっぷりになのはとシグナムは唖然としていた。

 

 

「し…しかし、検査が済んで何かしらの白黒がついたとして、あの子はどうなるのだろうな?」

 

 

すると、シグナムは話題を無理矢理変え、先日保護した少女の話をした。

 

 

「うん……当面は六課か協会で預かるしかないでしょうね。受け入れ先を探すにしても、長期の安全確認を取れてからでないと……」

 

 

「…………」

 

 

なのはの言葉にシグナムは黙り込む。すると、突然通信が入り、空間モニターが表示された。

 

 

『騎士シグナム! 聖王教会のシャッハ・ヌエラです!』

 

 

「どうされました?」

 

 

『すみません。こちらの不手際がありまして、検査の合間にあの子が姿を消してしまいました!』

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その後、車を飛ばすこと数分…一同が聖王医療院に到着すると、中からシャッハが飛び出してくる。

 

 

「申し訳ありません!」

 

 

「状況はどうなってますか?」

 

 

「はい…特別病棟とその周辺の封鎖と避難は済んでいます」

 

 

なのはの質問に答えるシャッハ。すると、その答えにエルザが異論を唱えた。

 

 

「たった一人の子供相手にそこまでする必要があるのか?」

 

 

「……貴女は?」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士、エルザ・スカーレットだ」

 

 

「そうですか、貴女が……私は聖王協会のシスター、シャッハ・ヌエラです。申し訳ありませんが、今は説明している暇はありません。あの子の探索を手伝ってもらえますか?」

 

 

「……わかった」

 

 

エルザはそう言うと、未だに気絶しているナツに歩み寄る。

 

 

「起きろナツ! いつまで寝ているつもりだ!!!」

 

 

「へばっ!!?」

 

 

エルザに文字通り叩き起こされ、ナツは目を覚ます。

 

その際になのはが「エルザさんが気絶させたんじゃ……」と疑問を抱いたが、それを口に出すことはなかった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その後、全員で居なくなった少女を探すことになり、ナツはエルザと、シグナムはシャッハと、なのはは単独で少女を探し始めた。

 

 

「ナツ、どっちだ?」

 

 

「クンクン……こっちだ」

 

 

ナツとエルザはナツの嗅覚を頼りに少女を探して、中庭を歩いていた。

 

 

「ん? この辺りだ!」

 

 

ナツがそう言うと、エルザは辺りを見回す。すると……

 

 

 

ガサッ

 

 

 

「「っ!」」

 

 

音がした方に目を向けると、そこにはウサギのぬいぐるみを大事そうに抱えた金髪の少女がいた。

 

 

「アイツだ!」

 

 

「こんな所にいたのか。とにかく見つかってよかった……」

 

 

少女を発見したナツとエルザは安堵の表情を浮かべる。そしてエルザは少女を怖がらせないようにゆっくりと近づく。

 

その時……

 

 

キィィン!

 

 

「「っ!?」」

 

 

突如、病棟の方からオレンジ色の閃光が飛び出してきてエルザ達の前に降り立った。その正体はバリアジャケットを身に纏ったシャッハであった。

 

そしてシャッハはトンファーのような武器を構え、少女に襲い掛かろうとする。そんなシャッハを見て目に涙を浮かべながら少女は怯えていた。

 

 

 

「貴様……何をしている?」

 

 

 

「っ!?」

 

 

その時、シャッハは後ろから聞こえた殺気の篭った声にゾクリと恐怖を感じた。振り返るとそこには鎧を身に纏い、怒りの形相をしたエルザが立っていた。

 

 

「エ…エルザを怒らせやがった……オレ知ーらね」

 

 

そんなエルザにナツは怯えながら身を引いた。

 

 

「もう一度問う。貴様、何をしている?」

 

 

とてつもない殺気を放つエルザにシャッハは冷や汗を流すが、それをグッと堪えて声を発する。

 

 

「この子は人造魔導師素体……危険な存在なんですよ!?」

 

 

「危険? あのように怯えて泣いている少女が危険だと?」

 

 

「そうです! ですからこの子はこの場で処分を……っ!!?」

 

 

シャッハがそれ以上を言葉を発することは出来なかった。何故なら、先ほどよりさらに膨れ上がったエルザの殺気に当てられ、強制的に黙らされたのだ。

 

 

「例え造られた命であろうと、この子はこうして生きている……それを奪う権利は誰にもない!!」

 

 

「っ……何も知らない者が、口を慎みなさい!!」

 

 

そう言って、トンファーを構えてエルザに襲い掛かるシャッハ。それを見たエルザは「ふぅ」っと溜め息をつき……

 

 

 

「口で言ってもわからんか?」

 

 

 

ガキィィィィィイン!!

 

 

一閃。

 

 

エルザが換装で出した一本の剣。それのたった一振りでシャッハの武器であるトンファーを弾き飛ばした。カランッと、トンファーが地に落ちる音が響く。

 

 

「そ、そんな……!」

 

 

信じられないという表情を浮かべるシャッハ。そんなシャッハの首元に剣を突きつけるエルザ。

 

 

「やっぱエルザ怖ぇ……!!」

 

 

ナツが顔を引きつらせながら言う。すると……

 

 

「そこまでだ、スカーレット」

 

 

「っ……シグナム」

 

 

シグナムが剣を握っているエルザの手を掴み、仲介に入った。

 

 

「シスター・シャッハ。今回は貴女に非がある」

 

 

「し、しかし……」

 

 

「それに、この者は私や貴女が敵う相手ではありません。どうかご理解を…」

 

 

「……わかりました」

 

 

シグナムに諭され、シャッハはバリアジャケットを解除する。それを見たエルザも鎧と剣を消し、少女に駆け寄る。

 

 

「大丈夫だったか?」

 

 

「ふえ……!」

 

 

しかし、先ほどのやり取りを見ていたせいか、エルザが近づくと少女は目に涙を浮かべて怯える。

 

 

「うっ……いや、その…」

 

 

それを見たエルザは珍しくオロオロしている。すると、なのはが少女の前に出てきた。

 

 

「ごめんね、ビックリしたよね? 大丈夫?」

 

 

そう言ってなのはは少女が落としたウサギのぬいぐるみを拾い、ホコリを払って少女に返す。それを少女は恐る恐る受け取る。

 

 

「立てる?」

 

 

なのはの問いに答えるようにゆっくりと立ち上がる少女。

 

 

「初めまして、私の名前は高町なのはって言います。お名前、言える?」

 

 

「……ヴィヴィオ」

 

 

ポツリと呟くように答える少女、ヴィヴィオ。

 

 

「ヴィヴィオ……いいね、可愛い名前だ」

 

 

そう言うと、なのははチョイチョイっとナツとエルザを手招きする。どうやら今の内に自己紹介をしろと言うことらしい。それを見たナツとエルザはヴィヴィオに歩み寄る。

 

 

「オレはナツ・ドラグニルだ。よろしくな、ヴィヴィオ」

 

 

「さっきは驚かせてすまなかった。私はエルザ・スカーレットだ。よろしく頼む、ヴィヴィオ」

 

 

ニカッと笑みを浮かべながら自己紹介をするナツと先ほどのことを謝罪しながら自己紹介をするエルザ。

 

 

「ヴィヴィオ、どこか行きたかった?」

 

 

「ママ、居ないの……」

 

 

ヴィヴィオの言葉に三人は一瞬切なそうな表情をするが、すぐに笑顔を浮かべた。

 

 

「あぁ、それは大変!」

 

 

「では、私たちと共に探そうか?」

 

 

「一緒に母ちゃん探そうぜ!」

 

 

「………うん!」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「臨時査察?」

 

 

機動六課(ここ)にか?」

 

 

「うん。地上部隊にそんな動きがあるみたいなんよ」

 

 

部隊長室では上からフェイト、グレイ、はやての声が続く。

 

因みに部屋には彼女らだけではなく、はやての膝の上には何故かハッピーもいた。

 

 

「地上部隊の査察は厳しいって聞くけど……」

 

 

「うぅ…。六課(うち)はただでさえツッコミ所満載の部隊やしなぁ」

 

 

「今の配置やシフトの変更命令が出たりしたら、正直致命的だよ?」

 

 

「それに、妖精の尻尾(オイラたち)のこともツッコまれたら、色々とヤバイよ?」

 

 

「う~ん。何とか乗り切らな」

 

 

ハッピーを含めた四人は揃って頭を悩ませる。すると、フェイトが口を開いた。

 

 

「ねぇ…これ、査察対策にも関係して来るんだけど…六課設立の本当の理由、そろそろ聞いてもいいかな?」

 

 

「……そやね。まぁ、ええタイミングかな。これから聖王教会本部、カリムの所に報告に行くんよ。クロノ君も来る」

 

 

「クロノも?」

 

 

「なのはちゃんと一緒について来てくれるかな?そこでまとめて話すから」

 

 

「うん」

 

 

フェイトが頷くのを見た後、はやてはグレイに視線を向ける。

 

 

「グレイさんもついて来てくれますか?」

 

 

「俺も?」

 

 

「正確にはナツ君とエルザさん、それにウェンディちゃんにも来て欲しいんやけど……」

 

 

「わかった。オレはいいぜ」

 

 

「オイラは?」

 

 

「ごめんな、ハッピーちゃんは留守番しててくれるか?」

 

 

「……最近、オイラ留守番が多い気がするよ」

 

 

留守番を命じられたハッピーはしょんぼりとする。

 

 

「なのは達、もう戻ってると思うけど…」

 

 

そう言ってフェイトは空間モニターを操作してなのはに回線を繋げる。すると……

 

 

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁあああん!!!』

 

 

 

聞こえてきたのは少女の大きな泣き声だった。

 

 

『ほら泣かない、泣かないで!』

 

 

『泣くなヴィヴィオ! ほら! 火の玉だぞ!!』

 

 

『バカナツ! そんなの見せたら余計に泣いちゃうでしょ!!』

 

 

『むぅ……こういう時はどうしたら……!』

 

 

それを何とか慰めようとオロオロしているなのはとナツとエルザ、そしてFWメンバーの姿があった。

 

 

「あの、何の騒ぎ?」

 

 

『あ、フェイト隊長。実は……』

 

 

『やだぁぁああ!! いっちゃやだぁぁぁあああ!!!』

 

 

『……と、言うわけだ』

 

 

なのはとエルザはそれ以上言葉を発することはなかったが、少女…ヴィヴィオの泣き声で全てを察して、三人と一匹は苦笑いを浮かべた。

 

 

「ったく、さすがの火竜(サラマンダー)妖精女王(ティターニア)も子供には敵わねえか……」

 

 

「あい…」

 

 

「あはは……なのは隊長、私たちも今からそっちに向かうから」

 

 

『うん、了解』

 

 

そう言うと、空間モニターを消し、四人は部隊長室を出て、部屋に向かったのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その後、四人が部屋に入ると、そこには未だになのはに抱きついているヴィヴィオがいた。周りには困り果てたナツ達もいる。

 

 

「エース・オブ・エースにも勝てへん相手がおるもんやね」

 

 

【フェイトちゃん、はやてちゃん、あの…助けて!】

 

 

「ん…スバル、キャロ、ナツ君とエルザさんも取り合えず落ち着こか。離れて休め」

 

 

なのはは念話で二人に助けを求め、それを受け取ったはやては二人の周りにいるナツ達に離れるように指示をする。

 

 

「オイラに任せて!」

 

 

すると、ハッピーがヴィヴィオに向かって飛び出した。

 

 

「あい!」

 

 

「ふえ?」

 

 

突然目の前に現れたハッピーにヴィヴィオは目を丸くする。

 

 

「ネコ…ちゃん?」

 

 

「あい! オイラはハッピーだよ!」

 

 

「ハッピー?」

 

 

「あい。君のお名前は?」

 

 

「ヴィヴィオ……」

 

 

「よろしくねヴィヴィオ!」

 

 

「うん…!」

 

 

ハッピーと会話をするうちにヴィヴィオは涙を引っ込め、小さな笑顔を浮かべる。

 

 

「ねえ、ヴィヴィオはなのはと一緒に居たいの?」

 

 

ハッピーの問いにヴィヴィオは「うん…」と小さく頷く。

 

 

「でもね、なのははこれから大事な用事があるんだ。でもね、ヴィヴィオが我侭を言うから困ってるんだ」

 

 

「うぅ……」

 

 

ハッピーの言葉にヴィヴィオは再び涙を浮かべる。

 

 

「ヴィヴィオはなのはを困らせたいわけじゃないんだよね?」

 

 

「うん…」

 

 

必死にヴィヴィオを説得するハッピー。そんなハッピーをナツとグレイとエルザは呆然と見ていた。

 

 

「なぁ…ハッピーって、あんなに子供の扱いが上手かったか?」

 

 

「さ、さぁな…」

 

 

「意外な一面だな…」

 

 

一番付き合いが長いナツもハッピーの意外な一面に目を丸くしていた。

 

 

「だからさ、オイラと一緒にお留守番してようよ! ね?」

 

 

「……うん」

 

 

ようやくハッピーの説得に応じたヴィヴィオはゆっくりと頷き、ずっと掴んでいたなのはの服を放す。

 

 

「ありがとねヴィヴィオ、ちょっとお出かけしてくるだけだから」

 

 

「……うん」

 

 

ヴィヴィオはまた泣きそうになったが、我慢して頷いたのだった。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その後、ヘリの中。

 

 

「ごめんね~お騒がせして……」

 

 

「いや~ええもん見せてもらったよ♪」

 

 

はやての言葉になのはは苦笑い、フェイトはクスクスと笑った。

 

 

「あの…どうして私たちまで呼ばれたんですか?」

 

 

ウェンディが連れて来られた妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーを代表してはやてに問い掛ける。

 

 

「あぁ、そうやね。実は……」

 

 

はやてはグレイ以外の事情を知らないメンバーに事情を説明をした。

 

 

「ふむ…臨時査察か……」

 

 

「確かに、私たちにとっても大変ですね」

 

 

事情を聞いたエルザとウェンディは納得する。因みにナツは……

 

 

「お、おお…うぷっ……」

 

 

いつも通りである。

 

 

「うん。それではやてがみんなにも聞いてもらいたい事があるって」

 

 

「ま、その内容はまたあとで言うわ」

 

 

はやてのその言葉にメンバーはひとまず納得した。

 

 

「しかし、あの子はどうしよか?なんなら教会に預けとくんでもええけど……」

 

 

「平気。帰ったら、私がもう少し話してなんとかするよ」

 

 

「そうか」

 

 

「……ヴィヴィオは今、周りに頼れる者がいないから不安なのだろうな」

 

 

そう言って、エルザはそっと自身の右目に触れた。

 

エルザは幼い頃、楽園の塔の建設のために集められた奴隷だったが、仲間の命と引き換えに奴隷から解放されたが、心に大きな傷を負った。そして妖精の尻尾(フェアリーテイル)に加入した当初は誰かを失うかもしれない恐怖心から周囲と距離を置いていたのだ。

 

『周りに頼れる者が居ない』その不安や苦しみはエルザには痛いほどよく分かっていた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

聖王教会についた一行は、とある一室に招かれた。そして扉をノックして中に入ると、そこには金髪の女性がいた。

 

 

「高町なのは一等空尉であります」

 

 

「フェイト・T・ハラオウン執務官です」

 

 

ビシッと敬礼をして自己紹介をするなのはとフェイト。

 

 

「はじめまして。聖王教会、教会騎士団の騎士、カリム・グラシアと申します」

 

 

カリムと呼ばれた女性は二人に自己紹介をすると、なのは達の後ろに居る妖精の尻尾組に歩み寄る。

 

 

「貴方がたがはやての言っていた妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆様ですね?」

 

 

「おう! オレは妖精の尻尾(フェアリーテイル)のナツだ!」

 

 

「同じく、グレイだ」

 

 

「エルザ・スカーレットだ。よろしく頼む」

 

 

「ウェンディ・マーベルと言います。えっと、よろしくお願いします!」

 

 

四人が自己紹介をすると、カリムは「どうぞこちらへ…」と言って全員を部屋の奥の窓辺のテーブルへと招きいれた。

 

そして既にその場に居たフェイトの義兄『クロノ・ハラオウン』とも自己紹介を済ませた。

 

 

「さて…昨日の動きについてのまとめと、改めて機動六課の設立の裏表について。それから……今後の話や」

 

 

はやてがそう言うと、カリムは部屋の明かりを全て消し、カーテンを閉めた。

 

 

「六課設立の表向きの理由はロストロギア『レリック』の対策と独立性の高い少数部隊の実験例」

 

 

クロノがそう言うと、近くにいくつもの空間モニターが出現する。

 

 

「知っての通り、六課の後見人は僕と騎士カリム。それで僕とフェイトの母親で上官、リンディ・ハラオウンだ」

 

 

「「「(若っ!!?)」」」

 

 

リンディの顔写真を見た妖精の尻尾メンバーは心の中で驚愕した。ただしナツだけは話についていけないのか、一人首を傾げている。

 

 

「それに加えて非公式であるが、かの三提督も設立を認め、協力の約束をしてくれている」

 

 

「その理由は私の能力と関係があります」

 

 

そう言いながらカリムは席を立ち、古いお札のような紙束を全員に見えるように前に出す。そして縛っていた紙の紐をゆっくりと解くと、札は光を放ちながらカリムを中心に円を描き始めた。

 

 

「私の能力、『プロフェーティン・シュリフテン』。これは最短で半年、最長で数年先の未来。それを詩文形式で書きだした予言書の作成を行う事が出来ます。2つの月の魔力がうまく揃わないと発動できませんから、ページの作成は年に1度しか出来ません」

 

 

カリムが説明している途中に7枚の札がなのはとフェイト、そしてナツ達の前に飛んでくる。

 

 

「んだコレ?」

 

 

「何か書いてありますけど、読めませんね……」

 

 

その札には何か文字が書かれていたが、7人とも解読出来ず、首を傾げる。

 

 

「予言の中身も古代ベルカ語で、解釈によって意味が変わる事もある難解な文章。世界に起こる事件をランダムに書き出すだけで、解釈ミスも含めれば的中率や活用性は…割と良く当たる占い程度。つまりは、あまり便利な能力ではないんですが……」

 

 

「聖王教会はもちろん、次元航行部隊のトップもこの予言には目を通す。信用するかどうかは別として、有識者による予想情報の一つとしてな」

 

 

「ちなみに、地上部隊はこの予言がお嫌いや。実質のトップがこの手のレアスキルとか嫌いやからな」

 

 

「レジアス・ゲイズ中将、だね」

 

 

「あぁ…あのヒゲオヤジか」

 

 

グレイは以前ニュースで見たレジアスを思い出していた。

 

 

「そんな騎士カリムの予言能力に数年前から少しずつ、ある事件が書き出されている」

 

 

クロノの視線にカリムは頷くと、彼女の前に予言が書かれた一枚の札が浮かび上がり、それを読み上げる。

 

 

「古い結晶と無限の欲望が集い交わる地。死せる王の元、聖地より彼の翼が蘇る。死者達が踊り、なかつ大地の法の塔は虚しく焼け落ち、それを先駆けに数多の海を守る法の船も砕け落ちる」

 

 

「それって……!」

 

 

「まさか……!」

 

 

なのはとフェイトは予言の意図がわかり、顔色を驚愕に染める。

 

 

「ロストロギアをきっかけに始まる管理局地上本部の壊滅と。そして管理局システムの崩壊……」

 

 

『っ!!?』

 

 

カリムがそこまで言うと、ようやく意図が理解出来たナツ達は驚愕する。しかし、カリムの話はまだ続いていた。

 

 

「そしてこれが、最近現れた新たな予言です」

 

 

そう言うと、カリムの前にもう一枚の札が浮かび上がる。

 

 

「欲深き異界の探求者がこの地に舞い降りし時…祝福の魂が率いる星・闇・雷の力でこの世を破滅へと導く……」

 

 

「異界の探求者だぁ?」

 

 

「祝福の魂だと?」

 

 

「星と闇と雷の力…?」

 

 

「この世の…破滅?」

 

 

出てきた予言の単語にナツ達は首を傾げる。

 

 

「まだ続きがあります……この地に舞い降りた妖精の魂を持つ三頭の竜が揃いし時…大いなる戦の火蓋が切られる」

 

 

「っ!? これって!!」

 

 

「もしかして……!!」

 

 

なのはとフェイトの視線はナツ達に向けられる。

 

 

「妖精の…魂…」

 

 

ナツはそう呟きながらそっと自分の肩に刻まれた紋章に触れる。

 

 

「せや。これが今回、ナツ君たちを呼んだ理由や」

 

 

「なるほどな。この予言を聞く限り、オレ達が大きく関わっているのは明白だ」

 

 

「予言に出てきた〝妖精の魂〟とは我々、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のこと。そして〝三頭の竜〟……この場合は滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)と考えた方が良いだろう。そしてこの地に舞い降りた滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)と言えば……」

 

 

「私とナツさん……そして…」

 

 

「ガジルのヤローか……!!」

 

 

ナツは拳を強く握りながら呟いた。本来なら同じギルドの仲間であるはずの男の名を……

 

 

 

 

 

つづく

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