魔法少女リリカルなのはStrikerS~機動六課と妖精の尻尾~ 作:ZEROⅡ
聖王教会で予言を聞いた日から数日。その数日間の間になのははヴィヴィオの保護者責任者になった。
そして現在……訓練所には朝練で集合しているFWメンバーと隊長陣に加え、ナツとグレイとエルザが集まっていた。
「さて、今日の朝練の前に1つ連絡事項です。陸士108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹が今日からしばらく六課へ出向となります」
「はい。108部隊ギンガ・ナカジマ陸曹です。よろしくお願いします」
「「「「よろしくお願いします!」」」」
「「あの時のヤツか……」」
ナツとグレイは以前ギンガのせいで酷い目に遭っているので、少々苦い顔をしていた。
「それから、もう一人」
「ど~も~」
シャーリーの隣りに立つ眼鏡をかけた女性が片手を上げながら軽い挨拶をする。
「10年前からうちの隊長陣のデバイスを見てきてくださっている本局技術部の精密技術官…」
「マリエル・アテンザです」
「地上でのご用事があるとのことで、しばらく六課に滞在していただくことになった」
「デバイス整備を見てくれたりもするそうなので…」
「気軽に声をかけてね♪」
「「「「はい!」」」」
「お~し…じゃあ紹介が済んだ所で、早速今日も朝練行っとくか!」
「「「「はい!」」」」
ヴィータの号令で柔軟などの準備運動を始めるFWメンバー。
「ふわぁ…んじゃ、オレらは部屋に戻ろうぜ」
「だな。朝早くに起こされて眠くてしょうがねえ」
そう言って欠伸をしながら隊舎へ戻ろうとするグレイとナツ。
「待て」
そんな二人の肩をエルザが掴んで止めた。
「せっかくだ。私たちも朝練をして行こうではないか」
「「え?」」
「ふふ…腕が鳴るな」
そう語るエルザの目は、まるで獲物を見つけた野獣のようだった。そんなエルザを見たナツとグレイは大量の冷や汗を流し……
「「う…うわぁぁぁぁぁあああ!!!」」
訓練所全体に響くような絶叫を上げたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
数時間後…
「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…!」
「はぁ…はぁ…はぁ…!」
エルザの地獄の朝練を終えた二人は息を切らしながら地面にうつ伏せに倒れこんでいた。
「ふ、二人とも大丈夫?」
「だ…大丈夫なわけ…あるか…!」
「や…やっぱエルザ…とんでもねえ……!」
息絶え絶えになりながらティアナに返事をかえすナツとグレイ。その姿は泥だらけで、よほどキツイ訓練だったことがわかる。
「ふむ、良い運動になったな」
当のエルザはスッキリとした表情をしている。当然、服に汚れは見当たらず、疲れた様子もない。
「じゃあ、みんな集ごーう!」
「「「「「はい!」」」」」
なのはの号令に集合するFWメンバーとギンガ。ナツとグレイもヨロヨロと立ち上がりながらも集合した。
「せっかくだからギンガも入れたチーム戦、やってみよっか? FWチーム5人対、前線隊長4人チーム!」
「……へ?」
なのはが告げた訓練メニューにギンガは目を点にして呆然とする。
「いや、あのねギン姉。コレ時々やるの」
「隊長達、かなり本気で潰しに来ますので」
「まずは地形や幻術を駆使して何とか逃げ回って」
「どんな手を使っても決まった攻撃を入れる事が出来れば撃墜になります」
「キュクルー」
そんなギンガにスバル達は一通りの説明を終える。
「ギンガはスバルと同じくデバイス攻撃ね。左ナックルか蹴り」
「はい!」
「じゃあ、やってみよっか!」
「「「「「はい!」」」」」
「で、その間私たちは訓練再開だ」
「「嘘だぁぁぁぁぁぁああ!!!」」
その後、ナツとグレイは再び地獄を見たのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃…六課の隊舎のなのはとフェイトの部屋ではヴィヴィオが洗面所で顔を洗っていた。その傍らにはハッピーとシャルル、そしてザフィーラがついている。
「ぷはっ……う?…うぅ……?」
顔を洗い終わったヴィヴィオはタオルで顔を拭こうとするが、タオルが見当たらず、ヴィヴィオは困った顔をする。
「あい! ヴィヴィオ、タオルはここだよ」
見かねたハッピーは床に落ちていたタオルを拾い、ヴィヴィオに渡した。
「あっ、ありがとー」
ハッピーにお礼を言いながらヴィヴィオはタオルで顔を拭う。
「アイナさん、ウェンディお姉ちゃん。できたー」
洗面所から出てきたヴィヴィオは部屋を掃除していた寮母のアイナとその手伝いをしているウェンディに駆け寄った。
「はい、良く出来ました」
「偉いね、ヴィヴィオちゃん」
「うん♪」
二人に褒めてもらい嬉しそうな顔をするヴィヴィオ。ハッピーはそれを微笑ましそうに見ている。すると、シャルルがハッピーに話しかける。
「意外と面倒見がいいのね、ハッピー」
「まぁね。オイラ、小さい頃のナツやグレイを知ってるからね。アレに比べたら全然マシだよ」
「納得……」
ハッピーの言葉にシャルルは苦笑いをした。
一方、アイナとウェンディはヴィヴィオに服を着せてあげていた。
「ママのお迎え、ちゃーんと可愛くして行かないとね?」
「うん!」
アイナの言葉にヴィヴィオは満面の笑みでそう答えたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「は~い、じゃあ今日は此処まで」
「全員防護服解除!」
「「「「「は、はい…」」」」」
なのはとヴィータの模擬戦終了宣言を聞いたFWメンバーとギンガは息を荒げながらその場に座り込む。
「ふむ、おしい所まで入ったな」
「後もうちょっとだった」
「あ~! 最後のシフトがうまく行ってれば逆転できたのに~!」
「んあ~…く~や~し~い~」
「フォロー足りなかったね。ごめんね」
「いえ!」
「ギンガさんは全然!」
「悔しい気持ちのまま反省レポートまとめとけよ」
「「「「「はい…」」」」」
「ちょっと休んだらクールダウンして上がろう。お疲れさま」
「「「「「ありがとうございました」」」」」
その後、メンバーはストレッチや体操などでクールダウンを始めた。
「あー……死ぬかと思った」
「エルザの野郎…加減ってもんを知らねえ……」
ようやくエルザの地獄の訓練から解放されたナツとグレイもFWメンバーと合流して一息ついていた。
「すごいね。毎日朝からこんなにキツいの?」
「隊長戦は…まぁ、ちょっと特別だけど」
「だいたいこんな感じです」
「出動があっても大丈夫な程度には、限界ギリギリまでですね」
「密度濃いんです」
「で、練習後はがっつり食べてしっかり休んで、ばっちり回復!」
「そう」
「つかグレイ、お前服は?」
「エルザに細切れにされた」
そんな会話をしながらストレッチをする一同。すると……
「ママー!」
「あ、ヴィヴィオー!」
ヴィヴィオがなのはとフェイトに向かって走ってきていた。
「危ないぞ、転ばないようにな」
「うん!…ふみゃ!!」
『あっ……』
エルザがヴィヴィオに注意をすると同時に、ヴィヴィオは顔から転んでしまった。
「あっ、大変!」
「大丈夫! 地面は柔らかいし、綺麗に転んだ。怪我はしてないよ」
「ヘタに甘やかすより、まずは自分で立てる強さを身に着けるべきだろう」
「それはそうだけど…」
なのはとエルザの言葉を理解しつつも納得できないフェイトは心配そうにヴィヴィオを見ていた。そしてなのははしゃがみ込み、ヴィヴィオに声をかける。
「ヴィヴィオ、大丈夫?」
「ふぇ……!」
顔を上げたヴィヴィオの顔はすでに泣き顔である。
「怪我はしていないな? では、がんばって自分で立ってみろ」
「ママ…!」
「うん。なのはママはここに居るから、おいで」
「ふぇ……ふぇぇえ……!」
ついにヴィヴィオの目から涙がポロポロと溢れ始める。それを見たフェイトはついに…
「なのは、エルザ、ダメだよ! ヴィヴィオはまだちっちゃいんだから!」
そう言ってヴィヴィオに駆け寄り、抱き起こした。
「も~フェイトママちょっと甘いよ~」
「なのはママは厳しすぎです」
「ふむ…甘すぎても厳しすぎてもダメとは……子育てとは奥が深いものだな」
エルザは一人、妙な納得をしていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その後、ウェンディとハッピーとシャルルを加えた一同は食堂に来ていた。
「ヴィヴィオ髪の毛可愛いね~」
「なのはママのリボン!ウェンディお姉ちゃんはつけてくれたの!」
「良い感じだよ、ヴィヴィオ」
「えへへ~」
リボンを褒められ、嬉しそうに笑うヴィヴィオ。
「しっかしまぁ、子供って泣いたり笑ったりの切り替えが早いわよね~」
それを見ていたティアナは朝食を口に運びながら言う。
「スバルのちっちゃい頃もあんなだったわよね~」
「えぇ!? そ、そうかな?」
ギンガがそう言うと、スバルは恥ずかしそうに頬を染める。
「リィンちゃんも」
「ふえ~!? リィンは初めっから割りと大人でした~!」
「嘘をつけ」
「身体はともかく、中身は赤ん坊だったじゃねえか」
「む~…はやてちゃん! 違いますよねぇ!?」
「ふふ、どうやったかなぁ?」
リィンははやてに助けを求めるが、はやては軽く流し、ナツとグレイに話を振った。
「ナツ君とグレイさんは子供の頃どんなんやったん?」
「「あぁ?」」
「私も興味ある! ナツとグレイさんの子供の頃の話!!」
「私も!」
その話を聞いていたスバルとティアナが食いつく。
「んな昔のことなんざ覚えてねえよ」
「オレもだ。わざわざ話すようなもんでもないしな」
と、ナツとグレイはシラを切るが……
「ナツとグレイは今も昔も変わんないよ」
勝手にハッピーが喋り始めた。
「「おい!!」」
二人は止めようとするが、ハッピーは構わず続ける。
「二人はオイラが生まれる前から顔を合わせるたびに喧嘩してたんだよ」
「うわぁ…本当に今も昔も変わんないのね」
「ほっとけ!」
バカにするようなティアナの台詞に怒鳴るナツ。
「あの頃のナツはリサーナと一番仲が良かったよね?」
「(ピクッ)」
「いつも一緒に居て、まだ卵の中だったオイラを卵から孵してくれたんだ」
「えっ!? ハッピーちゃんって卵から生まれたん!?」
「ネコって哺乳類だから、卵からは生まれないはずだけど……」
卵から生まれたと言うハッピーに、はやてとフェイトが疑問に思っていると、話を聞いていたシャルルが説明した。
「私達はあなた達が知っているようなただのネコじゃなくて、『エクシード』と呼ばれる種族なの。だから普通のネコとは生まれ方も違うのよ」
「そうなんだ……」
シャルルの説明に、納得する一同。
「ところでナツ……そのリサーナって誰?」
「お、おう? どうしたティア? 何かこえーぞ」
異様な雰囲気を纏いながらそう問い掛けてくるティアナに、ナツは少々身体を震わせる。すると、またもやナツの代わりにハッピーが答えた。
「リサーナはね、ナツのお嫁さんになるって約束した人だよ」
「何言ってんだオマエーーーーー!!?」
「へぇ…そう……ナツ、向こうでちょっと詳しい話を聞かせてもらおうじゃない」
「ま、待てティア! ガキの頃の話だって!! つーか何でテメェがキレてんだよぉぉお!!?」
そのままナツは嫉妬という名の炎に包まれたティアナに引きづられて行ったのだった。
余談だが、この時のティアナはなのはを初めとした隊長陣を震え上がらせるほどの気迫を纏っていたらしい。
つづく