魔法少女リリカルなのはStrikerS~機動六課と妖精の尻尾~ 作:ZEROⅡ
「オォォォォォオオ!!!」
ナツが目の前に居るナンバーズのノーヴェとウェンディと睨み合って数秒。先に動いたのはナンバー9のノーヴェだった。
ノーヴェは拳を構えながら足のローラーを使い、ナツに向かって突撃する。
「でぇぇぇい!!」
「おっと!!」
ノーヴェが放った拳をナツは飛び上がって避ける。
「逃がさないっす!」
それをウェンディが固有武装『ライディングボード』を構え、ナツに向かって数発の魔力弾を放つ。
「流石に空中じゃ避けられないでしょ!」
そう言ってウェンディは笑みを浮かべるが……
「残念。避けれるぞ」
ナツは口から炎を噴き、その反作用を使って地面に倒れるように避けた。
「今度はこっちの番だ! 喰らいやがれぇ!!」
そう言ってナツは逆立ちをし、足を180度開いて、そのまま足から炎を噴出したままブレイクダンスのようにグルグルと回り始めた。
「うわぁっ! 熱い! 熱いっす!!」
「チィッ!」
ウェンディは悲鳴を上げながら、ノーヴェは舌打ちをしながら紙一重で炎を避ける。
「(この魔法のデタラメ加減……同じだ。ガジルのヤツと……!)」
この時、ノーヴェの頭にガジルの姿がよぎる。
「まだまだぁ! 行くぞぉぉお!!!」
「(こんなデタラメなヤツに…勝てるのか!?)」
ノーヴェはそんな疑問を抱きながら突撃してくるナツを迎え撃ち始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方その頃、ナツが戦っている場所から少し離れた場所では、ナンバーズ5のチンクが身体中をナイフで突き刺されて倒れているグレイとギンガに歩み寄っていた。
「この二人を回収して、私の任務は終了だな」
そう呟きながらチンクはグレイの腕を掴む。すると……
ピシッピシッ…パリィィィィン!
「なっ!?」
なんと、突然グレイとギンガの身体が粉々に砕け散ったのだ。
「これは…氷!?」
「かかったな!」
「っ!?」
「アイスメイク…〝
背後から聞こえた声にチンクが振り向くと同時に、グレイが造り出した氷の鎌がチンクに向かって振るわれる。
「くっ!」
チンクはそれを間一髪、後ろに飛んで避ける。
「行ったぞ、ギンガ!!」
「なに!?」
「てぇぇぇぇぇぇええい!!!」
チンクが着地した先で待っていたのは、拳を構えたギンガだった。チンクは咄嗟にバリアを張って、ギンガの拳を防ぎ、二人から距離を取った。
「氷の人形など、いつの間に……!」
「へへ。万が一の時に備えて、あらかじめ造っておいたんだよ。まさか本当に必要になるとは思わなかったけどな」
「でも、そのお陰で貴女の能力を知ることが出来ました」
「くっ……!」
まんまとしてやられたチンクは悔しそうに顔を歪める。
「ギンガ、お前は先になのは達と合流してろ。こいつはオレがやる」
「……わかりました。気をつけてください」
ギンガはそう言うと、その場から離れようとする。
「させるか!」
それを阻止しようとチンクはナイフ型の固有武器『スティンガー』を走り去ろうとしているギンガに向かって放つ。
「そりゃこっちの台詞だ」
だが、それはギンガに届くことなく、グレイが造り出した氷の中に閉じ込められた。
「っ!? 何故スティンガーが爆発しない……!?」
本来ならば、金属を爆発物に変換するIS『ランブルデトネイター』の能力でスティンガーを爆発させるチンクだが、何故かそれが発動しなかった。
「残念だったな。オレの氷はあらゆる物の〝時〟を止める。こうやって閉じ込めちまえば、爆発なんて起きねえだろ」
「っ……舐めるな!」
そう叫びながら再びグレイに向かってスティンガーを投げるチンク。
「何度やっても無駄だ!!」
それを再び氷の中に閉じ込めるグレイ。だが…
「後ろがガラ空きだ!」
「げっ!? しまった!?」
いつの間にか後ろに回りこんでいたチンクのスティンガーがグレイに襲い掛かる。
「くっ……」
スティンガーを凍らせる暇がないため、グレイは横に飛んで避ける。
「IS発動!『ランブルデトネイター』!!」
「いっ!?」
グレイが驚愕すると同時に、投げられたスティンガーが大爆発を起こした。
「ゲホゲホ! あっぶねぇ~」
すると、煙の中からグレイが飛び出してきた。どうやらギリギリで爆発から身を守ることが出来たようだ。
「クソッ!」
グレイは毒づくと、おもむろに上半身の服を脱ぎ捨てる。それを見たチンクは驚く。
「な、何故服を脱ぐ!?」
「あ? オレはこうした方が集中できんだよ」
「っ…この変態が!!」
そう叫びながらスティンガーを投げるチンク。グレイはそれを慌てることなく氷の中に封じ込める。
「さぁ、決着をつけようぜ……!」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「火竜の翼撃!!」
「くっ、エアライナー!!」
ナツが両腕に纏った炎の攻撃を、ノーヴェはスバルと色違いのウィングロード『エアライナー』を発動し、その上に乗って避けた。
「隙ありっス!!」
ウェンディはそう叫びながらナツの一瞬の隙をつき、数十発の魔力弾を放つ。だがナツは一切動じることなく……
「火竜の咆哮!!!」
灼熱のブレスで魔力弾を全て焼き払った。
「コノヤロォォォォオ!!!」
ノーヴェはエアライナーを使ってナツに接近し、彼に向かって渾身の拳を放った。
「おもしれぇ! 火竜の……」
それを見たナツも炎を纏った拳を構え……
「鉄拳!!!」
渾身の拳をノーヴェの拳にぶつけた。
「「オォォォォォォオオオオ!!!!」」
二人の拳がぶつかり合い、凄まじい衝撃が辺りに響き渡る。そして…
「ぐわぁぁああ!!」
「うわぁぁぁあ!!」
ナツとノーヴェはほぼ同時に吹き飛ばされる。
「へっ…やるじゃねえかオメェ」
そう言いながらナツは立ち上がる。
「うるせぇよ……」
対するノーヴェは毒づきながら立ち上がる。
「ノーヴェ、ドクターからの捕獲対象にコイツも入ってるんすけど……アタシらで捕まえられるんすかね~? コイツの強さ見てると、自信なくなってくるっす……」
「弱音吐いてんじゃねぇ!! すぐにこいつをぶっ倒して、さっきに逃がしたタイプ・ゼロを捕まえてドクターのとこに持って帰んだよっ!!」
弱々しい言葉を呟くウェンディにそう叱咤するノーヴェ。
「そういやぁお前らさっき、スバルのことをタイプ何とかって呼んでたよな? 何なんだよ、そりゃ?」
「?…なんだお前、知らなかったのか?」
ナツの疑問にノーヴェが答える。
「アイツは『タイプ・ゼロ・セカンド』……アタシ達と同じ、戦闘機人だ!」
「っ!!?」
ノーヴェの言葉にナツは衝撃を受ける。しかし、ノーヴェはそのまま続ける。
「アイツもアタシ達と同じ……人殺しの道具なんだよっ!!!」
ノーヴェはどこか悲しげな眼をしながら悲痛な叫びが響き渡った。
「違うっ!!!!!」
だが、ナツはそれを凌駕するほどの叫びを上げた。
「スバルは仲間のために頑張って、仲間のために涙を流す!! 優しい心を持った人間だ!! 何にも知らねえで、アイツを語んじゃねぇえ!!!」
「っ……うるせぇぇええ!!!」
ナツの叫びを聞いたノーヴェは怒りの形相でナツに殴りかかる。そしてナツは、その拳を避けることも受け止めることもせず、ただノーヴェに殴られる。
「お前に何がわかる!? どんなに取り繕っても、結局アタシ達はただの機械なんだよ!! 戦うためだけに生み出された兵器だ!! 人間らしく生きることなんて…出来ねぇんだよぉぉお!!!」
ノーヴェは悲痛な叫びを上げながらナツを殴り続ける。すると……
「……ふざけんじゃねぇぞ」
そう呟くと同時にナツはノーヴェの両手首を掴み、殴るのをやめさせた。
「っ!? は、放しやがれ!!」
両手を掴まれたノーヴェは振り払おうとするが、強く掴まれているため、それは敵わなかった。
「お前がただの機械だと? だったら……その眼から流れてるモンは何なんだよ!!?」
「っ!!?」
そう言われて、ノーヴェは気付いた。自分の片方の眼から一筋の涙が流れていることに……
「涙を流すことが出来るのは、心を持った人間だけだ!! その涙は、お前が人間であることの証だっ!!」
ナツはさらに言葉を続ける。
「機械だの何だの関係ねえ!! 今!! この時を生きているお前は……紛れもねぇ人間だっ!!!」
「っ……!?」
その言葉を聞いたノーヴェは、片方だけではなく、ついに両目から涙が溢れ出始めた。
「仕切りなおしといこうぜ、ノーヴェ。こっからは戦闘機人だの兵器だの関係ねぇ……ただの人間同士のケンカだ」
そう言ってノーヴェの両手を放し、クイクイっと挑発するように手招きをするナツ。それを見たノーヴェは自分の目から流れる涙を腕でグイっと拭い……
「おうっ!!!」
先ほどまでのイラついているような表情とは違う、どこかスッキリとした顔付きでそう答えたのだった。
「オォォオオオオ!!!」
「でりゃああああ!!!」
鳴り響く轟音と共にお互いの頬を捉える二人の拳。
「…………へっ」
「………へへ」
ナツとノーヴェはお互いに口角を吊り上げてニッと笑うと、お互いに距離を取って拳を構える。
「まだまだ行くぞナツーーー!!!」
「かかって来いやーーー!!!」
そう叫びながら再び殴り掛かるナツとノーヴェ。
そこからはもう、一進一退である。
殴られては殴り返し、殴り返せばまた殴られる。そんなどこの世界でもやっていそうなケンカをナツとノーヴェは生き生きとした表情で繰り広げていた。
ずっと続くかと思われたこのケンカ。だが、終わりは突然にやってきた。
「ぐっ……!!」
ナツの拳を喰らったノーヴェの膝が、突然ガクンッと崩れた。どうやらついにノーヴェの身体に限界が訪れたようである。
「これで最後だ、ノーヴェ」
「っ………!!」
「また……ケンカしようなっ!!」
「…………あぁ」
ナツがニカッと笑ってそう言うと、ノーヴェは消え入りそうな声ではっきりと頷いた。それを見たナツは炎を纏った拳を構える。そして……
「紅蓮火竜拳!!」
今の自分が放てる最高の技をノーヴェに放った。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」
それを喰らったノーヴェは吹き飛ばされ、壁に激突する。
「……ありがとよ」
そう言い残してノーヴェは倒れ、気絶した。だが、その表情はどこか清々しそうな表情だった。
「さて……テメェはどうすんだ?」
ナツは先ほどのケンカを見守っていたウェンディに尋ねる。
「……もういいっすよ。何かやる気無くなっちゃったし」
ライディングボードを降ろしながら、ウェンディは「それに…」と言って言葉を続ける。
「これから人間として生きてみるのも……悪くないなぁって、思えてきたんすよ」
その言葉に、ナツは「そっか」と言って笑ったのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方その頃、チンクと戦っているグレイは……
「はぁ…はぁ…やるじゃねえの」
「お前もな……」
互いに傷だらけで息を切らしながら一定の距離を保っていた。その周りにはいくつもの凍らされたスティンガーがあった。
「アイスメイク…〝
「くっ!」
グレイが放った氷の槍をチンクは顔をしかめながら避ける。
「(まだだ…あともう少し……)」
「逃がすかよ!アイスメイク〝
グレイは氷の斧を造りだし、横一線に切りつけるが、チンクはそれをも避ける。
「(もう少し……!)」
「くそっ! チョロチョロしやがって! アイスメイク……」
「今だ! ハァッ!」
すると、チンクは一本のスティンガーを投げた。しかし、それはグレイに届くことはなく、地面に突き刺さった。
「どうした? もうまともに狙いも付けられねえのか?」
「……どうかな?」
「なに?」
「お前の足元を良く見てみろ」
「?……なっ、これは!!?」
言われてグレイは気がついた。グレイの周りにはいつの間にか何本ものスティンガーが落ちていたことに。
「まさか……さっきからチョロチョロ逃げ回ってたのも…!」
「あぁ…逃げる振りをして少しずつスティンガーを仕込ませてもらった」
「チッ! アイスメイク……」
「遅い。発動…『ランブルデトネイター』」
「っ!!!」
ドガァァァァアアアアン!!!
その瞬間、グレイの周りでいくつもの大爆発が起こった。
「終わったか……」
と、その光景を見てチンクが一息ついたその時……
「まだ終わってねえよ…!」
「っ!!?」
突如、爆炎の中からグレイが飛び出してきた。
「オレは負けるわけにはいかねぇんだよ!! 仲間のためにもなぁ!!」
「っ!? しまっ……!!」
グレイは油断していたチンクの一瞬の隙をつき、そして……
「
「うあぁぁぁぁぁあああ!!!」
氷のキャノン砲を造りだし、強力な砲撃をチンクに放った。それを喰らったチンクは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「うっ……」
チンクは地面に倒れながら身体を動かそうとするが、まったく動かない。すると……
ガラガラガラ!!
「っ!?」
先ほど壁に叩きつけられた衝撃で天井が崩れ、瓦礫がチンク目掛けて落ちてきた。
「くっ……ここまでか…」
と、チンクが目を閉じて諦めたその時……
「オォォォォオオオ!!」
「っ!?」
何とグレイが守るようにチンクの前に立ち、落ちてきた瓦礫を凍らせて止めていた。
「っ……ラァ!!!」
そしてグレイがグッと拳を握ると、凍った瓦礫は粉々に割れ、キラキラと綺麗に輝きながら辺りに霧散した。
「ふう…危なかったな」
「……何故だ」
「ん?」
一息ついたグレイにチンクが問い掛ける。
「何故、敵である私を助けた?」
「……別に。オレとの戦いのあとで死なれちゃあ後味悪ぃんだよ」
グレイは頭をボリボリと掻きながら答えた。
「で、どうするよ? まだやるか?」
「……いや、いい。私の負けだ」
そう答えたチンクの顔はどこかスッキリしていた。
つづく