魔法少女リリカルなのはStrikerS~機動六課と妖精の尻尾~ 作:ZEROⅡ
ナツとハッピーが機動六課にやって来て数週間が経ったある日……当のナツとハッピーは……
「ぐがー…ぐごー……」
「すぴー…」
部屋のベッドで爆睡していた。
そんな二人の部屋に、一人の男性が入って来た。
「ったく、こいつらまだ寝てんのか?」
男性はそう呟くと、未だ眠っている二人を起こそうと身体を揺すった。
「おい、お前らさっさと起きろ! おいっ!」
「ん、うーん……この声は……」
男性の呼びかけにようやく目を覚ましたナツは……
「グレーーイ!!!」
「うおわぁぁっ!!?」
なんと男性に襲い掛かった。
「グレイ! テメェ勝負しろやぁ!!」
「待てナツ! 何寝ぼけてんだ!?よく見ろ!!」
「んあ?」
男性の言葉に反応し、ナツは寝惚けていた目をパチッと開いた。
「なんだ、ヴァイスじゃねーか。何してんだよお前?」
「それはこっちの台詞だ。離れろ!」
「うごっ」
ヴァイスと呼ばれた男性はナツの顔を鷲掴みにして自分から引き剥がすと、ゆっくりと立ち上がる。
「ったく、オレの声を聞くたびにそのグレイとか言うヤツと間違えやがって……」
「なははは!! わりぃわりぃ、声が似てるから間違えちまうんだよ」
「その間違いのたびに襲い掛かられるオレの身にもなれっつうの」
ヴァイスは呆れた表情でナツを見る。
「んでヴァイス。オメェ何の用だ?」
「おっと、忘れるところだった。なのはさんにお前たちを呼んでくるように頼まれたんだよ」
「なのはに?」
「あぁ。お前ら、確か今日から訓練に参加するんだろ?」
「……おお! 忘れてたぁ!!」
ナツは思い出したようにポンッと手を打つ。
「早く行ってこいよ。なのはさんカンカンだぞ」
「やべぇ! 行くぞハッピー!!」
「あいさ~……」
ナツは今だ寝ぼけているハッピーの尻尾を掴み、そのまま急いで訓練場に向かったのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その後、結局遅刻したナツはなのはに叱られた後、訓練に参加したのだった。
「はい、整れーつ」
「「「「はい!」」」」
「おう!」
「あいさー!」
なのはの掛け声とともに五人と二匹は集合する。。訓練の後なので、みんな息は上がって服も汚れていた。
正確に言えば、ナツ以外だが……
「だらしねぇなぁ、こんぐらいで息切れすんなよ。なぁハッピー」
「あい」
「うっさいわね! アンタの人間離れした体力と一緒にするんじゃないわよ!! ってかネコ! アンタはずっと飛んでただけじゃない!!」
ナツとハッピーの言葉にティアナが噛み付く。
「普段から鍛えてねぇからだろ?」
「だからアンタと一緒にするなって言ってるでしょバカナツ!」
「んだとコラ!! オレとスバル同じ扱いかよ!?」
「ちょっと! 二人ともそれどういうこと!?」
「つまりバカってことだよ」
「酷いよハッピーー!!」
ハッピーの容赦のない言葉に涙を流すスバル。それを苦笑いで見ているエリオとキャロ。そして、なのはが溜め息混じりに口を開く。
「ほらほら、ティアナもナツ君も仲が良いのはわかったから、こっちに集中して」
「「良くない!!(です)」」
と、ハモッて反論する二人。
「でぇきてぇる゙?」
ハッピーが巻き舌風に言うと…
「「できてない!!」」
またもハモるナツとティアナだった。
閑話休題
「じゃあ、本日の早朝訓練、ラスト1本! みんな、まだ頑張れる?」
「「「「はい!」」」」
「おうよ!」
「あい!」
「じゃあ、シュートイベーションやるよ。レイジングハート」
[All light. Axel Shooter]
なのはの相棒、『レイジングハート』の声とともに幾何学的な魔法陣が浮かび上がり、11個もの魔法弾がなのはの周りを飛び交い始めた。
「私の攻撃を5分間、被弾無しに回避しきるか、私にクリーンヒットを入れればクリア。誰か1人でも被弾したら最初からやり直しだよ。頑張っていこう!」
「「「「はい!」」」」
「やってやるぜ!」
「あいさー!」
早速五人と一匹は行動を開始する。
「このボロボロ状態でなのはさんの攻撃を5分間、ナツ以外で捌き切る自信ある?」
「ない!」
「同じくです」
「じゃ、何とか1発入れよう。ナツ、作戦通りにやりなさいよ!」
「わかってらぁ!」
「はい!」
「よぉし、行くよ! エリオ!」
「はい! スバルさん!」
「うん。準備はオッケーだね。それじゃ、レディー…ゴー!」
なのはが腕を下ろした瞬間、ナツたちに向かって魔力弾が勢いよく飛んで行く。
「全員、絶対回避! 2分以内に決めるわよ!」
「「「「おう!」」」」
着弾する瞬間、5人は四方八方に散らばった。なのはも気を引き締めていると、正面からは『
「アクセル!」
それに気付いたなのはは三人に向かって魔力弾を向かわせる。だが、それは当たること無く三人をすり抜けた。
「シルエット……やるね、ティアナ…っ!?」
なのはが感心の声を出したのもつかの間、その背後からはハッピーに抱えられたナツが迫っていたのだ。
「もらったぁぁあ!! 火竜の……」
「っ!」
「鉄拳!!」
ナツの炎を纏った拳が振り下ろされる。だがそれよりも一瞬早く、なのははバリアを展開し、それを防いだ。しかし、それで諦めるナツではない。
「まだまだぁ!! 火竜の…」
その瞬間、ナツの肘から炎が噴出す。
「
「(っ……なるほど、肘から噴出した炎をブースターにして威力を上げたんだね)」
ナツの威力が上がった拳に、徐々に押され始めるなのは。だが…
「ナツ! 左右から砲撃が来てるよ!」
「なにぃ!?」
そう、ナツに向かって先ほどの魔力弾が戻って来たのだ。
「避けろハッピー!!」
「あいさー!」
それに気付いたナツとハッピーは間一髪でそれを避け、なのはから離れる。が…
「げっ!? スバル! 危ねぇ!!」
「え!? うわぁぁぁあ! っと、とと……」
「わりぃスバル!!」
何と、近くでウィングロードを走っていたスバルとぶつかりそうになり、それを避けたスバルはを崩すが何とか持ちこたえる。そんなスバルに謝罪しながら、ナツとハッピーは追って来る魔力弾から逃げる。
「良い反応だけど、ナツ君は注意力が足りないかな…」
「ナツ! バカ、危ないでしょ!!」
「わりぃわりぃ」
「待ってなさい。今撃ち落とすから」
そう言ってティアナはアンカーガンを構え、ナツを追っている魔力弾に向かってトリガーを引く。だが……
「いっ!?」
弾は発射されず、パシュッと言う情けない音しかしなかった。
「おおぉい! ティアナ! 援護はどうしたー!?」
「オイラもう無理ー!!」
「この、肝心な時に!」
ティアナはすぐに別の弾を装填し、今度こそ魔力弾を放った。
「やっと来た! ハッピー、上昇だ!」
「あいさー!」
ティアナの援護が来たのを見計らって、ハッピーは大きく羽を広げて急上昇し、なのはの魔力弾を回避する。
すると、ナツの援護の他にもなのはに数発向かっていた。それをどこか嬉しそうな表情で見ていたなのはの後ろで、エリオとキャロが魔法陣を展開していた。
「……疾風の翼、若き槍騎士に、駆け抜ける力を」
[Exact Accelaretion]
キャロが詠唱を終えると、キャロのデバイス『ケリュケイオン』の宝玉が輝いた。
そしてキャロが腕を払うと、それと同時に前にいたエリオの魔法陣が光を放ち、エリオのデバイス『ストラーダ』の噴射口から勢いよく炎が出てくる。
「あの、かなり加速がついちゃうから、気を付けて!」
「大丈夫! スピードだけが取り柄だから。いくよ!! ストラーダ!!」
その言葉に応じてさらに炎が上がった。
その頃なのはは、ティアナの魔力弾を軽やかに避けながら状況を見ている。
「キュルー!」
上空からフリードの火球も襲ってきたが、なのははこれを焦らず冷静に避ける。すると、エリオたちの方に向かって接近し始めた。
「エリオ! 今!!」
「いっけぇぇぇぇええ!」
なのはに向かってストラーダを構え、一直線に飛んでいくエリオ。
「でやああぁぁぁぁぁぁ!!」
その瞬間、轟音が響き渡った。
「うあぁぁぁぁあ!」
爆煙の中から飛んでくるエリオ。
「エリオ!」
「外した!?」
全員が呆気に取られていると、爆煙の中からなのはが出てきた。
「惜しかったね、バリアを抜けるにはもう少しパワーが足りなかったかな」
なのはのその言葉を聞いたメンバーは表情を暗くした。
「………フフッ」
ティアナを除いて……
すると……
「まだ終わってねぇぞ!!」
『っ!!?』
上空からそんな声が響き、それに反応した全員はそちらに視線を向ける。そこには、ハッピーに抱えられたナツがいた。
「オレが決めてやらぁぁあ!!」
「行けぇぇ! ナツーー!!」
そう言ってハッピーは掴んでいたナツの服を放す。そうなると、ナツの身体は必然的に落下する。
「うおぉぉぉぉおお!!」
ナツは雄叫びを上げると、ナツの全身が炎に包まれる。それを見たなのはは目を見開いた。
「本当はこんな一か八かの作戦はしたくなかったけど……ナツ!決めなさい!」
「おおぉぉう!!」
ティアナの言葉を聞いたナツはもう一度雄叫びを上げる。
「魔力全開!! 火竜の……」
そして、最大の攻撃を放った。
「
その瞬間、ナツとなのはは激突し、先ほどよりも大きな轟音が響き渡る。
「「「「…………」」」」
全員が固唾を呑んで見守る中、爆煙の中から出てきたのは……
「……へへっ」
笑みを浮かべたナツだった。そして、その笑みを見た全員はすぐにその意味を理解した。
そして、次に爆煙から出てきたのはバリアジャケットが少しボロボロになったなのはだった。
『Mission Conplete』
「お見事。ミッションコンプリート」
それを聞いたメンバーの顔に歓喜の色が浮かぶ。
「じゃあ、今朝はここまで。一旦集合しよう」
「「「「はい!」」」」
「おう!」
なのはも地上に降りてきてバリアジャケットを解除する。
「みんなもチーム戦にだいぶ慣れてきたね。ナツ君も、初めての連携にしては良い感じだったよ」
「「「「ありがとうございます!」」」」
「当然だぜ!」
「あい!」
「ティアナの指揮も筋が通ってきたよ。指揮官訓練受けてみる?」
「い、いや、あの…戦闘訓練だけでいっぱいいっぱいです。最後のナツの攻撃も、半分は賭けのようなものでしたし……」
「あはは」
「キュル…キュクル……」
「ん? フリード、どうしたの?」
「んお?おい、何か焦げくせぇぞ」
「そういえば……」
「スバル! あんたのローラー!」
「へ?」
ティアナに指摘されてスバルの足元を見ると、そこには火花が出て、今にも壊れそうなローラーがあった。
「あぁ! うわっ、ヤバッ! あっちゃ~…しまった、無茶させちゃった~」
「オーバーヒートかな?」
「たぶん、ナツとぶつかりそうになったあの時じゃない?」
ハッピーの言葉に、なのはの攻撃を回避したナツがスバルとぶつかりそうになったシーンを思い出す。
「すまねぇスバル……」
「ううん、いいよ。後でメンテスタッフの人に見てもらうから」
謝罪するナツをスバルは笑顔で許す。
「ティアナのアンカーガンも結構厳しい?」
「あ、はい…。騙しだましです」
「みんな訓練にも慣れてきたし、そろそろ実戦用の新デバイスに切り替えかなぁ」
「新…」
「デバイス…?」
なのはの言葉にメンバー全員が首を傾げていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
訓練所からの帰り道、ナツたちは肩を並べて歩いていた。
「じゃあ、一旦寮でシャワーを使って、着替えてロビーに集まろうか」
「「「「はい!」」」」
「シャワーよりオレは腹減ったなぁ…」
「あい。まだ朝ごはん食べてないもんね」
ナツとハッピーがそんな会話をしていると、こちらに向かってきている一台の車に気がついた。そしてその車は全員の前に止まると、中からフェイトとはやてが顔を出した。
「フェイトさん、八神部隊長!」
「すご~い! これフェイト隊長の車だったんですか?」
「そうだよ。私情での移動手段なんだ」
「みんな、練習の方はどないや?」
「あ~、ははは…」
「頑張ってます」
「エリオ、キャロ、ごめんね。私は二人の隊長なのに、あんまり見てあげられなくて……」
「あ、いえ、そんな…」
「大丈夫です」
申し訳無さそうな顔をするフェイトにエリオとキャロは笑顔で返す。
「ナツ君はどうや? 機動六課での生活には慣れたか?」
「うーん……やっぱ仕事がねぇとイマイチ調子が狂うんだよなぁ」
「あい。でもこの世界ではクエストがないからしょうがないよナツ」
ナツとハッピーとはやてが会話していると、なのはが口を開いた。
「5人ともいい感じに慣れてきてるよ。いつ出動があっても大丈夫」
「そーかぁ、それは頼もしいなぁ」
「2人はどこかにお出かけ?」
「うん…。ちょっと6番ポートまで」
「教会本部でカリムと会談や。夕方には戻るよ」
「私は昼前に帰ってくるから、お昼はみんなで一緒に食べようか」
「「「「はい!」」」」
「ほんならなぁ」
はやてがそう言うと、二人を乗せた車はそのまま走り去り、新人四人は敬礼をしてそれを見送ったのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
フェイトとはやてと別れた後、シャワーを浴び終わったナツとエリオ、そしてハッピーとフリードはロビーで女性陣を待っていた。
「みんな、まだかなぁ……」
「キュルー」
「ったくよー…何でシャワー浴びるだけでこんな時間かかるんだよ」
「仕方ないよナツ。女の子には色々あるんだってルーシィが言ってたよ」
イラつくナツをなだめるハッピー。すると、エリオがナツに声をかける。
「あの、ナツさん」
「ん?何だよエリオ?」
「前から聞きたかったんですけど、
エリオから
「
「家…ですか?」
「おう。オレやハッピーを含めたギルドのみんなは家族みてーなもんだからな。中にはムカツク奴等が何人かいるけど……そいつらを含めて家族なんだ。だから、
「あい!」
「家族ですか……いいですね、そういうの……」
ナツの話を聞いたエリオの表情はどこか悲しげだった。
「エリオ?」
そんなエリオの表情を見て、首を傾げるナツ。すると、エリオが再び口を開く。
「聞いてくれますか? 僕の話……」
エリオのその言葉にナツとハッピーが頷くと、エリオは自分のことをつらつらと話し始めた。
自分は人口生命体であること。実の親だと信じていた人に裏切られ、捨てられたこと。その後も研究施設での非人道的な扱いを受け、一時期重度の人間不信に陥っていたことを……
「だから僕はナツさんが羨ましいです。僕は家族と言う言葉にまったく縁がありませんでしたから……」
そう言ってエリオは顔を伏せる。その表情は今にも泣きそうな悲しい表情だった。そんなエリオに対してナツは……
「なーに言ってんだよ?」
と言った。
「え?」
意外な言葉に呆気に取られるエリオ。そんなエリオを無視してナツは言葉を続ける。
「他のヤツと生まれ方が違うくれぇでメソメソ言ってんじゃねぇよ。お前は今、ここで、こうして生きている。それで良いじゃねぇか」
「っ……」
ナツの言葉にエリオの目が大きく見開かれる。
「それによ……ウチのギルドマスターのじっちゃんが言ってたんだ。『一人じゃ不安だからギルドがある、仲間がいる』ってな……
「っ!?」
「家族に縁がないなんて寂しいこと言うんじゃねぇよ。
「キュルー」
「もちろん、フリードもな」
「っ…ナツ…さん……」
ナツの言葉を聞いたエリオは目から大粒の涙を流す。
「泣くんじゃねぇよ。男だろ?」
「グス……はい…!」
そう言って涙を拭い、笑みを浮かべるエリオ。釣られてナツとハッピーも笑みを浮かべる。すると……
「ナツーーー!!」
「どわぁぁあ!!?」
「な、ナツさん!?」
「ナツ!?」
突然ナツの背後からスバルが勢い良く飛びついてきたのだ。その勢いにナツは耐え切れず、前に思いっきり倒れた。
「いてーー!! 何すんだスバル!!?」
起き上がったナツは当然スバルに怒鳴りかかるが、当の本人であるスバルは満面の笑みを浮かべている。
「ナツ! さっきの言葉、私感動したよ!!」
「はぁ!?」
スバルの言葉に呆気に取られるナツ。見ると、スバルの後ろにはそっぽを向いているティアナと目尻に涙を溜めたキャロの姿があった。
「お、お前ら今の話聞いてたのかよ!?」
「ぐ、偶然聞こえただけよ! でもまさか、アンタがあんなこと言うなんてね…………(ボソッ)ちょっと感動しちゃったじゃない」
最後の方のティアナの呟きは誰にも聞こえなかった。
「ってか、お前はいつまで引っ付いてんだよスバル!」
「いいじゃーん! 私たち家族なんだし、ナツもお姉ちゃんに甘えなよー♪」
「何でお前がオレの姉なんだよ!? どっちかっつーとお前はこの中で一番末っ子だろ!!」
「えぇ!? 私エリオとキャロよりも下なの!?」
「主に精神年齢的にな」
「間違ってはいないわね」
「あい」
「三人とも酷いよーーー!!」
この漫才のようなやり取りがしばらく続いたあと、一同はデバイスルームへと向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「うわぁ、これが…」
「私達の新デバイス…ですか?」
「そーでーす! 設計主任あたし! 協力、なのはさん、フェイトさん、レイジングハートさんとリィン曹長!」
「はぁ…」
楽しそうにそう説明するメガネをかけた女性は、メカニックのシャリオ・フィニーノこと、シャーリーである。
スバルとティアナの前にあるのは、青い宝石を模したペンダント上のデバイスと、白地に赤いXマークを円が囲み、中央に真っ直ぐ縦線が伸びているカード上のデバイス。
「ストラーダとケリュケイオンは変化無し…かな?」
「うん、そうなのかな?」
エリオとキャロの前にあるのは、紫色の腕時計と桃色の宝玉を模したブレスレット。
「違いまーす!」
エリオとキャロが首を傾げていると、急にリィンが出てきて叫んだ。
「変化無しは外見だけですよ!」
「リィンさん!」
「はいです! 二人はちゃんとしたデバイスの使用経験は無かったですから、感触に慣れてもらうために基礎フレームと最低限の機能だけで渡してたです!」
「あ、あれで最低限…?」
「ほんとに…?」
自分達がさっきまで使っていたデバイスが最低限の機能しか持っていなかったことにキャロとエリオは驚く。
「皆が使うことになる四機は、六課の前線メンバーとメカニックスタッフが、技術と経験の粋を集めて作った最新型!部隊の目的合わせて、そしてエリオやキャロ、スバルにティア、個性に合わせて作られた文句無しに最高の機体です!」
リィンがそう言うとデスクの上にある四機のデバイスがリィンの周りに集まり始める
「この子達はみんなまだ生まれたばかりですが、色んな人の思いや願いが込められてて、いっぱい時間をかけてやっと完成したです」
そしてリィンはティアナ達にそれぞれデバイスを渡す。
「だから唯の道具や武器と思わないで、大切に。だけど性能の限界までおもいっきり、全開まで使ってあげて欲しいです」
「うん、この子たちもね。きっとそれを望んでるから」
リィンとシャーリーが四人にデバイス説明をしているころ、ナツとハッピーは……
「何かすげぇ色々あるなー」
「あい。オイラたちの世界と違って凄い技術が進んでるんだね」
特に自分のデバイスを持たないため、説明はまったく聞かず、デバイスルームの機械を物珍しそうに見て回っていた。
因みに、以前ナツはシャーリーに「デバイスを持たない?」と言われたが、ナツは「そういうめんどくせーのはいらねぇ」と言って断っている。
「ゴメンゴメン、お待たせ~」
すると、部屋になのはが入って来た。
「なのはさ~ん!」
「ナイスタイミングです。丁度これから機能説明をしようかと」
「そう。もうすぐに使える状態なんだよね?」
「はい!」
なのはの問いにリインが元気よく答える。
「まず、その子たちみんな何段階かに分けて出力リミッターを掛けてるのね。一番最初の段階だと、そんなにびっくりするほどのパワーが出るわけじゃないからまずはそれで扱いを覚えて行って」
「で、各自が今の出力を扱いきれるようになったら、私やフェイト隊長、リインやシャーリーの判断で解除していくから……」
「ちょうど、一緒にレベルアップしていくような感じですね」
「あっ、出力リミッターって言うと、なのはさんたちにも掛かってますよね?」
「あぁ~私達はデバイスだけじゃなくて、本人にもだけどね」
「「「えっ!?」」」
「リミッターが、ですか?」
「「???」」
なのはの言葉を聞いて驚愕するメンバー。しかし、ナツとハッピーは話についていけず、首を傾げていた。
「能力限定って言ってね、うちの隊長と副隊長はみんなだよ。私とフェイト隊長、シグナム副隊長にヴィータ副隊長…」
「はやてちゃんもですね」
「うん」
「えっと……」
なのはが出力リミッターのかかっているメンバーの名前を挙げていく。ティアナはすぐにその理由を理解したのだが、その隣のスバル、エリオ、キャロの三人はまだ唸っていた。そこへシャーリーが追加の説明をする。
「ほら、部隊ごとに保有できる魔導師ランクの総計規模って決まってじゃない?」
「あ……え……そうですね………」
「一つの部隊で優秀な魔導師を多く保有したい場合は、そこに上手く収まるよう魔力の出力リミッターをかけるんですよ」
「まぁ、裏技っちゃあ裏技なんだけどね」
「うちの場合だと、はやて部隊長が4ランクダウンで、隊長達は大体2ランクダウンかな」
「4つ!? 八神部隊長ってSSランクのはずだから……」
「Aランクまで落としてるんですか」
「はやてちゃんも色々と苦労しているです」
リィンが少し暗い声で言う。
「私は元々S+だったから、2,5ランクダウンでAA。だからもうすぐ、一人でみんなの相手をするのは辛くなってくるかな」
「隊長さん達ははやてちゃんの、はやてちゃんは直接の上司のカリムさんか、部隊の監査役のクロノ提督の許可がないとリミッター解除が出来ないですし……許可は滅多なことでは出せないそうです」
「……そうだったんですね」
その話を聞いたメンバーは暗い表情をするが、ナツは相変わらず首を傾げていた。
「なぁ、つまりどういうことだ?」
ナツは近くに居たティアナに尋ねる。
「アンタは……! つまり、はやて部隊長、なのはさん、フェイト隊長、シグナム副隊長、ヴィータ副隊長の五人は本来の力を抑えてるってことよ」
「なにぃ!? ってことはアレか!? オレとシグナムが戦った時、アイツは手ぇ抜いて戦ってたのか!!?」
「えっと、手を抜いたわけじゃないと思うけど……」
なのはが弁明の言葉を口にするが、ナツには聞こえていなかった。
「チクショー! ふざけやがって!!」
そう言ってナツはデバイスルームを出ようとするが、ティアナに襟首を捕まれて止められる。
「待ちなさい! どこに行く気!?」
「決まってんだろ! もう一度シグナムと戦うんだよ! このままじゃオレの気が収まらねぇ!!」
「アンタの気なんて知らないわよ! ってか、止めなさい!!」
「はーなーせー!!」
ナツとティアナのこんなやり取りを他のみんなは呆れた表情で見ていた。すると……
ヴーーヴーーヴーー!
いきなり周りが赤く点滅し、警報が鳴り響いた。
「このアラートって……」
「一級警戒態勢!!?」
「グリフィスくん!!」
『はい! 教会本部から出動要請です!』
『なのは隊長、フェイト隊長、グリフィス君。こちらはやて!!』
デバイスルームにあるモニターでグリフィスとは反対側に聖王教会にいるはやてから連絡が入る。空間モニターでフェイトの顔も映し出された
『状況は?』
『教会調査団で追っていたレリックらしきものが見つかった。場所は、エイリム山岳丘陵地帯。対象は山岳リニアレールで移動中』
『移動中って…!』
「まさか…!」
「……そのまさかや。内部に進入したガジェットで、車両の制御が奪われてる。リニアレール車内のガジェットは最低でも30体。大型や飛行型の未確認タイプも出ているかもしれへん。いきなりハードな初出動や……なのはちゃん、フェイトちゃん、いけるか?」
『私はいつでも!』
「私も!」
隊長二人は頷く。
『スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、ナツ君、ハッピーちゃん、みんなもオッケーか?』
「「「「はい!」」」」
「よくわかんねーけど、仕事なんだろ? やってやるぜ!!」
「あいさー!!」
『よーし、良いお返事や、シフトはA-3。グリフィス君は隊舎での指揮。リィンは現場管制』
「『はい!!』」
『なのはちゃんとフェイトちゃんは現場指揮!!』
「うん!」
『ほんなら……機動六課フォワード部隊、出動!』
「「「「「はい!」」」」」
「おう!」
「あい!」
『……了解、みんなは先行して。私もすぐに追いかける!!』
『うん!』
この会話を最後に、フェイトとはやてからの通信が切れる。
「おし! 燃えてきたぁ!! で、どこに向かえば良いんだ?」
ナツのこの言葉で全員はズッコケそうになる。そしてなのはが説明する。
「とにかく私たちはヘリで現場に急行するの。みんなついてきて!」
「「「「はい!」」」」
なのはの指示にメンバーは頷き、なのはの後に続いていく。ナツとハッピーもそれに続くが…
「なぁハッピー、ヘリってなんだ?」
「さぁ?」
この二人の会話は誰にも届かなかった。
これが後々ナツにとって大変なことになるとも知らずに……
つづく