魔法少女リリカルなのはStrikerS~機動六課と妖精の尻尾~   作:ZEROⅡ

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ホテル・アグスタ

 

 

 

 

 

 

ミッドチルダ 首都南東地区

 

その上空を飛行する一台のヘリ。それに搭乗しているのはなのは、フェイト、はやての隊長陣。ナツ、グレイ、ウェンディの妖精の尻尾組。そしてスバル、ティアナ、エリオ、キャロの新人メンバー。さらにはシャマル、ザフィーラ、リィンが乗っていた。

 

因みにハッピーとシャルルは六課で留守番。

 

 

「ほんなら改めて、ここまでの流れと任務のおさらいや。これまで謎やったガジェットドローンの製作者及びレリックの収集者は現状ではこの男……」

 

 

モニターには、一人の男性の画像が映し出される。

 

 

「違法研究で広域指名手配されている次元犯罪者…ジェイル・スカリエッティの線を中心に捜査を進める」

 

 

「こっちの捜査は主に私が進めることになるけど、みんなも一応覚えておいてね」

 

 

「「「「はい」」」」

 

 

フェイトの言葉に新人メンバーは返事をする。

 

 

「で、今日これから向かう先はここ、ホテル・アグスタ」

 

 

「骨董美術品オークションの会場警備と人員警護。それが今日のお仕事ね」

 

 

「取引許可の出ているロストロギアがいくつも出品されるので、その反応をレリックと誤認したガジェットが出て来てしまう可能性が高い。とのことで、私たちが警備に呼ばれたです」

 

 

「この手の大型オークションだと密輸取引の隠れ蓑にもなったりするし、色々油断は禁物だよ」

 

 

「現場には昨夜からシグナム副隊長とヴィータ副隊長、他数名の隊員が張ってくれてる」

 

 

モニターには警備をしている副隊長二名が映し出される。

 

 

「私たちは建物の中の警備に回るから、前線は副隊長たちの指示に従ってね」

 

 

「「「「はい!」」」」

 

 

なのはの指示に返事をする四人。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のみなさんもそれでええか?」

 

 

はやての質問に全員(乗り物酔いでダウンしているナツ以外)が頷いた。

 

すると、キャロが手を上げて向かいに座っているシャマルに質問する。

 

 

「あの、シャマル先生。さっきから気になってたんですけど、その箱って……?」

 

 

キャロはシャマルの足元にある箱を指差す。

 

 

「ん? あぁ、これ? ふふっ……隊長達とグレイ君のお仕事着♪」

 

 

「は?」

 

 

シャマルは楽しそうに微笑みながら言うと、グレイが素っ頓狂な声を上げた。

 

 

「おい、んだそりゃ? オレは聞いてねぇぞ」

 

 

「ふふっ、向こうに着くまでの秘密よ♪」

 

 

そう言ってシャマルはグレイの質問には答えず、そのままホテル・アグスタに向かう形となった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

ホテル・アグスタ。

 

そこの受付では長蛇の列が出来ており、オークション関係者がIDカードを提示しながら受付を済ませていく。

 

 

「あっ……!」

 

 

すると、受付の男性が一枚のIDを見て小さく声を上げ、その人物達を見た。

 

 

「こんにちは、機動六課です」

 

 

それは綺麗なドレスと少しの化粧で美しく着飾ったなのは、フェイト、はやて。そして黒いタキシードに身を包んだグレイだった。

 

受付を済ませた四人はなのはとはやて、グレイとフェイトの二手に分かれ、オークション会場の警備の点検を始めた。

 

 

「ったく、何でオレまでこんな格好しなきゃいけねーんだ?」

 

 

「ふふ、似合ってるよグレイ」

 

 

自分の着ている服を嫌そうに見るグレイと素直に褒めるフェイト。

 

因みにこの役に何故グレイが選ばれたかと言うと……

 

 

ナツ→中で絶対暴れる。

 

ウェンディ→まだ早い。

 

 

と言う消去法である。まぁそれでも多少の不安があるのだが……

 

 

「グレイ、絶対服を脱いじゃダメだよ?」

 

 

フェイトはグレイの服を脱がないように注意する。

 

 

「わかってるよ。さすがにこんな場所で脱げるわけねぇだろ」

 

 

と、そう言うグレイの上半身は既に裸だった。

 

 

「言ってるそばから服!」

 

 

「おわっ! しまった!!」

 

 

グレイは慌てて脱ぎ捨てていた服を拾う。

 

 

「わりぃわりぃ、自分でも無意識のうちに脱いじまうんだよな」

 

 

「わ、わかったから早く服を着て……」

 

 

フェイトは顔を赤くしてグレイの上半身から目を逸らす。

 

 

「? なに赤くなってんだよ?」

 

 

「い、いいから早く!!」

 

 

「へいへい」

 

 

フェイトの必死の言葉にグレイは頷きながら服を着なおす。

 

 

「で、オークションが始まるまで、あとどれ位なんだ?」

 

 

「あ、ちょっと待って。バルディッシュ?」

 

 

[Three hours and twenty-seven minutes.(3時間27分です)]

 

 

グレイの質問にバルディッシュが答える。

 

 

「そうか。そんじゃあ次は向こうを見回ろうぜ」

 

 

「あ、うん」

 

 

そう言ってグレイが歩き出すと、フェイトはそれについていった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃、外回りをしているスバルとティアナは別々の場所を警備しながら念話で会話していた。

 

 

〈でも今日は八神部隊長の守護騎士団、全員集合か~〉

 

 

〈そうね……アンタは結構詳しいわよね?八神部隊長とか副隊長たちのこと〉

 

 

〈うん。父さんやギン姉から聞いたことくらいだけど、八神部隊長の使ってるデバイスが魔導書型で、それの名前が【夜天の書】っていうこと。副隊長達と、シャマル先生、ザフィーラは八神部隊長個人が保有してる特別戦力だってこと。で、それにリィン曹長を合わせて6人揃えば無敵の戦力ってこと〉

 

 

スバルはちょうど近くで魔方陣を展開して警戒しているリィンを見ながらティアナに自分の知っていることを伝える。

 

 

〈ま、八神部隊長達の詳しい出自とか能力の詳細は特秘事項だから、私も詳しくは知らないけど……〉

 

 

〈…レアスキル持ちの人はみんなそうよね……〉

 

 

〈ティア、何か気になるの?〉

 

 

ティアナの意味深な言葉にスバルは尋ねる。

 

 

〈別に……〉

 

 

〈そう? じゃあまた後でね〉

 

 

そう言ってスバルは念話を切った。途端に、ティアナは表情を少し険しくさせた。

 

 

「(六課の戦力は、無敵を通り越して明らかに異常だ。八神部隊長がどんな裏技を使ったのか知らないけど、隊長格全員がオーバーS…副隊長でもニアSランク……他の隊員達だって前線から管制官まで未来のエリート達ばっかり。あの歳でもうBランクを取ってるエリオとレアで強力な竜召喚士のキャロは2人ともフェイトさんの秘蔵っ子。危なっかしくはあっても潜在能力と可能性の塊で優しい家族のバックアップもあるスバル。そして、さらに異常なのがナツ達、妖精の尻尾(フェアリーテイル))」

 

 

ティアナは、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーを思い浮かべる。

 

 

「(バカだけど圧倒的な破壊力のある魔法を使うナツ。氷の魔法を自由自在に使って臨機応変に戦うグレイさん。二人のような攻撃力はないけど、治療魔法ならシャマルさんと同等の力を持つウェンディ……やっぱり、うちの部隊で凡人は私だけか……)」

 

 

ティアナの心の中で劣等感が生まれる。

 

 

「(だけど、そんなの関係ない! 私は、立ち止まるわけにはいかないんだ!)」

 

 

ティアナはそう決意すると、再び見回りを開始した。すると……

 

 

「ぐぉー…ぐがー…!!」

 

 

近くの草むらから盛大なイビキが聞こえてきた。

 

それに気がついたティアナは聞き覚えのあるイビキに「まさか…」と呟きながらガサガサと草を掻き分ける。するとそこに居たのは……

 

 

「やっぱり……」

 

 

ティアナの予想通りの人物、ナツが眠っていた。

 

 

「この……! 起きなさいバカナツ!!」

 

 

ガァン!

 

 

「いってぇぇえ!!!」

 

 

ナツの頭にゲンコツを落とし、叩き起こすティアナ。

 

 

「何すんだコラァーー!」

 

 

「うるさいわね! 大事な警備中になに居眠りしてるのアンタは!!?」

 

 

怒鳴るナツにティアナも怒鳴り返す。

 

 

「だってよぉ、なんも起きねぇからヒマなんだよ」

 

 

「何も起こさせないために私たちが来てるの! 本当にもう!!」

 

 

「……なぁティアナ」

 

 

「なによ!?」

 

 

「オメェ、何か悩んでねぇか?」

 

 

「…え?」

 

 

ナツの言葉に目を丸くするティアナ。

 

 

「な、なによいきなり?」

 

 

「いや、何となくだけどよ……悩みがあるなら言えよな。オレ達、仲間だろ?」

 

 

「っ……」

 

 

ナツのそんな言葉にティアナは目を見開くが、すぐに顔をしかめ…

 

 

「……ないわよ悩みなんて! 憶測で変なこと言わないで!!」

 

 

と、怒鳴ってナツに背を向けてそのまま歩き去ってしまった。ナツはそんなティアナの背中をジッと見送ることしか出来なかった。

 

 

「ティアナ……ん?」

 

 

すると、ナツは鼻をクンクンと動かす。

 

 

「なんだ……この匂い?」

 

 

ナツはそう呟くと、一目散にその場から駆け出した。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

少々時は遡り…ホテル・アグスタから数十キロ離れた森の中。

 

そこにはフード付きのコートを着た男性と少女の二人組が手を握り静かに立っていた。

 

 

「…あそこか。お前の探し物はここにないのだろ?何か気になるのか?」

 

 

「……うん」

 

 

男の問いに少女はうなずく。すると、少女の指に虫のような機械が止まり、何かを訴えかけているかのように身体を動かす。少女はそれを理解し、男に伝える。

 

 

「ドクターのオモチャが…近付いて来てる、って」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

ホテルの屋上で警備をするシャマル。すると、彼女の指に嵌められた指輪が光を発する。

 

 

「っ! クラールヴィントのセンサーに反応。シャーリー!」

 

 

『はい!……来た来た……来ましたよ!』

 

 

『ガジェットドローン、陸戦Ⅰ型。機影30……35……』

 

 

『陸戦Ⅲ型……2……3……4……』

 

 

その連絡を受けたシグナムは一緒に居たエリオとキャロとウェンディに指示を出す。

 

 

「エリオ、キャロ、ウェンディ、お前達は上へあがれ。ティアナの指示で、ホテル前の防衛ラインを設置する」

 

 

「「「はい!」」」

 

 

「ザフィーラは私と迎撃に出るぞ」

 

 

「心得た」

 

 

ザフィーラがいきなり声を発した事に3人は驚く。

 

 

「ザフィーラって、しゃべれたの?」

 

 

「びっくり…」

 

 

「本当……」

 

 

「守りの要はお前たちだ。頼むぞ…」

 

 

「う、うん!」

 

 

「がんばる!」

 

 

「私も頑張ります!」

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「前線各員へ。状況は広域防御戦です。ロングアーチ1の総合回線と合わせて私、シャマルが現場指揮を行います!」

 

 

「スターズ3、了解!」

 

 

「ライトニングF、了解!」

 

 

「スターズ3、了解!」

 

 

各々が外へと向かっていく中、最初から外にいたティアナは魔力によるアンカーを使いシャマルの近くまで行って、前線のモニターをもらって戦闘に備える。

 

 

「シャマル先生! 私も状況をみたいんです! 前線のモニター、貰えませんか?」

 

 

『了解。クロスミラージュに直結するわ。クラールヴィント、お願いね』

 

 

[Ja.]

 

 

クラールヴィントにキスを落とすと、シャマルはバリアジャケットを纏い、シグナムとヴィータに念話を送る。

 

 

「おう、スターズ2とライトニング2…出るぞ!!」

 

 

シグナムとヴィータはバリアジャケットを身に纏い、ガジェットの迎撃へと向かった。

 

 

 

その様子を、スバルとティアナは空間モニターで見ていた。

 

 

ヴィータの鉄球が正確にガジェットを貫き、ザフィーラの堅い守りと鋭い攻撃で敵の行く手を阻み、シグナムの力強い一閃でねじ伏せていく。

 

 

「副隊長たちとザフィーラ、すごーい!」

 

 

スバルは素直に感心するが、ティアナだけが浮かない表情をしていた。

 

 

「これで、能力リミッター付き……!」

 

 

副隊長たちと自分との力の差を見せ付けられたティアナは拳を強く握った。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃、先ほどからこの戦闘を観戦している先ほどの男性と少女の二人組、ゼストとルーテシア達の前に空間モニターが出現する。相手はガジェット関連の事件を起こしている張本人……ジェイル・スカリエッティだった。

 

 

 

『ごきげんよう。騎士ゼスト、ルーテシア』

 

 

「…ごきげんよう」

 

 

「…何の用だ?」

 

 

ルーテシアは相も変わらず無表情、ゼストはあからさまに嫌な顔をしている。

 

 

『冷たいね。近くで状況を見ているんだろ? あのホテルにレリックはなさそうだったが、実験材料として興味深い骨董があるだ。少し強力をしてはくれないかね? 君達なら、実に造作も無いはずなんだが…』

 

 

「断る。レリックが絡まぬ限り、互いに不可侵を守ると決めたはずだ」

 

 

ゼストはきっぱりと断るが、スカリエッティは交渉相手をルーテシアに変えた。

 

 

『……ルーテシアはどうだい? 頼まれてくれないかな?』

 

 

「……いいよ」

 

 

『優しいなぁ…、ありがとう。今度ぜひ、お茶とお菓子を奢らせてくれ。君のデバイス【アスクレピオス】に私が欲しい物のデータを送ったよ』

 

 

彼女の両手に嵌められている紫の宝玉が付いたグローブを一瞥して、再び彼女に眼を合わせる。

 

 

「……うん。じゃあ、ごきげんよう、ドクター」

 

 

『あぁ、ごきげんよう。吉報を待っているよ』

 

 

モニターが消えて通信が終わると、ルーテシアは準備をするためにローブを脱ぎ、ゼストに渡す。

 

 

「いいのか?」

 

 

それを受け取りながらゼストは尋ねる。

 

 

「うん。ゼストやアギトはドクターを嫌うけど、私はドクターの事そんなに嫌いじゃないから」

 

 

「そうか……」

 

 

 

会話が終わり、彼女は魔法を行使し始める。デバイスの宝玉が輝き、足元には魔法陣が展開する。

 

 

「我は…乞う」

 

 

そして、詠唱が始まる。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「遠隔召喚、来ます!」

 

 

キャロが何かに気付き声を上げた瞬間、浮かび上がった4つの魔法陣から数体のガジェットが出現する。

 

 

「あ、あれって召喚魔法陣!?」

 

 

「召喚魔法ってこんな事も出来るの!?」

 

 

「優れた召喚士は転送魔法のエキスパートでもあるんです!」

 

 

「何でもいいわ。迎撃行くわよ!」

 

 

「「「おう!」」」

 

 

ティアナの指示に三人が頷くと、ウェンディがキョロキョロと辺りを見渡したあと、疑問の言葉を口にする。

 

 

「あの…ナツさんはどこに行ったんですか?」

 

 

「「「「あっ……!」」」」

 

 

その一言にナツが居ないことに気がついたが、ガジェットはそんなことお構い無しに襲ってくるので、一同は迎撃を開始する。

 

 

「ナツはもうほっといていいわ! ウェンディも迎撃に集中して!」

 

 

「はい!」

 

 

ティアナの指示にウェンディは頷くと、腕を振り上げる。

 

 

「天を駆ける俊足なる風を! バーニア!!」

 

 

すると、近くにいたスバルとエリオの身体が光に包まれる。その瞬間、二人の走る速度が上がった。

 

 

「何コレ!?」

 

 

「スピード強化の魔法!!?」

 

 

二人は驚きながらもそのスピードを活かし、次々とガジェットを破壊する。そしてウェンディは次の呪文を唱える。

 

 

「天空を切り裂く剛腕なる力を! アームズ!!」

 

 

すると今度はティアナの身体が光に包まれる。

 

 

「これは……!」

 

 

「攻撃力強化の魔法です! ティアナさん!!」

 

 

「えぇ!!」

 

 

ウェンディの強化魔法を受けたティアナはクロスミラージュを構えて引き金を引くと、かなりの威力の魔力弾が発射され、ガジェットを破壊した。それを見たティアナは目を見開く。

 

 

「(凄い……! いつもと同じ感覚で撃ったのに、威力が段違いに上がってる! これが天空魔法……)」

 

 

ふとティアナがウェンディの方を見ると、数体のガジェットが熱線でウェンディを狙っていた。

 

 

「っ、しまった! ウェンディが!!」

 

 

ティアナはすぐにクロスミラージュを構えるが、間に合わない。

 

 

「私なら大丈夫です! バーニア!!」

 

 

ウェンディはスピード強化魔法を自分にかけ、熱線を全てかわした。しかも、ウェンディの行動はそれだけでは終わらなかった。

 

 

「天竜の……!」

 

 

ウェンディは大きく息を吸い込み……

 

 

 

「咆哮!!!」

 

 

 

口から竜巻のような渦を放ち、数体のガジェットを破壊した。

 

 

「ウェンディやるぅ!」

 

 

「ウェンディちゃん…凄い!」

 

 

「さすがナツさんと同じ、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)です!」

 

 

上からスバル、キャロ、エリオがウェンディに賞賛の言葉を口にするが、ティアナだけは違った。

 

 

「(何よ……サポートしか出来ないって言ってたクセに、こんな力もあるんじゃない……!)」

 

 

ティアナは劣等感を感じ、クロスミラージュを強く握る。

 

 

「(今までと同じだ…証明すればいい。自分の能力と勇気を証明する……アタシはそれでいつだってやってきた!)」

 

 

心の中でそう決意したティアナは再びクロスミラージュを構えるのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方その頃、ホテル・アグスタの地下駐車場では……

 

 

「うぐっ……!」

 

 

一つの黒い影が警備員を気絶させ、トラックの積荷の一つを持ち去ろうとしていた。すると……

 

 

「待てよ」

 

 

突如声が響き、影がそちらを見ると、そこにはナツが立っていた。

 

 

「明らかに人間じゃねぇ匂いがしたから来てみたら、大当たりだぜ!」

 

 

そう言ってナツは両手に炎を纏わせ、影に向かって突撃する。

 

 

「正体見せろやぁ!!」

 

 

ナツが拳を振るうと、影はそれを軽々と避け、代わりに後ろにあったトラックに直撃した。

 

 

「ちっ……すばしっこいヤローだな」

 

 

「…………」

 

 

ナツと影は向き合い、一触即発の雰囲気がその場を支配する。すると、突然影の周りに紫色の魔法陣が出現する。

 

 

「なんだ!?」

 

 

ナツが戸惑っていると、魔法陣からガジェットの大群が出現した。

 

 

「ガジェット! ってことは、やっぱり敵かテメェ!!」

 

 

ナツがそう叫ぶ。だが、影はそんなナツを無視し、ガジェットに後は任せたといったようにその場から去って行った。

 

 

「あっ! 待ちやがれ!!」

 

 

当然ナツは追おうとするが、大量のガジェットに行く手を阻まれる。

 

 

「チィッ! 邪魔すんじゃねぇぇえ!!」

 

 

ナツはガジェットを破壊しながら影を追うが、ガジェットの数が多いため、まったく追いつけず、結局見失ってしまった。

 

 

「くっそぉお!!」

 

 

ナツは逃げられた怒りをぶつけるかのようにガジェットを破壊していく。

 

 

「テメェら全員、かかってこいやぁぁああ!!!」

 

 

ナツの怒りに満ちた叫び声が地下駐車場に響いたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃、ホテルの前でガジェットを迎撃していたティアナはガジェットに向かって魔力弾を放つが、ガジェットはそれを悠々と避ける。

 

 

「くっ……!」

 

 

ティアナが毒づいていると、奥のガジェットがティアナに向かって小型ミサイルを発射する。ティアナは冷静にそれを魔力弾で相殺する。

 

 

「ティアさん!!」

 

 

「っ!!」

 

 

キャロの叫びを聞いて振り返ると、数体のガジェットがティアナに向かって熱線を放とうとしていた。するとその時……

 

 

 

「アイスメイク…〝槍騎兵(ランス)〟!!!」

 

 

 

どこからか複数の氷の槍が飛んできて、数体のガジェットを破壊した。

 

 

「よお、間に合ったか」

 

 

「グレイさん! どうしてここに!?」

 

 

見ると、そこにはホテル内を警備していたはずのグレイが立っていた。

 

 

「やっぱオレは中で警備するより、こっちの方が性に合ってるからな。安心しろ、フェイトに許可はもらってある」

 

 

そう言うと、グレイは周りのガジェットを破壊し始める。すると、ティアナ達FWメンバーにシャマルからの念話が入る。

 

 

〈防衛ライン! もう少し持ちこたえてね! ヴィータ副隊長が、すぐに戻ってくるから!〉

 

 

それを聞いたティアナの表情が険しくなる。

 

 

「守ってばっかじゃ行き詰まります! ちゃんと全部倒します!」

 

 

〈ちょっと…ティアナ大丈夫? 無茶はしないで!〉

 

 

「大丈夫です! 毎日朝晩、練習してきてんですから!」

 

 

そう言いながら、クロスミラージュを構え、エリオとキャロとウェンディに顔を向けた。

 

 

「エリオ、センターに下がって! 私とスバルのツートップでいく!」

 

 

「は、はい!」

 

 

言われた通り、エリオ達は下がった。

 

 

「スバル! クロスシフトA、いくわよ!」

 

 

「おお!」

 

 

スバルはウイングロードを使って、ガジェットの注意を引き付ける。その隙にティアナは、カートリッジを四発もロードした。

 

 

「(証明するんだ。特別な才能や凄い魔力がなくたって…どんなに危険な戦いだって……)」

 

 

ティアナの周りに、複数のオレンジ色の魔力弾が現れる。

 

 

「私は…ランスターの弾丸は、ちゃんと敵を撃ち抜けるんだって!」

 

 

クロスミラージュを構える。

 

 

「おいおい、何て魔力だ……大丈夫なのかよ?」

 

 

ティアナの魔力にグレイは小さく呟く。

 

 

〈ティアナ! 四発ロードなんて無茶だよ! それじゃティアナもクロスミラージュも……!〉

 

 

「撃てます!!」

 

 

[Yes]

 

 

ティアナとクロスミラージュはそう答える。

 

 

「クロスファイヤー……シュート!!!」

 

 

オレンジ色の魔力弾が、一斉にガジェット達に迫る。次々とガジェット達に魔力弾が当たり、倒していく。だが……

 

 

「え? あっ……!!」

 

 

何と、その魔力弾が一発反れて、スバルに迫っていた。

 

 

「っ!!」

 

 

それを見たスバルは大きく目を見開いたのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃、地下駐車場では……

 

 

「ハァ、ハァ……ったく、手間ぁとらせやがって……」

 

 

そう言うナツの周りには大量のガジェットの残骸が転がっていた。

 

 

「……ん?」

 

 

何かを感じ取ったナツは鼻をクンクンと動かす。すると、ナツの顔色が変わる。

 

 

「こ、この匂いは!!?」

 

 

そう言うと、ナツは出口に向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

ティアナの放った魔力弾がスバルに当たるかと思われたその時……

 

 

 

スパァァン!

 

 

 

「……え?」

 

 

気がつくと、魔力弾は真っ二つに切り裂かれ、消滅していた。

 

 

「大丈夫だったか?」

 

 

するとそこには鎧を身に纏い、剣を持った一人の女性がウィングロードに立っていた。どうやらこの女性がスバルに当たりそうな魔力弾を切り裂いたらしい。

 

 

「あ、貴女は……?」

 

 

スバルが尋ねると、女性は微笑みながら答える。

 

 

「私か? 私は……」

 

 

その女性は綺麗な緋色の髪をなびかせながら振り返った。

 

 

 

「エルザ・スカーレット。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士だ」

 

 

 

そう、その女性はナツ達と同じ妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士、『エルザ・スカーレット』だった。

 

 

「ぐ、グレイさん! アレって……!」

 

 

「あぁ、間違いねぇ! エルザだ!」

 

 

グレイとウェンディは目を見開いて驚愕する。

 

 

「あぁぁぁぁあ!! やっぱりエルザだ!!」

 

 

すると、ナツの絶叫に似た声が響き渡る。

 

 

「ナツさん!」

 

 

「ナツ! テメェ今までどこにいやがった!?」

 

 

「んなことより、何でエルザが此処に居るんだよ!?」

 

 

「オレが知るか!!」

 

 

「ん? そこに居るのはナツとグレイか!?」

 

 

二人の口論を聞いたエルザがナツとグレイに気がつく。するとナツとグレイはビクッと身体を震わせる。

 

 

「「よ、よぉ…エルザ……」」

 

 

「エルザさん!」

 

 

「ウェンディも一緒か……よかった、無事だったのだな」

 

 

エルザが安心したように息を吐くと、スバルのもとにヴィータが駆けつける。

 

 

「スバル! 無事だったか!?」

 

 

「は、はい……」

 

 

「ティアナ! この馬鹿! 無茶やった上に味方撃ってどうすんだ!!?」

 

 

怒鳴られたティアナは、魔法陣を展開させたまま呆然としてる。

 

 

「あの…ヴィータ副隊長。今のも、その…コンビネーションの内で……」

 

 

「ふざけろタコ! 直撃コースだよ、今のは!!」

 

 

「違うんです! 今のは、私が悪いんです!」

 

 

「うるせぇバカ共! もういい、二人まとめてすっこんでろ!!」

 

 

ヴィータは怒鳴り終わると、視線をエルザに移す。

 

 

「アンタ、うちの部下を助けてくれてありがとな」

 

 

「いや、気にするな。それより今は、この状況をどうするかが問題のようだな」

 

 

気がつくと、エルザ達は大量のガジェットに囲まれていた。すると、エルザは一歩前へ出る。

 

 

「お前たちは下がっていろ。あとは私がやろう」

 

 

「なっ!? そんなことさせられるわけねぇだろ! アタシも一緒に……っ!」

 

 

ヴィータはそこから先の言葉を言うことは出来なかった。何故なら、グレイの氷で出来た鎖を身体に巻きつけられたからである。

 

 

「グレイ! テメェ何しやがる!」

 

 

怒鳴るヴィータだが、ナツとグレイは必死の形相で怒鳴り返す。

 

 

「バカヤロー! 巻き込まれても知らねぇぞ!!」

 

 

「いいからこっちに来い!!」

 

 

「うわぁぁあ!!」

 

 

グレイは思いっきり鎖を引っ張り、ヴィータを引き寄せた。

 

 

「スバルも速く戻って来い!!」

 

 

「あ、う…うん」

 

 

ナツに言われ、スバルはナツ達のもとに戻って行く。

 

 

「お前ら、何考えてんだ!?」

 

 

「いいから黙って見てろ」

 

 

「これからスゲェもんが見れるぜ」

 

 

『???』

 

 

ナツとグレイの言葉に一同は首を傾げた。

 

 

一方エルザは大量のガジェットに囲まれる中、一本の剣を構える。

 

 

「あんな剣一本で…無茶ですよ!」

 

 

キャロはエルザの身を案じるが、次の瞬間……

 

 

「ハァァァア!!!」

 

 

ズギャギャギャギャギャ!!!

 

 

『っ!!?』

 

 

「は、速い!」

 

 

軽やかな動きでエルザは次々とガジェットを切り裂いていく。その動きはまるで宙を舞う妖精のようだった。

 

すると、一体のガジェットがエルザに向かって熱線を放とうとする。

 

 

「あ、危ない!」

 

 

エリオの声が響く。すると、エルザが持っていた剣が消え、代わりに長い槍を持っていた。

 

 

「ふん!」

 

 

そのまま槍を振るい、熱線を放とうとしたガジェットを破壊した。

 

 

「剣が槍になった!?」

 

 

スバルの驚愕の声が響いている間に、エルザの武器がまた変わり、今度は斧でガジェットを切り裂いていた。

 

 

「今度は斧!?」

 

 

ヴィータが驚愕していると、グレイが口を開く。

 

 

「相変わらずスゲェ速さの換装だな」

 

 

「換装?」

 

 

聞き慣れない単語にヴィータは首を傾げる。そしてその問いにはウェンディが答えた。

 

 

「換装と言うのは、魔法空間にストックされている武器を呼び出して持ち替えることを言うんです」

 

 

ウェンディの説明に全員が感心していると、ナツがニヤリと笑う。

 

 

「エルザのスゲェところはこっからだぞ」

 

 

ナツの意味深な言葉に疑問を持ちながらも一同はエルザの方に視線を戻す。

 

 

「まだこんなにいるのか。面倒だ、一掃する」

 

 

そう言うと、エルザが纏っていた鎧がはがれ始める。

 

 

「鎧がはがれて行く!?」

 

 

「オレ達の世界の魔法剣士は武器を換装しながら戦う」

 

 

「だけどエルザさんは、自分の能力を高める『魔法の鎧』にも換装出来るんです」

 

 

「それがエルザの魔法……『騎士(ザ・ナイト)』だ」

 

 

上からグレイ、ウェンディ、ナツの順番で説明していく。その間に、エルザの鎧は羽のついた天使のようなに鎧……『天輪の鎧』に変わっていた。

 

 

「舞え、剣たちよ……」

 

 

エルザがそう言うと、彼女の周りに無数の剣が飛び交い始める。

 

 

循環の剣(サークル・ソード)!!!」

 

 

この言葉と同時に無数の剣が飛んで行き、その一本一本がガジェットを確実に破壊していく。

 

 

『す、凄い……』

 

 

六課メンバーが口を揃えて感心の声を漏らす……

 

 

「アレが妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の女……」

 

 

「〝妖精女王《ティターニア》〟のエルザの力だ!!」

 

 

ナツとグレイがそう言い終わる頃にはガジェットは全滅しており、そこにはエルザしか立っていなかったのだった。

 

 

 

 

 

つづく

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