魔法少女リリカルなのはStrikerS~機動六課と妖精の尻尾~   作:ZEROⅡ

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すれ違う想いと心の闇

 

 

 

 

 

 

ホテル・アグスタでの戦闘が終わり、現場検証も終わって六課に戻ってきた妖精の尻尾一同ははやてのもとを訪れていた。

 

 

「話は全て彼らから聞かせてもらった。仲間が世話になったことを心から感謝する」

 

 

エルザがはやてに頭を下げると、はやては慌てたように口を開く。

 

 

「そんな、頭上げてください……私らかてナツ君達には助けてもらってるんやし……」

 

 

「しかし、ウェンディはともかく、ナツやグレイが迷惑をかけていないか心配でな……」

 

 

エルザの言葉にはやては少し考え込み……

 

 

「まぁ…二人がつまらんことで喧嘩するのはちょっと困りものやけど……」

 

 

「なに?」

 

 

はやての言葉を聞いて、エルザはギロリとナツとグレイを睨む。すると二人はビクッと肩を震わせる。

 

 

「また喧嘩していたのかお前たちは?」

 

 

「い、いや……オレ達はずっと仲良くやってたぜ……なぁナツ?」

 

 

「あい」

 

 

「ナツ君がハッピーちゃんみたいになった!!?」

 

 

怯えすぎて口調がハッピーのようになっているナツにツッコミを入れるはやて。

 

 

「すまない。この二人には後で私からきつく言っておこう」

 

 

「は、はぁ……」

 

 

三人の上下関係にはやてが呆然としていると、はやてのもとにハッピーが飛んできて彼女に説明する。

 

 

「ナツもグレイもエルザが怖いんだよ」

 

 

「いや、それは見たらわかるけど…なんでなん?」

 

 

「ナツは昔エルザに戦いを挑んでボコボコにされて……」

 

 

「嘘ぉ!? あのナツ君が!?」

 

 

ナツの力を何度も目の当たりにしているはやてはナツが負かされたことが信じられなかった。

 

 

「グレイは裸で歩いているところを見つかってボコボコに」

 

 

「……あぁ…」

 

 

何故かそれは納得出来たはやてであった。

 

 

「そういや、エルザはどうやってこの世界に来たんだ?」

 

 

「……わからん」

 

 

エルザから出てきたのは意外な回答だった。

 

 

「私は消えたお前達を探して様々な街や村で聞き込みをしていたのだが、突然身体が光に包まれてな。気がついたらホテル周辺の森の中に立っていたんだ」

 

 

「オレ達と似たような状況ってことか……」

 

 

エルザの言葉に不穏な空気が部屋を支配する。すると、そんな空気を変えようとウェンディが口を開いた。

 

 

「あの、はやてさん。一つ聞きたいことがあるのですが」

 

 

「ん? なんや、ウェンディちゃん」

 

 

ウェンディは可愛らしく手を上げてをはやてに質問する。

 

 

「ティアナさんのことなんですけど、あの時のティアナさん…何だか様子がおかしかったような……」

 

 

それを聞いたグレイとナツも口を開いた。

 

 

「そいつはオレも気になっていた。普段のティアナなら、あんなミスはしねぇはずだからな」

 

 

「あいつ、何かあったのか?」

 

 

「…………」

 

 

しばらくの沈黙の後、はやては空間モニターで一人の男性の画像を出す。

 

 

「彼はティアナの兄、ティーダ・ランスター。当時の階級は一等空尉で執務官志望の魔導師。所属は首都航空隊で……享年21歳」

 

 

「享年ってことは…死んだのか?」

 

 

ナツの言葉にはやては頷きながら話す。

 

 

「ティーダ一等空尉は逃走中の違法魔導師に手傷を負わせたんやけど、取り逃がしてもうたんや。任務自体は地上の陸士部隊に協力を仰いだおかげで解決したんやけど…その件について、心無い上司が最低なコメントをして、一時期問題になったんや」

 

 

「コメント?」

 

 

エルザの疑問の言葉のあと、はやてはゆっくりと口を開いた。

 

 

「『犯人を追いつめておきながら取り逃がすなんて首都航空隊の魔導師としてあるまじき失態だ。たとえ死んでも取り押さえられるべきだった』とか……さらに直球に『任務を失敗する役立たずは……』とかな」

 

 

それを聞いたナツ達は憤慨する。

 

 

「酷い……!」

 

 

「何だよそいつ!! 許せねぇ!!!」

 

 

「あぁ、気に入らねぇな……必死で仕事をこなそうとしたヤツに、労いの言葉もねえのかよ!!!」

 

 

「オイラも許せないよ!」

 

 

「最低ね……」

 

 

興奮するナツ達をエルザが取り締まる。

 

 

「落ち着け。もはや過ぎたことだ。今更言ったところでどうにもならん」

 

 

「……チィッ!」

 

 

ナツは舌打ちをすると、そのまま部隊長室を出ようとする。

 

 

「ナツ、どこに行く?」

 

 

「散歩だよ!!」

 

 

「待ってよナツー!」

 

 

ナツは怒鳴りながら部屋を出て行き、ハッピーもそれを追いかけていった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

部隊長室を飛び出したナツとハッピーは隊舎近くの森の中を歩いていた。

 

 

「ああークソ! 何かムカつく! モヤモヤすっぞぉ!!」

 

 

「落ち着きなよナツー。オイラもあの話にはムカついたけど、エルザの言う通り今更だよ」

 

 

「わかってんだよそんな事は! けど、オレの心の奥で何かが引っ掛かってんだ。それが何かわかんねぇからモヤモヤすんだよ!!」

 

 

「ナツ……ん?」

 

 

ナツを心配そうに見るハッピーすると、何かに気がついた。

 

 

「ナツ! アレ!」

 

 

「んだよ?」

 

 

ハッピーが指差す方向を見てみると、そこに居たのは一人で訓練しているティアナだった。

 

 

「おーいティアナ!」

 

 

「っ!」

 

 

名を呼ばれて振り向くティアナ。そしてナツの顔を見ると、溜め息混じりに言った。

 

 

「なんだナツか…」

 

 

「なんだとはなんだよ?」

 

 

「うるさいわね。私は今自主練中なの。邪魔しないで」

 

 

そう言うと、ティアナは再び自主練を再開する。

 

 

「(……汗の量が尋常じゃねえ……)お前まさか、帰ってきてからずっとやってたのか?」

 

 

「…………」

 

 

ナツの問いには答えず、黙々と練習するティアナ。

 

 

「何やってんだよ!? 身体壊すぞお前!」

 

 

「そうだよティアナ、身体壊したら元も子もないよ」

 

 

「うるさいって言ってるでしょ!!!」

 

 

ティアナの叫びが森に木霊する。

 

 

「私みたいな凡人がなのはさん達のような天才に追いつくにはこうするしかないのよ!!」

 

 

「それで身体壊したら意味ねえって言ってんだよ!」

 

 

「アンタに凡人である私の気持ちがわかるの!!?」

 

 

「わかんねえよ! オレはティアナじゃねえからな!!」

 

 

「だったら口出ししないで!!」

 

 

「うるせえ!! さっきから凡人だの天才だの、くだらねえこと言ってんじゃねえぞ!!!」

 

 

「っ…くだらないですって!!?」

 

 

「あぁくだらねえなっ!! 天才がそんなに偉ぇのか!? 凡人がそんなにダメなのか!? 違うだろ!! たった一回のミスで自信喪失してんじゃねえ!!!」

 

 

「っ……!」

 

 

ナツとティアナの激しい口論の末、ナツの言葉にティアナは言葉を詰まらせ、ギリッと悔しそうに歯を食い縛る。

 

 

「うるさいバカナツ!!! 私のやり方に口出ししないで!! もうほっといてよ!!!!」

 

 

ティアナは悲痛な叫び声を上げる。それを聞いたナツはティアナに背を向ける。

 

 

「……そうかよ。だったらもう勝手にしろ。けどな、これだけは言っとくぞ」

 

 

ナツはティアナに背を向けながらこう言い放つ。

 

 

「テメェみたいに周りが見えてねえヤツは、一生強くなんてなれねぇんだよ」

 

 

「っ…!!」

 

 

ナツの言葉にティアナは目を見開く。そしてナツはそのまま歩き去って行った。

 

 

「……何よ、バカナツのクセに……!」

 

 

「ティアナ~」

 

 

「っ…」

 

 

声がした方を見ると、そこにがまだハッピーがいた。

 

 

「アンタまだ居たの? 早くナツのところに行きなさいよ」

 

 

「ティアナ、ナツの言ったこと、わかってあげて」

 

 

ハッピーの言葉にティアナは顔をしかめる。

 

 

「……何よ、アンタも私のやってることは無駄だって言いたいの?」

 

 

ティアナは冷たく言い放つが、ハッピーは首を横に振る。

 

 

「そうじゃないよ。オイラ気付いたんだ。ナツとティアナは似た者同士なんだって」

 

 

「似た者同士? 私とナツが?」

 

 

ハッピーの言葉にティアナは首を傾げる。

 

 

「うん。さっきね、はやてから聞いたんだ。ティアナのお兄さんのこと……」

 

 

「っ……」

 

 

それを聞いたティアナは顔をしかめるが、ハッピーは構わず続ける。

 

 

「ティアナはたった一人の家族だったお兄さんの夢を引き継ごうと頑張ってる。ナツもね、イグニールに会うために頑張ってるんだ」

 

 

「イグニールって、ナツを育てたって言うドラゴン?」

 

 

「うん。ナツはね、一人前の魔導士になればイグニールに会えると思って頑張ってるんだ」

 

 

「何よそれ? 私と全然違うじゃない。どこが似た者同士なのよ?」

 

 

「確かに目的は全然違うよ。だけど、家族のために強くなろうとしているのは一緒だよ」

 

 

「っ!!」

 

 

ハッピーの言葉にティアナは目を見開く。

 

 

「だからナツは無茶をして身体を壊しそうになってるティアナを放っておけないんだと思うよ。本人は無自覚みたいだけどね」

 

 

「…………」

 

 

笑顔でそう言うハッピーにティアナは何も言えず、黙ってしまう。

 

 

「だからティアナもナツが言ったことを考えてあげて。それじゃあね」

 

 

そう言うとハッピーは羽を広げてナツのもとへと飛んで行った。

 

 

「私は……私は………!」

 

 

その場には一人呟くティアナだけが取り残されたのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その日の深夜……グレイは一人、隊舎の廊下を歩いていた。もちろん上半身裸の状態で。

 

 

「なんか目が冴えちまったなぁ……夜風にでもあたるか」

 

 

そう言ってグレイは隊舎のバルコニーに向かって歩みを進める。

 

 

「ん?」

 

 

その途中で、グレイは未だに電気がついている仕事部屋を発見する。

 

 

「こんな時間にまだ働いてるヤツがいんのか?」

 

 

深夜になり、既に日付も変わっている時間帯。そんな時間になってもまだ働いている人がいるということに、グレイは少なからず驚く。

 

 

「一体誰だ?」

 

 

興味本位で仕事部屋を覗き込むグレイ。するとそこには……

 

 

「……なのは?」

 

 

「え? あ、グレイさん!」

 

 

スターズの隊長であるなのはの姿があった。

 

 

「どうしたんですか? こんな時間に?」

 

 

「眠れなくてな、夜風に当たろうと思ってたんだ。そう言うお前こそ、こんな時間にまで仕事か?」

 

 

「はい、FWのみんなの訓練メニューを組んでるんです。あと、みんなの陣形のチェックとか……」

 

 

「……まさかとは思うが、それを毎日してんじゃねぇだろうな?」

 

 

「え? 毎日こんな感じですけど……」

 

 

さも当然のように答えるなのはに、グレイは呆れたように溜息をつく。

 

 

「ったく……ほどほどにしとけよ? あいつらのリーダーであるお前が倒れたら、元も子もねぇんだからよ」

 

 

「にゃはは……フェイトちゃんにも同じこと言われました。でも大丈夫です! まだまだ働けます!」

 

 

「お前が大丈夫でも、身体が大丈夫じゃねぇかもしれねぇだろ? 油断してると本当に倒れるぞ」

 

 

「大丈夫ですって! それに今は、毎日が楽しいんです!」

 

 

「あ?」

 

 

いきなり毎日が楽しいと言われ、首を傾げるグレイ。

 

 

「優秀な教え子が四人もいて、みんな日に日に成長していくのを見守る毎日……それがとても楽しいんです!」

 

 

「っ……!?」

 

 

なのはの言葉を聞いた瞬間、グレイの脳裏に……とある言葉が蘇る。

 

 

 

―だってそうだろ? かわいい弟子が二人もいて、日に日に成長し賑やかな毎日。十分幸せだ―

 

 

 

「……ウル……!!」

 

 

「え?」

 

 

「あ、いや……なんでもねぇ。仕事、頑張れよ」

 

 

「? はい!」

 

 

そう言い残して、グレイは仕事部屋を後にした。

 

 

 

「……なんで今……なのはとウルが重なったんだ?」

 

 

 

廊下でポツリとそう呟くグレイだが、その問い掛けに答える者は居らず、ただ虚しく響くだけであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そして、数日後。

 

 

「さーて、じゃあ午前中のまとめ。2on1で模擬戦やるよ」

 

 

いつもと同じ訓練風景。今日もいつも通りに進むと思っていた。

 

 

「まずはスターズからやろうか。バリアジャケット、準備して」

 

 

「「はい!」」

 

 

「エリオとキャロ、ナツとハッピーはアタシ達と見学だ」

 

 

「「はい!」」

 

 

「見学かよ。つまんねえの」

 

 

「仕方ないよナツ」

 

 

愚痴りながらもナツ達は近くのビルの屋上へと上がり、模擬戦を見学することになった。

 

 

「やるわよ、スバル!」

 

 

「うん!」

 

 

意気込むスバルとティアナ。それを不安そうな表情で見ているハッピー。

 

 

「ナツ、ティアナ大丈夫かな? 結局あのあと自主練してたみたいだし……」

 

 

「知るかよ」

 

 

心配するハッピーに冷たく言い放つナツ。すると、ビルの屋上にフェイトとグレイ、そしてエルザがやって来た。

 

 

「あっ、もう模擬戦始まっちゃってる?」

 

 

「あ、フェイトさん」

 

 

「グレイにエルザ!」

 

 

「どうやら間に合ったみてーだな」

 

 

「うむ」

 

 

「私も手伝おうと思ったんだけど…」

 

 

「今はスターズの番」

 

 

「本当はスターズの模擬戦も私が引き受けようと思ったんだけどね」

 

 

「あぁ、なのはもここんとこ訓練密度濃いからな。少し休ませねぇと」

 

 

「なのは、部屋に戻ってからもずっとモニターに向かいっぱなしなんだよ。訓練メニュー作ったり、ビデオでみんなの陣形をチェックしたり」

 

 

「なのはさん……訓練中もいつも僕たちのこと見ててくれるんですよね」

 

 

「本当に、ずっと……」

 

 

「お、クロスシフトだな」

 

 

ヴィータの呟きに一同は下を見る。そこにはティアナがいくつもの魔力弾を生成していた。

 

 

「クロスファイヤー……シュート!!」

 

 

いくつもの魔力弾がなのはに向かう。だが、それに違和感を感じる者がいた。

 

 

「なぁ、ティアナの今の攻撃…何か変じゃねえか?」

 

 

ナツの疑問にヴィータが頷きながら答える。

 

 

「あぁ、何かキレがねえな」

 

 

「コントロールは良いみたいだけど……」

 

 

「調子でもわりぃんじゃねぇのか?」

 

 

「それにしたって……!」

 

 

「…………」

 

 

それを見ているナツの胸に不安がよぎる。

 

 

そしてしばらくすると、スバルのウイングロードが出現しスバルがなのはにむかって突撃してきた。

 

 

「っ、フェイクじゃない! 本物!?」

 

 

目の前のスバルを本物だと判断したなのははスバルに向かって魔力弾を放つ。

 

 

「うぉぉぉぉぉぉおおお!!」

 

 

が、スバルはそれをバリアで防ぎ、なのはに向かってリボルバーナックルを構えた。

 

 

「うりゃぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」

 

 

「っ!!」

 

 

その攻撃をなのははバリアを張って防御する。

 

 

「くっ……うぅ…!」

 

 

「っ……!!」

 

 

予想外の戦術になのは顔をしかめる。そして、スバルの攻撃を弾き飛ばした。

 

 

「うわぁぁぁぁぁあああ!!」

 

 

飛ばされたスバルは何とかウィングロードに着地する。

 

 

「こらスバル! 危ないよそんな軌道!」

 

 

魔力弾を避けながらスバルに注意するなのは。

 

 

「すいません! でも、ちゃんと防ぎますから!!」

 

 

ウイングロードに乗りながら謝るスバル。

 

 

「っ、ティアナは?」

 

 

なのははティアナを探して辺りを見回す。すると、遠くのビルで砲撃を撃つ準備をしているティアナの姿があった。

 

 

「砲撃? ティアナが?」

 

 

「でりゃあぁぁぁぁぁぁぁああ!!」

 

 

そして一同がそちらに気を取られている隙に、スバルがウィングロードを走り、リボルバーナックルをなのはに叩き込む。それをバリアで防ぐなのは。

 

 

「っ!?」

 

 

そしてふと、ティアナの方を見ると、砲撃の構えを取っていたティアナの姿が消える。

 

 

「あっちのティアナさんは幻影!?」

 

 

「本物は!?」

 

 

「っ、あそこだ!」

 

 

グレイが指差す方向には、なのはの頭上のウィングロードを走っているティアナの姿があった。

 

 

「一撃必殺!! でぇぇぇぇえええい!!!」

 

 

クロスミラージュの銃口に魔力の刃を纏い、なのはに向かって突っ込むティアナ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイジングハート……モードリリース……」

 

 

[All right]

 

 

なのはがそう呟いた瞬間、辺りに轟音が響く。

 

 

「なのは!」

 

 

「スバル! ティアナ!」

 

 

ナツとフェイトは三人の名前を叫ぶ。すると、煙が徐々に晴れてきて、そこにいたのは……

 

 

 

 

「おかしいな……二人共どうしちゃたのかな?」

 

 

 

 

片手でスバルの拳、もう片手でティアナの刃を止めているなのはの姿があった。

 

 

「頑張っているのは分かるけど、模擬戦は喧嘩じゃないんだよ?」

 

 

なのはの声は今まで聞いた事がないほど無機質だった。

 

 

「ちゃんとさ、練習通りにやろうよ……ねぇ?」

 

 

「あ、あの……!」

 

 

スバルは何かを言おうとするが、恐怖で言葉が続かない。

 

 

「私の言ってる事、私の訓練…そんなに間違ってる?」

 

 

「………くっ!」

 

 

[Blade erase]

 

 

すると、ティアナは魔力刃を消し、後ろに飛んでなのはとの距離を取る。

 

 

「私は! もう、誰も傷付けたくないから! 無くしたくないから!!」

 

 

「ティア…」

 

 

悲痛な叫びを上げながらクロスミラージュを構えるティアナ。

 

 

「だから! 強くなりたいんです!!!」

 

 

「……少し…頭冷やそうか?」

 

 

ティアナの叫びを聞いたなのはは、無表情のまま人差し指を彼女に向けた。

 

 

「クロスファイアー……」

 

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!ファントム・ブレイ…」

 

 

「シュート」

 

 

なのはが放った六つの魔力弾は、容赦なく、ティアナに直撃した。

 

 

「ティア! っ…バインド!?」

 

 

ティアナの元へ駆け寄ろうとしたスバルにはバインドが掛けられていた。

 

 

「じっとして。よく見てなさい」

 

 

そう言うなのはは再びティアナに向かって魔力弾を放とうとしていた。

 

 

「なのはさん!!」

 

 

スバルの必死の叫びも虚しく、なのははティアナに向かって砲撃を放った。

 

 

その時……

 

 

 

 

 

「アイスメイク〝槍騎兵(ランス)〟!!」

 

 

「火竜の咆哮!!」

 

 

 

 

 

足の炎をブースターにして飛んできたナツのブレスと、氷で造った道を走ってきたグレイの氷の槍が、なのはの攻撃を薙ぎ払った。そしてウィングロードに着地したナツはティアナに駆け寄った。

 

 

「ティアナ! 大丈夫か!?」

 

 

「ナ…ツ……」

 

 

しかしティアナはナツの名前を呟くと同時に倒れ、ナツはそれを抱きとめた。

 

 

「ティア!!」

 

 

すると、バインドで縛られながらもマッハキャリバーを使ってスバルが駆け寄ってくる。

 

 

「おいナツ……お前は二人を連れてエルザ達のところまで下がってろ」

 

 

「あ? オレに命令すんじゃねえよっ!! それにオレはアイツを……!!」

 

 

「頼む……ナツ」

 

 

「っ……」

 

 

グレイが真剣な表情でナツにそう言うと、ナツは少々驚いた表情を見せたあと……

 

 

「わーったよ」

 

 

渋々と言った感じで了承した。

 

 

「その代わり…きっちりケリつけてこいよ?」

 

 

「わかってる。早く行け」

 

 

「ケッ……行くぞスバル!」

 

 

スバルのバインドを焼き切り、ティアナを抱きかかえながらそう言うナツ。

 

 

「え…で、でも……」

 

 

「いいから…行くぞ」

 

 

「う…うん……」

 

 

ナツの有無を言わせない迫力に、スバルは戸惑いながらも頷き、下がっていった。それを確認したグレイは、なのはに向き直る。

 

 

「どういうつもり…グレイさん?」

 

 

「どういうつもりだと? そりゃこっちの台詞だ」

 

 

表情に確かな怒りを滲ませながらグレイはなのはを睨みつける。

 

 

「さっきの模擬戦……確かにあいつらはお前の教えを無視して、危険な無茶をした。だがな、最後の攻撃は明らかにやり過ぎだ」

 

 

「私の教導に口出ししないでくれるかな?」

 

 

「気に食わねえんだよ……自分の思い通りにならねえからって教え子を撃ち落とすなんざよ……!! そんなやり方…オレは絶対に認めねえ!!」

 

 

「っ……!!」

 

 

なのははグレイの言葉を聞くとピクリと眉を顰め、冷めた眼差しでグレイを見据えながらゆっくりとレイジングハートを構える。

 

 

「……グレイさんも少し、頭冷やそうか?」

 

 

「頭を冷やすのはテメェの方さ……覚悟しろよ? オレの氷で、骨の髄まで冷やさせてやる」

 

 

そう言ってグレイは上半身の服を脱ぎ捨て、挑発的な笑みを浮かべたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「グレイの奴何やってんだ!? 早く止めねえと!!」

 

 

ヴィータがグラーフアイゼンを構えながら飛び出そうとすると……

 

 

 

「火竜の咆哮!!!」

 

 

 

目の前を灼熱の炎が過ぎり、その動きを止めた。そしてその炎が消えると、そこにはティアナを抱えたナツが立っていた。

 

 

「あいつの邪魔をすんじゃねえ」

 

 

「なっ……邪魔なのはテメェだろ!! なのはの教導の事も…あいつ自身の事も…何も知らねえクセによぉ!!」

 

 

「うるせえな……」

 

 

ヴィータの叫びに、ナツは静かにそう返した。

 

 

「あいつの教導の事とか…あいつ自身の事とか……今はそんなもん知ったこっちゃねえんだよ……」

 

 

ナツは語りながら抱えていたティアナをゆっくりと降ろすと、ヴィータをギロリと睨みつける。

 

 

 

「大切な仲間を傷つけられた……オレ達が戦う理由なんざそれだけで十分だっ!!」

 

 

 

『っ……!!!』

 

 

ナツの威圧感の篭った言葉に、全員が身を震わせたのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ディバインシューター……シュート!!!」

 

 

なのははグレイに向かっていくつもの魔力弾を発射する。

 

 

「アイスメイク…〝(シールド)〟」

 

 

しかしグレイはそれに怖気づくこともなく、冷静にそれを氷の盾で防ぐ。

 

 

「アイスメイク…〝槍騎兵(ランス)〟」

 

 

そしてお返しと言わんばかりになのはに向かって無数の氷の槍を放った。

 

 

「くぅっ……!!」

 

 

なのはもそれに対しバリアを張って防ぐが、一本一本の槍の威力が半端ではなかった為、顔をしかめる。そして全ての攻撃を防ぎ終え、グレイの方に視線を向けると、すでにその姿はなかった。

 

 

「いない!? どこに!?」

 

 

「こっちだよ」

 

 

「っ!?」

 

 

声が聞こえた方に視線を向けてみると、そこには巨大な氷の大砲を構えたグレイが立っていた。

 

 

「くっ……!」

 

 

それを見たなのははすぐさまレイジングハートをグレイに向ける。そして……

 

 

 

氷雪砲(アイスキャノン)!!!」

 

 

「ディバイン…バスタァァアア!!!」

 

 

 

ドゴォォォォオオオン!!!

 

 

両者が放った砲撃が衝突し、轟音を立てながら消滅した。

 

 

「なんだよ……デカイ口叩いてた割には、案外たいしたことねーな」

 

 

「……して……」

 

 

「あ?」

 

 

「どうして邪魔するの!!?」

 

 

なのはは悲痛な叫びでそう問い掛ける。

 

 

「何度だって邪魔してやるよ……テメェが考えを変えねえ限りな」

 

 

「私のこと…何も知らないクセに!!!」

 

 

「だったらテメェは知ってんのかよ……オレのことを?」

 

 

「っ……」

 

 

グレイの言葉になのはは押し黙る。

 

 

「何も知らねえのはお互い様だ。もっとも、テメェは教え子のことを何一つ知ろうとも思っちゃいねえみたいだけどな」

 

 

「そんなこと──」

 

 

「ないってのか? 本気でそう言ってんなら、もう教導なんてやめちまえ」

 

 

「っ…何も知らない貴方にどうしてそこまで言われなきゃいけないんですかっ!!?」

 

 

「……………」

 

 

なのはが悲痛な叫びでそう問い掛けると、グレイは何か考える素振りを見せた後、再び目を開いて言葉を口にした。

 

 

「確かにオレは何も知らねえ……だけど、今のお前が…お前らしくねえってことは分かる」

 

 

「っ!?」

 

 

グレイの言葉になのはは目を見開く。

 

 

「無茶をやらかした教え子を…ただ頭ごなしに叱り付けて…叩きのめして…言うことを聞かせる……それがお前のやりてえ教導かよ?」

 

 

「…………」

 

 

「答えろよ?」

 

 

「……たく…ない……やりたくないよぉ……」

 

 

グレイの問い掛けに、大粒の涙を流しながら答えるなのは。

 

 

「だけどやらなくちゃ…私と同じになっちゃう……!! 私はっ!! ティアナにも…スバルにもエリオにもキャロにも……誰にも傷ついて欲しくないの!!! だから……だからぁ!!!」

 

 

涙を流し、悲痛な声で叫びながらグレイに向かってレイジングハートを構えて魔力を集束させるなのは。それを見たグレイは、一瞬だけ目を伏せた後、静かになのはを見据える。

 

 

「それが……お前の〝闇〟か……」

 

 

そう呟くと、グレイは再び拳を構える。その間に、なのはは魔力の収束を終え、最大の砲撃をグレイへと放った。

 

 

「うあぁぁあああ!! ディバインバスター…フルパワァァアアア!!!!」

 

 

グレイに向かって放たれたもはや壁と言っても過言ではない強大な砲撃。だがその砲撃を見てもグレイは微動だにせず……

 

 

 

ドガァァァァァァアアアアン!!!!!

 

 

 

そのまま砲撃に飲み込まれ、激しい轟音が響き渡ったのであった。

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ……!!」

 

 

ゆっくりと息を乱しながら着弾点から上がる煙を静かに見据えるなのは。

 

 

「……やっぱり…私の方が正しかったの……」

 

 

勝利を確信してそう呟くなのは。すると……

 

 

ピキッ…ピキピキピキ……

 

 

「?」

 

 

煙の中から聞こえてきた奇妙な音になのはは疑問を疑問を感じる。そして次の瞬間……

 

 

 

「オオォォォォォオオオオオオ!!!!!」

 

 

 

「えっ!!?」

 

 

なんと…煙の中からグレイが氷の道を造りながら飛び出してきて、一直線になのはに向かって駆けて行った。

 

 

「そんな! アレを受けて…まだ……っ!!」

 

 

余りに突然の出来事で、なのははその場から動くことを失念していた。そしてその事に気付いた時、既にグレイは眼前に迫ってきていた。

 

 

「お前の闇は…よく分かった……!!」

 

 

そう呟きながら、両腕に氷の刃を纏わせるグレイ。

 

 

「だったら…オレのやるべきことは一つだ」

 

 

そしてそれをゆっくりと振りかざし、そのままなのはに向かって振り下ろした。

 

 

「お前の…」

 

 

「あぐっ!」

 

 

一撃…

 

 

「闇は…」

 

 

「うっ…あぁ…!」

 

 

二撃…三撃…

 

 

「オレが…」

 

 

「うあぁぁぁ……!」

 

 

四…五…六…

 

 

「封じよう」

 

 

静かにそう呟き、グレイは最後の一太刀を振り下ろした。

 

 

 

 

 

氷刃・七連舞(ひょうじん・ななれんぶ)!!!!!」

 

 

 

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!」

 

 

グレイの攻撃をモロに受けたなのはは、そのまま勢い良く近くのビルの屋上へと墜落していった。

 

 

「うっ…くっ……!」

 

 

墜落したなのはは、何とか動こうとするが、ダメージが大き過ぎて身体が言う事を聞かなかった。すると、そんななのはにグレイが歩み寄る。

 

 

「っ……!!」

 

 

やられるっ!! そう思ったなのはは硬く目を閉じる。しかし……

 

 

「ぷはーっ! つっかれたぁ!!」

 

 

「へ?」

 

 

聞こえてきたのは、何とも気の抜けた声。それを聞いたなのはが目を開けると、そこにはグデーっと床に座り込んだグレイの姿があった。

 

 

「流石に最後の砲撃は効いたぜ…ったく……」

 

 

まるで何事もなかったかのように話しかけてくるグレイ。そんなグレイの姿になのはは目を丸くしていた。

 

 

「あ、あの…グレイさん?」

 

 

「…………」

 

 

なのはが呼びかけると、途端にグレイは口を閉じて何かを考えるように顔を伏せる。そして再び顔を上げ、口を開いた。

 

 

「ガキの頃…オレには魔法を教えてくれた師匠がいた」

 

 

「…………?」

 

 

突然昔話を始めたグレイになのはは首を傾げながらも黙って聞くことにした。

 

 

「その師匠は裸で極寒の雪山で修行させたり、色々と口うるせー師匠だったが……いつも有りのままを話してくれたよ…修行の意味…魔法の素晴らしさをな……」

 

 

「…………」

 

 

グレイの話を、なのはは黙って聞いている。

 

 

「言葉にしねーと伝わらねえ事って…結構あるんだよな」

 

 

「っ!!?」

 

 

グレイが何気なく言った台詞に、なのはは聞き覚えがあった。それは自分が幼い頃…まだ敵同士だった親友に向かって言った……大切な言葉だった。

 

 

「オレもそうしてりゃあ……ウルを……」

 

 

「?」

 

 

「いや…何でもねえ」

 

 

そう言うとグレイは倒れているなのはに顔を向け……

 

 

「で……まだやんのかい?」

 

 

微笑を浮かべながらそう問い掛けた。

 

 

「あっ………」

 

 

なのははその笑みに一瞬見惚れる。そして……

 

 

 

「にゃはは……参りました……」

 

 

 

どこかスッキリしたような笑顔を浮かべ、そう告げたのであった。

 

 

 

 

つづく

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