生命を守る盾   作:ノナリア

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頭の中で構想は浮かんでいたんですがなかなか文字にできず。
稚拙な文章ですがどうぞよろしくお願いします。
ちなみに不定期更新です。


ユグドラシルの最後
第一の盾


 物事を語る時には相手と自分の認識が同じである必要があると私は思っている。相手の認識が自分と違った場合様々な問題や不利益がもたらされる場合があるからだ。

 私がいまこのような状況にあるのもそういった互いの認識不足、勘違いというやつが原因だったのだろう。

ただ一つだけ言える事は、

 

「どうしてこうなった……」

 

 西暦2126年に発売されたDMMORPG「ユグドラシル」

そのゲーム内でクリエイトできる種族は数百種であり、職業も二千種以上かつ自由に選択可能、また自由にカスタマイズできる外装、同時期に運営されている同種のゲームと比較しても圧倒的な自由度の高さを持ち、国内最高峰といえる爆発的な人気を博した。

私がそのゲームに惹かれたのも偏に売りである自由度の高さ故だったのだろう。

キャラクタークリエイトに1週間かけたのも今となっては良い思い出だ。

 

「今日も狩るぞー!」

 

 私こと中小路(なかこうじ)琴美はいつも通りの動作でユグドラシルにログインする。

いつも通り狩りをして、いつも通りクエストをこなして、いつも通り誰かとチャットをする。そういった日々がとても楽しかったし、私にとっても非常に有意義な時間だった。

 しかしその日常であったいつも通りというものが永遠に続く事はなかった。

 

「ユグドラシルのサービス終了……?」

 

 突然の知らせに頭がぐちゃぐちゃになる。確かにユグドラシルは全盛期に比べると接続人数は減っていただろう。

それに伴ってプレイヤー達の課金額が減ったというのもわかる。でもどうして、という考えが頭の中をかき回していく。

その真偽を確かめるべく色々なサイトを見て回ったところ、どのサイトもユグドラシル終了についての記事を書いていた。

そんな記事に目を通す必要なんてなかったのに……

 

「まあサービス開始から12年も保ったんだし最近のゲームの中では良かった方じゃないかな」

 

 やめて……

 

「俺もやってたけどもうプレイヤーもほとんどいないんだろ?」

 

 そんなことはない……まだ、私が……

 

「今時ユグドラシルって感じだよなあ、みんな新作に飛びついてるし」

「私もギルマスやってたんですけど次第にみんなログインしなくなっちゃって」

「あ、でも永劫の蛇の腕輪(ウロボロス)を使えばまだ可能性あんじゃね?」

 

 ユグドラシルのアイテムには世界級(ワールド)アイテムと呼ばれる全アイテム中頂点のものがある。その総数は200種類らしいが、永劫の蛇の腕輪はそのなかでも二十と呼ばれる存在の一つであり、使い切りタイプで特に凶悪な効果を持つことで有名である。

そして永劫の蛇の腕輪の効果というものが、

 

「運営への仕様変更の要求……!」

 

 これしか方法はなかった。絶対に叶えてくれる保証なんてどこにもない。たかが仕様変更でサービス終了が止められるなんて本当は思っていない。

しかし琴美はすぐさまユグドラシルにログインし、藁にもすがる思いで永劫の蛇の腕輪の手がかりを探す。

サービス終了は3ヶ月後、それまでに永劫の蛇の腕輪を入手する必要がある。

 

「どこかのギルドが永劫の蛇の腕輪を使われて、占領していた鉱山があるワールドに入れなくなっていたような……たしか名前は……」

 

 まだ整理しきれていない頭の中から必死にそのギルド名を探す。

 

「そうだ! アインズ・ウール・ゴウン!」

 

 アインズ・ウール・ゴウン——かつて41人という少人数でギルドランキング9位にまで上り詰め、掲示板では「DQNギルド」とまで呼ばれる始末、また所属している全員が異形種であり、1500人もの討伐隊を壊滅に追い込んだ伝説まで作り出したまさにユグドラシル一悪に特化したギルドと言えるかもしれない。

 永劫の蛇の腕輪を使ったギルドを私は知らない、ならば使用された側のギルドの人から少しでも情報をもらうしかない!

 

「でも私ここの人ほとんど知らないんだよなあ……一度だけ戦った事あるけど随分と昔の話だし」

 

 考えてるばかりでは無駄に時間が過ぎていくだけ。ならば少しでも早く会いに行こう。アインズ・ウール・ゴウンはヘルへイムのナザリック地下大墳墓を拠点にしていたはずだ。

 

「じゃあさっそくお邪魔しに行きますか! 《ゲート/転移門》!」

 

 

 

 

 

 

 

「ここがナザリック……噂には聞いていたけど結構不気味なところね」

 

 彼女が転移してきた場所、まさに墓地という言葉が相応しいこの沼地にナザリックが存在するのだ。

 気を引き締めてナザリックに向けて歩を進めたところで何者かに呼び止められた気がした。

 

「警告する。これより先はアインズ・ウール・ゴウンが拠点を構えるナザリック地下大墳墓だ。今度は何が目的だ? 私たちの世界級アイテムか、それとも——」

「連絡もせずに押し掛けてごめんなさい。実はあなた方のギルドマスターにお聞きしたい事がありまして……」

「……話だけなら伺おう」

 

 この声はどこかで聞いた事がある。たしか、討伐隊が全滅した戦いをムービーとして運営が残していたはずだ。そのムービーの最後で笑っていた人物、とするとこの人は——

 

「もしかしてあなたがギルドマスターのモモンガさん……でしょうか?」

「いかにも私がモモンガだ」

 

 あれ、どうして真横から声が——

 

「どうかしましたか?」

「わひゃあ!?」

 

 突然の骸骨の出現にゲーム内だというのに尻餅を着きそうになる。いかにも魔法詠唱者(マジック・キャスター)ですと言わんばかりの見た目、そのローブ?の下に見えるのは骨、骨である。しかしそこからは絶対強者の余裕と全く隙がない視線を感じた。この人がアインズ・ウール・ゴウンのギルドマスター——モモンガさんか。

 

「そこまで驚かれると少し傷つきますね」

「ご、ごめんなさい! そんなつもりは——」

「ははは、冗談ですよ。さて、こんな場所でお話をするというのもなんですし、落ち着いて話ができる場所まで案内しようと思うのですが、どうでしょうか?」

 

 さっきの声と打って変わってフランクすぎないか!? もしかしてこれが素だったり……

 

「え、ええ。是非ともお願いします」

 

 あとで《ホーリー・スマイト/善なる極撃》を撃ち込んでやろうと思ったのは秘密である。

 

 

 

 

 

 

 

「ここならば落ち着いて話ができるでしょう」

 

 そう言ってモモンガさんが案内してくれたのは応接間のような部屋だった。しかしここは……

 

「うん? どうかされましたか?」

「あ、いや。ここってギルドの皆さん専用の部屋なんじゃないかなって。今までナザリックにこういった場所があるなんて聞いた事ないですし……」

 

 とても短い、まさに一刹那ほどの時間だったはずなのに、私にとってその沈黙はとても長く感じてしまった。

 

「……ええ、その通りです。ここは私たち以外は誰もきた事がありませんから」

「でしたら、なぜ私を?」

「いやあ、もうユグドラシルも最後らしいですし残りの3ヶ月ぐらいギルマス特権を使おうかなって思った次第ですよ」

 

 そう言ったモモンガさんの表情はどことなく寂しそうに、遠くの物を見つめている気がした。表情なんて出ないはずなのに。もしかすると他のギルメンの方は……

 

「……そう、ですか。ま、まあ最後ぐらいならギルマス特権で好きにしても良いと思いますよ!」

「ははは、あまり気を使わなくて大丈夫ですよ。私自身も皆がいつでも戻ってこられるようにはしているつもりですから」

 

 そうだ、皆やめたと決まった訳じゃない。リアルが少しだけ忙しかったり、ちょっとだけユグドラシルに飽きて他のゲームに浮気しているだけかもしれない。こんなに素晴らしい拠点が残っているんだ。きっとモモンガさんのギルメン達もサービス終了までには顔を出してくれる事だろう。

 

「そ、そういえばここまで第一から第八階層まで通らせてもらいましたけど守護者の女の子達はみんなかわいいですね!」

 

「お、良いところに目がつきましたね。シャルティアやアウラ、アルベド。彼女達は私たちの自慢のNPCですよ。シャルティアはペロロンチーノさんが作り出した吸血鬼、アウラはぶくぶく茶釜さんが作ったダークエルフ、アルベドはタブラ・スマラグディナさんが作ったサキュバスです。皆違いがあって私も愛着が湧いています」

 

「へえ、やっぱりここでもNPC達は詳細なところまで凝ってるんですねえ」

 

 この時、彼女がアウラとマーレを間違えていたのだが、それに気づくのはまだ先の話である。

 その後もモモンガさんは色々と私に話してくれた。シャルティアの設定に始まりナザリックの良さだとか討伐隊が攻めてきたときの罠のかかり具合だとか、それはもう子どもの様に。いやまあゴキブリハウスなんて誰でも嫌でしょう……

 しかしどうして私なんかにそこまで話してくれたのか、そんなことは聞ける雰囲気ではなかった。

 

「……おっと、話がだいぶ逸れてしまいましたね。申し訳ないです。それでご用件とは何だったのでしょうか?」

 

 はて? 用件とはいったいなんだろう、私はここにお茶をしに……

 

「思い出したァ!! モモンガさん! 世界級アイテムの永劫の蛇の腕輪について何かご存知ないでしょうか!?」




流し読みをしてもらえるぐらいが丁度いいかなと思った次第です。
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