オリ主の名前から種族とか想像がつく人もいるんじゃないでしょうか。
「お、落ち着いてください。ええと――」
「アイギス・セラフィです、モモンガさん。今思えば自己紹介すらちゃんとせずに聞きたいことがあるだなんて……本っ当に申し訳ないです!」
ついモモンガさんと楽しく話してしまった結果がこれである。本末転倒とはこういうことを言うのだろうか?
「気にしないでくださいアイギスさん。それより永劫の蛇の腕輪を手に入れる方法ですか……あるにはあるんですが」
モモンガさんがそれより先を口にしようとしない。やっぱり部外者である私にそう簡単に世界級アイテムの情報を渡せるか!とか、そういうことなのかな……
「永劫の蛇の腕輪は世界級アイテムの中でも二十と呼ばれる凶悪かつ強力なアイテムです。そのあたりは大丈夫ですよね?」
私は無言でモモンガさんの問いに頷く。
「これら二十のアイテムの取得方法はそれぞれ違うんですがアイギスさんの言う永劫の蛇の腕輪を手に入れようとなると……ざっと半年ほどかかってしまうんですよ」
「……は?」
ちょっとまって半年? サービス終了まであと3ヶ月しかないのに半年もかかるって……それじゃあもうどうしようもないじゃない。
明らかに落ち込む私に呆れたのか、モモンガさんは少し席を外すと言って転移してしまった。
「……これで終わりなんて、そんなこと」
まだ諦めたくない。やっと地獄の底で蜘蛛の糸が見えたのだ。たとえ半年かかるとしても必ずや期限内に手に入れてみせると。
「すいません急に席を外してしまって……どうされたんですか?」
「モモンガさん! 私必ずや期限内に永劫の蛇の腕輪を手に入れてみせます! だからクエストの所在地などの情報を教えていただけないでしょうか!?」
「ええ、もちろんです。ですがまずはこれを見てもらえないでしょうか」
そう言ってモモンガさんはインベントリから一つの腕輪を取り出した。何の変哲もない蛇の彫刻が施されたどこにでもあるような腕輪だ。
「モモンガさん、私を励まそうとしてくれるのは嬉しいんですが……もしかしてこれが永劫の蛇の腕輪を手に入れるための鍵だとか?」
「永劫の蛇の腕輪です」
え、えっと……?
「これが永劫の蛇の腕輪です」
「冗談きついですよモモンガさん。さっきモモンガさん自身が手に入れるのは厳しいって言ってたじゃないですかあ」
「実は私たちのギルドが永劫の蛇の腕輪の効果を受けたときにですね、少しだけ報復しても許されるんじゃないかって理由で手に入れていたんです。まあ使うこともなく終わりそうになっていましたが……」
冷静に淡々と言葉を続けられ事実を事実として受け止められない。さっきまでの自分の意気込みは一体何だったのだろうか。自分だけ張り切ってたみたいでかなり恥ずかしい。
「ではこれをあなたに差し上げます。どうぞ好きなように使ってください」
モモンガさんが腕輪を渡してくる。いやいやこんなのは受け取れない。二十だから、世界級アイテムだからという理由ではない。私とモモンガさんは初対面なはずなのに、なぜこんなにあっさりと渡すことが出来るのだろうか。
「私の友人にたっち・みーという人がいましてね。彼はワールドチャンピオンだったこともあってそこそこ有名人だったんです。そんな彼が昔、私に言ったんです」
――アイギスという人にはお世話になった。いつかまた会ってお礼がしたい。
「どういったことでお世話になっていたかは教えてくれませんでしたが、たっちさんはずっとどういったお礼が良いかと考えてましたよ。それに彼はいつもこう言ってました。誰かが困っていたら助けるのは当たり前、と」
まさか、私の頭の中で一人の人物がよぎる。昔に一度だけたっち・みーという人とパーティーを組んだことがあった。もしかしたらその時に……
「思い当たる事があるみたいですね。そういうことです。ですからこれはたっちさんから、ということではなくギルドマスターである私からギルドメンバーの恩人であるあなたへのお礼だと思って頂いて大丈夫ですよ」
永劫の蛇の腕輪を再度私に渡してくる。モモンガさんからは相手を利用してやろうだとか、後でお金をせしめてやろうといったそういう感情は感じ取れない。元々骸骨だからかもしれないが。
「で、ではありがたく頂戴します……」
腕輪を受け取る手が震える。実際には震えていないはずなのに、これで願いが叶うと思うと嫌でもそう感じてしまう。
「それでは早速発動してみましょうか」
モモンガさんが発動を今か今かと急かしてくる。
「え、えぇ!? ここで使うんですか!? いやまあもらっておいて使わない選択肢はないんですが」
ふう、と一息ついて腕輪を天井に掲げる。
「永劫の蛇の腕輪よ! 私は願う! ユグドラシルのサービス終了の延期を!」
「えっ?」
腕輪から発せられる眩い光に部屋中が包まれていく。モモンガさんは目がないはずなのに目を手で塞ぐ始末である。そうして数十秒か数分が経ち光が収まったころ、運営メッセージが目の前に表れた。
――その願いは叶えることができません。別の願いを宣言してください。
その文字がピッという電子音と共に表れたとき、私の中で何かが崩れていった気がした。