生命を守る盾   作:ノナリア

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モモンガさんの弱みを握るお話?
活動報告に設定を載せておきます。気になる方はどうぞ


第四の盾

 うん、なかなか悪くないゲーム人生だったと思う。モモンガさんと出会ったあの日から私はやりたいことを精一杯やりきった。未討伐のワールドエネミーである天使を倒すことができたし、皆の協力でとある世界級アイテムを手に入れることもできた。もちろん相手が天使だったし一緒に行ったモモンガさんとの相性は最悪だったんだけども、私の得意な持久戦に持ち込んでなんとか勝利を収めることができた。その時に手に入った世界級アイテムこそが、「光輪の善神(アフラマズダー)

 このアイテムも永劫の蛇の腕輪と同じく二十の一つであり、カルマ値がマイナスの対象に強大な効果を発揮する、というもの。なんと効果範囲が世界一つを覆い尽くすほどだと言うのだから驚きである。モモンガさんが事ある度に光輪の善神だけはやめてください!と言っていたが、これは一つ弱みを握れたということでいいのだろうか?

 そんなモモンガさんとも何度か一緒に冒険もしたけどその度に、

 

「アイギスさん、ヘイト稼ぎばかりでは楽しくないでしょう? たまには私が変わりますよ」

 

 と何度も提案してきたが全て断ってきた。だって敵から皆を守ることが私の役目だからね、今も昔も……

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~いぎ~すちゃ~ん!!」

 

 ねっとりとした口調で女性が私に飛びついてくる。彼女はケルヴィ、私たちのギルド「生命の樹(セフィロト)」の一員だ。桃色の髪に白と黒の対になる翼、そして大きな胸……胸……

 

「いつも急に抱き着くのはやめてくださいって言ってるじゃないですか。ケルヴィ」

「あらあら? それは急じゃなければいいってことぉ?」

「そういうわけではなく……はぁ、もういいです」

 

 私が観念したことに気付いたのかさっき以上に引っ付いてくる。これがいつものことだし今更とやかく言うつもりはない。

 

「それで、アイギスちゃん。どこぞのギルド連合が私たちの世界級アイテムを狙っているというのは知っているのかしら?」

 

 彼女がいつになく真剣な声で聞いてくる。もちろんその話は私の耳にも入っていた。なんでも私たちの持つ世界級アイテムがとあるギルドとの戦いで必要で、そのために最初は取引を持ちかけようとしていたみたいなんだけれど、やっぱりそういったギルド連合は皆が皆穏便に済ませようという考えではないらしくて……

 

「お話で解決できるよう説得してみます。ここを戦場になんてさせません」

「ふふ、アイギスちゃんならそう言うと思って向こうとは連絡を取っておいたわ、《ゲート/転移門》!」

 

 ケルヴィが魔法を唱えると直径2mはあろうかという渦が生成された。この中を通れば相手方の場所へ直接行けるはずだ。

 

「それじゃあ私につかまっててね? あなたは行ったことがない場所だろうから」

 

 そう言われケルヴィが差し出した手につかまる。傍からみれば普通の親と子に見えないこともないだろう。そのまま二人は渦の中へ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、ようやく来たか」

 

 渦を抜けると辺り一面の草原である。前方には複数の人間種の方々、どうやらあちらさんがギルド連合、というものらしい。そしてこちら側にいる三人が……

 

「ったく、リーダーのお前が一番最後ってどうなってんだ? こっちはもう1時間も待ったぞ」

 

 男のような話し方の彼、いや彼女はソロネ。青のショートカット、セーラー服に竹刀? そしてその言動から行動そのものが昔で言う番長というものにそっくりらしい。その割にはかわいいアバターにすっごくお金をつぎ込んでるみたいだけど。

 

「……おいアイギス、今余計なこと考えなかったか?」

「え、あ、いえ! そ、そんなことはないですよ!?」

 

「お前昔っから嘘つくのが下手だよな。気付いてないかもしれないが、お前は嘘をつくときいつも頭を軽く横に振る癖があるからな」

 

 即座に両手で頭を押さえつける。あれ、頭なんてゲーム内で無意識に動くはずが……まさか――

 

「くくく、馬鹿は一人見つかったようだな」

 

 へ? ま、まさか……

 

「こりゃあ帰ったらお仕置きが必要だよなぁ? さあてどんな――」

 

「失礼、お取込み中のところ申し訳ないが、そろそろ取引についての話を……」

 

 助かった! ソロネさんはあからさまに不機嫌そうにしているけどよかった! そっちの人には感謝しないと。

 

「ご、ごほん! すいませんはしゃいでしまいまして。それで取引の件ですが、あなた方は私達――ギルド「生命の樹(セフィロト)」が持つ世界級アイテム――が欲しいと。そういう話で間違いなかったでしょうか?」

 

 何やら他の連中と相談しているけどまあ少しぐらいなら見逃してあげてもいいでしょう。

 

「ええ、話が早くて助かります。つきましてはそれ相応の謝礼を――」

「申し訳ありませんが、あれは私達5人で初めて手に入れた思い出の世界級アイテムです。たとえいくら積まれようと取引する気はこちらにはございません。本当に申し訳ないのですが今回は諦めていただいて――」

 

 これは事実である、私たちの持つ世界級アイテムはギルドメンバー5人が力を合わせてやっとの思いで手に入れた物なのだ。たとえ世界が買えるような物を提示されたとしても取引に応じることはないだろう。

 

「どうしても……でしょうか?」

「ええ、それは変わりません。よろしければ――」

 

 私が次の言葉を発する前に魔法が私めがけ数発飛んできた。ああそう、初めからそういう手段も考えてたってことなのね。

 

「なにやってんだお前ら! こいつには90レベル以下の放つ魔法は効かねえ! 魔法攻撃は他の4人に、そいつは接近戦で仕留めろ!」

 

 それを合図と言わんばかりに彼の後ろから何人もの人が飛び出してくる。私には剣や斧、槍や素手などで攻撃を、他の4人には魔法や弓での攻撃を。それらひとつひとつから目の前の相手を倒さんとすべく意志を持っているような力強さを感じた。

 

「――全部無駄なのにね」

 

 誰が呟いたのだろうか、おそらくそれがわかっているのはアイギス側の4人とアイギスの正面にいたプレイヤー達だけだろう。

 

「まったく、私たちがこれだけお願いして、さらには実力行使に打って出るなんて……本当に救えない」

 

 ギルド連合の魔法詠唱者(マジックキャスター)や弓使い達は眼を見開いていた、なんと自分達の魔法、弓、それら全てがアイギスの下へ向かっているのだ。もちろん彼らだってそこそこのプレイヤーである。ターゲットを間違えるなんてことはない、とするとこれは……

 

「ああこれ? 私のスキルでね《スペルリード/魔法誘導》って言うの。味方に対する遠距離攻撃を自動的に私にターゲット変更するんだけど、レベル100の攻撃も誘導しちゃうからそこだけはデメリットかな?」

 

 そう言う彼女に大量の魔法や弓が殺到するがどうやら相手に90レベルを超える遠距離攻撃者はいなかったようで、彼女には傷一つついていない。そしてお返しと言わんばかりに私の後方の二人から相手の魔法詠唱者に向けて何度もの《ホーリー・スマイト/善なる極撃》が撃ち込まれた。

 

「くっ! お前ら、俺に続け! 接近戦なら止められねえはずだ!」

 

 リーダー格の男と複数の男たちが私に向かって攻撃を仕掛けてくる。

 

「確かに私は接近戦が苦手、だって他の人と比べると時間がかなりかかっちゃうんだもの。でもそれだけ。40以下しか近距離攻撃を無効化にできない、なんてデメリット、こんなもの私にとってはあってないようなものなんだから」

 

 彼女の背中から3対の翼が生える。その姿はまさに天使であり天使の中でも最高位の至高天の熾天使(セラフ・ジ・エンピリアン)の種族を持つ彼女にふさわしい姿とも言えた。それと共に彼女の手に大きな盾が出現する。

 

 攻撃の瞬間リーダー格の男は考えていた。こいつらの種族が天使だってことはわかっている。こいつが遠距離耐性を持っていることもだ。ならば近距離に特化したレベル100の俺が負けるはずがない、そう思っていたのだ。だが、甘かった。なぜ彼女はそんなデメリットを持っているのに前に出ているのか、少し考えて入ればわかっていたはずだったのに。そうした少しの油断が命取りとなってしまう。それがユグドラシルでの戦い。

 

「もう二度と私たちの前に現れないでね? 《ブリリアントディザスター/光輝なる災害》!!」

 

 光と共に轟音が相手全体を包み込んでいく。光が収まった後はなぜか草原には一切の戦闘痕が見られず、ギルド連合の面々の姿もなかった。これこそアイギスが持つ一撃必殺の接近戦用スキルである。近距離の一人を対象として発動し相手全体を巻き込むため必ずしも接近戦用というわけではないのだが。ただ彼女がこの魔法を気に入っている理由、それは単純に敵意を持つ者に対してしか効力を発揮しないためである。そのため草原には一切の影響がなかったのだ。

 

「やっぱりアイギスちゃんが一番怖いわねえ」

 

「ふん! あの程度なら全部俺に任せておけばよかったのによ」

 

「お姉ちゃんさいきょー!」 「さいきょー!」

 

「そんなことないってば、私はただみんなを守りたかっただけで」

 

 さすがに二人から最強などと言われてしまうと恥ずかしく思えてくる。この二人が先の戦いで相手の魔法詠唱者を倒していた双子のミカエラとジブリールである。お姉ちゃんって呼ばれるのはもう慣れてしまったけど最強とかはまだちょっとね……

 

「お姉ちゃん! 私頑張ったからいい子してー!」

 

「あっミカだけずるい! 私も頑張ったんだから!」

 

「はいはい、ミカもジブリィもよく頑張ったね。お姉ちゃんは嬉しいよ~」

 

 そう言いながら両手を使って二人の頭を撫でてあげて、そうしたらケルヴィも乗り込んできて、ソロネさんはチラチラこっちを見ていたし。もしかしてソロネさんも撫でてほしかったのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあお姉ちゃんまたねー!」

「元気でね!」

 

 二人の頭を撫で終えると、別れの挨拶を済ませて二人はログアウトしていった。

 

 ――23:52:08

 

ああ、もうこんな時間か。明日も仕事だし早く寝ないとなあ。もしかしなくてもモモンガさんは最後までいるつもりだろう。彼も最後には誰か来てくれたのかな? 私はケルヴィに最後まで抱き着かれていたし、ソロネさんにはいじられっぱなしだった。

 

「ほんと、私にはもったいないぐらいの友達だったなあ……」

 

 ――23:56:42

 

 でも、一つだけ叶えられなかったことがある。

 

「もう少しだけみんなと冒険をっていうのは私のわがまま……だよね」

 

 ゲーム内のアイギスは気づいていなかったが、リアルの世界での中小路琴美の頬には一筋の涙が流れていた。

 

 ――23:59:42

 

「私とみんなを出会わせてくれてありがとね、ユグドラシル」

 

 手に持った世界級アイテムを見つめながら最後の時を迎える。またいつか一緒に、そう願いつつ瞳を閉じる。

 

 ――23:59:59

 ――00:00:00

 ――00:00:01

 

「あれ?」




きた!原作きた!
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