生命を守る盾   作:ノナリア

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評価、感想ありがとうございます。
喜びでにやにやしながら見させていただいてます。
同時に活動報告の内容を更新しています。そちらも併せてどうぞ。


第九の盾

 《ゲート/転移門》を抜けるとそこは戦場でした。

 妹と共に倒れているエンリ、そして剣を振り上げる騎士。何をするべきか考えるまでもなくアイギスは一つの魔法を発動させる。

 

「《ポイント・フィクス/定点固定》」

 

 相手一人の状態をその場で固定するというだけのあまり使い道がない魔法であったが思わぬところで役に立ったものだ。

 ユグドラシル時代、モモンガさんが使っていた第10位階魔法の《タイム・ストップ/時間停止》に比べると話にすらならないのだが。

 

「お、おい! 急にどうし――」

 

 突然止まった仲間に声をかけようとしたのだろう。しかしどういうことか不自然なところで口が止まり、その目が見開かれていた。

 どうやら私ではなくその後ろを見ているらしい。エリシアが付いてきてしまったのだろうか。

 

「もう、エリシア。ちゃんとお留守番しててって……え?」

 

 骸骨がいた。ああエリシア、堕天どころかアンデッドにまでなってしまうなんて……。

 いやそうじゃない、私が彼を忘れるわけがない。だって彼は……

 

「モモンガさん!?」

 

 アイギスの恩人、モモンガだったのだから。

 

「久しいな、アイギス。積もる話もあるだろうがまずはこの状況をどうにかしようか」

 

 あ、あれぇ? モモンガさんってこんな口調だったかな? いや確かにこの口調の方が威厳があるけども! いやそもそもどうしてモモンガさんがこの世界に!?

 考えれば考えるほど疑問が浮かんでくる。そんな私を樹にも留めずに彼は魔法を発動した。

 

「《グラスプ・ハート/心臓掌握》」

 

 モモンガがまだ動いている騎士に対して即死魔法を発動する。第9位階魔法《グラスプ・ハート/心臓掌握》、文字通り心臓を握る、というだけの魔法なのだが、この魔法の恐ろしいところは抵抗に成功したとしても朦朧状態になってしまうことなのだ。状態異常無効化でもない限りこれを防ぐのは至難の業だろう。

 彼が手を握ると同時に騎士が崩れ落ちる。

 もしやモモンガさんはこの世界のレベルをあまり知らないのではないだろうか。いや私もよく知らないけど。

 

「そちらの敵もまかせてもらおう。《ドラゴン・ライトニング/龍雷》」

 

 まるで龍が空中を翔るように白い雷撃が騎士の身体を貫く。アイギスの魔法の影響もあるのかその騎士が膝を着くことはなかった。

 

「おっと、魔法の解除を忘れてたね」

 

 魔法を解除すると同時に騎士の身体からは煙が発生し何の言葉を発することなく、地面に転がった。辺りに肉が焼けたような異臭が漂う。

 

「弱い……こんなにも弱いとは……」

 

「いやこんな相手に《グラスプ・ハート/心臓掌握》なんて一撃に決まってるでしょう」

 

 アイギスにはモモンガの感情が読み取れなかった。もしやあの頃のモモンガはもうどこにもいなくなってしまったのだろうか。だとするとこの人はいったい……。

 

「アイギスさん! 聞こえますか!?」

 

 突然の《メッセージ/伝言》による声が聞こえてくる。

 

「再開を喜びたいところなんですが、今は合わせて頂けないでしょうか? もうすぐアルべドも来ますので」

 

 ――訂正。何も変わってなかった。

 

「わかりました。今はそういうことにしておきましょう」

 

「助かります」

 

 二人が同時に頭に指を置く姿はこの場において異様な光景ではあるが、ものの数秒もしないうちにお互いに腕を下ろした。

 

「まだ、確認することがあるな……、中位アンデッド作成、死の騎士(デス・ナイト)

 

 モモンガが騎士の死体に対してアンデッド作成の特殊技術(スキル)を使うと黒い霧が空中に出現した。どうやらユグドラシルとは登場方法が違うようだ。

 その霧は次第に膨れ上がり騎士に溶け込むべく覆いかぶさろうとして――。

 

「《ホーリー・プロテクション/聖なる守護壁》」

 

 アイギスが魔法を発動し騎士の身体に防御壁を出現させる。先程の霧はその壁にぶつかり蒸発するように消え去ってしまった。

 

「どういうつもりだ? アイギス」

 

 あんたはどこぞの魔王か。感情は読み取れない、だが彼は困惑していることだろう。なぜ私が特殊技術(スキル)を止めたのか。

 

「たとえモモンガさんと言えど、死者を冒涜するようなことは許しません。やるなら私が見ていないところでやってください」

 

「なるほど、君はそういう奴だったな。ならばこの村は君にまかせてもいいと?」

 

「ええ、私一人で終わらせてきます。ですのでモモンガさんは彼女たちの保護と周辺の索敵をお願いします」

 

「あ、あのアイギス、さん。きてくれたんですね……」

 

 エンリが会話に入ってくる。彼女にとっては今の出来事は全く理解できなかっただろう。だけどそれでいい。理解したところで彼女に不利益はあれど利益など全くないのだから。

 

「エンリ、ごめんね。黙って出ていっちゃって。あなたの悲しむ顔を見たくなかったの。でもそれが逆にあなたを悲しませたみたいね……」

 

「そんなことないで――っ!」

 

 エンリが突然表情を歪める。いったい何が、そう思い彼女の状態を見て回ると彼女の背中に剣による切り傷があるのがわかってしまった。

 

「モモンガさん! 治癒薬(ヒーリング・ポーション)を!」

 

 その時の私はどんな表情だったのだろう。モモンガさんは「使うといい」とだけ言って治癒薬を渡してくれたのだが、その顔をエンリに見られなくてよかった。

 

「エンリ、これを飲みなさい! 大丈夫、ただの治癒の薬だから!」

 

 治癒薬をエンリに押し付け飲むように促す。まるで血のような赤い治癒薬だったのだが、彼女はそれを躊躇することなく飲み干した。

 

「うそ……、傷も、痛みも……」

 

 再び彼女の背中を確認するが、先程の傷跡はどこにも見られなかった。

 

「アイギスさん、そちらの方はいったい……」

 

「ああ、紹介するわね彼は――」

 

「……我が名を知るが良い、我こそが――アインズ・ウール・ゴウン」

 

 めっちゃモモンガって言っちゃってたけどどうするのこれ。後で記憶操作でもするのだろうか。

 

「遅くなってしまい、申し訳ありませんでした」

 

 彼が名乗るとほぼ同時に薄れ始めていた《ゲート/転移門》から人影が近づいてくる。

 もしやモモ……アインズさんのギルドメンバーの誰かの可能性が。

 そして姿を現したのは全身を黒い甲冑で覆った者であった。

 

「いや、実に良いタイミングだったぞ」

 

「アインズさん、この人はいったい?」 

 

「ああ、君も会ったことがあるだろう。アルべドだよ」

 

 私の中の時が止まった。

 アルべド……? たしかナザリックに行ったときにいた階層守護者統括のNPCとかだったような……。だめだそれぐらいしか情報が出てこない。

 だがこの二人になら彼女たちをまかせることができるだろう。

 

「……アインズさん、アルべド。ここはまかせていいでしょうか? 私は村の人を助けに行かないと」

 

「ああ、私も付近の索敵が終わり次第向かうとしよう。安心して行くといい」

 

「ええ、この場は私達にまかせてアイギス様は行ってください」

 

 アインズさんは表情から読み取れないし、アルべドも兜を被っていて何を考えているのかさっぱりだった。

 だがアイギスはアインズの、モモンガとしての人となりを知っている。だからこそこの場をまかせられるのだろう。

 

「お願いしますね。エンリ、ネム、この人は魔法詠唱者で私と同じぐらい強いからしっかり守ってもらうのよ。私は皆を助けに行くわ」

 

 アインズさんに《メッセージ/伝言》で「お手数かけます」とだけ言い残し、翼を展開し村へと急ぐ。

 だがこのとき、誰も気づいていなかった。

 アイギスの美しく白い翼が、黒に変化していたことに。




カルネ村を襲った兵士は救われるのでしょうか!?
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