アイテム使いの神殺し   作:アルリラ

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第二話 頭文字Y

もうあまり読む人はいない本棚の間を抜け元古本屋である護堂家を出る。

デュエルの勝敗は三勝三敗でなかなかいい勝負をした。そろそろ『代行天使』でも解禁しても良い頃合かも知れない。次が楽しみだ。

 

そう思っていると契約の縛りが発生。足早に徒歩数秒の家に帰る。そして自身の部屋で携帯を開き、手早く履歴からアレクの番号をプッシュし、電話をかけた。ちなみに国際電話だ、高いぞ。

 

 

「あ、もしもし。アレク首領ですか?」

 

「ほう、その頭の悪そうな呼び方は奈落か。何か用か?」

 

出た!アレクの煽り攻撃だ!だが奈落にはあまり効果はないようだ。前世の記憶のせいでその手のものは一定ラインを超えるまで言い返さない様になってしまっている。記憶とは積み重ね、それに基づくのが経験だ。前世の記憶様々である。

 

 

「ふぅ...イタリアで出た『神具』の報告と場所についてです」

 

「ああ、あれか」

 

先日電話した時に« 赤銅黒十字»が発掘した『神具』の話は聞いていた。どの神にまつわる物かは知らなかったが事前に連絡を受けていたのだ。

 

「で、その電話をしてきたということは...つくづくカンピオーネという存在は面倒なものだな」

 

「そのセリフ、跳ね返ってませんか」

 

「お前の戯言はいい、で?そっちの草薙護堂とかいうカンピオーネは受け取った以上何かしらの情報は持っているだろう」

 

「あ、はい。『神具』はゴルゴネイオン。メデューサに関連する大地母神が東京に来襲するらしいです」

 

話をざっくり纏める。対策については特に言わない。『王立工廠』にとって易のある行動をすると縛られているので、こういった『神具』の詳細や来訪するであろう神については話す必要があるが、来た時の対応はこっちが全面的にするのでいう必要はない。

何気に穴があるからまだいいほうかな。

そう考えると、ぎっちぎちに組まれた条件じゃなくて良かったな。何から何まで組まれてたら一々連絡しなきゃ行けなくなるし。それに国際電話の料金もかかるしな!

 

「ほう、メデューサ関連で大地母神か。それならばあの異説が当て嵌りそうだが『首領!アイが博物館でまたやった!』ハァ...すまんが、急用が出来た、切るぞ」

 

そう言って電話が切られてしまった。

ヒント貰えそうだったのにアイさん何やってんだよ。

博物館で騒動になる事つったら物騒な事しか思い浮かばないがカンピオーネが早急に対応するレベルとなるともっと面倒そうだ。いつかわかることを信じて!矢島先生の次回作にご期待ください。

 

 

スマホを机に起き、ベットへ転がる。今は自室でゴロゴロしている。一番の至福の時。

 

「ひとまず、連絡もした。学校は休んでるし、後の過ごしかたは如何様にしようか」

 

護堂が月曜日に厄介事を持って来たので急遽休んだ為暇だ。学校の人間に見つかると面倒だけどまあそれはそれでいい。時間の都合上見回りもないだろう、あればあったで特典でどうにかするしかないし、放課後まで良い感じで時間もある。うーんとひとしきり悩んだ後ふと、思い出した。

 

 

そうだ、ゲーセンへ行こう。

 

 

そうしてこうして、都内のゲームセンターにやってきた。

 

何をしようかねとばかりに辺りを見回し新しい筺体を紹介する張り紙を確認しながら店内に入った。様々な筺体があるので思わず目移りしてしまう。

入口すぐにはカード筺体、横には特典由来のマリオカートアーケードがある、未だに無印版でだが。

前世で住んでいた地域では2の導入は異様に遅かった記憶がある。まあのんびりと待とう。

他にはお菓子をすくい上げる筺体、スウィートランドがあった。中にはチョコのお菓子のタワーが出来ているものや小さい透明な石がある。

 

奥にはUFOキャッチャーだ。

前世の記憶では木で出来た模擬刀を取れたりしたが今はお菓子や人形しかない。刀剣乱舞が出るまであと四年...仕事をしていたならあっという間に過ぎてはいたが学校へ行ってるとその時間は長いなと思う。今は今、昔は昔で差はあるがそれはそれで楽しいし。

 

そんなUFOキャッチャー地帯を抜けると、カプセル型の中で操縦するゲーム、麻雀筺体、格闘筺体と来て本日の目的。

 

人がちらほらといる新しい『頭文字D』の筺体があった。

 

 

 

このレースゲーム、中学頃護堂とその他友人達と来ては入れ替わりで対戦していて結構やっていた。気分によって様々なものをやってはいたがこれはやり込んだ。マリオカートはレースゲームだが思春期真っ盛りだった俺達は子供っぽいことは出来ないとばかりにやらなかったが。

三月からバージョンアップで新しくなり稼働していたのだがここ一連のゴタゴタもあり時間をとる暇もなかった。良い感じで時間も取れたのでプレイしに来たというわけである。

 

新しい筐体と言うことで昂る心を沈めながら筐体に近寄ってプレイしている人を確認し、思わず固まった。

自分は、ある程度この『頭文字D』限定ではあるが、腕は有るつもりだった。

 

だがしかし、目の前の『頭文字D』を現在進行形でプレイしている。くたびれスーツのおっさんは自身とは段違いの実力者だった。

 

 

このバージョンからは走り屋レベルという物がある。

レベル1~99まである物で60以上になると、スタート時に車の周りにオーラが出るようになるらしい。高校の友人が最近黄色オーラ出た。とか言っていたのだが、おっさんのオーラは青色、しかもオーラと共に羽根がバサリと出現する車だった。慌ててレベルを確認

 

戦慄の99。

 

そしておっさんに目を向けてスボンの部分に目をやり、気付く。

 

このおっさん、仕事の合間に頭文字Dに時間を費やしてやがる。

 

集中しているおっさんのポッケからはみ出している携帯の画面に

 

『上司(男装)』

 

て書いてある。男装とか意味がよく分からないが、連絡を無視してまでプレイしているのだ。時間的には仕事の昼休憩は終わっている筈、ならば外回りの途中でここにいる可能性が高いだろう。

 

戦慄しているとおっさんと対戦していたチャラい服装の青年が悔しそうにしながら筺体の席を立ち上がり去っていった。

 

相手側の席がいなくなったのにも関わらず依然として席に座り続けるおっさん、周りの客も誰も座ろうとしない。

 

地味に悪質である。対戦待ちなのは解るがこうも腕前に差があると座りづらい。全国対戦すれば良いのにただ座っている。

 

ふと、おっさんが辺りを見回す。

それに合わせるようにさっきから男装上司からの着信が入ってくるが取らない。取ってあげましょうよ。

 

段々とここまで着信を無視される上司が可愛そうになってくる。仕事の合間に電話してんだろうし早く出てやってください。

そこまで思っていると、鳴り続けていた携帯とりだし、電源を切り、コチラを見つめてくる。

 

なんだ?

 

そして、おっさんが 口角を上げる 人差し指を上げ クイクイ。

 

 

「売ったな喧嘩を、売ってしまったな喧嘩を。なら本気で行かせてもらうぞ小童が!」

 

乗った。

 

 

 

席に座り、コインを投入。前回バージョンのゲーム用免許証を挿入。更新して新しいカードを発行。前のは今のと違いレベルではなくランク表記でかなりのランクまで上げていた。しかし引き継がれた時のレベルは10。

嘘だろおい。

 

周りの野次馬に諦めムードになった。畜生。

 

────おっさんの挑発に乗り席についてしまった。

 

勝てる可能性が少ないのに、乗ってしまった。

 

前世の記憶に基づきこの手の事では、実力者に挑み勝てるという、甘い事柄なぞ滅多に起こらないのに。

 

ため息、一つ。

 

取り敢えず対戦を選択し、車を選択する。

ガレージには三つの車があったがチューニングはどれもされていなくなっている。

どれも初期状態のまんまだ。

虚しい、権能を使ってやろうかと思うが最終手段として取っておく。まだだ…まだ早い。

 

取り敢えず86を選択する。これなら補正がかかって操作しやすい筈。そう思い隣をチラリと確認。

 

────フルチューンの86だった。

 

容赦が全然ない。鬼!悪魔!社畜!

 

もういい容赦なく来るならばこっちはこっちで、やってやろうじゃあないか、覚悟はいいか?俺は出来てる。慈悲なく、躊躇いなく向かう覚悟が、これも勝負なんだ。

 

負けたくないぃぃ...!!!

 

 

 

選択ステージは秋名 下り

 

ここなら、あれが確かできる筈。

ならば後は

 

「『我が振舞は千の執行へと通じる』」

 

権能を使用する...!全能感に包まれ

 

 

 

「ファ!?」

 

おっさんが突如として奇声を上げた。

 

 

 

「大丈夫ですか?何かありました?」

 

「ああ、いえいえ何でも無いです無いです」

 

 

何だ何だ。仕切りに辺りを見回し首を捻っている。今更男装上司を警戒してるのだろうか。

不安ならばその不安を取り除こうか、男装している女性ならば今使用した権能ですぐに探し出せるし察知できる。

 

男を中心に辺りにいる野次馬達を見回す、体を震わせる輩が存在したような気がするが無視だ。きっと気のせいであることを祈る。そんなことを頭の片隅で浮かべながら見終わる。

 

うん、いない。

 

安心しな、おっさんとばかりに権能効果で妙な輝きとインパクトを持ったサムズアップ送る。傍から見ればアメコミ風な自身の姿が確認出来たであろう。受け取ったおっさんも冷や汗マックスでありながらも頷く、そして覚悟を決めた表情を浮かべた。

よしこっちも行くか、

 

上司襲来という減給ものの案件にありながらもこのレース集中すること決めたおっさん、気のせいか何か顔のタッチが違うような…

 

 

画面はもうスタートの合図を出そうとしている。

 

それに合わせ、準備を開始。

 

 

――――最初にあった差は権能である程度縮まったがそれでも限度はある。完璧にするだけの権能だ。

経験に基づく行為では勝てないものもあるからだ。それに、今回はゲームの運転テクニックだけでは勝てない。単純な乗り物の性能の差が半端ない為、勝てない。流石にシステムに干渉出来ないのでそこは完璧に出来はしない。

 

ならどうやって、勝つか?

 

────アクセルを踏む。

 

技術は同じかちょい上。86の性能は初期とフルチューンという隔絶した差がある。

 

これでは勝てない、ならば自分は、どう差を、他の部分で縮めるか。

この勝負、負けなどコインを入れてカード更新をした瞬間から決まっている。

 

なのに何故自分は勝負をしようとしているのか

 

────カウントがゼロに近づき

 

 

自分が負けず嫌いであるの同時に勝てる策があるからだ!

 

 

「な!?」

 

後ろに、作ったカンシャクダマを投下!

誰かが踏み爆発音が響き、野次馬が驚き、おっさんが驚きアクセルを()()()()()()

 

そして

 

「先手は貰ったァ…!」

 

 

素早いスタートでおっさんの前へ躍り出た。

 

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