皆様有難うございます。
これからもよろしくお願いします!
フルチューン86の前方へ躍り出る、初期86。
予想外の爆音に戸惑いながらも慌ててアクセルを深く踏み発進するフルチューン86(以降フル86)
だが生憎にもこっちは最初のカーブに近づいている。
初期86を相手方の前方に移動させ妨害、追いつかれるのは時間の問題だがやらないよりましだろう、と思う。
今回の勝負に辺り彼我の差など勝負前から分かっていた、ゆえに取れる手は取っていく。
くたびれスーツのおっさんのフル86が追いついてるのをマップに確認、その隙の間にカーブが来る。
ハンドルをカーブに合わせ素早く切りながらも、ブレーキを踏みアクセルを踏み、アクセルから離しすぐ戻す、今のようなドリフト動作も問題なく、ひょっとすると昔以上に動作出来ているかもしれない。
違和感も何もなく、精度が完璧に仕上がっている感覚がある。
この無茶無謀な勝負に対して勝ち筋に繋げられる策、簡単だ。
妨害。この一つしかない。
常識的に戦うのならばこの行為は出来ない、だがそもそもな話、常識で考えるならば勝負をするのがおかしい。
だが受けてしまった以上はやるしかない。勝負するしかない。勝つために、どのようにしておっさんに打ち勝つか。心が勝てと叫んでいるような気がするから。
故に完璧になる権能、命名『千の仕事』と自身の特典、それらを駆使して妨害行動をやる。
わざわざ指名して勝負を挑んだのだから、たまたまだろう何だろうが自分に喧嘩を売った以上はそれ相応の覚悟をしなさいな!
メーターを確認、先程のカーブでのドリフト動作でハンドルを切ったことにより減速、チェーンと言う性能強化をしてない為に先程の動作をするたびにスピードが落ちる。初期状態にメリットなどありはしない。それを表すもっともな例がこのカーブ時の減速だ。曲がる度にこれが付き纏う。
減速のタイミングに合わせ、先程からも詰めてきていたフル86が大きく迫る。
対戦の時に後ろにいる車はブーストが掛かる為スピードが上がる。自身がその恩恵を受けてやればいいが戦力差がある為掛かったとしてもスピードがフル86には及ばない。故に如何にして距離を保って置くかが大切である。
二度目のカーブ、ハンドルを切りドリフト。減速が入り、距離を詰められる。
カーブを抜け、直線。
フル86が抜けようとしてくるがこちらの初期86で前方に出て度々妨害する。
何度も画面の中でぶつかる音が響く。執拗にぶつかってくるがこっちも執拗に前にでる。
だが徐々に詰められ近づかれ、そして抜けられた。
『やっぱりか』
溜息とともに落胆の声が辺りから聞こえる。
当たり前だろうたまたま運よく、突然の異音の効果で初期86が前に出れたとは言え所詮初期。
前に出ることなど普通ならば出来やしない。
だが生憎と己は普通ではない。
ブーストが掛かりギリギリで追いすがるなか、コーナーに入り、運転中のおっさんの足に
────呪力の糸を高速で伸ばす。
狙いはアクセル部分だ。そこまで伸ばし作りだすは、ねばねばオイル。
最近アレクに教わり覚えた芸当だ。これさえあれば離れた位置でもひっそりと特典産のアイテムを作ることが出来る。
足にそれがかかりドリフト動作を阻害。その影響でコーナーを曲がり切れず外側ギリギリまで行ったのを確認し解除。フル86はギリギリ曲がり切った。
おおっ、という歓声が上がる。
初期86は今の隙に減速しながらもカーブを抜けている。微妙に間を開け抜ける。ストレートな直線を行く。
微妙な間を詰められぶつけられ減速。フル86の先端が前にでるが生憎と内側を走行している為問題ない。
ヘアピンと呼ばれる連続カーブ、その始めの右カーブが迫り。
微かな溝に車輪を落とし曲がり
溝落としが決まった。
壁に当てないよう微調整しながらも曲がり抜け次のカーブも決める。
距離を詰めてくるフル86。
次引き離すチャンスが来るとしたら5連続ヘアピン。
そこまで、いかにバレずに妨害をするかに掛かっている。
さあ、行くぞ!
○
結果として、勝負には負け。試合には勝ったと言う形になったとは思う。
何故思うのか。最後の5連続ヘアピンでの5連続溝落としを決めた時に仕掛けておいた最大級の妨害行為が発動したからである。
それは
「おじさん、前から言ってたよね?外回りと見せかけてゲームセンター行ってゲームするの辞めてって。有能だから見逃してるけど、今度やったら室長権限で解雇処分にするよ、て言ったよね?忘れたの?」
そう、散々掛かっていた上司からの着信をとったのだ
呪力の糸で。
対戦途中でのねばねばオイルの妨害に合わせ、呪力の糸で通話ボタンをオン、通話状態にしたのだ。
正直ゲームセンターは五月蝿いので大体音で何処かわかるのでは無いのか?と思い、やって見たのだがまさか最後の最後で来るとは。
こっちとしてはざまあみろ、と思う気持ちもあれば
惜しいことをしたかな、と思ったりする気持ちある。
自分の持ちうる手札というか被害が少なめで対抗出来る、限りある手札で戦って勝つ。と言うのが意外と楽しかった。なのでこの第三者による最大級の妨害は今思うとやらなくて良かったかなと、勝負自体が成り立たなくなってしまった。
今更後悔しても遅い。次同じ様な事になったら気を付けよう。
まあ、そんな状況そうそう無いとは思うけど。
「今回は新しいカンピオーネと成られた矢島王とコネクションが取れる機会が出来たからいいけどさ、状況や対応次第では死んでたかも知れないんだよ?」
「いやもうそこら辺は悪かったですよ...」
延々と続く説教これ以上しても拉致があかないので、
「あのーすみません、貴女は?」
声をかけた。彼女(?)はその声に合わせこちらに身体を向ける。
そして、急に姿勢を但し、周りをはばからずに
「お初にお目にかかります。矢島王、私の名前は沙耶宮 馨と申します。 正史編纂委員会、東京分室室長をやっております。今回は私の部下が迷惑をお掛けして申し訳ございません。この行為に長として私がどの様な罰をもお受け致します。それと引き換えに私の部下にだけはお慈悲を...!」
噂の委員会の室長と言い、恐ろしいレッテルを貼られる発言をした。
一気に野次馬の視線が突き刺さる。
これは不味い...!
素早く詰め寄り小声で話す。
「あのう、すみません。せめて姿勢と言葉遣いを普段のようにとしてくださいませんか...?あと王とか言わないように、何もしませんから」
他者から見ると公で行われる趣味公開の博覧会だ。
見た目学生の少年があんなパッと見中性的な人物に王とか言われてる状況だ。ヤバイ趣味と思われるか、集団で頭おかしい事をした連中だと思われる...!
「王の情状酌量の如きご配慮、有難うございます。では、いつも通りに。その前に一つ」
そう言うとやり取りを見ていた野次馬達の前に立つ。
そしてパチン、と彼女は指を鳴らし
────野次馬たちが何事も無かったかのように歩き出した。
「洗脳と記憶操作を施しました。これで先程の出来事は忘れてくれたでしょう。まあ、監視カメラはその限りでは有りませんが」
と、笑っているがバレたとしても委員会の人員が消しに来るだろう。
意外と凄いな正史編纂委員会。カッコイイな男装上司。男装って知らなかったら惚れてたところやんね、危ない危ない...あれ惚れても問題ないような。
「取り敢えず、ここで立ち話でも何ですし何処かでお茶でもどうですか?」
と、取り留めもない思考に陥りそうだったがそれに待ったを書けるようにお茶の誘いがやってくる。
相手は己の事をカンピオーネと分かっているようだった。このお茶のお誘いが何か面倒な案件になりそうだし断ろうか...
「スタバとかどうです?」
「イキマショウ」
スタバに行けるので思わず返事を返してしまった。
今の限定飲めるな、ソイストロベリーなんちゃら。
そのまま何を頼もうかと早い考えをしていたが隣に連れ立つおっさんを見て思い出す。
「あ、そういえばスーツの人の名前はなんですか?」
流れるように行こうとしていたが忘れていた。おじさんとか言ってたし親族か。
「うん?ああおじさんね。名前は甘粕冬馬、今を煌めく忍者だよ」
忍者、そう忍者。日本人から見れば忍び。外国人から見ればロマンの塊。忍者。
アイエエエエ、忍者、忍者ナンデ!?
2011年につきこのネタは通じない現実。
忍者の言葉に思いを馳せる中、くたびれたスーツを纏い度重なる妨害にもめげずゲームをしていたおっさん、甘粕冬馬さんが前に出てお辞儀をする。
「甘粕冬馬です、次は正々堂々やりましょう」
さり気なく根に持ってることはよく分かった。
取り敢えずサムズアップをして置く。まだ権能の効果続いてるしアメリカンコミック風になってる筈。
それを見て甘粕さんも返してくる。
首を洗って待ってな!
「お互い良い感じの関係になってるね、つもる話は有りそうだけどここでは何だし早くスタバ行こうか。あと、おじさん今回は反省文ね。次は減給だから」
「この年になって反省文...」
「ニンジャ...ニンジャなんで...」
そう言ってゲーセンを出て、スタバへ向かった。
○
スタバで話した事は以下の通りだ。
初めはゲーセンでの話から始まった。
甘粕さん曰く、隣で怯えるレベルの呪力の放出を感知出来て、死ぬ覚悟をしていたそうな。まさかノリに乗って挑発した人物が七人目か八人目かのカンピオーネだとは思ってなかったらしい。あと対戦中の多大な妨害行為についても運命だ、と言っていた。
次は沙耶宮さんの甘粕さんに対する愚痴である。
外回りで度々ゲーセンへ行くことについてだ。普段は別の仕事をやってはいるが、組織の傘下を増やすための足掛かり作りのために結構な人数が動いているらしい。その一人として行動するからにはサボるのは辞めてほしいと本人の前で言っていた。言われた本人は目をそらしていた。また行きそうな気がする。
それ以外は甘粕さんのオタク趣味についてや、沙耶宮さんと自分の高校についてそれを聞いて暴走しかける甘粕さんと言った所である。
ここまで話を聞くと普通。
そうよくある話かは知らないが唯の世間話である。
うん
で、本題は?
「本題?いやおじさん捕まえに来たついでにお茶してるだけだよ」
と、沙耶宮さんは言った。
てっきりそこら辺より交渉ごとをするのかと思っていたのですけど。
「今回は初の日本生まれのカンピオーネが二人も誕生してる。委員会も慎重になってるんでね。他国での惨状とかも把握してるからどうやって接するか、協力関係に持っていくかはまだ協議中さ」
「それ言っていいんですか?」
いやそれを交渉する予定の人に話すのはどうかと。
アレク報告案件増えるのは地味に嫌なんですが。
「うん、どっちにしろ奈落君達の赴くままに振る舞うままに私達、正史編纂委員会が対応するようになると思うし。そりゃまあ協力関係結べればいいけどね」
「けど?」
「昔カンピオーネ絡みの事件があってね、それによって協力関係ではなく排除しろとか意見が少数だけどあるんだ。結べたとしてもその一部が反乱起こすだろうし、君達の身内に手を出して日本崩壊の筋書きを作られても困るからね」
「私も対戦してる時にそれを思いましたからね...対戦で日本崩壊も洒落にならない、と。奈落さんと接して見て今思うとそれは杞憂でしたが」
甘粕さん、貴方の中のカンピオーネ像はどうなっているんですか。
それに日本崩壊、沙耶宮さんと甘粕さんの心配は否定は出来ない。多分護堂と自分はやろうと思えば行ける。護堂は『猪』使えば出来るし、こっちは特典もあるし、権能のお陰でえげつない奴も使えるし。
「そもそも対等な協力関係なんて結べるかい?組織に属するカンピオーネは皆組織のトップだよ? 君が出会った『黒王子』だってあんなに奇々怪々な組織のトップにいるのに」
「確かに...」
奇々怪々...まあ組織のメンバーは多分野の人間が揃ってるし、使用する魔術礼装と言うかこの世界風に言うならば呪力礼装?が色々あるし。
ちなみに自分が『王立工廠』所属のカンピオーネだとは一切周りに漏らしていない。スパイだし。
「と、そんな理由もあるからどういった事になるかはまだ分からない。どうするか決まったら何かしら動きはある筈だから」
「あ、ハイ」
と、そう言った話をしてから沙耶宮さんと甘粕さんと別れた。
別れる前に電話番号を二人と交換しておいたので何かある場合は電話してくるそうな。
ちなみに何故男装しているか聞いてみた。
「────趣味さ!」
甘粕さんが冷めた目で見るなか、力強く彼女はそう言った。
最近ギルティギア始めました。
ジョニーたのちぃ!
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