あの後、七雄神社を急いで出た。護堂がエリカさんと共にメイドさんの車に乗りアテナの元に向かっている。その間にこっちは別行動だ。ちなみに出る前には
「護堂さんや奈落さんが持つより私が持つ方がずっと安全です!」
と、ゴルゴネイオンを万里さんが預かった。囮作戦が機能しなくなった瞬間である。問題は特に無いけども。
……そう思いアテナ襲来に備え、神社を改造しようとしたら見事に放り出された。そこから、どうしようかとうろついていると溜息交じりの連絡がエリカ嬢から届いた。内容は簡単交渉失敗と、護堂がやられたという話を聞き
—――――—戦闘の道しかないと決定した。
チャンバラをした時から権能は発動しっ放しであるので問題なく、トラップを仕掛けることが出来る。常時発動しているが、アレクの神速より燃費は良いし不格好な九頭龍閃しか再現していない為呪力はそこまで消費していない。
アレクに貰った地図を片手に、場所を巡りながらどんどん仕掛けていく、前世の知識、今世の記憶。前世の知識は数年先のものだ。今世の記憶のものを知られていたとしても、前世の知識はこの世界にとって未知のものが詰まっている。場合によっては危ないが、神殺しと天秤をかけると自身の秘密より神殺しが大切だ。
そう思い、各所に仕掛けていった。憎しみと殺意を練り上げながら。
○
矢島奈落と草薙護堂が、神社から出ていくのを、見送って万里谷祐理も『都内、まつろわぬ神出現』の報を受けて追いかけるように出発した。道中その報を届けた甘粕冬馬と現地調査に向かい、駅の周辺にて都市の機能を致命的なまでに麻痺させる異常事態が発生する。
まず、瞬く間に光が消えた、慣れ親しんだ人工の光が消え、辺りを闇が包み込む。そして車が止まり電車が止まる。辺りにいた大勢の人々は突如として発生した事態に皆それぞれの反応を示していた。怒り、困惑、混乱、恐怖。原始の恐怖を呼び起こされ、一種の恐慌状態に陥る。
そのような状況の中で、祐理の反応は特殊だったと言えよう。
「死んでいた...?何を馬鹿な事を言ってるんですか!人がそう簡単に死者蘇生をする分けないじゃないですか、そもし本当だとしても流石に生身では生き返れない筈...ならこの電話の護堂さんはゾンビに!」
『 巫女さんの口から初めて聞いたよゾンビなんて言葉!生きてるから!五体満足で皮膚も正常、ウイルスも散布してない身体になってるから!』
突如として辺り一帯に響いたやり取りに、数人が一斉に声を発した方向に視線を向ける。それを感じ取った祐理は周りにペコペコ、頭を下げ。小声で電話先の護堂に話しかける。
「蘇生をしたのは権能のお陰ですか?」
『死んだら発動する能力だな。いや油断してた』
思わず文句を言いたくなったが既のところで我慢、今は異常事態だ、我慢しよう。それよりどうにかしなければ。
「死んだ要因は細かくは聞きません。アテナに何かされたようですが、時間がありませんから。それで今のこの状況わかりますか?」
『ああ、恐らくアテナ仕業じゃないかな、と思う。エリカもそう言ってるし』
甘粕冬馬と予測していた事と一緒だろうと予測する万里谷。
まつろわぬ神は良くも悪くも昔の存在、神話に語られる神だ。幻想の光を好み人工的に作られた光を嫌う。
「アテナが司る深淵が広がってる、という事でしょう。一刻も早く倒さないと。ゴルゴネイオンを届けた方がいいですか?」
ゴルゴネイオンは神社に置いてきた方が良かったが、神に襲撃され御神体と干渉している地脈に多大な影響を受ける可能性があった為、持ってきている。
『いや、それについては考えがある』
護堂から提案を受けた。
内容はシンプルで簡潔で、
「判りました。私がやります、と言うよりはやるしかない様ですね」
彼女は受けた。
『……行けるか?』
「ええ」
本音を言えば、大丈夫ではない。
当たり前だ。死の一文字が頭に浮かぶ、それだけで脚が身体が心が恐怖で震える。死にに行く様なものだ。いや、それ以上に酷い殺され方をする可能性もある。それを頭に思わず思い浮かべそうになるが、祐理は頭を振る。
……ここで、止まったら駄目でしょう。
自身を厳しく正す。あの二人を思い浮かべる、出会った時震えてしまった私に優しく介抱してくれたあのカンピオーネの二人を、ただ一人の個人の為に行動してくれたあの二人を。
短いやり取りの元、電話を切った。
これから起こる事は、一生記憶に残るだろうと確信をし
────前を向き、祐里へ向かってくる存在に目を向ける。
先ほどまでいた混乱する人々はいなくなっていた。神の想念によって邪魔者はいなくなり、必要なものだけ存在せよとでも思っているのだろう。神の想いは一般人には絶大な影響を及ぼす。その影響は目の前の存在が立ち去らぬ限り。
薄手のセーターとミニスカート、白いニーソックス。現代的な衣装でありながら、一切神性さは損なわれておらず、逆に見ゆる存在を圧倒するほどであった。そんな、次元違いの存在が目の前に迫るまで祐里は一切動くことが出来ない。
そして、裕理の前に立ち――アテナは問いかけた。
「見知らぬ神に仕える巫女よ。お主は今、草薙護堂と何かしらの連絡をしていたな?しかも其方の呼び声で現れる権能を使う、と。それは誠か?」
アテナがそう問いかけると共に、威圧感が祐理を呑み込む。連絡時のやり取りはある程度聞かれていたのだろうか。頭の中で恐怖の言葉が無数に上がり連鎖する、ああ、怖い。恐い。感情が心を身体を支配していく、呪いのように連鎖しながら身体を這いずり回るように。
常人ならば耐えるのは不可能に近いこと。
だがしかしその全てを押し込み彼女は、笑顔で言った。
「ええ、そうです。だから、なんですか?」
神に使えるとされている巫女が言うとは思えぬ発言。
遠距離から観察してい委員会の面々は慌てふためいた。委員会でも貴重な霊視の力を持つ巫女が死んでしまうかもしれないからだ。自分よりかなり上の立場の人間に喧嘩を売るようなものだ。奈落がこの場にいたら、覚悟決めた女性は強い、と言っていただろう。
委員会が戦々恐々とするなか、堂々と挑発を返されたアテナは
「ふむ」
と、可愛らしく首捻り。
「────目障りだが、面白い」
ゾッとする程の笑顔でそう言った。
「今、ああそうだ。お主が持っているゴルゴネイオンを渡せば見逃そう。その隙にお主は何処かへ逝くといい。この闇の中では限度はあろうがそれなりの安全は約束されようぞ」
有無を言わさず殺されてもおかしくは無い状況だった。だが、殺しはせずにアテナは逃げるように言ったのだ。
神の慈悲とはまさにこの事であろう。
「いえ、それは無理です。貴方は今からここに来る2人に退治されるのですから」
「ほう?何故だ?」
「私は彼らを信じてますから」
「信じるか……話の内容からして汝が囮を受け妾を、誘導し呼び出す算段だったろうがその種を暴かれてしまっている。故に無駄だ」
それに、と言葉を続け
「ゴルゴネイオンは今ここで妾の手に入ると智慧は告げている。今は不完全だが、それを得ればアテナは完全となるとな。それに本来なら妾は強奪しても良かったがそれをしていない。意味はわかるであろう?」
意味は簡単だ。神のお目通りに叶ったことだ。確実に死にゆく運命であったであろうに、神の前であっても己が意志を通した故に、それを買われて対話しているのだから。
だが、言われても。祐里の意思は変わらない。
助けてもらった、変えてもらった、あの二人の中では小さな事かもしれないけど、祐里の中では大きかった事だ。震えた手を取って止めてくれた。
そして、彼らは言ってくれた。
『自分達に任せなさいよ、ヴォバンが来ても護るからさ、なあ護堂?』
『おうよ、俺達二人が揃ってるから、女の敵なんざ簡単に葬れるさ』
余りにも嬉しかった。過去から今まで牙を剥き出し続けてきたトラウマから護ってくれると、約束してくれた。
ならせめて、せめて、思い繋げる為に、祐里は覚悟を決めて前を向き、吐き出すように言った。
「それでも私は言い続けます。それでも私は祈り続けます。神に祈るより、あの二人を信じて祈った方が良いのだと。いつか何処かで祈った神々がこんな形で脅威になる世界なら、私は神より身近な二人のカンピオーネを信仰します!だから言います!だから叫びます!!それでも、貴方は、二人に退治されると!!!」
祐里の言葉に、吐き捨てるような表情になったアテナは、突如後ろに飛んだ。
――先ほどまでアテナがいた位置に、正方形の青い石が突き刺さる。
粉塵を巻き上げ、コンクリートが瓦礫となり辺りに散る中、一際デカイ瓦礫がアテナにへと飛んでいく。そして、石の上にいる八重歯剥いて、威嚇する少年を見る。
アテナは殺意を向けた表情を、祐里は希望に満ちた表情を浮かべ
「この忌々しいタイミングで現れるとはな!カンピオーネ!」
「奈落さん!やって下さい!!」
「矢島奈落、ワン切りを確認した。さあて、どっかへ行きな神様ァ!!」
その言葉を契機に、髭が生えたミサイルがアテナに殺到、女神は苦々しげに顔を歪ませ下がりながら追尾するミサイルをギリギリですり抜ける。その途中カカッ、と足を鳴らし、奈落に石の梟が殺到。それに呑まれかけるが慌てた様子もなく、手に輪郭が丸い花のような物を創り出し、花が粒子となり身体に入っていくと、奈落の容姿は全体的白くなり、頭には白い帽子
そして手には灼熱の塊が出現する。
どの環境でも、どのような状況でも確実に相手を焼くその灼熱を、回りながらばら撒き、石の梟を焼いていく。
しかし、数匹はそれを避け迫る。凄まじい機動力で焔を避けて少年に飛ぶ。奈落はアテナに視線を向けると呪力の糸に近いものが伸びてるのが見えた。
今でさえ、鉄球のようなバケモノや植物を避ける中でも、攻撃を仕掛けようと、繊細な動作をしているのだ。人間業ではない事をしでかす女神を、見やりながら、呻く顔をしながら奈落は
「やっぱり神様ぶっ飛んでるね!!」
「それはコチラのセリフだがな!!」
勢いづいたと1匹の石梟が爆発、思わず受ける動作をすると、同時に襲ってきていた梟の嘴が変質、槍のような形になり先程より攻撃性が高いものとなる。変態的な機動をせずに最小限の動きで奈落に迫ってくる。奈落は顔を顰めて、手にある焔を圧縮し、呪力を流し込む。
瞬時に身の丈程の大きさになり、塊の形が崩れ、炎の嵐となる。周囲の石生物を巻き込み広がりながら、膨張し、
―――瞬時に形を変え、渦から襲いかかる蛇のように焔アテナに襲いかかった。
舌打ち一つ響かせ、石でできた梟や蛇を焔の前に盾として機能させながら、アテナ自身は前に出る。絶好の機会と言わんばかりに手に10tハンマーを出現させ、瞬動で一気に前に出ながら、魔力放出で爆発的に加速させながら叩きつけようとする。
「嵌ったなカンピオーネ!」
憎々しげな顔が一変し、してやったりと策が嵌ったような顔を向けると、アテナはハンマーを避け、そのまま前方へ、祐里のいる方向に向かい、祐里の懐からゴルゴネイオンを咥えた石の蛇が現れる。
「ふがいない形だが、しょうがない!」
歪な形の蛇が祐里の懐からゴルゴネイオンを取る。
「あっ!」
咄嗟に手を祐里が手を伸ばすが蛇以上の俊敏な動きで避ける。そしてアテナに渡るゴルゴネイオン。そのまま女神は天に向けて、高らかに謡い始める。
奈落が近寄ろうとするが周りに石で出来た梟と蛇が湧き上がり、妨害してくる為近寄れない。
神獣より力は弱い為、破壊は簡単だが、壊しても周りの石の梟と蛇が身体の石を切り離し、砕かれたアスファルトを混ぜ、また生まれでてきた時点で破壊を辞めた。
そして、アテナの姿は完全なる三位一体。
ゴルゴン三姉妹をも取り込み、まつろわぬアテナとなる。
余裕の表情を浮かべるアテナ。
「さあ、神殺し。続きを始めるぞ!」
そして手に持った
「―――来なよ、護堂」
虚空から草薙護堂が現れ、黄金輝く剣を生み出す。
使用したのは護堂の数ある権能のうちの一つ『風』の権能。風が吹く場所に立ちそれなりに親しい相手から呼ばれるだけで呼ばれた場所へ推参出来る権能である。この権能は使い勝手が非常に良い為、護堂は専ら、遅刻しそうな時に遊びに行く時に奈落に物を借りに行く時等々。日頃から多用しているお陰でこの権能ともう一つだけは、掌握までは行かないがそれなりに把握し始めていた。
「アテナは各神話に姿を残し、多様な力を持つ神である!!」
黄金は、神を切り裂いた。
「よく考えてみると、こっちとしては神具を無事に確保しても他の神様やって来て面倒だから、敢えて取り込ませて完全体となった存在をゴルゴネイオンごと退治。そうすれば問題ないよね?」
隣に護堂が並び、奈落はそう言った。ひっそりと後ろで聞いていた甘粕は白目だったそうだ。
○
ここから本番だ。致命傷には遠いが神格の一撃を受けてくれたのはデカイ。危うく死ぬところだった万里さんに自責の念が突き刺さるけど、今はあと、吐き気がしそうだけど、後だ。
それより確認したい事がある。
「ねえ、護堂。一つ聞かせて欲しいんだけど」
「なんだ」
目の前の存在を指差し
「目の前から何で『夜』なんて言葉を連想した?」
「直感」
「張り倒す」
目の前の存在は戦馬車に鎧、手には槍、そして
見覚えがかなりある、て言うか何でこいつの姿で顕現してるんだ。
前世で流行ったゲームだが、この時代ではまだ出ていない。ゲームの配信は来年の2012年から。故に、神話に影響はない筈だ。現代の人々が語り継ぐ物語に可愛いキャラとしてアテナは存在してるだろうけど。
だがしかし目の前にいるのは、アテナだ。
スマホゲーで一大ブームとなったパズル&ドラゴン。
―――通称パズドラに登場するアテナだ
はい、お久しぶりです。仕事に企画参加したりうたわれやったりP5やってたりと色々遅れましたが更新です。
奈落君とその他もろもろの要因で変わってしまったアテナさん登場です。次か、その次ぐらいからマリカーです。
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