記憶にはないことだ、この事は。本来なら有り得はしない事なのだろう。矢島奈落とか言う神殺しが言うからには。だが、それがどうした。
神話には語られていないことであろうが、子と一緒に難敵を打ち砕く。
ああ、何とも甘美な。夢の事、ならば妾は、奴らを殺してもこの夢が続くように、努めよう。果たすべきならそうすべきだ。
ああ、どうかこのまま、子供たちと一緒に空を駆け抜け続けたい……
〇
「さて、これにて幕を下ろそう。草薙護堂は消え去り、あとは貴様だ。我が子を葬り去った貴様を殺せばあとは終わりだ。妾の衝動思うがまま、妾の智慧の導き出すままに、暴虐の限りを、カンピオーネを作り出し、我が子を殺した、この世界に復讐を」
緑の髪をたなびかせ指揮者のように、静かに指を振る。大量の石梟と石蛇が明確な殺意を持ち、突撃。自分はそれに1tハンマー片手に突っ込みながら、大量の呪力の糸を伸ばし接続できる限り石生物達に接続、呪力を吸い取り、あらん限りの呪力を吸収し石生物を自壊させる。1対1になった以上なりふり構ってられん。常時呪力を吸収自壊させながら、特典でたつまき・ボム兵を投擲、薙ぎ払い爆発させながら進む。
―――その瞬間、真横にいた石蛇とアテナが入れ替わる。
かの女神は既に槍を構えており、闇の呪力を加速器替わりに放出し、技術も加え、刺突を放つ。寸での所で気づき態勢をズラして肩を擦る、苦し紛れにボム兵を投げるが、真横にはもういない。真上からジェットエンジンみたいな音がしたと思うが同時に、目の前の空間を蹴り飛ばし後ろに下がる。アテナが先ほどまでに居た位置に槍を突き立てていた。
……魔力放出もパクられた?
あの異様な爆発音からして確実だろう。今まで、戦うまで、一回使うまでは良かったが。流石に二回目はバレてしまった様だ。
特典までは解析されてないのは有難いが、これはマズイ。そもそも飛雷神の術をパクられたのが相当不味かった。パクられた上にこんな使い方をされるとは厄介だ。
と、何か噛み砕くような音が聞こえるので発生源の後方を見る。
石蛇が乱回転されながら圧縮された球体が飛んでくるのが見えた。
……構造簡単なのは見破られるなこれ。
飛雷神の印を刻んでいた投げやすいボールを、ポケットから取り出し投げる。カバンを持ってこなかったのは不味かったな、と思いボールが居た位置へと飛ぶ。
そして球体、アテナ版螺旋丸が爆発して爆風が広がるのを着地して確認、
―――目の前で首を刈り取ろうとしていたアテナの鎌をビリビリスティックを叩き込む
付いたと同時に呪力糸を放出していた為に気づけてよかった。着地時にいた石生物は自壊させ、次から次に来る存在を瓦解させる。
近距離で自分とアテナの視線が交錯。貴様は殺すと、目は語っていた。そのまま打ち合いに移行、相手に痺れる様子は無くはないが意味なし。
本来なら鎌は近距離で扱うものでは無い為打ち合いなど出来ない。が、今はアテナが魔力放出で加速させ身体を支点に鎌を身体を一周するように回転させスムーズにうち会えるようになっている。自分はそれに合わせ加速技術を再現し応戦するが、足払いを掛けられ、転倒。それに合わせ雪崩込み波濤のように石梟が襲い掛かり、石蛇が飛びかかる。
「終わりだ。死はスグそこだ」
物量で目の前が覆われる。ギャラクシーのアイテム、オバケキノコを使う。
白く丸い体につぶらな瞳、テレサというゲーム上の架空生物に変身。効果は至ってシンプル、空中浮遊と透過。
だから石の滝なんて、簡単に突破可能。
降り注ぐ生物を透過でやり過ごし外に脱出。ふよふよと丸い球体が上がっているのがアテナから見えてるだろう。なにか混乱はしているだろうと、アテナに顔を向け、先ほどと変わらず冷たすぎる目をしていた。そして言葉を自分に向けて零す。
「手札が多いということは相手と一つの信頼関係を作り出す、それはな」
風を切り裂く音が聞こえ
「必ず反応、対応をしてくれる、という信頼だ」
天馬が自分の丸い体をぶち抜いた。
「あ、げ……うわぁぁぁ!!?!」
体が引き裂かられる感覚に陥る。大事な、腕が、無い。何故か確信する直感で、確信する。する。する。
あっては行けないこんな事、あっては行けないこういう事は、前世の知識が記憶として警告する。
常人の記憶が積として重なる。絶望が頭に浮かぶがそんなものは粉砕する。たかだか腕がやられただけだろうと。
アテナは劇役者のように手を振り上げ語る。
「貴様はなにをしていた?妾の攻撃、行動全てに対応していた、してしまった」
体を元に戻すと、やはり右腕が丸々亡くなっていた。事実として認識すると流石に辛い。
だが、呆然とするなかでも 頭の片隅はテレサ状態での損傷はランダムだと、記録を取っているのが分かる。痛みは、アドレナリンが出ているのか感じない。よし動く、なら脳みそを調子を戻せ、しかしそれ以上考えるのを放棄。動けるなら逃げなくてはならない。
アテナは指を振るい、消える。
「別の神ならいざしれず」
その発言と共に石の雨が降り注ぎ始める。
後ろに死の気配を感じアテナに対応、雨あられと降り注ぎ始めた石梟と共に抉り込まれる槍に切断面から糸を伸ばし接続、無理やりに干渉そして吸収、大きな腕へと変化変貌させ巨拳を振るい、粉砕する。魔力放出により重量比によるバランスの不安定は無い。
その中をアテナが飛雷神の術で飛び回り、天馬が突っ込んでくる。
「この私にそれをするとは愚の骨頂だ、ああ……殺してやるぞ神殺し。子を殺された親の気持ちを考えたことがあるか……?」
海浜公園は今をもって天候石梟という頭のおかしい自体になっている。そのせいで陥没箇所が増えており、足場がかなり悪い。躓きに気をつけながら走り回る。
石梟はまだ体内呪力を爆発させ辺りに呪力を撒き散らしながら降ってくれれば、呪力を吸収しやすいのだが、ただ降ってき空へまた登って降ってくる。
落下してくる無数の石梟を叩き割ろうと、巨大化した呪力腕を振るうが、当たる直前に直撃範囲に入っていた石梟とアテナが入れ替わり、槍を突き刺し呪力腕に死の呪力を注入される前に、呪力を爆発させるが
「無駄だ」
爆発する直前であった腕を無理矢理、蛇の邪眼で石にされ、予想以上の膂力を持って上空に投げ飛ばされる。
そして、空にそびえる大鎌を観測した。
「……は?」
「……貴様の為に丹念に精錬した死の鎌だ。存分に味わえ」
生きる人間としては逃れ得ることの出来ない要素が目の前に君臨している。神の口から死の鎌として、発せられたのだ、ならそれは言霊の力をも兼ね合わせて死を体現しているのだろう。そうそう死にはしないカンピオーネでもあの鎌に触れれば死ぬ、絶対に。あれはそういうのものだ。凄まじい質量を持って顕現し、死の概念が凝り固まって存在している鎌だからこそ。込められた死の神力が桁違いだ。それこそ別種の従属神と誤認するぐらいに。
振り下ろす腕に合わせ、大鎌が大回転。落下が始まる。当たり前のように呪力で加速。
これを受け止める術はない。鉄拳も呪力糸も螺旋丸も特典も全て触れて仕舞えば死ぬ。あれは周りの空間を殺して、死なせて、死という概念に変貌させ吸収し増大している。
ここには今、勝ち目などない、詰みに入ってしまった。
「仇はここに、冥府より深い、深淵で怨嗟の声に沈めぇぇ!!」
今までなかった、怒気が入り、空の果てからは天馬が落下してくるのが見える。
塞がれた時のために追撃も用意され、常に全力で、戦場を支配し終わらせない風に戦っているようにも見えた。戦場を何時までも終わらせないように、恨む相手をいつまでも嬲るように、想いを、憎しみを発散させたいが為に、子を失った悲しみを忘れない為に。
例外が重なって顕現したアテナ、まつろわぬ神として本来の神話にはなかった親子の絆を得てしまった神様。
ああ、なんと悲しきことか。
だからこそ、シンプルに、簡単に、生き残るために、かの神を、一人の母を討滅しなければならない。
「カーテンコールは今ここに」
合図として、言葉を響かせる。
鋼の獅子が、空をかけ、背中から金色が落下し
「神話では、メドゥーサは死にその時に天馬ペガサスが生まれている、そう本来ならば今回の邂逅は起こりえなかった!!!」
身体のあちこちに血を滲ませながらも、全てを黄金で切り裂き、準備は、同時に整った。
各所に仕掛けておいた仕掛けを起動する。
「太 陰 道 展 開」
○
正史編纂委員会本部で話し込んでいた各室長、避難勧告を出していたもの、避難行動をせず辺りに隠れていた者、誰もがそれを目にする。
東京、各地区の環状高速道路、真下の地面が光り輝き、闇を喰らうが如く吸い込んでいく。
○
「固定、掌握」
各所から送られてくる膨大な呪力を無理やり固定していく、技能自体は事前に何回か使っている為完璧にいける。
塊を握り潰し、呪力が力となりダイレクトに身体に影響を及ぼしているのを感じ、それとは別に大量の呪力の縁が繋がっているのが分かる。本来なら陣で吸収した力を自身の力として、全て吸収するのだが、それだと陣が効果を使い果たし消失してしまう為、そのままにして置いている。貯めた呪力は一気に使い切れはしない。
今回のようなトラップ型の再現は、事前に検証したものだけじゃないと、最初の使用で不完全な為、殺される。
桜花の再現は技術的なものであったのと、使わないと甘粕さんも巻き込むためシーンだったので何とかなったが、あそこはギャンブルに等しかったから今後は勘弁願いたい。
黄金剣を未だに展開したまま護堂が合流する。
「よく生きてたね護堂、九割方死んだ者と思ってたんだけど」
「運よくエリカと合流してな。まあ、言いたいことは色々あるけど……おま、腕落ちてる!?」
「これはお気になさらず、ほら行くよ」
吐息を漏らしながら護堂が軽く剣を振り、剣先を向ける。こっちもそれに倣い、体をアテナに向けた。
○
アテナは呆然と指を虚空に伸ばしていた。そこは先程ま天馬が落ちて来ていた位置。天馬は近づく護堂に気づき、攻撃を仕掛けたがゆえに黄金に切り裂かれ消えていってしまっている。ポツリと呟く。
「私は、本来なら子と触れ合うことは無かった」
身体から死が溢れる、哀しみに震える体から、染み出るように、死が流れ出る。
当たりに生えていた雑草は死んでいく。アテナの手に死の鎌。先程の洗練された死の鎌より深い死が凝縮されている。眼光は子を殺した怨敵を睨みつけ、邪眼になり、相手を石にするが、護堂の剣がそれを防ぐ。
「
ほんの短い、一夜の夢だったのか。それすらもう、分からない。だけど、この夢だけは、続けていたかった。
「だが、それも全て貴様達が綺麗に粉砕してくれた」
それはもう構わない。
それはもう忘れなければならない。
それはもう燃料にしなければならない。
「闘争本能に従って子を守るという選択肢を私は、取らなかった。それ故にあの結果だ。神として親として、間違えた結果だった……だからこそ」
眼前に並び立つ二人のカンピオーネを殺す為に、滅ぼすために。漆黒のいや、深淵にも勝る思いを。
「だからこそ!!貴様らを滅ぼすために!!」
己の神性の一部を切り離す、影響を与えない範囲で切り離す。
「守護神の側面を生贄に、天地開闢の権能を今ここに!」
辺りに漂う呪力の残滓が収束し、始まりが顔を覗かせる。
「……母親として目覚めたアテナ。アンタの気持ち、大切な人が死んだという気持ちはよくわかった」
「うん、よく分かる。本当によく分かる」
奈落は前世にも体験し、今世にも体験している。
護堂は婆ちゃんが死んだ経験がある為わかる。
だが、されども。
『
残念ながら、カンピオーネに取っては、これは結局、そういう話で。
「思いはよく分かるんだけど」
奈落は収束魔法、意図的に、不完全に再現し、先程よりも呪力を収束圧縮し腕を作り、いつでも放てる様にセッティング。
護堂はいつでも前に走り出せるように構える。
「それはそっちの都合、そもそも俺達がいる領域にカチコミ掛けてきたのはそっちだろ?」
「クハハ……草薙護堂よ、あの時のように話し合いで解決しようとは言わないんだな」
「ああ、言わない。そもそもここまで被害が出た時点で見逃すとかいう選択肢を選ぶのはできない。そういう奴は神殺しですらない。俺の友人が被害にあってるんだ、見逃してたまるか!」
「フッ、そうか。キサマらはそういう生き物だったな……」
――顔付きに凄みが加わり、天地開闢の概念の塊がアテナの周りを舞い狂い、辺りを根こそぎ削り取る。
「じゃあ、いこうかね護堂。この戦いは終わらせよう」
「だな」
呟き護堂が前進、奈落は魔法陣を空間に展開。
アテナは石の生き物を進ませるが剣によって意図も簡単に切り裂かれる。死の鎌をたらりと下げ、アテナが突貫。護堂に接敵すると鎌を斜めに振り上げる。視線と身体から斬線を感知し剣で受け止めて弾いてから後ろに後退。先程の位置を開闢塊が通過していく。
「……アテナの知識にあんなのあったか?」
「護堂ちょっとどいて!!」
と、奈落が叫び。慌てて護堂が退避すると
桃色の極太閃光がアテナの位置に通過した。
ぎこちない首の動きで護堂が奈落を見る。
奈落の後ろにはまだ、三つの巨大呪力塊が浮かんでおり
「三発放ってアテナ討滅……!!!」
三つの閃光が追撃とばかしに叩き込まれた。
今回の技能
・闇の魔法
ようこそ!闇の世界へ!というノリで、使うと闇へと引っぱられる魔法。攻撃魔法を取り込むことで魔力兵装を身に纏う。が、今回は別で太陰道という吸収術でアテナの闇と神力を吸収変換し、力のみを纏っているため外見的な変化はなく、内面的な力がパワーアップ。
ちなみに吸収量はかなり多く、カンピオーネでも許容できない呪力があった為全てを身にまとえず、まだ各所の陣に呪力を貯めている。
・呪力腕
呪力で作った即席義手である。流し込む呪力によって大きさと硬さが変わる。
・収束魔法
呪力を集めて固定したり砲撃にしたりする魔法。今回は応用して腕にした。最後の?次回じゃよ。
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