アイテム使いの神殺し   作:アルリラ

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第八話 本来とは違うもの

 桃色の閃光を張り巡らせ、三発叩き込み、準備を整える。呪力のレールを、いや呪力回路に呪力を循環するように廻す。貼ってある陣を全て循環し自身を通るように設定する。

 閃光は天地開闢の権能でできた塊に飲まれて消えた。やはり甘くはない。ゲームでいう第三段階だ。そろそろ終わらせなければ。

 

 ―――そして言葉が強く響く、言霊を紡ぎ神を殺すために剣を磨ぐ声が

 

「―――アテナは三位一体の側面を持つ女神である」

 

 

 知らぬ人がこれを聞いても何も思わないだろう。一般市民がこの言葉を耳に入れてもなにも連想しないだろう。語られる本人でないと効果はないからだ。今からやることは神話の解体。語られる話の主人公を滅ぼすための権能。言葉に合わせ、正しいとは思えない持ち方で構える剣が煌めく。それに合わせ辺りに黄金の光増えていき、護堂が駆け出した。それに女神は遠距離からの弾幕を返答とする。

 往来のように石生物を発射しているのではなく、死の概念を球として射出。黄金を盾に、身体をずらし、ステップを踏みながら前身する。死弾の通過点では全てが死に、生者の存在を否定する空間が出来ている。弾幕を放っている為恐ろしい規模で死に感染していく。

 

 だが、起こってしまったことはしょうがない。空間が死んでも戦闘に支障は出ないので護堂の動きに合わせ、収束砲撃をアテナに放つ。

 石生物達は死に触れて死んでいるため気にすることは無い。

 

 

「多数のあり方を持つ女神アテナ、その中でも有名どころはエジプトのイシス、バビロニアのイシュタル。この神が持つ属性は大地と冥府の闇。あなたはその属性に合わせ、天上の叡智を持つ神でもある」

 

「……言霊の剣、特製を見るに対神格か!」

 

 

 声が剣に絡みつき、黄金の光が無数に出現し、広がりつつある闇を照らす。光と火を否定する闇ではなく。生者を否定する闇をだ。一般人から魔術師まで一切の例外なく殺害する闇である。カンピオーネなら問題がないが、簡単にはいかないのが常である。

 空間が歪み、物体が吸い込みながら動いているのが、遠目から確認。砲撃を発射し軌道をそらそうとするが、逸らせない。

 しかし狙われた当人は察知し避けた。

 

「あっぶねえ、今の開闢の塊か!奈落、感知して援護!あとはカンで合わせるから気にせず撃ってけ!!」

 

「雑だからね!さすがに雑だからね!?」

 

 開闢塊が闇を吸い込み、闇に染まっている為、油断はできない。

 開闢とは始まり。何者にも染まっていないまっさらな状態。これから色に染まるもの。本来ならゆっくりと彩りを取得していき、美しい殺戮兵器になる権能。だが闇を吸い込みどす黒く染まってしまったようだ。

 

 暗殺者のように開闢塊が黄金の光を一つ、一つロウソクを消すように消滅させていく。それでも構わず言葉を綴る。

 

「三つの属性、常に併せ持つ。これぞ正しく三位一体、この性質こそがアテナの特徴だ。闘神の特徴はなぜあるのか、簡単だ。冥府神の特徴が災厄の象徴である戦争と結びついたから。人が死ぬところに死神あり、ゆえに災厄であり闘争の象徴である戦争と結びつくのは自然なことだからな」

 

「私の過去を暴いて何になる!負の面を声高に語り武器にして力にするとは、ふん。どちらにせよ殺してやるぞ神殺し……!!」

 

 アテナが接敵。鎌を両手に持ち舞踏のように切り刻む、その全ては急所を的確に狙い。仇の死を臨んでいる。

 だが、黄金の光を武具にし、矢継ぎ早に入れ替えながら防ぐ。光が消え、闇が増え、闇が消え、光が増える。

 

「そして三位一体を成り立たせる鍵は『蛇』だ」

 

 蛇とは、神話的観点から見て死と再生の循環の象徴でもあり、季節の移ろいを象徴できる生物だ。

 脱皮と目覚め、蛇の性質は神話とも深く結びつく。

 

「豊穣と恵みを司る『雄牛』とアテナは結びつかない、何故なら死を司るのに豊穣と恵みは与えることなど出来ないからだ。ゆえに、再生と禍々しい死の循環を表す『蛇』こそが、あなたには相応しい!!」

 

「やはりそれはウルスラグナの剣か。それなら『風』も納得が出来る。なら、手を変えなくてはな!」

 

 死の闇が上空に浮かび上がり、雨を降らし始める。だが降りゆくそれは雫という生易しいものでは無い、ボトリボトリとタールのように、降り始め。通過した空間もろとも殺していく、いや改めて視認して分かったが、死で空間を塗り替えているのが分かる。

 黄金の光は次々と先程より早いペースで消えていく。攻防一体にもなる戦士の権能だが生み出すアテナの舞も防がなくてはならない為、ジリ貧だ。

 

「意味はないぞ?」

 

「っ!!あなたは『鳥』とも結びつく神でもあり……ああ!!クソ!!」

 

 そしてとうとう、アテナの猛攻によって言霊を紡ぐことが出来なくなった。近距離の為口を開けた瞬間に死弾が着弾。盾となった煌きがまた消える。

 

 ただ神話を解体するだけでもいいが、これでは言葉を紡ぐことが出来ない。

 口を開けねば『戦士』の権能は財宝の如き輝きを発することはできない。声をだし語る聖句だからこそ意味はあるのだから。だからこそ、その状況を作り上げなければならない。

 出ないと勝ち目は薄い。時間を取らねば、切り札は使えない。

 

    ゆえに、奥の手を解禁する。

 

「ふん、今更どんなものでこようとも、私には関係ない。闇に堕ちて死ぬべきだぞ矢島奈落?」

 

 女神は、桃色の輝きを邪眼で石にし、護堂は蹴り飛ばしこちらに距離を詰め鎌を振る。腕の形に収束していた呪力を爆発し避けようとするがひと睨みで即席の重りとなり苦痛の声っを上げる中、死神はためらいもなく首を飛ばした。

 

 あまりのあっけなさに数舜動きを止めるが、溢れる胸の歓喜は止まらなかったようで。

 

「あああああ!!殺した殺したぞ神殺しぃ!一人目の敵を、我が子の無念を一つ晴らしてやったぞ!」

 

 涙のように流れる黒い雨はアテナに当たり溶けていく。護堂に降るタールの雨は黄金光にあたり消えていく。

 

「嘘、だろ。奈落、嘘だよなおい!!!奈落!!返事をしろ!」

 

「意味の無いことをするではない草薙護堂」

 

 まだ残っていた身体を闇に飲み込み、丹念にあたりの空間を開闢で喰らい尽くす。生き返る可能性がある神殺しに対しては妥当な対応である。

 

 だがまあそもそも死んではないのだが

 

 分身系統は日頃から使っていて正解だったと心の安堵を付きながら、空の死の雲と周りの闇を収束し砲撃としてアテナにあてず空に打ち上げる。これで視界の妨げとなっていたものを喪失させる。代償として砲撃の進路上はすべからくして死に溢れたがあとでどうとでもなるためスルー。

 

「ちぃぃぃぃぃ!!!」

 

「バレてるじゃねえか奈落ぅ!!!」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()で叫び返しながら、ビリビリスティックを複数投擲。消し去った闇に気づきながらもアテナ、冷徹に対応、開闢を飛ばしスティックを消し去りながら、内部の神力で練成した鎌を複数同時射出、即座に後ろに下がり、呼吸を合わせたかのように護堂が割り込み剣で鎌を迅速に処理し開闢は光を重ねて逸らす。

 

「私の胸の喝采ぐらい堪能させてくれないか?」

 

「嫌だなぁ、それぐらいが丁度いいじゃないですかぁ!!」

 

 地脈経由の呪力を収束し発射、無遠慮に辺りを包み込むような砲撃だが護堂には当たらない。

 女神は死の闇を身体から排出しつつ、砲撃を回避しながら応戦、剣をバットのように叩きつけながら鎌を掻い潜り、後ろに下がる。詰められないように適当な形に収束しておいた物体を爆発させて妨害。

 

 そして密かに護堂は剣を研ぎ始める。

 

 

 

「……アテナは子を生むことは無い。何故なら、処女の誓いがあるからだ」

 

 内容はこちらが指定した。シンプルに―――親と子の話をしよう

 

「だがしかし、エリクトリオスという子がヘーパイストスとの間に望まぬ形で出来しまった。予想もしない子供で事故によって産まれたようなものだが、アテナは立派に育て上げ、のちに自身が治める神殿の王となる」

 

 黄金が煌めき斬閃を描きつけながら、アテナが再び降らせる死の雨を走り抜けていく。振りゆく雨は護堂経由で呪力盾を層にして複数形成し防ぐ、まだこちらには雨の魔の手は及んでいない。

 

「望まれぬなくとも子は子だ!罪は無い、だから育てた!!」

 

 ここに至るまでの経緯もあり、当たり前のように反応。

 

 そして闇が広がる。紅い目が煌めき、砲撃が石となる。

 使い手も石になるまでに砲撃放出を打ち切り回避、危ない。

 

「しかし、以降の神話を探してみても子と共闘したという話はない。だが、例外が一つ。大きな大きな現代の創作が、神話ではない物語の中でそれが叶った。故にそれが反映され、今回のようなことになった。」

 

 ここに語るは、現代の物語。運命(Fate)の夜の物語。深くそして面白く誰もが熱狂する世界を持つその作品がこのアテナの神話に組み合わさった為、ペガサスと共に今回の死闘の舞台に降り立ったのだ。

 

 言葉に呼応するように、闇が広がる

 

「ゆえに天馬という子供との共演が叶い、そして先程のエリクトニオスが考案し、発明した馬で引くギリシア戦車を使っている!」

 

 闇が広がる、放たれたたつまきは侵食され死の竜巻に書き換えられ放たれ返される。シールドを僅差のところで使い逃げるが一発で剥がされてしまった。

 黄金と死の攻防は白熱、護堂がフルスイングで叩きつけるが片手の鎌で絡めて逸らし、もう片方で死の波を放つ。しかし爆発させたような拙い魔力放出で横に避け、剣を叩きつける。女神は体を逸らし開闢が辺りを喰らいながら突き進むのを、ボムへいを投擲し収束砲撃を叩き込み進路を変更。

 

 護堂が魔力放出を使ってる、手数が増えるのはいいことだな。

 そんな呑気に思考を紡いで砲撃をアテナに放ち、妨害。

 

「処女の誓いは破れない、だがエリクトニオスとの日々は幸せだった。智慧で導き、芸術を感じさせ、愛の全てを教え込んだ……果てには私の神殿の王となった!これを誇りとせずになんというかァ!」

 

 苛烈になる舞闘に護堂は持ち前の観察力、直感を使い捌いていく、自分は超圧縮した収束砲撃を当たりかける鎌に当てていく。

 

 タイミング的にはここだろう。

 

 念話、契約パスを繋いだことで可能となった、超高密度の呪力刻印三角の一つを使用。

 

()()()()()()()()、黄金よ我が手に宿りて力を振るえ」

 

 先程の死んだフリの時にお守り経由で護堂と繋いだ契約ラインに呪力にものを言わせた命令を下す。

 それに合わせ半ば無理やり出来た護堂との、もっと別の線から戦士の権能に干渉し言葉を紡いだ。

 

「―――そして、汝の姿は真実ではない」

 

 知識から、真実を持ってくる。

 自身の手にも剣が創られた。戦う二人の元へ割り込みをかける。

 

「そも、瞳の色はアテナという名前から青色、灰色と様々な解釈がもたらされているのに、紅い目である。赤とは古来より太陽を意味する色でもあるため、夜に由来するアテナとは何ら関係ない」

 

 護堂と契約を結んだことにより、権能使用に必要な知識が流れ込みそこから真実を導き出す。

 我らが草薙護堂はバットのように言霊の剣を振るっているが、己は違う。この便利な権能を使わずしてなにがカンピオーネだ。使えるものならなんでも使って神を殺す。それが自分たちだろう。

 

 ゆえに、桜花で音速に到達し、魔力放出でさらに加速。

 そして、はやぶさ斬りから連続して霞楼を再現、斬りつけたところから呪力糸を炸裂させる。黄金とは関係ない呪力攻撃ではあるが、多少は効果はある。目眩しも兼ねて砲撃を近距離から放ち離れ、護堂が隙間に入り込み切りつける。開闢塊は幼なじみの邪魔にならないよう収束砲撃を当て進行を遅らせて避けさせていく。

 

 護堂が受けている隙に、自分は神格斬殺の剣を研ぎ澄ます。

 

「アテナの髪の色が緑髪なのがおかしい。近代では緑髪ではなく、銀色か金褐色と人々に認識されている。緑髪は個人的解釈でならわかるが、人々に認識され伝わってはいない」

 

 否定する、外観を神話的矛盾を否定する。

 

 神話を壊せ。世界規模で謳われていない創作の要素を取り入れた神を討滅せよ。

 

「そもそもな話、本来の神話に、今回のような邂逅はない! 何故なら天馬と二人、並び立つ神話はないからだ。アテナが死んだ後に天馬は生まれ、羽ばたいていったからだ!」

 

 心を壊せ。否定の言霊の剣で!!

 

「そして、三位の元となった神格はゼウスが君臨し始めた時代に合わせ堕落させられている! ゆえに、堕落させられのちの世で魔物と言われた女神たちよ! 汝らに空に羽ばたき星座になった天馬と並び立ち今の時代に神話を残すのは今ココに置いて正しいことか! 星になり空を翔るペガサスと冥府を統べる神は並び立つことは本当に神話通りなのか!!」

 

 空と大地。古来から別の領域としてそれぞれ描かれてきた。根本の属性が違う彼らは神話的に見て正しいのだろうか。

 

 

「やめろ……やめろやめろ!!!」

 

 神話の否定によって、智恵により封鎖されていた感情の波が流れ出す。

 死の領域も空間を、慟哭によって世界を書き割るように死を拡げる。死によって世界が新たな形に書き換えられていく。

 

「やめろぉぉぉぉ!!」

 

 神を殺さなければならない。見逃す選択肢をしては行けない。死の冷たさに満たされた闇の世界で、自分達は揃って否定の言霊を紡ぐ。

 

『俺達は否定する!目の前の神話は間違えであるとッ!!!』

 

 最大まで強化した黄金で開闢と共にアテナを切り裂いた。

 

 




今回の技能

・はやぶさ斬り
素早く二回斬る技。上位版として超はやぶさ斬りが存在する。

・霞楼
斬りつけた場所から呪力を体内に侵入させ、それを爆発する技。
原作の技とは異なっている為詳しくは鋼殻のレギオスで検索どうぞ
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