「どうにかなったのか……? 手応えはあったから今度こそやったはずなんだが」
「神格を斬ったけど、まだ油断は出来ないね。構えとこう」
激戦の果て、令呪契約システムの採用。
事前の話し合いであらかた決めておいたことではあったが、まさかほんとに使うとは。
戦闘の予定はなかったんですよ、ホントですよ
「しっかし残りの力、全部こめた言霊で斬ったけど何が起こるんだろうな。お前がアドリブでやった言霊だけど、何が起こるか予想してたのか?」
「あー何が起こるかほんとに何も知らない。ただ直感でおかしいところを指摘するだけの言霊だったし」
前世の知識と照らし合わせて、本来とは違う姿だったからこそ出来た剣である。どうなるかわからん。もし元の姿があるとしたらそれに戻りそうだが。
「危なかった。空中の雲を取り込まなければ死んでいたぞ」
果てなく立ち上る煙もようやく晴れ────ボロボロの姿でアテナが現れた。
長い緑髪の間にところどころ銀髪が出来ており、まるで闇を照らす月の明かり。そして赤くなく先ほどまでさんざん目に入れていた梟のような漆黒の瞳。否定した内容とは違うが、これで前世の記憶に目にしていたアテナではなくなった。
各部が違うのも様々な神話と合わさり、混ざっていくなかで変化していったためだろう。消えつつある取り入れた記憶にもそういうのが確認できる。否定の剣の効果だろうか。
各所が死に、夏冬の祭典を行うのがほぼ不可能となったお台場の土地。光の無い闇に包まれ、崩れ去った建物の頂点に彼女は立っている。辺りが鋭い冷気に包まれているのもあり、女神の異質さが強調される。
神社のときに聞いていた『夜』を連想させるようになったアテナは古風な長衣を揺らし、手に鎌を再出現させ何もかも吸い込む開闢塊が静かに、空間に渦を巻く。
そして、軽く鎌を振り、首を回し、開闢を回転させ始め、黒い梟のような闇の瞳こちらに向ける
「……第二幕。ここからが第二幕だ。いい加減劇場の観客も飽き始めて寝てしまう頃合だろう? なぁに、親切に教えてやるが今はすこぶる調子もいい。終わりに向けていこう」
先ほどの憎悪を募っていた姿とは
……さて、どうしようか。
こっちの手札はまだ切れる、戦闘は支配するものであるからだ。
常に、終わらせないように戦う。ゲームだって相手の表示された体力がなくなるまで戦い続けるだろう。見えない分体力がいつなくなるかわからない。
手札は小出しに、長引かせてもいい相手が尽きるまで戦闘を、相手のペースを乱しながら戦うために、手札を切るのだ。
奥の手、切り札、禁じ手。
三つの手より切るカードは
「黒より黒く、闇より深く漆黒に」
――――――――禁じ手だ。
並列詠唱を再現、えんまくとボム兵を投げつけながら、内部の呪力の流れを統合・連結、一つの術式に収束させていく。
「猪は汝を粉砕するッ!猪は汝を蹂躙するッッ!」
瞬間、お台場上空、ビックサイトをバックに虚空が避け異界から猪が現れる。
「ウルスラグナがミスラの敵を滅ぼすために化身した『猪』か、だが鼻先しかでできてないぞ……!!」
猪の鼻と鋭く大きな牙しか出てきていない、あと少しでもすれば出現するだろうが、アテナにとってこの時間は致命的だ。
「我が真紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり。無窮の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ」
護堂が走りながら石つぶてを、今でもひっそりと練習しているフォームで投球。飛んできたそれを、鎌で叩き落とす。
今の盤面、開闢は己が投げつけたボム兵の処理をしていた。ゆえにこれが最適解である。
アテナの
「なにぃ!??!」
護堂からカンピオーネぐらいしか頭になさそうだといわれていたが、エリカさんの存在など気にすらしてなかったようだ。
エリカさんは投げつけた後、即座に撤退しながら、ありったけの呪力を流し込み、槍を鋼の縄に変化。見た目からは想像ができないほど柔軟に絡みつき、頑強に捕縛する。神力まかせに拘束から逃れようとするがこめられた呪力は相当で、逃れるまで時間はあった。
「踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望は崩壊なり並ぶものなき崩壊なり」
かすかな時間に、桜花魔力放出瞬動・並行発動、知る加速技術を駆使し走る駆ける舞う、淀みなくえんまくをつかい走る。各所の呪力をある程度まで補充したら陣の接続を切る。
これから使う呪文は原作では常に内部魔力を使い切って放つ魔法。自分はそれを再現する。繋がっていたら陣の近くの地脈にまで影響がでる上に吸収したものの総量がデカすぎて全部使うと日本列島が崩壊するためにやめておきたい。
詠唱など飾りではあるのだが言霊で術式を補強しないと自壊するため詠唱している。
護堂に視線を向ける。『猪』のお陰か、いつもからは想像もできないようなスピードで突進。アテナにタックルと見せかけ、勢いをたもちドロップキック。
今にも出てきそうな『猪』の下にぶっ飛ばし、護堂の手にある令呪の一画が輝いた。
「令呪をもって命ず、我が友の力今ここに顕現せよ!!!」
その言葉とともに、縁を辿られ己の『特典』からアイテムが作られ、我らが幼馴染の手にパイが出現。
確実に嫌な顔をしているであろうアテナに向かって投擲、開闢で吸い込むが、当たり前のように予想していたので、淀みなくパイバズーカが叩き込まれる。
その間に、詠唱完成。
「万象等しく灰燼に帰し、深淵より来たれぇィ!!!」
組み上げた術式を遠く離れた、暁ふ頭公園から、標的アテナに定めた。
では、一撃
「エクスプロージョンッッッ!!!!!」
何もかも破壊する爆裂魔法がアテナもろとも巻き込み炸裂────する寸前に、術式が瓦解する。
かの女神が、術式を殺したのだ。
蓄えられていた膨大すぎる量の呪力がお台場を覆いつくすほど撒き散らされ、不発に終わり。
魔力放出でアテナがふ頭公園へと飛んでくる。
「呪力を全部使ったなぁァァ!!! これで、終わりだろうがぁぁぁぁぁッッッ!!!」
轟く叫びと共に、開闢が分裂膨張を繰り返し、眼前を覆う。そして、全てが弾丸となって降り注ぐ。
遠く、未だに展示場跡地に残る我らが男幼馴染の呪力をのせた命令が響き渡る。
さあ、令呪を持ってなにを命ず……!?
「奈落ッ!ここで詰みへと持っていけぇ!!」
「分っかりましたァ
もちろん、相手の撃破だろうな!
「弄る材料また増やしやがってお前はァ!」
護堂の令呪が1画消え去り、自分の力が漲るのを感じるのと同時に、令呪を己に一つ使い術式構成分の呪力を補給。収束魔法の術式を形成。
「呪力が集まるッ……!まさかあの特攻術式はこの布石か!!なぜお前は智慧に無いことをことごとくッ!」
「企業秘密ですよ、女神様!!!」
辺り一帯に散らばった呪力を収束していく。脈動する太陽の如く、呪力が光となって収束され小さな太陽になっていく。
これより放つは星を砕く一撃。周りの呪力を再利用するリサイクル魔法。
さあ、つ ら ぬ け
「スターライト────ブレイカーァァァ!!!」
核に等しいその一撃、ただ一人に向けられる超弩級の再現魔法の前でも、神は一人背をむけず目を煌かせる
「だがその程度ぉ!天地開闢、全ての始まりに叶うとでもぉ!!」
石にさせながらおびただしい数の開闢が凄まじい勢いで吸い込んでいく、威力ゆえにすべてを石にすることができないためこうして緩和しているのだ。崩壊の砲撃と始まりの権能が鬩ぎ合い、遠く召喚された『猪』の咆哮が響いて、消え去り
「我が元に来たれ、勝利のために。不死の太陽よ、我がために輝ける駿馬を遣わし給え。駿足にして霊妙なる馬よ、汝の主たる光輪を疾く運べ!」
────転移と同時にその聖句が
かの王の権能は全てが盤面をひっくり返す超必殺。
決して目を逸らしてはならぬ権能。唱えるは『白馬』
太陽を運ぶ天馬。奇しくも子が親を滅ぼす図式となる。
本来ならば智慧でそれを予測できた筈だろう。だが、あまりにも己の攻撃が女神を殺せるほどに苛烈ゆえに対応を怠ってしまったゆえに、終わりは訪れた。
「憎たらしいカンピオーネどもがァッッ!」
「墜ちろ天馬!!これで終わりだ!!」
白点の太陽が、死の女神に降り注ぎ、終わりの音を鳴らした。
〇
「まだ、まだまだやれるぞ神殺し……!!」
何もかも破壊されつくした東京国際展示場跡地で、まだ闇の女神が生き残っていた。しぶとい。
ふと、神妙な顔で護堂が確認するかのように聞いてきた。
「奈落、正直な話。この女神を見逃してもいいか?」
「どうしたの護堂くん?頭沸いてる?」
「辛辣だなおい……いやな。俺としてはアレなんだよ。目覚めが悪いって言うか、このままトドメを刺すのはちょっと納得が行かない。つまり、今は見逃す、次は必ず殺す、てことなんだけど」
色々と言葉を彩ってはいるが、言いたいことは分かる。何年この男と一緒に入ると思ってるんだ。過去の経験から考えるに、女に優しくしているだけなのが、この男。
ボロボロの服と身体のアテナが吠えるようにその発言に食らいつく。
「草薙護堂、舐めているのかお前は! 見逃す? 見逃すだと、戦女神でもある妾に、その選択肢を突きつけるのか!?」
アテナにとっては最大級の屈辱。憤怒の表情で怒っている。崩れそうな身体を無理やり動かすほど、闇に合わぬ紅蓮の炎が身体を滾らせているのだろう。
「俺は平和主義者だ。今回は……まあ祭典が行われなくなったけど。本来はこの土地から去って貰いたかったんだ。積極的に神を殺すとかは放っから選択肢に入ってない」
「ふーん、護堂が言うなら従おうか。しょうがない。死んだ本人がそういう事を言うのなら仕方ない。うん。しょうがないね。次の時を待ってるよアテナ」
甚だ不本意だが、今回は矛を収めるとしよう。ああ、今回は。護堂の手には令呪があるし無理やり命令されても困る。
ああ、ホントしょうがないなぁ。
「お前もそれでいいのか矢島奈落」
「うん、いいよ。護堂が言うのならしょうがないね!」
護堂は一回殺されてるのだ。それを許すわけには行かない。次あった時は殺す。絶対だ。
荒ぶる内心を察知してか、護堂が震える。当たり前だアホ、本人が言うから仕方なく思っているだけでスグにでも殺したいのだから。
「────そこまで言うのならどこかへ行こう。覚えておけよな、二人共。この選択肢が悪縁をもたらす、とな」
不服ながらも、アテナはさっていき
『終わった……』
自分達は膝から崩れ落ちたのであった。
あっさり目に終了。
次はスパイ関連です