アイテム使いの神殺し   作:アルリラ

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スパイ(?)要素はちょっとだけしかないです。


エピローグ 希望はきっとある

東京室長室、そこに男装女子と忍者が二人で逢瀬のように話し込んでいた。とても上司と部下のようには見えないが。

おじさんと呼ばれているのもそれを助長させる一因だろうが。

 

舐めるようなスピードで手元の資料に目を通しながら、沙耶宮室長は、甘粕に問う。

 

「今回の件で、委員会の癌になってた奴らに責任をとらせて、クビ。機密保持の為に色々と手を打ったけどそこら辺はどうなってるかな?」

 

 先日のまつろわぬアテナの顕現に伴い。始めに自衛隊だけを使った避難指示が出たが避難は万全ともいえず、局地的なゲリラ豪雨に襲われるような勢いで被害が出て負傷者が多発。

 

 それを見兼ねてか、東京室長 沙耶宮が苛烈なる状況変化に対応した、委員会の人間をも導入した指示で避難が完了。

 

 なお、この件で愉快だったのが普通の避難指示を出したのが元々カンピオーネ反対派とも言える派閥のトップだったこと。

 

 それもありこの失態にかこつけて反対派を根こそぎ排除出来る事が出来ていた。

 

 

「そこはもう、終わらせてましたよ。カンピオーネを盾にすれば今では、あっさりと組織が動きますからね」

 

「多様しちゃダメだよおじさん? どんなしっぺ返しが来るか分からないから。今回は例外だけど、安易に頼ったらご老公から刺客が飛んでくるよ」

 

「分かっていますよ」

 

 ご老公はなんであれ、下々の行動を気にしない。超越的な存在でもあるため普段は無干渉。

 自然災害が起こり壊滅的な被害が起きても、己を奉る神社が崩落しても、国にまつろわぬ神が侵入してきた場合は別だが、それも一定のライン以降は干渉はしてこない。

 

 だが、しかしカンピオーネや神祖、ご老公と同じ超越的な存在を利用することはあまり看過できない。

 

 気軽に核のスイッチスレスレをリンボーダンスで通り抜けるような、そんなふざけて危険なことを何度もやられては困る。一度や二度はまだ慈悲はあるだろうその後数度やっても問題は無いだろう。

 

 だが、一定のラインを越えるならば────想像もしたくない。

 

「奈落君とはどうかな、上手く行きそう?」

 

「あれからも、連絡は来ます。向こうは申し訳ないと思っているようで、遊びのお誘いが」

 

「仲良くなるのもいいじゃないおじさん。若い子達に混じって遊んできなよ。自分はまだ若いんだ、って叫びながらさー」

 

「彼らと近い年齢のあなたに言われるセリフでは無いですよ」

 

 笑みが月に照らされ、夜は更けていった。

 

 

 〇

 

『それで、地脈点はあらかた目星は付いたか?』

 

 学校の裏手にある体育倉庫の裏。人目を忍びスマホを耳にあて、アレクの声に返答を返す。

 

「はい、合わせて浸透呪力式盗聴器も付けたんで、音声データを定期的に兵部さんのパソコンに転送しておきますね」

 

『助かる、前へ言っていたジャパニーズな忍者とはどうだ?』

 

「罪悪感持ってる体で最近しょっちゅう遊んでますね。仕事してるのか謎なくらい。本人に聞いたら仲を深めるのも仕事ですからと、いけしゃあしゃあと言ってましたよ」

 

『なら、そこまで大規模な動きは無さそうだな。 遊ぶことを断り始めたら、委員会でなにかしら事が始まる前触れだ。その時は委員会に忍び込んで情報を探ってこいよ』

 

「カンピオーネが無理矢理乗り込んで聞いたら駄目なんですか、それぐらい無理を通せる立場でしょう」

 

『はぁ、いいか? お前の立ち位置は極めて特異だ。組織までは手繰られまいがスパイと勘ぐられたら面倒なことになる。そういった憂いを無くすための判断だ。肝に銘じておけよ、お前の大好き幼馴染にも事の連絡は来ると思うが、それは行事がほぼ終わったあとか、ある程度問題ない状態まで進行した場合だ』

 

「それよりも早く、横槍を入れて理を獲れるタイミングを探れと言うことですか」

 

『理を取る必要はない。理を知らせるだけでいい。狂犬みたく飛びかかってものらりくらりと交わされて真実を隠されるのがオチだ。俺が欲しい情報以上に組織の利権もかかっている。頼んだぞ』

 

「はーい」

 

 アレクの声が途切れ、煩わしげに耳を離す。

 任務も終わり、話していた体育倉庫の裏から妙にぬかるんだ泥を踏みしめ、表へと出た。

 

 ────アテナとの戦闘が終わり早二週間。

 表と裏の情勢は、変化を遂げようとしている。

 

 まず表、今回の大停電にビルの倒壊、お台場での死の汚染もあり、無理矢理ではあるが正体不明な国際テロ組織の爆破事件だと公表した。

 これにより、否が応でも各所の緊張感が高まったとでも言える。ヨーロッパで三月から四月にかけて起こった、爆破事件と関連しているのでは。という見解がテレビでも流れたくらいだ。

 いつまた似たようなことが起こるかわからず、皆不安を募らせている。

 

 だが表と比べものにならないくらい裏は今大忙しだ。

 

 まず、今回の戦闘で、崩れたビル群の再構成に高純度の死で溢れたお台場の浄化。手伝ったりしているのでペースはいい。それと同時に理解外の生き物だと完全に理解されたらしく、拝まれ始めてなんとも言えない顔でテキパキと治すことしか出来ない。

 その上建築呪術と言うべきなのか、そういった呪術を教えてもらい、作業効率を上げたりしている。上の指示ではなく、現場の監督判断らしい。

 

 次が、委員会はカンピオーネの戦闘風景のレポートの提出、表との今後の避難方法の打ち合わせ。迅速な連携を取れるように組織の関係を整えてるそうだ。

 

 今までにない事例だが、今回の被害状況からして民の安全を取るらしく、近々自衛隊の精鋭のみを集めて実地訓練をお願いしたいと自宅の玄関先で、テレビで見る通りの自衛隊の制服姿でやってこられたお偉いさんにお願いされたぐらいだ。

 

 ドロドロ欲望渦巻くこの世界でそんなこという人がいるとは思ってもみなかったので思わず、前世の癖でつい受けてしまった。上の立場のような雰囲気の人の頼みはなかなか断れないのは誰もが通る道だろう。

 

 そして、最後が

 

「あ、奈落さん! どうでしたか前もらった奉納品。美味しかったですか?」

 

「美味しかったよ。タケノコはグラタンにして食べてみたけど割と食べれるもんだね。 ……神社は賑わってる?」

 

 ────万里谷祐理が所属している神社についてである。

 あの日以降、俺たち二人を信仰すると言い放ってから今までに本殿で崇めていた神様とは、別枠のお社が七雄神社にて完成した。

 

 極めて真っ直ぐな願いに悪ノリが重なり

 

「大繁盛ですよ! 交通打破とか運命打破、いろいろなお守りを出してますけど、運命打破のお守りが一番売れてますね。やっぱり今の時代なにかしら流れを打ち破りたい人が多いんでしょうか。 まあこちらとしては大助かりです、いろいろ補修できますし」

 

「やだ、万理さん逞しい」

 

 カンピオーネ神社が出来ました。

 

 沙耶宮さんが満面の笑みで了承したらしくあれやこれやと三日で。冗談かもしれないが現実である。建築分野は神社、寺に限っては呪術が絡んでるのもあって大分手早く、それでいてしっかりと効果があるものが作れるらしい。

 完成した神社をみて顔は覆ったけど。分社にしては目立ってるほうだと思うし。本来ならば、祀られている神様が作っている過程で事故を起こすので安心したとかなんとか。七雄神社だかろこそ問題なかったそうな。

 

 

 それにしても、悪ふざけの塊なのに繁盛するし、万里さんも本人の生真面目差が相成ってかなり力を入れ始めるで、ものすごく反応に困っています。 護堂は話が出た途端話題を逸らすのでマジで嫌がってるようだ。

 そういう風な一般人にとっては大きく、カンピオーネにとっては小さいような出来事だが

 

 今日こそは言うとしよう。

 

「あの、 やっぱこう信仰してくれるのはありがたいよ?けどさ、本来信仰している神様を蔑ろにしてさここまでしてくれなくてもいいんだ。厄災の権化みたいな自分らをそこまで、尚むなんてやっぱり駄目だ」

 

 神様を殺す存在である。自分たちを崇め無くてもいいというのは本音である。

 

 先日にも、カンピオーネを崇める団体から手紙が来たが、ろくなものでは無かった。正直に言って気味が悪い。古代から存在する宗教団体とは聞いていたが、得体の知れない集団にしか見えないほど。

 

 度々受けるアレクのカンピオーネ講座から碌でもない話を聞いていて、注意はしていたが、あれは度が過ぎていた。

 現人神でもあり厄災でもある存在を敬うところは、そこ自体も厄災になり得てしまうと、改めて認識させられたのも記憶に新しい。

 

 そういう経緯もある為やめてほしいのだが。

 

 スッと目を背けるマリさん。寂しそうにポツリ。

 

「私はカンピオーネを崇めてるんじゃないんです。私は今でもあなた達以外のカンピオーネが怖い。いつまた身近な人を葬って行くのか怖い。このトラウマはいつまでも消えることは無いと思います」

 

 ―――ヴォバン侯爵のしたことは許してはいけない。こんな未来がある子に深い楔を打ち込んだのだから。

 

 自分と護堂以外のカンピオーネは自分はアレクしか知らない。けれど彼だけを見ても前世の知識から見てわかるのは恐ろしいものであると。

 ほかのカンピオーネはどれだけ脅威なのかはしらないが、ヴォバンだけは許さないと決意させる程の過去の傷。その傷口を広げ、涙という血を流しながらあの日言ってくれたのは鮮烈に残っている。

 

「ですけど、あなた達二人は違います。私の心をほぐそうと頑張ってくれた。あの恐ろしいアテナから私を助けてくれました。だから、私はあの言葉を言ったんです。それに、あの時言った言葉を撤回したくはありません。私は二人との関係をもっと深めたい……周りを変えた原動力はこれなんです────ダメですか?」

 

 人との関わりはどのような速さで変化するかわからない。長くじっくりかけるもので発展することはないときもある。

 

 出会って一週間。ここまで信頼を高めてくれてるのはある意味一目惚れと言っても過言ではないだろう。

 

 だがそれは特殊な条件が奇跡的に噛み合ったせいだ。

 しかも吊り橋効果も乗算されているだろう。

 

 物語ならばそれは間違いであるといって突き放すのだろか、それは自分にもわからない。

 

 だけどこうして、必死に頑張っている子を遠ざけるなんてとんでもない。勇気を振り絞った子をないがしろにはできない。

 

 ────こういうのに弱いのは護堂に影響されちゃったな

 

 前世の知識が記憶だった頃からの付き合いの幼馴染はやはり偉大だ。

 

「ああああああ……もう崇めるだけ崇めて信仰を高めて自分らを助けて、ネ」

 

「はい、もちろんです!偶像崇拝はよくある手ですから、それとは別に力になれますようにこれからもよろしくお願いします!」

 

 

 笑顔の花が咲く。どう言う意味で言ってるとか分かってるんだろうけど、軽い天然が入って深く意味を考えてないような気がする。しかもなんか逞しさと強かさが乗算されてるんだけど。

 

  ちなみに御神体と評して自分と護堂に信仰の力が手に入るように、偶像崇拝の術式をぶち込んだバナナの皮が置いてある。

 

 ────ホントはこの神社設立には自分も悪ノリしました。すみません。

 

 目を逸らしたいが目を向けないともっと派手に爆発しそうな爆弾の存在から軽く目をそらしつつも、知識に存在するカレー節約術を語っていると、見知った呪力の線が近づいてくるのを感じる。

 

 横には獅子と狐がミラクルフィージョンしたような気配も探知。

 

「つまり、そういうところよ護堂? 恋人が横にいるのに不用意に他の女の子と関わるなんて、ナンセンス、よ? 反省してちょうだい」

 

「まず始めに断るが恋人でもないし、行動を咎められる言われもない。それにあの子がふらついてるのを助けただけじゃないか、日本男子としてああいう子はほっといたらただのクズじゃないか。あの奈落だって、同じことをするぞ!」

 

「一応それは分かるんだけど護堂。あなたああいう事を私の目の前で女性にしたのは何回目?」

 

「は? 三回目だろ」

 

「十一回目よ。 あなたの運、日常じゃあ女運に九割振られてるわよ。男だったら眉唾ものの運だけど、私にとってはやきもきする部分なこと分かってくれないかしら……いや無理ね。この朴念仁は、明日香もこれじゃあ報われないわ」

 

「何故ここで明日香が出てくるんだ? と言うよりいつの間に知り合ってたんだお前!?」

 

 頭に?マークを浮かべた護堂と、陰鬱そうに頭を抱えるエリカっちがやって来る。流れ的に護堂のせいだな。間違いない。

 

「あ、護堂さーん!」

 

 万里さんも気づいたようで声を掛け近寄っていく。

 しばらくはこう言った日常過ごせるだろうな、と期待を馳せるのであった。

 

 〇

 

「永遠に前進し続け、永遠に希望をもって幾星霜。我が希望、我が願い、今ここに実り始めた!! 」

 

 カラカラと壊れた列車のように狂笑を繰り返し、丸椅子から転げ落ち、延々と転がっていく。

 

「ああ、あんなに暗かった未来が今では光り輝いている!! 次はどうなる、あの()()が確実に死んでしまうのか? いや詰まらんなぁ……我だったら()()()()がうっかり壊れた風に物語を創るが、絶望テイストを加えた感じに主要キャラが誰か死ぬのもありだなぁ」

 

 転がる顔は希望に満ち溢れ、続く未来が玲瓏のように極上であると、その存在は信じている。

 

「護堂君は楽しいカラなぁ!!()()()()の時にあえて我が出ていく流れにもっていくか!? ああ、ああ、いいぞいいぞ、楽しくなってた!! 豊かな収穫はきっとできる!」

 

 何も無い白陣の領域で笑い声は、コロコロころころ転がりながらただただ、響いていった。




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