アイテム使いの神殺し   作:アルリラ

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幕間
ようこそ、我が輝きへ


 ────この世界において昔と今の差は何があるだろうか。

 

 文明の差か、確かにそれはあるだろう。誰もが等しく義務で教育を受けられるのもあって、日本の識字率は驚異の99%だ。

 

 生活の差、確かにそれはデカイ。衣食住が整っているなどまさに昔と差がありすぎる。 生活保護がまさにそれだろう。

 

 貧困の差、確かにそれは目立たなくなってきた。ホームレスはいるところに入るがそれでも日本では滅多に見なくなった。昔は貧困で餓死など可笑しくも何ともなかったのに。

 

 階級の差、確かにそれは未だにある。だがそれ社会という場にいる場合だ。いかなる場所でも適用されていた昔とは雲泥の差だ。

 

 どれもこれもその通り、拍手を与える。

 だが、それはこの世界でなくてもその差はある。

 この世界だからこそ、あった可能性。

 

 ────それは呪術の使用率である。

 

 前世では直接的な影響はないものであったが、この世界では力を持ち、人を殺す可能性が詰まっているパンドラの箱のようなものである。

 

 そんな力を昔の人間は戦乱のために使わなかったのだろうか?

 

 正史編纂委員会の前組織が抑制していた可能性もあるが、いつだって人間は狡猾だ。ギリギリの範囲で使っていた可能性もあるだろう。

 

 今のように広い範囲で統制されておらず、酷い内輪揉めで殺しあっていた。

 

 戦国時代の人間ならばどう使っていたのだろうか?

 

 〇

 

「────豪華絢爛の神殿に血が咲くのならそれは正しく、派手な仏桑華よ! 我が英雄達、 血を燃やせ! 思いを尽くして楽しませなさい! 目の前の存在を綺麗な真っ赤な死の色に染めて染めて、綺麗に幕を下ろすのよ!!」

 

 豪華に彩られた()()()に祈りが、神力に満ちた世界に響き渡る。

 

 それに合わせ呼応するように、七つの陣が光り輝いた。

 

 その契約にも等しい想念は、声の支配下である彼らに取っては令呪で命ずるものと何ら遜色ない。

 

 そして、命令による強化が加わり、軽鎧を纏った武者が振るうのは、華々しくも武骨であり神力を纏った()()

 

 それが、文字通り根こそぎ薙ぎ払った。

 

 他の鎧武者も、刀も槍も、『特典』で作ったものさえ問答無用に。なにもさせずに、壊される。

 

 なにもかも破壊する一撃を下げた頭で交わし、タイミングよく突き刺さる矢の弾幕を躱し。

 

 一際でかい鎧武者に体当たりで吹き飛ばされる。

 

「ッ……!」

 

 吹き飛ばされた衝撃で声が出ないまま、蒼色の陣から銀色の呪術陣に落下。

 

 すぐに顔を上げ、周りを見渡し、宙に浮かぶ弾丸が目に入った。

 

「今夜は最初から張ってるッ……!?」

 

「磨杵成针。 何度も繰り返すのなら、洗練するに決まってるわ。 まあせめて、血反吐を吐いて、躍ってくださいね?────射て」

 

 

 淡々爛々とした声が指令として響き。

 弾幕が虎視眈々と待ちに待った獲物を殺す獣が如く襲い掛かる。直感任せで、前に駆け出し運良く毛先を掠めるだけで終わったが

 

 それで終わりなど、この夢は甘くない。

 

 駆け出して数歩の足に、槍の穂先が置いて罠のように構えてある。

 

 ────ここでシールドを使えば防げはするが、袋叩きで動きが一切取れないままに、死ぬことはなく、ただ死を繰り返す羽目になる。

 夢だから、死にはしない。だが、どこかが削れてる感覚が────だがしかし

 

「五、六人でたった一人いたぶるなんて大人気ないねほんとぅにぃ!」

 

 それを連想する暇などない。たつまきすらひと凪で切り裂く猛者に慈悲など無いのだから。

 

 新手として、ボムを槍の穂先に投擲するが、足元に着弾するように弾き返される。

 

 ────想定の範囲内でやってくれた……!

 

 返されたボム兵を、投擲した後に、作ったタライを足の盾にしながら踏み、爆発させる。

 

 そのまま、空を飛び。窮地を抜けるが地獄はまだ終わらない。

 

 複数の鎧を纏った儚いゆらゆらと揺れる陽炎が如く人間に蛮国風の戦鎧を纏った男が仁王立ちで存在している。

 

 眼光に宿る覇気は正しく覇者の人間のみが持つもの。

 

 周りには教科書と前世合わせて死ぬほど見た火縄銃が複数、白紙のキャンバスを突き破ったかのように漂っている。

 蛮風男は刀を抜き、指示をするように振り落とし、鉛色の弾幕を持って歓迎の挨拶、それと共に控えていた家臣達も銃を空間から引き抜いて鉛玉を放つ。

 

 シールドをしたいが、ここを取り囲む呪術陣の隅っこに煙玉を構えた忍者が多分、経験上いるだろう。いつ頃か、使ったのに合わせて内側に煙玉を投擲された事があるから、やってやれないのが世の情け。

 

 ────ああ、呪力が使えないのは本当に辛い。

 

 普段なら問題ないのだが、原理がよく分からない夢の中、よりにもよって権能が発動しない。権能が発動しないのならば、呪力による呪術全般が不可能。

 

 全大系の術は全て呪力を使っているこの世界。

 権能もその例に漏れず。封じられるとどうしようもないと、アレクが以前家に乗り込んできて言ってはいたが。

 封じられるのではなく、そもそも呪力が全く存在しない上に、使えない状況下になってしまうと、黒王子に習ってきた事ほぼ無駄じゃんか!

 

 アウロラとか命の力を使えば別なのだろうが、原理が分からないから出来ないし。

 

「なんて日だ!!!」

 

 前世の洋画で聞いた罵倒の一節を吐き捨てながら、トケゾーコウラを作り出し盾にする。

 

 そして何となく背後を向くと、武者が刀を袈裟斬り振るおうとしているので、即座に生み出したダッシュキノコを投擲し、急加速した相手をハンマーで粉砕する。

 

「『特典』は問題ないのは、毎度よく分からないけど、マシだ!!」

 

 粉砕してきた隙を詰めるように弾丸が発射。火縄銃にしか見えないのに乱射できるのはマジチート。

 特典でシールドを生み出すが、出た瞬間に別の角度からの弾丸で弾き飛ばされる。

 

 毎晩何度も使ってるおかげで、弱点まで発見されてしまったようだ。

 

 間の空いた一瞬で血が飛び、肉が削げ、骨を、魂をも殺し尽くさんとばかしに展開される、殺戮弾幕。呪力の火花が舞い散り行くなか、勘任せで殺戮領域内から退避。

 

「経験値段違いだね、チクショォー! 」

 

 狙い打つ兜頭の髭のおっさんに、側転で避けながらパイを叩き込み強制的に怯ませる。

 その隙に銃弾を肩口に撃ち込まれながら、特典のピンクバードを二匹作り、即座に飛びのり回避。

 

 地獄も地獄。今日も夜を駆け抜ける、頼む。社畜時代を思い出すから眠らせてくれぇぇぇぇ

 

「それでは今宵も気狂い舞踏と洒落込み見ましょう、()()()どうし仲良く、ね? フフ、フフフフフフ」

 

 狂った笑いを響かせて、死に物狂いの舞踏会は続いていく。

 

 ○

 

 六月中旬、梅雨の陰鬱差と洗濯物の乾きが悪く半乾きのシャツを着て出かけた日々を思い出すが、最近寝不足なせいで追憶してる暇はない。

 

 今週に入ってからは大半の授業で机に突っ伏している。

 眠い死ぬ。そろそろ「Rewrite」がまた出来るようになるのに、この日々じゃあろくすっぽ出来やしないし、護堂とエスカっちと万里さんとで戦力強化案も練ったりしてるのにこのコンディションじゃ死ぬ。

 

 

「奈落ー起きろー」

 

 護堂が起こすという事は、もう昼休みか。

 

 顔を上げ、酷い顔を晒す。

 その顔を見てクラスメイトは目を逸らし、エリカっちは心配を装って確実に腹では笑ってる。

 護堂に至っては慣れた様子で、自分のバックから弁当箱を出してくれる辺りに、優しさを感じる。

 

「ありがとぅ……結婚しよ?」

 

「元気っぽいな、ソーラ取ってこーい!」

 

 凄い笑顔で弁当箱を投げようとするので必死に抵抗。

 

「ごめんなさいやめてください死んでしまいます。 とにかく眠い人間にそんなムチ打ちやめてください……眠いよぉ護堂……寝たいけどすぐ起きてしまう…… 」

 

「はぁ……精神的には眠いのに肉体的には眠くないとか、地獄だよな。 夢で鍛練でもやってんのか? 空想上の敵と前、殴りあってたし。即座に首切られてたけど」

 

「うるせえやぁい……夢全く見ないんですぅ、記憶に残らないんですぅ。 あとこの地獄が終わったらあのクソカマキリ野郎に再挑戦してやんよ……」

 

「やりあうにしても、よく観察してやれよ……俺でも観察したら勝てるぐらいだぞ」

 

「君最近チートでも貰った?」

 

 勝てるのかよ。バキでも最初は苦戦してたのに。なんだこの幼なじみ。

 

「大変ねぇ、夢も見ないほどグッスリ眠れてるのに、精神的に寝れてないなんて。令呪じゃダメなの? 」

 

「日常生活でバンバン使うから禁止協定が自分と護堂で結ばれた上に、令呪補給による地脈枯渇寸前で土地がヤバイ、と言われたから不可能でふ」

 

 未だに陣は緊急用として貼りっぱです。決して解除が面倒だから放置してるのではないのです……本当ですって!

 

「……絶対命令権も考えものね」

 

 卵とパンの香りからしてサンドイッチが入ってるあろうバスケット片手に、エスカっちがこっちの机にやってくる。その動作でさえ目を引き付けるのは黄金美人の特権だよね。

 まあ、見慣れた自分達がいるけど。

 

「一回睡眠薬試したけど、意味なかったし……やっぱりなにか原因があるのかな」

 

「あら、カンピオーネにその手の薬品は効かないわよ。様々な薬品を過去の()()()()()()()()()()()()が残ってるのを見たことあるのだけど。全て意味がなかったそう」

 

 なんだその記録。どうやって試したんだよ。

 

「意味がない? なんだでだよ、内部からの攻撃は聞くんだろ?」

 

「効果があるのは魔術法則に則った攻撃だけよ。物理法則はある程度、超越してるわ。 奈落は親のお酒貰ったりして飲んでると思うけど、最近微かにでも酔いが回る感覚があった?」

 

「若気の至り把握しないで欲しいんじゃが ……そう言えば前まではあったのに今は全然ないような」

 

 確かにカンピオーネの身体になってから身体が変調することがない。未成年飲酒を認める形になるが、親から貰うことってわりとあるよね?

 

 まあそれは置いといて……中学生時代はちょっとだるかったら、月一回を目安で休んでその日の終わりに課題貰ってきた護堂にゲンコツ貰ってたのに、高校生活ではそんなことが一切そういう事がない。

 

「なぜ身体に異常がないと言うと、膨大な呪力で片っ端から治してるからよ。 常に神様といつでも戦えるように、肉体設計がされてるからこそ、過剰な処置がされてるのかもね……ま、お昼しながら話しましょう。お腹すいちゃったわ」

 

 その一言で話を終わらせ昼飯に入ったが、どうしても気になることが出来た。

 

 膨大な呪力で治してる筈なのに精神疲労がいるということはこの身体は今、魔術攻撃を受けてるのではないのかと。

 

 

 〇

 

 墜落する、彼女の住処へ────

 

 そして、泡沫のように溢れ出るここでの記憶。

 

 また眠れなかったと、絶望しながら引っ張られるように

 

 ただの矢島奈落という個だけでなく〇〇〇という何時か何処かの存在も合わさって、魂だけで堕ちてゆく────

 

「私の輝きをご覧アレ、私が見初めた英雄の残滓をご覧あれ、どうか今度こそ、扶桑華が咲きますように────」

 

 アテナより弱く、それでも強い神力で世界が、今夜も猛威を奮った。

 




流星のロックマンたのちい

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