ご覧下さい…
今、アレクサンドロス・ガスコインの視界は今一面白で埋まっている。
顔に何が付いているか理解したくない、そう思うが現状的にムリだろう。何しろ不明瞭な力を駆使し、神を殺したカンピオーネである。この隙に逃げられたら困る。調べて見たいのだ、彼の使った力が何なのかを。
普通に聞こうとして何故こうなったのかが理解出来ない。
本人はそう思っているが何処ぞのプリンセスから言わせて見れば、自分の発言を振り返って下さい、というレベルの話なのだが。
ひとまずアレクは顔の甘い香りのする何かを拭う。
やっと視界が開ける。
そして周りには様々な物がばら蒔かれている。
バナナの皮や画鋲、何らかのオイルなど徹底的に地を歩く者に向けての妨害するための道具なのだろう。一体どうやってこれだけの質量の物を出したのか。呪力に似た気配を感じるが今は置いておく。そう考える。普通の魔術師等一般的に異能を使うならば呪術を唱え、この妨害を退けるが確実に数手遅れて相手に逃げられる。
しかし生憎と彼―黒王子アレクにはそんなものは意味をなさない。
彼は辺りを見回し美術館に続く残骸となった階段へ向かっている奈落の姿を見つけると
「舐められたものだ」
ふん、と軽く鼻を鳴らし周りに火花を散らし権能を行使する。
使用するは始まりの権能、雷と幻視を司る堕天使レミエルから簒奪しカンピオーネに至った、権能『電光石火』
身体を雷へと顕身させ、神速と呼ばれるスピードで、妨害道具の上を素通りし、瞬時に奈落の前へと現れる。
奈落は驚愕に顔を染めているが、それも束の間。即座に奈落の手に花弁であろう雲の中につぶらな瞳がある花が出現、そして光の粒子となり奈落の体に入っていき彼の姿が変化する。全体的に白く、ふんわりとした服装となり後ろに小型の雲が3つ付随している。
奈落は腕を振るうとその雲がアレクの身長と同じく広さになり目の前に出現する。アレクはその現象に驚愕、その隙に奈落は雲に飛び乗り先程と同じよう腕を振り雲を出しドンドン登っていく。
すぐさま『電光石火』を再発動、登っていく奈落に追いつく。
予想してたのか出現したアレクに合わせるように片手に持っていた¨それ¨を投げた。
¨それ¨は車に使うハンドルのようなもので外見はもうボロボロだった。
ハンドルが当たると、途端に彼の体のバランスが崩れ昔、まだカンピオーネになる前にふとした気分で酒を飲んでしまったときのように目眩が起こり身体の平衡感覚が失われる。
「な…に…!?」
アレクの体が異変を起こしている間に、奈落は手にきのこのような形をした赤と白の斑点が傘にあるきのこを3つ出現させる。
その内の1つを体に粒子化させ取り込むと、神速に近い勢いで美術館へと突っ込むように飛んでいく。そして二つ目を粒子化させ屋根を破壊し美術館の中へ。
身体の異変が収まった。一時的なものらしい。そう納得し、奈落が入っていった美術館を見る。
「わざわざそんな袋小路のような場所に逃げ込むとはな。俺の情報を知っておけば良かったものを」
不適に笑い
使用するは『大迷宮』
アレクサンドル・ガスコインがクレタ伝説の大地と迷宮の神ミノスから簒奪した三番目の権能。巨大な迷宮を創り、相手を引きずりこむ能力を持つ。
本来なら引きずり込む必要があるが今回は相手がこれから迷宮にする場所に入っているのでそれをしなくてもいい。
美術館を迷宮化させ
「さあ、力を見せてもらおうか矢島奈落」
そう呟くと、美術館へと溶けるように入っていった。
●
「なんじゃこりゃあ!!」
先程、アレクとかいうムカつくカンピオーネにパイをぶち込み、司会を封じて妨害アイテムを設置し逃走。
それでも瞬時に追いつかれたので、雲フラワーを使って変身。
そして空中に雲を展開し、登っている途中でまた現れた。まあ来ると警戒し事前に出していたオンボロハンドルを当ててその隙にトリプルダッシュキノコを使いブーストを重ね屋根を破壊し美術館に侵入、何処かに隠れようとしたのだが。辺りの様子が変化した。
そこら中に合った美術品が数種類消え、変わりに通路と階段が増えている。壁の絵画を見ると絵の人物が動いてたりして軽くホラーな雰囲気になっている。
「なにかやったなあの野郎…!?」
こんな現象を使えるのは自分の同族だと言っていたアレクしかいない。
カンピオーネは神の力を簒奪すると、誰かに言われた記憶がある。簒奪した権能はどれも埒外な物ばかり、まあそれは自身の権能がどんなものかが漠然と理解しているから解ることだが。
気持ちを落ち着ける。
「取り敢えずは歩こう、こんな時に何もしないとブルーベリー色の巨人が襲いかかってくる可能性があるからな」
襲いかかってくるのは森の奥の洋館だったが。
取り敢えずは通路を通り出口へ向かう。
しかしゆけどもゆけども出口も突き当たりも見えない。しかも途中で構造上有りえない位置に階段や坂道がある通路が見える。
嫌な予感が頭をよぎるがそれを無視し歩く、そして気付つくと最初にいた動く絵画がある場所に辿り着いた、予感的中。
「こりゃよくある空間がゴッチャになってる状態ってやつか…?」
試しに先程までになかった通路に思いっきりパイを投げる。カンピオーネによるパワーアップした筋肉は靭やかな動きを生み出す。凄まじい勢いで通路先に行ったかと思うと、投げた真ん前から飛んできた。慌ててよける。
今ので確信。
ここは今、迷路になっているらしい。こんな現象は異世界転生物であったなぁ…と前世の記憶を思い出す。大抵そういうのはゴールを見つけないと出れない事が多かった気がする。そう思うと同時に後ろから何かが唸る声が聞こえてくる。猛烈に嫌な予感が。
「そりゃそうだよね、迷路と言えばモンスターだよね」
振り返らずに走る。
怖い。
後ろ、唸り声を発する存在は雄叫びをし、猛スピードで迫ってくる気配がしてきた。
迫る音がなにか引きずるような音なので蛇みたいな物だろうと推測。必死に逃げながらも先程の通らなかった階段、坂道を登ったり降りたりする。
通っているとこの美術館は様々な通路に繋がっていることが判明、通路は必ず何処かの別の通路に繋がって居るのでUターンせずとも進められる。さっきのはアレクの嫌がらせの可能性が高い。
取り敢えずは後ろを見なくて助かった。
なんて、思っている間に広場に出る。
目の前には締まっている大扉。もうそこしか行く場所がない。
素早く、最後のダッシュキノコを使用しぶつかりそうになりながらも大扉に接近。開けようとするが開かない。
「なん…だと…!?」
開かないとなると方法はひとつしか無いのだろう。
恐る恐る後ろを振り返る。
白い翼、蛇か魚のような下半身を持つ長髪の女性の姿をした何らかの存在が立っている。顔はなかなか見えない。
というか頭に何か被せてある、注視すると美術品であろう兜を被っている。
何故兜だけ?
疑問が浮かぶがそれも一瞬、それは雄叫びを地を這いながら襲いかかってきた。
蛇が喰らいつくが如くどこからか出した槍を突き出してくる。
凄まじいスピード、以前までの自分ならば避けられなかったであろう槍を紙一重で避ける。
美術館前での戦闘、そして館内を走り回っている時にわかったがこの体は異常だ。息切れが一切こない、体力が無尽蔵にある感じがするし、簡単に深い集中力が発揮できるし直感も冴え渡っている。
避けながらも片手に、先端に稲妻のオブジェクトが着いた棒、ビリビリスティックを出現させ腕に突き刺す。
途端に相手は甲高い悲鳴を上げ痺れるが槍を横に、自分を巻き込む形でなぎ払ってくる。
巻き込まれると危ないので小さいキノコ、傘の部分が青と白の斑点のマメキノコを使い咄嗟に小さくなり躱す。
小さく俊敏となった身体を使い相手の後ろに移動し元の身体に戻す。そして、両手に先端に尖った鼻と髭が付いていて逆L字のマークがついたヒゲミサイルを発射。
そのまま身体に着弾、爆発する。相手が悲鳴を上げ悶える中、兜目掛けてテレサと呼ばれる丸い形をした幽霊を使用。他の箇所に防具は付けずに兜だけを被っていた、ならそこに何か有るのかが道理だろう。
嫌がる相手からテレサがスルリとスリが如く奪い取ると、此方に持ってくる。
そして、露になった顔を確認。
「…綺麗な顔だ」
思わずそう呟いてしまうほど美人であった。なぜ隠したんだろう。
その言葉が聞こえたのか彼女は此方を見るとニッコリ微笑み、空気に溶けるように消えた。
呆気ない幕引きである。
え、と呆然としている間に大扉が開く
これで終わり!?
どこか釈然としない気持ちで先へ進んだ。
●
奥には無愛想な顔をした男が1人。アレクが大広間の中心に立っていた。
後ろの壁には有名な画家ゴッホが描いた作品「ひまわり」が飾ってある。
「世界に超能力者は何人居るか予想できるか?」
アレクは問う。唐突で不明瞭なその言葉に一瞬躊躇うが適当に答える。
「百人はいるんじゃない?」
「馬鹿なことを言うな、この世界には傍から見ると超能力者だが原理を解明すると大体が呪術や魔術それに関する力を用いている」
神様や魔術が存在する世界で超能力て有るんだね。
様々な小説ライトノベルでは異能に魔術と超能力がる。
魔術は様々な体形を用いていて学問に近い。専攻して学んだ事によっては様々な魔術を使用できる。
魔術は作品によって扱いのされ方が違う。
魔術とは違う別次元の魔法。
魔術と科学が融合した技術、作用粒子定数hと呼ばれる物に干渉し様々な現象を発現する咒式。
その他にもカードを使うものや身体に唱えた魔術を取り込む等々。
超能力者も様々だ。
魔法科高校の劣等生は魔法とは銘打ってはいたが実際は物理法則に基づき、力を行使している。超能力ものだと作者の人も言ってたし。
とある作品も魔術サイドのパワーバランスが凄まじいが科学サイドにも電気を操る超電磁砲や反射を操る一方通行など強力な超能力者もいる。
今はそのような作品があるからいいのだが、昔はテレパシーや心を読む力、発火能力のような体形に別れていない物ばかりであったような気がする。
そんな超能力者と魔術師だがこの世界ではどうなっているのだろうか、魔術師なら神様騒動のときにそれらしき人は見かけたが超能力者は確認出来ていない。
アレクの話が続く
「しかしな、極希に見つかる。いや…見つかってしまうのだ本当に超能力者は。彼ら超能力者は俺達とは別の視点から世界を見ている奴らだ、ある意味人類が進化した存在、『新人類』と呼ばれている。まあ俺達カンピオーネも似たようなものだが、さて、『新人類』が見つかるとどうなるか」
無愛想な視線をこちらに向ける
「昔の話になるが、ふらりとロシアへと向かった時の話だ。小汚い男が小さな少年に猿轡を噛ませロープを巻き何処かへ攫っているのを発見した、裏で行われている人身売買だろうかと思ってな。興味本位で尾行をした、しかし男はなんらかの研究施設の裏口へ入っていった。不審に思った俺は研究施設に侵入し、そして見てしまったよ」
その時の彼の顔は後にも先にもこの時限りの凄まじい顔だったといえる。
「物を浮き上がらせたり、物に火を点けさせられる子供達をな。子供達の頭には何らかの測定器だろう端子が刺さっていた…その後のことはもう思い出したくはないがな、若気のいたりだった」
恐らくその後は研究施設を破壊したのだろう。
研究施設を迷路にし、神速で攪乱、先程の女性を呼び出せばあとは簡単だ。
「…話は長くなったが矢島奈落。お前のその力は超能力だと俺は始めは予測していた、が先程の光景を見る限りそれとは一線を越す能力のだな?」
「最初の件何だったんや!」
その予想が付いてるならなぜロシアの件をしたし。
超能力関係ないやん。
そういう考えが頭を巡る中、聞きたいことが1つ出来た。
「そういやさ、アンタはそれを聞いて何がしたいのさ?」
目的が無ければ美術館に侵入したときに美術館ごと破壊すれば良かった。
それがわざわざ迷宮を作り、あんな化物をけしかけ、挙句の果てには超能力者の話である。
「俺はただ知りたい、神を殺せる力があるその能力を、類を見ない物だからなそれは。まあ後は警告だ、柄には合わんがな。その力は別次元の力だ。魔術でも超能力でもない。先程話した事例に巻き込まれる可能性があるからな」
ロシアの件といい、先程の警告といい
「意外と親切なんだね、アンタ」
ふん、と鼻を鳴らし
無愛想な顔をして此方を睨み付ける。
「今回は同族だったからだ、普通ならば警告などせんよ。それに珍しい調査対象を簡単に死なせるわけにはいかんからな」
さっきとは打って変わりに獲物を見る目つきになった。
相手はやる気満々である。
内心いやいやだが、不思議と闘争心が浮かび上がってくる、後がない環境だから?ダンジョン最深部でボスとこれから闘うような感じだから?
良く分からないが、自分は今やる気らしい。
「さて、普段ならば殴り合いは性に会わんのだがな…事情が事情だ。今回ばかりは返上させて頂こう」
ニヤリとアレクは笑う。
いい笑顔。さっきの目つきと相成ってヤバイ顔なってる。
もう逃げられそうにない。
覚悟を決めて構える。
「やるしかないか…」
そしてアレクが一言
「さあ、行くぞ」
その言葉とほぼ同時にアレクの姿が消えたかと思うと
自分の身体が宙に浮かんでいた
「は…!?」
チャンピオン同士の闘争、その火蓋が切って落された
ええグダグダしてますとも!
ご勘弁を…!
誤字・脱字・修正あとはアドバイスが有りましたら宜しくお願いします。