ご意見等がありましたら気兼ねなくどうぞ
『まだこないのか?はよはよ~』
インカムから響く友人の声に適当に返事を打ってバイクで移動する俺は、近道のために道を曲がった。
ここら辺は全く来たことがなかったから全然道はわからないが、住所は聞いてたしなんとかたどり着けるだろう。
にしてもビルばっかりで景色がかわらないなぁ。手元の時計を見ると2時間半はバイクに乗っていることになる。一応休憩しておこうか。
集合時間もまだ余裕がある。
マイペースといわれるかもだが、安全のためだ。疲れたのもあるが。ちょうど近くに公園あるし、入ってベンチで休ませてもらおう。
「「デュエル!」」
ん?
「僕の先攻!《ブラッド・ヴォルス》を召喚、カードを二枚セットしてターンエンド!」
遊戯王か。にしても声でかいな。少年と思われる子供が大声で決闘していた。
何を隠そう俺も決闘者だ。今日だって友人たちとオフ会を兼ねた大会を開くからと隣の県の友人宅へ向かっていたところだった。
「こっちのターン。ドロー!よっし、今引いた《地砕き》を発動!ブラッド・ヴォルスを破壊、モンスターをセット、カードを四枚セットしてターンエンド!」
木々の向こう側で少年たちがテンション高くゲームを進める。こっちからは少年たちの姿は見えないが、しかし盛り上がるのはいいがあまり大声だと迷惑かけるんじゃないかね。
にしても結構展開遅めのデッキか?先攻のほうは獣戦士かなんかだろうけど、後攻はメタポっぽい布陣だし。今の環境だとちょっと採用されにくいカードだしちょっと気になる。
見に行こうかな?でも声からすると小学生っぽいし、声かけるのもまずいかな。年齢差で怪しい人だと思われそうだ。でも声大きいし状況がどうなってるかはわかるからいいや。
「僕のターン。ドロー!《ワン・フォー・ワン》を発動!手札の《キング・オブ・ビースト》を捨ててデッキから《モジャ》を特殊召喚して《キング・オブ・ビースト》の効果でモジャをリリースして墓地から特殊召喚!バトル!セットモンスターに攻撃!」
「セットモンスターは《メタモルポッド》!効果で手札をすべて捨てて5枚ドロー!」
あ、やっぱり?だろうな。手札全伏せ裏守備セットなんてメタポ特有の動きだ。それにもう片方は獣戦士じゃなくて獣混合のキング・オブ・ビースト軸か。
てことはセットカードはさしずめ幻獣の角あたりだろうか。ドローソースだし、打点解消としては使いやすいし。
「《メタモルポッド》だと!?くっ、罠カード《幻獣の角》を発動する!《メタモルポッド》の効果で手札を捨てて5枚ドローして戦闘破壊したため《幻獣の角》の効果で1枚ドロー!」
予想通り予想通り。まぁそうだろう。入れない理由ないし。
決闘内容からデッキ構築を予想していると木の上のほうになんかちらっと見えた。
「カードを1枚セットしてターンエンド!」
「ドロー!これで手札はそろった!うちは手札から《七星の宝刀》を発動!手札のレベル7モンスター《ダイアモンド・ドラゴン》を除外して2枚ドロー!
《D・D・R》を発動!手札の《レベル・スティーラー》を捨てて《ダイアモンド・ドラゴン》特殊召喚!《ダイアモンド・ドラゴン》のレベルを1つ下げて墓地の《レベル・スティーラー》を特殊召喚!
さらに通常召喚《デルタフライ》、《デルタフライ》の効果で《レベル・スティーラー》のレベルを1つ上げてレベル2となった《レベル・スティーラー》にレベル3《デルタフライ》をチューニング!
シンクロ召喚!《A・O・J カタストル》!」
なるほどシンクロデッキか。ドラゴンをメインにしてるっぽいが・・・
盛り上がってきた展開に声だけでも臨場感を感じてきたがふと木の方に視線を向けてみた。
あれ?木よりもでかいのが動いてね?
いやな予感がする。見たくない、見たくないが、仕方ない。ベンチから立って木々の向こうを覗き込む。
あぁ、だめだ。信じたくない。幻覚だと思い込みたい。
そこには、|立派な角をはやした四足の毛むくじゃらで金色の獣《幻獣の角を装備した《キング・オブ・ビースト》》と
よし、現実逃避終わり。
うん、まぁ、その、あれだ。これはそういうことだろう。
異世界トリップ。
一瞬空白となった思考が流れ始める。
遊戯王の世界に来ちゃいました。異論は認める。まぁ信じられんよな。俺だって信じたくないし。でも俺がいた世界にはソリットヴィジョンとかまだ実用化されるほど映写技術は発展してない。
だって俺そっち系の学部だから開発状況はよく知ってる。
にしてもどういう原理なんだろう。アニメ遊戯王はほとんど見ていないが、たしか一個前のアニメはAR系の装置でやっていたし、
専用の装置を通して見ないと映像も見えないという設定だったはずだ。うちの先輩が感銘を受けて実際に作ろうとしていたのを見てた。
しかし、これはどうだろう。俺の目にも見えてるってことはARじゃないし、そもそも決闘盤が光っている時点で現実的じゃない。
いや、異世界とか来てる時点で現実的とか言ってる場合じゃないんだが。
確かにこんだけリアルにモンスターを出せるなら盛り上がるだろう。臨場感も感じられるだろう。敵対する像が見えるのだから。
頭がグルグル回る。理解しなければいけない現実を否定する言い訳を求めてグルグルグルグルと回り続ける。
少年たちは茫然としている俺には目もむけず、ノリノリでゲームをしており、この子たちが異常という訳ではない。むしろここじゃ異常なのは俺の方だ。
とりあえず思考をまとめるためにバイクに乗って落ち着こう。
名も知らぬ少年たちをよそに公園を後にした。