闇ゲ大会に出るために   作:無意識牡鹿

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あけましておめでとうございます。

更新は相変わらず書ける時に書く不定期ですが、頑張っていきます。


第六話

 

「で、話してもらうわ。あなたどこでデュエルを習ったの」

 

待機室として用意された部屋につくとすぐに、光津さんが詰め寄ってきた。目には誤魔化すなという気迫が込められており、言葉を濁すと追求されそうだ。

 

「デュエルは独学。友達と一緒に戦ったりして覚えた、まぁステップとかタイミングとかは人に聞いたけどね」

 

「冗談でしょう?それ本気で言ってるの?独学であんなコンボ思いつくなんてありえないわ・・・」

 

「といってもねぇ。そりゃ難しいだろうけど。家の周りに教えてくれるようなところはなかったしショップに行くようになったのも高校卒業したくらいからだよ。本格的に習うとかはしてないかな」

 

嘘ではない。Wikiとかでカードの情報を見たりはしているが、習ったわけではないし、裁定も電話で聞いたりしただけだ。

とはいっても、光津さんはあまり信じていないというかそんな感じの目で見てくる。

 

「まぁそれはいいわよ。でもあなたそんな強いのにどうして今まで聞いたことないのよ、上杉一二三もMrナンバーとかいうふざけた名前も」

 

「この街にきたのは最近で、基本身内くらいだったから、かな.あと、そのMrナンバーは俺も初耳。勝手につけられたリングネームだと思う。」

 

「そんな腕になるまでの身内って・・・」

 

「あ、でも身内だと俺勝率いいところ上の下くらいだよ。デッキの数が多い分対策とりにくいけど、環境・・・いや、強いデッキ持ってこられたら速度の差で勝てないし」

 

そう、俺の強さは、あくまで闇ゲという遊びの範疇だからこそ成り立つものが多い。

事実、【EMEm】などの公式大会を制するような環境デッキには速度で勝てないため、瞬殺されやすくファンデッキ同士の速度系が同じ相手だからこそそれなりの勝率を保つことができる。無論、ガチデッキであってもこちらが早く回れるのであれば勝つこと自体は可能だ。

 

「ま、魔境ね」

 

「だろうね」

 

この世界において、遊戯王、いや言い方を合わせるならデュエルモンスターズ人口の多さは元の世界の比にならない。

デュエルをするしないを問わずに関係するだけでいいなら一般人口のほぼ全員が関係しているといってもいい。

ジャンク屋の店主もデュエル自体はしないらしいがカードは持っていると言っていた。それだけポピュラーであり、ブームを超えた娯楽とも言ってもいい。

しかし、この世界の決闘者は言ってしまうと非常にお粗末である。ルールの熟知度やカード知識などを知るには実際に触ってみるしかない。そこだけなら俺たちと同じであるが、こっちにはデュエル塾というものがありそこに行くことで正しいルールやカードについて学んでいく分有利である。

それなのに墓地発動や手札誘発への反応から知識の欠如が見られた。そう、教育機関が存在しておりながら、実践的な知識が学べていないのだ。その上、教えている内容も偏っている。また、ネカフェで調べた結果から融合・シンクロ・エクシーズの知識が足りないのはわかるが、それらの強さを知っている割に浸透が非常に遅いということ。などなどの問題が山積みであり、決闘者として育っていないのだ。

初日の大会を初心者大会と思ってしまうのも無理はない。後日あの大会は普通に一般参加OKの大会であり、周囲のショップから多くの選手が参加していたのにも関わらず、バックなし、下級モンスターを出すだけでターンを終了するという事故を疑うレベルでしかない。

その点、夜に行われていた裏の大会の方はまだましだ。少なくとも罠や魔法でのサポートを使っていたし、展開もなかなかだった。それでもまだ、個人的には物足りないレベルだ。

故に、俺のようにコンボメインのデッキは奇異に見られ、環境デッキともなればノーダメージかつワンショットも余裕であるほどだ。おかれている環境とその実力の差があまりにもいびつで気味が悪い。金稼ぎで利用しているこっちとしては助かるが。

 

「聞きたいことは全部?」

 

「・・・えぇ、・・・まぁ、・・・そうね。今のところはないわ。でもまだ少し引っかかるの。連絡先を渡しておくわ。聞きたくなったら連絡するから」

 

「え、あっはい。」

 

決闘盤同士で連絡先を交換し合う。こっちのはスマホに転送されるようになっているがそれは些細なことだ。

まずは一言。

 

 

女子中学生の連絡先、ゲットだぜ。

 

 

事案じゃないですか。処されそう。

 

光津さんはさっさと出て行ってしまった。女の子がこんな年上の男に連絡先渡すってすごく危ないと思うんですけど。

・・・はぁ。なんだかもう、すごく疲れた。この格好も息苦しいし、もういいか。

さっさと着替えてハンガーにかけてからソファにもたれかかる。やだこのソファ、ダメになりそうなくらい柔らかい。

 

 

 

 

 

 

 

「いやはや、ナイスファイトだったよ」

 

ぐったりしているところに俺をここに連れてきた張本人がやってきた。

 

「ありがとうございます。それよりも会長だったのですね」

 

「ははは、聞かれなかったからね」

 

食えない爺さんだ。苦笑している様も似合っているナイスミドルで今にして思えばただものではない風格を持っていた。文句を言おうにも身分も何も聞かずに依頼を受けたこっちが悪い。

 

「さて、改めて今回のデュエル、なかなか面白かったね。幻想召喚。うんいい響きだ。依頼した甲斐があったよ」

 

「単なる造語です。新しい召喚方法という訳ではないですから」

 

「いやいや、あんな方法で戦おうと考えただけで素晴らしいものさ」

 

「いえ・・・そうですね。そうでした。思いつかないだけなんですよね。あぁ何でもないです。ではなぜ自分を呼んだのかうかがってもよろしいですか?」

 

「ふむ、デュエルの腕を見込んで・・・ではだめかね」

 

「だめですね。少なくとも、貴方の前で自分が戦ったのはあの大会だけです。使っているデッキも【ワイト】だけでした。

聞けばワイトスクールなるデュエル塾もあるそうじゃないですか。自分がそこの生徒もしくはOBであるならあのデッキでも別段特別という訳でもないでしょう。

確かに大会で勝った自分の腕を見込んでというなら【ワイト】を使うように言えばいい。しかし今回、アンデット族を見た目の問題で禁止だと言い渡す時点で普通なら戦えません。

だからこそ、俺を使った理由が知りたいのです」

 

途中から敬語が無くなったが、それだけ警戒しているというメッセージだ。俺は腹の探り合いで勝てるとは思っていない。真正面から切り込んでいくしか手がない。

 

「はっはっは、それだけ君を評価していたと考えてもらって構わないよ。選んだ理由は・・・そうだね、デュエルの腕ということも本当なんだがね。

一番はティンときた。君の可能性はあれだけに思えなかった。だからこそ、奇抜なデッキというオーダーをだし、それに見事答えてくれた。年甲斐もなくはしゃいでしまったよ」

 

会長さんが一緒に連れていた秘書が俺に書類を渡してきた。

 

「さっきの前説でも言っていたがね。スカウトだ。君に私の専属デュエリストとなってもらいたい」

 

「・・・読ませてもらっても?」

 

「よく考えてから答えてくれたまえ」

 

許可をもらってから契約内容を読む。

しかし、自分の目的はあくまで元の世界への帰還だ。残るわけでもないのに気軽に契約なんて結ぶなんて不用意なことはできないし、不誠実だ。

1.大会に出る際は所属を明らかにし、芸名―おそらくはMr.ナンバーだろう―で必ずでること。

2.CMや社交界にも出席すること。強制ではないが、出ることが望ましい。

3.会社員ではなく会長直属の食客デュエリストであるため、出勤義務はないがどこにいるかの連絡を義務とする。

4.わが社の不利益になりうる情報の流失を禁止する。 などなど・・・

書いてあることの大半はアルバイトなどと同じで気にすることもないものばかりであったが、この契約は少しおかしい。

・・・こうしてスカウトに来たという事は俺のことを調べたに違いない。この世界において俺の過去は存在しないということだ。生まれすらも不明な人間を果たして雇おうと思うだろうか。俺なら絶対に思わない。情報がない人間なんて、何かしらの事件には巻き込まれていることが明らかだからだ。

 

「何を企んでいる?」

 

「君の過去が辿れないことはすでに把握している。たまにいるのだよ。余所から来たと言って情報がない人間がね」

 

それって、俺みたいな迷い込んできた人間のことじゃないか!?

 

「しかし、接触しようとするとふっと消えてしまい、急に足取りもつかめなくなってしまう。また周囲にいた人間も稀だが一緒に消えてしまうこともある」

 

元の世界への帰還者ということだろう。その人間たちはすでにこの世界にはいなくなってしまっているに違いない。

 

「だからこそ、似たような君に接触したという訳だ。とは言ったものの調査結果はついさっき届いたからこの理由は後付けだがね」

 

そう言うとはっはっはと笑う。

・・・この会長は利用できる。元の世界に帰るための手がかりだ。

 

「さて上杉一二三。君は何者だい?君はどこからきて、何の目的でこの街に来たのか。聞かせてもらおうか」

 

どうする。話すか?誤魔化した時のデメリット、それはこの場で拘束されてしまう事だろう。身分がない人間の処理は簡単だ。

下手をすればカードをすべて奪われ、そのまま殺されてしまう事だって考えられる。それに誤魔化したところでメリットなんて存在しない。

 

「・・・会長さん。俺は、違う世界から来た。と言ったら信じるかい?」

 

「オカルトチックだが、消えた人間が捜査の目が及ばない裏で処理されたのではなく、その別の世界に移動したというのは興味深いアプローチだね。それで君は同じように、いや逆だね。消えたのではなくこちらへ来てしまったと言いたいわけだ」

 

「そう、俺はいつの間にかこちらへ来てしまった、と考えている」

 

証拠になるとは限らないが、自分の運転免許証を見せておく。

 

「ふむ、先のデュエルも別世界出身だからこそ、奇抜な発想ができると言いたいわけだ。確かに精巧にできた免許証だね、

こちらのものとは少し異なるというのもジョークグッズにしては手が込んで「ジョークじゃない!・・・失礼した」」

 

落ち着け。落ち着くんだ。激情に身を任せてはいけない。帰還を目の前にして急いては仕損じるだけだ。

深呼吸をして呼吸を整える。

出木杉会長は急に声を荒げた俺に対し若干眉を上げただけで済ませたが、秘書の方からはすさまじい気迫を感じる。この秘書、兼任護衛かよ。

ツッコミを心の中で入れると、冷静になっていったのを感じる。よし、落ち着いた。

ステイクールだ。挑発に乗らず、相手を見極めろ。信用に値するか否か。

 

「その様子から、君の目的は、帰還。だね」

 

「そうだ。俺は元の世界に戻る手段を見つけるために人脈作りとして大会に出ているだけなんだ。だから、この契約は・・・」

 

「なら単なる私兵となればいい。幸い、私は世界を移動するという研究に心当たりがある。君にその情報を提供する代わりに帰るまでせいぜい派手に暴れて私と会社の名前を売ってくれればいい」

 

「そちらのメリットが薄すぎる。それは長引くことを前提としている上、研究機関が存在するなら関わる時間が短くなることだって考えられる。それだと釣り合わないだろう」

 

「そんなことはない。仮に短かったとしても、こちらは新しい戦術のデータがとれる。それくらいは協力してくれるだろう?無論、カードをよこせだなんていわないさ。君の商売道具であり、唯一の形見のようなものだろう。研究に必要であっても切り刻んだりはしないさ。すべて君の管理下に置いていい」

 

嘘は言っていない、と思う。相手は財団の会長だ。老獪であり、すべてを信じるわけにもいかないし、話の主導権は終始あっちが握っている以上、出された条件を飲むしかない。

しかし、こちらに対する条件は破格だ。

条件にカードの保護まで得られた。それに考えてみれば、あっちからすれば俺はデュエルの強さは他を凌駕しているようなものだろう。今のこの環境であるなら俺は強い。

知識を正しく広めれば話は変わるが、おそらく一社かそこら程度では浸透はしないだろう。

浸透するならもっとシンクロやエクシーズはポピュラーだ。

俺は戦力を、あっちは研究成果を。求めるものが釣り合うなら、信用はしていいだろう。

 

「わかった。協力は惜しまない。俺は帰りたい。手伝ってくれるなら、こちらも喜んでできることをやってみるだけだ」

 

「契約、成立だね。上杉君、いやMr.ナンバー?」

 

「上杉で勘弁してくれ・・・」

 

出木杉財団の会長と握手を交わす。契約は帰還の研究を優先することを条件に加えた以外は変更せずに同意して結んだ。

 

 

 

ようやくだ。やっと得られた。帰るための第一歩だ。

一息つけば、すごく体が軽くなったように思えた。

俺は多分、心が折れかけていたんだ。

突然別世界に来てしまって、それが右も左もわからない未知の世界ならもっと不安だったろうけど、生きるのに必死でいられるだろう。

それなのに、中途半端に知識が通用してしまう分、元の世界を思い出してしまう。何かに打ち込んでいないと不安でつぶれてしまいそうだった。

だから俺は、長期的に動ける冷静な自分を演じることで誤魔化していたのかもしれない。

 

 

でも、見つけた。可能性があった。

俺は、絶対に、帰る。決心を胸に刻み付けて、芯を打ち直す。今度こそ、折れないように。

 

 





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