三浦玲二詩集 作:三浦玲二
【男は大体憧れた子か、弱い子を好きになる】
「入道雲」
焼けたアスファルトの上を歩く
手に持ったアイスキャンディが溶けて滴る
太陽を恨めしく眺めるのだけど
何かが変わる事はない 虚無感が支配する
少しでも快適を望むからペダルを漕ぐ
風の中をきって向こう側へゆく
坂道を見つけて順路に逆らい下る
何かが変わる気がする程の衝撃を楽しみ
ただ虚無感が後ろから迫るのを待っている
夏の香りを感じながら空を見上げる
生きているかのような雲の動きは僕を
夢心地へと誘い 夏の終わりへと歩みを進めた
「背景に映える私」
足跡を残して消えてゆく
誰の気持ちに触れる事もなく
影を落として消えてゆく
誰の足に止まる事もなく
美しい景色の中に立った私は
誰もが主人公とは思わない
私もそうは思わない
だけど私はここにいて呼吸をする
私が私を感じている限り
「さいけでりっく めんへら」
貴方に出会っただけで化学反応
試験管の中に閉じ込められていた 私
愛なんて知らない子供がいた それが私
貴方に貴方に触れたあの時から恋を愛を
感じて感じて感じて 笑顔になるの
貴方があの子と話してるの
心が心が心が ざわつくの治まらないの
右手にボールペンを持って手紙を書くの
貴方に貴方にあげる愛の込もった恋文を
届けて届けて届けて 幸せな気持ち
嘘なんて吐かないで
貴方が好きなのは私でしょう?
偽物なんかじゃないの
私は貴方を愛しているの
これからもずっと隣で
手を繋いで過ごしましょう
私は貴方の体温を感じていつか
しにゆくの
【悲しい事から楽しい事が生まれる事もある】
【雲間に照らされて】
いつの頃だろう もう覚えてなんてないけど
あの時の光に救われたんだ
雲間に揺られた光の粒が僕の体を射して
力をくれていった
あの時流した涙は今も忘れない
川沿いに咲いたたんぽぽは風に揺られ
僕の心に似ているなぁって
【女王様症候群】
誰もが私を崇めて頭を垂れる
夢や妄執なんかではなくて
私の前には裸の豚共
鞭で叩いて出荷せよ
鳴いて喚いても聞き入れず
私の為にと生きて死になさい
だって 私が貴方たちの女王なのだから
【哀しみに暮れながら】
窓辺に凭もたれて 月を眺める
私はどうしてここにいるのだろう
流した涙を指で掬うのだけれど
心を自分で救うことは出来ないようで
【煙草と酒と女と男】
「Remember you」
相変わらずのあなたの顔をみて
懐かしい思い出がふと目を醒ます
少し洒落てタバコを吸っていたね
大人びたけど君はあの頃のまま
体育館の裏の倉庫の横に貴方を呼び出した
約束の時間になって君が笑顔でやってきた
あたしの気持ちをあなたに届けたけど
想いが重ならずに涙が溢れたんだよね
ふと目が合って笑いあったね
変わらないでいてくれたあなたの笑顔
傍に行きたくて君をあたしの目が追った
続いてあたしの足も貴方へと進む
隣にいる貴方はとても素敵で
ソワソワしている肩があなたに触れていた
会話も変じゃないかなって不安で
緊張して心がもう潰れちゃいそうなんだ
少し外に出ようかって誘ってくれる君
そんな事思ってもなかったんだ
あなたの想いを受け止めて
あたしの閉じ込められていた想い
もう一度よみがえるあの気持ち
暖かくて優しい言葉と共に
【雪中の梅酒】
【白々しく初々しく】
髪の長い彼女は文句を言わない
ただ黙って三歩後ろを歩いてる
真面目なのかもしれない
いつも知っている事を
誰かの面子を守る為なのか
彼女は知らない振りをする
優しいのかもしれない
白無垢を着た彼女は美しい
ただ綺麗だった
【百日草】
変わらない事を貴方に誓います
裏切る事などあり得ないので
夢をみても現実を置き去りには
貴方を好きだという事だけは
私は思い続けたいのです
【アネモネ】
世界の終わりが近づいて
あれだけの希望や夢が
失われていく
楽しく幸せを感じていたのに
繋いだ手は離れていた
いつからだろう
少し前までは夢を追いかけて
生きていたのに
今では何かに追われている
希望に縋りついていただけの
私はもういないから
【白とかなんとか】
「騒がしいだけの音楽」
寒いから声を掛けてみる
調子が悪いのか返事はない
レコード使ってロックを鳴らす
僕のギターはレスポール
ロックを掻き鳴らす
今だ 今 生きた心地がする
白い息が目の前から消える前に
寒空の下を走った
「隣の芝生」
私たちはただの人間なんだよ……
思うだけで気持ちが伝わるならどんなにいいか
そうだ……
分かってるだろ?
超能力のない人なんだ
言葉にするのは気恥ずかしい
けど、そうして初めて
伝わるんだ
「無垢な少女」
砂塵が吹き荒れていた
真白な頭巾は土色に変色している
少額の小遣いで果物を買った
砂埃が舞うその地には
死に近い人が這っていた
手元には白いピタヤがあった
少女は今日も憐憫に従って
町中を歩いた
【呆れて振り返る】
【桜の調】
別れと出逢いを報せる樹
貴女と出逢ったのも桜の季節
貴女と別れたのも桜の季節
再び重なることはないのですか
散れば散るだけのものでしょうか
桜が唄うのは一つの意味だけなの
再会を願って桜の下で 歌います
貴女と会うまで 私のすべてを
世界で名も知られぬこの桜の下で
【愛々傘】
梅雨の季節には早いけど
雨が校舎に飛沫を叩きつける
嘘つきの天気予報
彼が差し出した
紺色の折り畳み傘
「入らない?」
頷く私に彼は
愛らしい想いを
広げたの
【魔法の言葉】
風が薫り 地を洗う
火が灯り 水を散る
愛しき躰に
愛しき命を
そして名を
蜘蛛が雲を眺める
そんな穏やかな日
月日月日月日月日月日月日月日月日月日月日月日月
余花、鹿。
2010〜2014.既存作品。
なぜか、多目。