三浦玲二詩集 作:三浦玲二
月を蹴り上げる。
『作家主演劇(借)』
厚々としたものを着込んでも
冷えた心までは暖まらない
独りの夜は寂しいし暗いだけだ
王子様を待つのも
お姫様を迎えるのも
子供の時分で儚く散った
けれど望むのは手を取ってくれる誰か
自分の想い願う素敵な人
誰も分かってくれない、と
嘆いたあの時
私は周りを知らな過ぎいた
誰か分かってよ、と
叫んだその時
私は周りを恐れ過ぎていた
月夜の明かりが街灯の明るさに負け
照明をあてられているような公園の椅子
孤独に支配された表情は雨に濡れる
幻想、虚構、現実、創作
劇的なものはお好きでしょうか
不幸でも幸福だとも言えない私は
ただ、生きる夢が好きなのです
そして、恋は人生の香辛料、と
『オレンジ』
朱色に染まる校舎の顔
そこに二人の隠れた影
汗ばんだグラウンド
上がる二人の心拍数
帰り路の長く伸びた影も
月夜が照らせばほんのり短い
でも
繋がってる分だけ
底抜けに優しい君と
どこか抜けてる君のこと
どっちも抱きしめたい
頼り甲斐のある貴方の背
時々いじっぱりな貴方の
どっちも好きでいたい
きっと 僕らはまだ未熟で
お互いにお互いを想いすぎたりして
衝突する事だってあるかもしれない
でも
その度 その度に
手を繋ごう
ずっと、ずっと
『雲海、白雪彩られ』
肌を萎縮させる風が吹く
女の子の体が縮こまる
抑えてなかったからだろか
風に帽子が煽られて舞う
行方を見据えると見えたのは
純白には程遠い空
白い帽子がぼやけてゆく
見上げた空には浮かぶ雲の海
誰が泳いでいるだろか
私の帽子はどこだろか
浮かんだ雲よりぽつり白い点
表情を変えた雲が帽子のお返しと
絹の様に白き結晶を落とす
雲の贈り物は少し
浪漫が飾りを付けている
『暗がりノスタルジア』
私の名前を呼んでよと
手を空にかざす
私は私の名前を忘れたから
貴方のお名前なんですか?
指で顔を指す
私に聞いても分からない
暗がりの中に沈んでゆくから
溺れる前に誰かの手を掴むの
一人では両の手が埋まるだけだから
差し伸べた手で繋がりを作って
もう片方の手でそれを護りたい
あぁ 幻想にまみれ
今は暗がりの奥に浸かるだけ
いつか きっと…
『残滓と欠片と拾う者』
幸せの思い出をつらつらと語る老婆
それを聞いて夢心地となる少年
連れ添った人との邂逅から別れまで
水底に沈んで古く錆びていたような
そんな感覚があったのは初めだけ
彩りが豊かに溢れて情景を
頭の中のカンバスに描いてゆく
老婆の楽しかった記憶は
少年を笑顔にし
老婆の悲しかった記憶は
少年の顔をも歪ませる
暖かいだけではない歴史の中に
生きてきた老婆の旅路
それは少年の心に深く 深く
老婆が座る椅子の揺れが止まる
「ありがとう、お話を聞いてくれて」
『ハニーロマンス』
理想なんてものほど
危うくあやふやな事はない
現実なんてものほど
冷たくかんけつな事はない
誰だろう
理想を多く望み過ぎた私は
誰だろう
現実に夢を多く見過ぎた私は
酸いも甘いも舌で感じて
苦虫を潰して 蜂蜜も舐めて
誰が仕掛けた罠だったのか
明日には忘れる事が出来るだろうか
忘れる事の出来ない事ぐらい
知っているの けど呟いた
音の少ない部屋の中で一人
あの人のおかげで得る事もあった
私は愛してくれない人を失っただけ
彼はいつか気付いてくれるだろう
その時までに私を愛してくれる
人と手を繋いで歩ける様になろう
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余暇、休暇。
2013〜2015.既存作品。