三浦玲二詩集 作:三浦玲二
『ある道草の種』
気づくと僕は空をふわり、ふわりと飛んでいた。
飛んでいたというよりは、浮いて漂っていると言った方が正しいのかもしれない。
僕の生まれて初めての記憶は、青く澄んでいる空の光景だった。
僕の周りには僕と同じ姿をした子が沢山いる、けれど僕等は意思の疎通が出来ないらしい。
風に気持ち良く乗っていると、仲間の数十人が鳥の群れの中に入って出れなくなってしまった。
彼等は羽根に引っ付いて何処かへ旅立った。
風が急になくなる、凪と呼ばれるものらしい。
僕等は軽いから少しの風で飛べるのだけど、それがないから落ちていくだけだ。
恐い、そう僕は思っていた。
衝撃を多少感じて、何処かに落ちたと気づく。
暖かい、ここはどこだろう?
僕は、人間という生き物の土地に迷い込んだようだ。
ここには、僕の仲間がたくさんいた。
けれど、僕と同じ種族の子はいないみたいだ。
ここの先輩方は太陽に照らされ、綺麗で見惚れてしまう…
けれど、僕も何時かはそうなるのだ。
人間という生き物は、中々面倒見が良いらしく僕の世話をしてくれる。
僕の生命の糧である水や栄養素を土に蒔いてくれるのだ。
暖かい大地に、十分な栄養があるここは天国の様な所なのかもしれない、と僕は夢見心地にそう思っていた。
時間が経ち、綺麗で見惚れてしまう先輩方が項垂れ、かさかさの肌になり沈んでいた。
対して僕は芽を出し、双葉になり背を伸ばしていた。
僕は決心をした、先輩方の代わりを僕が務めるのだと。
家屋の軒下から一匹の鼠が現れる、そいつは僕等種族を喰らう敵だ。
栄養を与えられ、肥えた仲間があいつの歯の餌食となる。
悔しい、けれど僕はここから動く事が出来ない…
仲間の死を只々、眺めるだけだった。
僕等は人間に好かれている、だから人は僕等を世話してくれるのだろう。
けれど、僕等の天敵の鼠はどうやら嫌われているらしい。
害獣駆除と言って、家屋の鼠を一匹残らず消し去った。
その時から、僕等は命を落とすまで鼠を見ることはなかった。
肌に悪い、乾燥する季節”冬”が来た。
僕等は為す術もなく、人間に暖かい場所を提供してもらうのが精一杯だった。
ただ、その時仲間の数人が外に残されたままだった。
寒く凍えるあの風の中、彼等は無事でいられるのだろうか。
無事でいて欲しい。
暖炉に暖められての生活は僕の生涯で忘れることのない、大切な思い出となるだろう。
甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる人間、暖かい風を送ってくれる暖炉。
いつか、お礼を言いたい。
そう、僕は思っている。
春、それは僕が生涯を閉じる季節のこと。
夢のような日々を過ごした、名残惜しいという気持ちがない訳ではないけれど、僕は先輩方と同じように綺麗になりたいのだ。
だから、僕は花を咲かせよう…
太陽の下で強く、華々しく。
人間が僕を綺麗だと褒めてくれた、嬉しい。
嬉しくてもっと綺麗になろうと頑張った。
通りがかった女の子が、手で触り可愛いと褒めてくれた。
時間は僕を蝕んでいく、僕は命を閉じる時が来たと悟る。
身を軽くして、未来へ僕を飛ばす。
命を繋いでいくんだ、人間が僕をまた褒めてくれるかもしれないから。
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余裕、自由。
2014.春頃。既存作品。