今話はゆゆゆ勢中心の話になるため一騎たちの出番はほとんどありません。
後半に当小説の作者考案のオリジナル敵勢がついに現れます。ここからゆゆゆ原作とファフナーとの繋がりがかなり強くなってきます。
2016/2/2 表現一部修正
2016/3/27 前書修正(何故今まで気付かなかったし…)
――― 前話から翌日
-友奈&東郷のクラス-
「それでは黒板に書かれている3つの文を ――― …」
「(勇者部らしい出し物か…なんかないかなあー)」
現国の授業の最中だったが、友奈は昨日風が言っていた文化祭の出し物について頭の中が一杯になっているようだ。彼女のノートにはなにかのキャラクターの落書きが描かれている。
「(もっとこうみんなが喜ぶ楽しい何かか…!)」
友奈はため息を吐く。そんな友奈を東郷が気になったように見つめる。視線に気付いた友奈は「なんでもないよ」と返し、東郷はその様子にくすっと微笑んだ。
「結城さーん、なんでもよくないですよー。…じゃ、教科書読んでもらおうかしら」
「…はい」
それを先生に見られていたようで友奈は注意されてしまう。クラス中から笑い声がどっと聞こえた。
注意を受けた友奈はしょんぼりと落ち込み、気を取り直して教科書を読もうとした。
――― その時である。
「ッ!」
突如携帯からアラームが鳴り響く。その音は教室中まで鳴り響いた事で友奈はさらに慌てた。
「携帯ですか?授業中は電源を切っておきなさい!」
「はいっ!すみません、いま止めま…あれ?」
友奈が携帯の画面を見たがそこに描かれていた表示に手を止めてしまう。友奈の後ろの席でも動きがあったのを見た先生はその生徒の方向を見た。
「ん…東郷さんもですか?」
「なに、これ…」
東郷の携帯も友奈と同じようにアラーム音が鳴っており、画面も友奈を同じものに変わっていた。
【樹海化警報】という不気味な画面へと……。
アラームが鳴り終わったと同時に外で異変が起こる。穏やかに吹いていた風によって舞っていた葉や空を飛んでいた鳥たちがそこに縫い付けられたように停止した。
やっとアラームが止まった事に安堵した友奈は顔を見上げた。
「あ、すみません。止まり……先生?」
彼女が目にしたのは固まっているクラスメイトや先生の姿であった。
「あ、あれ?」
「友奈ちゃん?」
「ん、東郷さん」
友奈は東郷の元へ駆け寄る。どうやら今動けるのは自分と東郷のみである。
「これ……どうしたの……?」
「何だか様子が……」
-讃州中学 廊下-
友奈と東郷が未知の出来事に困惑しているその頃、ある教室から1人の女生徒が慌てた様子で駆け出してきた。
「(まさか…まさか……そんな!)」
風は躓きながらもすぐに態勢を立て直し、学校では廊下を走ってはいけない事など気にもせず駆け抜け、階段を一気に駆け上がる。
目的の教室に辿り着こうとした時、1人の女生徒が辺りを見渡しながら出てきた。
「樹!」
「(!?)お姉ちゃん!よかった…お姉ちゃんは無事だった!あのね、クラスの皆が…」
樹の肩に手を当て走ってきたことにより荒げた息を落ち着かせた風は樹を真剣なまなざしで見つめる。
「樹、よく聞いて!――― あたし達が…当たりだった…」
空が割れて7色の光とも呼べるものが『壁』とよばれる四国の結界からあふれ出す。それは次々とあたりを飲み込んでいき学校へと迫ってきた。
「…お姉ちゃん!…お姉ちゃん!」
不安がる樹を風は抱え込むようにし、
「東郷さん!」
「友奈ちゃん!」
友奈は咄嗟に東郷に抱きつきかばった。
――――――――――
光が収まっていく。友奈が目を開けた先に待っていたのは、
――― 幻想的とも言えるおとぎのような空間であった。
街はその全てを色とりどりの樹木の飲み込まれており、その世界の中心と思わしき場所にある大樹からの太い根で構成された世界となっていた。
「何これ、
パニックになってほっぺを抓っている友奈だったが抓った痛みでここが現実という事を直感していた。
「……夢じゃないみたい」
「……教室にいたはずなのに」
友奈の隣にいる親友東郷が幻想的な世界に驚愕しつつも辺りを見渡す。そして、不安になり俯いてしまった。
「大丈夫だよ! 東郷さんには私がついている!」
「……友奈ちゃん…うん」
東郷を安心させようと、彼女の震える手を握る友奈。不安を押し止めることは出来たが、どうすればいいかと思考を巡らせようとした。……その時である。
――― ガサッガサッ
2人は何かをかき分ける音が聞こえたため警戒を強める。友奈は東郷を守るかのように音が聞こえる方へと立ちふさがった。
「東郷さんは私が守る!」
友奈は身構え、美森は恐怖に震え友奈の制服を掴む。
「友奈! 東郷!」
「友奈さ~ん!」
「樹ちゃん! 風先輩!」
茂みをかき分け犬吠崎姉妹がやって来た。友奈と東郷はその姿に安心し友奈に至っては2人に抱きつく。友奈と樹は泣きながら不安が多少なりとも解放された事を実感した。
部長である風はみんなを安心させるためになんとか冷静に装いながらもこの状況をみんなに説明し始める。
「不幸中の幸いかな。みんな携帯を手放していたら見つけられなかった」
「「えぇっ!」」
風は彼女たちに見せるように携帯を操作する。アプリをタッチすると自分たちの現在位置が表示された。
「……これ…」
「このアプリに、こんな機能があったんですね……」
「隠し機能……?」
「その隠し機能は、この事態に陥ったときに自動的に機能するようになっているの」
「えぇっ、便利!」
「このアプリ、部に入った時に風先輩にダウンロードしろって言われたものですよね?」
「……えぇ」
心なしか説明する風の表情が暗い。答え辛そうだが美森はまっすぐに問いかけ、友奈と樹はこの場所が気になるようで不安そうに見つめる。
そして、風が意を決して言葉を紡ぐ。
自らが神樹を奉っている組織『大赦』から派遣された事、ここは友奈たちの世界で奉っている神樹が作り出した『樹海』と言われる結界であるという事、そして、神樹様に選ばれた一同はこの中で敵と戦うこととその敵の目的を聞いた。
一緒に暮らしている樹ですら気づけなかったのは、風はこの事は選ばれなければずっと黙っていることを決めていたからである。
そんな中、東郷は辺りを見渡した後に風に問いかけた。
「ねえ、風先輩。あのここには私達だけなんですか? 勇者部がそういう人たちの集まりなんですよね。でも…一騎君と総士君がいません」
「それは……残念だけど…」
風がその2人の事を話そうとした。
「あの、そういえば……この『乙女座』って書かれている点って何ですか?」
……が、友奈の一言で風が血相を変えて立ち上がる。
「来たわね」
風が見上げた方向をここにいる全員が向く。そこにいたのは、巨大な存在であった。その存在を『バーテックス』という名であること。そして、それが世界の恵みである神樹のもとまで辿りつき滅ぼし人類を殺すのが目的である。すなわち、神樹に選ばれたものが戦うべき敵である。
「……そんな…あんなのと戦えるわけが……」
東郷が目の前の強大な存在による恐怖に震えている。
「方法はあるわ」
風は一筋の希望の説明をする。アンロックされたアプリに神樹様に選ばれた『勇者』となるための機能がある。3人は画面を見ると芽の生えた種のようなアイコンがあった。
「……『勇者』」
「「「「きゃぁ!!」」」」
乙女座は4人に向け卵状の塊をばしてきた。塊は炸裂しその爆風に彼女たちが悲鳴をあげる。
「殺される」という恐怖に身がすくんで動けずにいる東郷の姿を見た風は覚悟を決めたような顔で友奈に叫んだ。
「友奈、ここはまかせて東郷と一緒に逃げて! 早く! 樹も一緒に逃げて!」
「は…はい!」
「ダメだよっ!! お姉ちゃんを残して行けないよ!」
風の説明により樹も戦い方は知っている。樹は風の制服の袖をギュっと握り、
「ついていくよ…何があっても……。どうしたら、いいの?」
「―――私達は神樹様に守られているから…大丈夫…樹続いて!」
「う…うん!」
犬吠埼姉妹が神樹に戦う意思を示し、携帯端末のアプリをタッチすると光に包まれた。
――― 風は髪が金に染まり、黄色を基調とした白き衣を纏い、
左の太腿にオキザリスの花の刻印が刻まれる。
――― 樹は黄緑を基調としたドレスのような衣を纏い、
背中に鳴子百合の花の刻印が刻まれる。
その装いを変えた2人はその場から飛翔し敵に相対した。
―――――――――
side:結城友奈
東郷さんを連れて離れた私たちだったけど風先輩から着信ので根の影に隠れて電話に出た。
「風先輩っ!?」
《よし、繋がった!》
「風先輩! 大丈夫ですか!? ……バーナントカと戦ってるんですか!?」
《こっちの心配よりそっちこそ大丈夫!?》
私は東郷さんの様子を見る。さっきから「ごめんなさい…」って呟いてる。……無理もないよ。怖いよね…。
《…友奈、…東郷。黙ってて、ゴメンね…》
風先輩が責任を感じて謝ってきた。……けど、違う!
《2人はなんとかアタシが助ける!》
「……風先輩は、みんなのためを思って黙ってたんですよね。こんな大変な事ずっと一人で打ち明ける事もできずに」
風先輩は妹思いもあってみんなに優しい。それを知っているからこそ、私は自然と言葉が出た。
「――― それって、勇者部の活動目的通りじゃないですかっ。だから、風先輩は悪くない」
《(!?)やっちゃった!》
「風先輩! 樹ちゃん!…こっちに来る……?」
爆弾が風先輩と樹ちゃんに直撃した。煙で2人の姿が見えない。
そして、バーテックスがこちらを向いて今にも撃ってきそうだ。それを見てしまった私は涙を滲ませ足がすくんで動けなくなってしまう。
「友奈ちゃん、私と一緒にいたら危ない! 私を置いて行って!」
(!?)東郷さん何言ってるの!そんな事…出来るわけないよ!
「お願い逃げて! 友奈ちゃんが死んじゃう!」
それでも東郷さんは私に逃げるよう必死に促してくる。風先輩に言われて東郷さんを任されたから逃げてきたけど…今私の友達でもある姉妹が前線で戦っているのに東郷さんまで……と、ここで私は気づいてしまった。
――― こんな事をして、何が友達なんだ。
私は涙をぬぐう。中学に入ってからできた出来た親友、部活と通してできた仲間たち、そしてあの男の子…一騎君の事が頭に浮かぶ。私はその人たちの事を考えてたら自然と動き出せた。
――― そんなの出来ない。
「やだ……」
そう考えると自然と怖くはなくなった。私は東郷さんのその言葉を否定し右手に持った携帯を握り締めると走り出す。
「ここで友達を見捨てるような奴は……」
バーテックスは塊を放ってくる。その爆弾と言えるものが私の方へ向かって飛んでくる。
「……勇者じゃない!」
そして、無常にも私に爆弾が直撃する。
「きゃぁ!友奈ちゃぁん!!!」
東郷さんが私の名前を叫ぶ。だけど、煙が晴れると私の無事な姿がそこにあった。風先輩の言っていた通りに戦う意志を示そうとしたら左手が無意識に前へと突き出していた。そしたら左手が桜色の手甲に包まれていた。どうやら、これで爆弾を壊したみたい。
ふと見ると傍らに白い牛のような何かが浮いている。アプリにあった精霊ってこの子なのかな?
「嫌なんだ! 誰かが傷つく事、辛い思いをする事!」
神樹様に戦う意思を示しながら続いてくる爆弾に蹴りを叩き込む。そうすると今度は同じ桜色のブーツに包まれる。
「みんながそんな思いをするくらいなら、私が頑張る!」
昔一騎君が見せてくれた跳躍をイメージして最後の一発を飛んで避ける。そのままバーテックスにロケットのように向かっていくと私は右手を思いっきり振りかぶる。宙を舞う私は光に包まれると、髪の色が桜色に染まり髪型がポニーテールへと形を変え、服も黒いインナーに白と桃色を基調をしたスパッツとコートのようなものに変わっていた。
跳んできた爆弾を右手で殴りつけるとそっちも手甲に包まれて、そこに桜の花びらの刻印が刻まれた。
「友奈……!」
「友奈さん!」
「友奈ちゃん!」
「うおおぉぉぉぉぉ!!勇者ァ…パァァァァァンチ!!!」
思いっきり叫びながら私は必殺の一撃を放つ。いつもお父さんの道場でやっている正拳突きだけど振りかざした右手で思いっきり殴りつけたらバーテックスの一部が吹き飛ばされた。
「勇者部の活動は、みんなの為になることを勇んでやる。私は讃州中学勇者部結城友奈!。私は!勇者になる!」
着地した私はバ-テックスを見上げ、神樹様に戦う意思を示した。
side out
――――――――――
「友奈さん凄いパンチ! カッコイイ!」
「なんだかみなぎってきた!(これならきっと私も戦える…あの怪物を倒さなきゃ)」
爆弾が直撃したが犬吠埼姉妹だったが神樹の遣わした世界を守る力である精霊の障壁によって無事だった。『精霊』とは神樹が選んだ勇者に遣わした攻撃の力でもあり、勇者を守る存在でもある。
樹は友奈を賞賛するが、乙女座のバーテックスは光に包まれ損傷した部位を再生させていた。
「バーテックスはダメージを与えても回復するの。封印の儀式っていう特別な手順を踏まないと、絶対倒せない!」
「て、手順って何、お姉ちゃん」
「あいつの攻撃を避けながら説明するから、避けながら聞いてね。来るわよ!」
「またそれ~! ハードだよぉ~!」
風の一声で3人は散開。爆撃の雨の中、風の指示通りの位置へと向かう。
「みんな…、友奈ちゃん…(駄目…私、戦うなんて…できない)」
そんな中、東郷は皆と一緒に戦おうと考えていたがバーテックスを見ると恐怖にかられ怯えていた。
そのために彼女の出来ることは恐怖心と戦いながら皆の無事を祈るしかなかった。
「えーと、次は
位置についた友奈と樹は武器を翳し
「おとなしくしろ! コンニャロ―!!」
「「そ…それでいいのーッ!!」」
風のゴリ押しに思わず突っ込んだ友奈と樹だったが、各人に使わされた精霊『牛鬼』・『犬神』・『木霊』によって結界が展開、制限時間のような数字が表示され、乙女座から四角睡の形をした物体が飛び出してきた。
「数字はアタシ達のパワー残量。零なったらこいつを倒せなくなる! だけど、封印されてむき出しになったのが『御霊』。いわば心臓のようなもので破壊すればこっちの勝利よ!」
「それなら私が行きます! くらえぇぇ!」
友奈が御霊を殴りつける…しかし、ガンッと金属を叩きつけたような乾いた音が響き渡った。
「かったぁーーーい! 硬すぎるよコレェ~!」
「友奈変わって! くらえ、アタシの女子力をこめた渾身の一撃をー!!」
風は飛び上がり宙返りしながら手に持った大剣で落下の勢いを利用し思いっきり叩きつける。その一撃で御霊にひびが入った。
しかし、樹が周りを見ると樹海に張っている根が枯れ始めていた。
「…枯れてる?」
「はじまった、急がないと! 長い時間封印していると、樹海が枯れて現実世界に悪い影響が出るの!」
風のその言葉を聞いて友奈が再び御霊に向け飛翔する。
「時間がない!」
(神樹様…お願いします。どうか皆をお守りください!)
「(痛い…怖い…でも…)大丈夫!」
東郷の祈りが友奈に通じたのかひびが入った御魂に友奈の拳が叩き込まれる。ひびが広がっていき御霊は耐えきれずに自壊し分解されそこから出た光が天へと散っていく。
心臓とも言える御霊を破壊された乙女座の体が砂となって崩れていった。
――――――――――
「勝った…よかった……」
初陣ながらも敵の撃破に成功した友奈・風。樹はその場で喜びを分かち合い、離れた所で東郷も恐怖で戦う意思が出せないが彼女らの無事を祈り敵を倒れたことで安堵の表情を浮かべようとしたが、
「え、何……なの?」
その時である。東郷は前線にいる3人の上空から迫る光の玉に気付いた。その光の玉は友奈たちの方へとゆっくりと降りたっていく。まるで空から降る流れ星のようだ。
光の玉ともいえるそれに気付いた3人は何が起きたか分からずそれを見上げる。そして、光の玉が弾けるとその正体が現れる。先程のバーテックス程な巨大さはないが、大きさは人間よりもはるかに大きく、不気味な巨大な口、無脊椎動物のような袋状の身体に触手のような手が数本ついている。
その色は一瞬目を奪われるほど美しい金色に輝いている。しかし、友奈たちはその神々しさに一瞬惹かれるものの先程倒したバーテックスとは違う異質な感覚に襲われる。その嫌な予感で我にいち早く我に返った風は2人にむかって叫ぶ。
「嘘でしょ…樹、友奈! そいつから離れて!!!」
「風先輩?」
「あいつは…やばい……」
「お姉ちゃん、あのバーテックスは?」
「大赦が言っていた…金色のバーテックス……」
風が明らかに金色のバーテックスを警戒し畏怖していることに友奈と樹はただ事ではないことに気付き彼女の元へ駆け寄る。
そして、その存在は、
【あなたはそこにいますか】
ただ一言…3人に問いかけた。何度も何度も同じ質問を。3人はどうすればいいかわからずに首を傾げた。
【……】
「(!?)樹、危ないっ!!!」
何度も質問をしてきた金色のバーテックスは突如触手を伸ばす。とっさの事で動けずにいた樹に風は咄嗟に駆け寄り庇った。
「風先輩!」
「お姉ちゃん!!!」
それにより風は金色のバーテックスの触手に絡め取られてしまう。手にもった大剣で斬りつけようとするも雁字搦めにされているせいでうまくできない。
「このぉ、離せ!!!」
「風先輩を離して!!!」
友奈が飛び上がり右手で金色のバーテックスの真後ろから殴りつけようとする。
【……】
「え?」
「避けられた!」
「(……違う。明らかに動くのが早かった…。まるで分かっていたかのように)」
友奈の一撃を金色のバーテックスは見もせず軽やかに避けた。恐怖に震えている東郷だったがその動きの不自然さに気付いた。金色のバーテックスは予想して避けたのではなく明らかに
「お姉ちゃん! 友奈さん!」
樹は右手の花環状の飾りからワイヤーのような糸を射出し金色のバーテックスに放つ。
「きゃぁ!!」
しかし、複数に折り重なるように放った樹の攻撃を避けると友奈までも捕えてしまう。そして、風と友奈を捕えたまま上空へと舞い上がった。
【あなたは、そこにいますか】
「(な、何?精霊のバリアが効いてない!?しかも、この感覚…あたしの中からなにかが……なくなって…いく……)」
「あぁ…うぅ……」
金色のバーテックスは友奈と風に接触するような動作を見せる。2人は自分の中でなにかが無くなってしまうような感覚に襲われ、ぽっかりと穴が開いたようになってくる。それが危険だとみた精霊が防ごうとするも防ぎきれない。友奈と風の体の所々に翡翠色の結晶が生えてくる。
「お姉ちゃん!!!」
「友奈ちゃん!!! いや…もう…やめて……」
2人の窮地にどうにも出来ず、2人は涙を流しながらも叫ぶ。
(あれ? なんでだろう…何も思わなく、感じなくなってくる)
そんな中友奈はその感覚に囚われながらも思っていた。
(前にもこんな感じになったような……。……私はあの時どうなったんだっけ?)
溶けていくような感覚に襲われていた時、
(お前はまだそこにいろ!!!)
不意に友奈の頭に昔の記憶が蘇る。あの時、手を差し伸べてくれた人を彼女は思い出した。
―――――――――――
【!?】
突如、一筋の流星のような閃光が風と金色のバーテックスの間に入る。友奈と風が囚われていた触手を切り裂かれ、2人を抱えたその流星は地面へと降りたつ。
光が治まりその正体が表す。その姿はどこかの組織の制服と思わせる服装にその上に紺色のコートを羽織った井出達である。
「あ…あの人は」
その近くにいた樹はその正体に気付く。見た目は友奈たちと同じ中学生くらいの子だ。そしてその人が手をかざすと意識を失っている友奈と風に纏わりついていた翡翠色の結晶が砕け散る。
「う…うぅ~ん」
友奈が目を覚ます。ゆっくりとその双瞼が開かれると助けてくれた人の顔が見えた。その顔は彼女にとって見知った人であった。
「……一騎…君?」
「遅れてごめんな。友奈、風先輩」
樹が3人の元へと駆け寄ってくると一騎は風を樹へと託す。友奈も託そうとしたが彼女はふらつきながらもなんとか歩けるようだ。
「樹、風先輩と友奈の事を頼む! 東郷もいるから一緒にいてくれ!」
一騎が手をかざすとそこに大型の馬上槍とも呼べる武器が現れる。恐らく、金色のバーテックスの触手をそれで切り裂いたのであろう。
「この世界でもまた奪い。痛みを与えるだけなら俺がお前を消してやるぞ! ……『フェストゥム』!」
次回、ついにファフナー勢の戦闘が始まります。
以下、解説
●両作品の敵勢
バーテックスとフェストゥムは意外と共通点が多いですが、当作品ではバーテックス < フェストゥムと作者内でランク付けしています。
どちらも再生や進化能力は持っています。ですが、バーテックスは通常兵器が効かないという利点がありますが、同化耐性なかったら取り込まれて即終了だと思います。
●オリジナルフェストゥム
あるミールがゆゆゆ世界で独自に進化したもの。こちらも話が進むたびに語ろうと思います。
●戦闘方式をゆゆゆ世界準拠にした理由
ファフナーでやってもいいですが、戦闘フィールドである樹海の特性もあったため。多分、被害甚大になると作者が思いました。