絶望を超えし蒼穹と勇気ある花たち   作:黑羽焔

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原作第2話、戦闘回。

2016/3/20:誤字&表現修正


第10話 三つ巴

――― 樹海警報より前、東郷が部室から出て行った頃。

side:皆城乙姫

 

今日は勇者部のみんなに事情を説明するつもりだったんだけど春信から私用のシステムが完成したとの事で学校を早退しそちらの方へと出向く事になっちゃった。今はその帰りで大赦の車で移動中。

 

「すまないね。学校を休ませてまで付き合わせてしまって」

 

「ううん。構わないよ、春信。……先生や友達にはちゃんと話しておいてるから大丈夫だよ」

 

私が大赦の関係者である事は私の周りの人にはもう話してある。この事を話した時には…、

 

『乙姫ちゃん、大赦の巫女さんだから大変だね~』

『私達も協力するよ。休んだとかのフォローは任せてね~』

 

とこんな感じで意外であっさりと受け入れられた。この世界の信仰もあるけど芹ちゃん達みたいにいい人で良かった…かな。

 

「いい友達をもったね」

 

春信が私を気遣って声をかけてくれる。前に聞いたところ溺愛している妹がいるそうで、それもあってか私に対しても優しくに接してくれるそうな。……その妹とは今は色々あって疎遠気味でへこんでいることもあるけどね。

 

「厳しい事言うねえ…」

 

だけど、春信は総士と違ってずっと器用だから話せば妹さんも分かってくれるはずだよ。…やっぱり、兄妹の仲が悪いのはよくないよ。

 

「今はあちら側になってしまったけど…いつかきちんと話して、仲直りをしたいかな。さてと、話を戻そう。乙姫ちゃん用のシステムはご要望通りの性能の再現できたし、ご指定の機能もつけたから仕様は目を通しておいてね。…かなり複雑そうだけど問題は?」

 

…大丈夫だと思うよ。前の世界ではもっと()()()()()も動かしていたから。あの時は出来ることは少なくてこれでやっと……。

 

「―――っ!止めて!」

 

私の一声で運転手が車を路肩に止める。

 

「どうしたんだい?」

「(!?)……来る!?」

 

私がそう言うと、車内に突如アラーム音が鳴り響く。春信がその元が私の端末の物と気づくと、只ならぬ表情で叫んだ。

 

「すぐにドアを開けろ! 乙姫ちゃんきを……」

 

「春信!!」

 

春信がそう言いかけると運転手共々固まってしまった。まさか連日で来るなんて……。

 

「……急がなきゃ!」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

No side

-樹海-

「この感じ、また敵が現れたって事だよね…」

「そういう事になるな」

「……うん」

 

樹海の世界に投げ出された友奈・一騎・東郷は辺りを見渡しながらそう呟く。友奈は迫りくるバーテックスを一度見上げるとすぐに手元の端末のアプリに触れた。

 

「はあああ、変身!」

 

友奈が変身ヒーローの如く叫ぶと敵に対抗するための力、『勇者』の姿へと変わる。

 

「東郷さん、待っててね。倒してくる」

 

「(!?)待って、私も……」

 

東郷の脳裏に前回の戦いが呼び起されて言葉を詰まらしてしまう。恐怖心もあるが大事な友達が戦いの場に行ってしまう。そんな気持ちにかられていた。東郷は友奈と一騎の事を心配なのか悲しげに見つめている。

 

「……無理するなよ」

 

「大丈夫だよ、東郷さん」

 

呼び起された恐怖心に震える東郷の手を友奈が優しく握る。コート姿の一騎も友奈の隣につきに優しく語りかける。

 

東郷は不安と恐怖に震えながらも2人に言葉を返す。

 

「…………友奈ちゃん…無事に帰って来てね。一騎君…友奈ちゃんや勇者部みんなの事をお願いします」

 

「…頑張るよ」

「……行ってくるね」

 

東郷は2人をなんとか送り出した。それが弱い自分が出来る数少ない役割をしなければならないことになんとも歯痒い思いをしながら。

 

東郷の頼みに一騎は頷くと友奈と共に飛翔した。

 

 

 

【一騎、聞こえるか?】

 

【総士か!】

 

友奈と共に樹海を進み、マップに表示されている総士・風・樹の元へと向かう一騎だったが総士からクロッシングでの思念が入る。

 

【そのまま進みながら聞いてくれ。敵は今のところは3体。いずれもバーテックスでタイプは『蠍座』、『蟹座』、『射手座』だ。現在『蠍座』、『蟹座』が接近中で距離を置きながら追従する形で『射手座』。距離を置いている『射手座』は遠距離攻撃を持っているからのこの布陣だろう】

 

【っ! バーテックスの情報があるのか!】

 

【大まかだがな。戦略としてはで先行している『蠍座』、『蟹座』を勇者達に撃破させるために一騎にはそのサポートを頼みたい】

 

【バーテックスには通常兵器が効かないのだろ。ファフナーの武器が効かなかったら】

 

【その点は問題はない。こちらはミールのコアの干渉もあって性質が変わっているからなダメージは与えられる。が、本体である御霊の露出には手間取るだろう。よって、勇者達の封印の儀を使うのが一番だ】

 

【…まあ、あれを見ればな】

 

【(それもあの機能さえ使えばそれは解決するが、奴らの事を考えると今は出したくない事もあるがな)あぁ。それほど勇者たちの力は凄まじい事は分かる。だが、それ以上に戦力としての問題を抱えている】

 

【どういう事だ?】

 

【選ばれた少女たちはほとんど素人だ。一騎、僕たちもかつてそうだっただろう? いくら力があっても…知識を植え付ける等をして準備してきたとしても…最初はな……】

 

それに関しては一騎も思うところがあったのか総士に同意した。力があってもその力の振り方を知らなかったため始めの事は常に苦戦を幾多も余儀なくされた事があったためである。

 

事実、勇者に選ばれていただけの少女が訓練も積まずにそのまま戦いに行くのは2人からも無謀すぎると思えた。

 

【…だから、僕と一騎で彼女たちのサポートをするまでだ。一騎、フェストゥムはまだ姿を見せないならそれまでは勇者たちの援護。

 

…ただし、状況に応じていつでも動ける様に…できるか】

 

【そうだな。戦いに慣れているのは俺らだけだからな…分かった。やってみる!】

 

一騎は心で総士の考えに肯定の意を示す。そして、友奈と共に他のメンバーとの合流を果たす。2人の位置は風・樹・総士がいる位置とちょうど挟み撃ちとなっていた。

 

「友奈・樹、とりあえず遠くの奴は放っておいて、まずはこの二匹纏めて封印の儀に行くわよ! …それと総士と一騎は…」

 

「一騎には風先輩たちをサポートする形で動かせます。僕らは封印の儀とかはできませんので」

 

「分かったわ」

 

総士の意外な応対に一騎はクロッシングでの思念で疑問をぶつける。

 

【いいのか? 友奈達に指示を出さなくて】

 

【指揮系統を複数すればデメリットが多い。それなら勇者の指揮を風先輩に任せて僕達がフォローしたほうがいい】

 

風は端末を消すと大剣を構える。友奈と樹は指示に従い戦闘態勢に入ろうとした。その直後、一番遠い位置にいる射手座のバーテックスの上部の口が開かれ、大きな矢が番えられそれを放った。

 

「お姉ちゃん!!」

 

放たれた矢の速度は凄まじく撃たれてからでは回避できない程だ。狙われた風だったが精霊によりその一撃を防いだもののその衝撃によって空中に弾き飛ばされる。なんとか風は態勢を立て直すと根の上に着地した。

 

追撃といかんばかりに射手座はその身を上に揺らすと下の口から無数の光の矢を撃ち出す。矢の雨は風と樹にに降り注ぐ。姉妹は咄嗟にその場から離れた。

 

「風先輩! 樹ちゃん! なんとかしないと!」

 

「(!?)友奈、こっちだ!」

 

一騎は友奈の手を引っ張る。すると友奈のいた位置に矢が降り注いだ。矢の雨を回避した一騎はレールガンを構え、射手座に狙いをつけるとその引き金引いた。

 

放たれた超電磁の弾丸だったがそれは突如板状の物体により防がれた。蟹座の周囲に浮遊する反射板ともいえる物体を使い、矢の雨を反射させた多角攻撃を展開し始めた。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

視点:謎の存在

 

樹海の世界で、この戦いを静かにかつにたりとした笑みを浮かべながら見ている少年の姿をしたものがいた。

 

【ふーん、連日で戦力の投入ねー。力をつける前にやるなんて中々やるじゃん。それじゃあ、もう少し盛り上げてみようかな】

 

 

 

――――――――――

 

 

 

視点:真壁一騎・結城友奈

 

射手座と蟹座の連携に分断されてしまいはぐれてしまった一騎と友奈は矢の雨を受けないように走っていた。逃げながら一騎は総士に連絡を取る。

 

「分断されたか、【総士!】」

 

【こっちは風先輩と樹と退避済みだ】

 

聞くと総士も狙われ風と樹と共に根の間に潜ってやりすごしたらしい。

 

【蟹座の反射板の影響で動きづらい。ここまでの連携が密とは厄介だ……。それにさっきので蠍座の位置が見当たらない。そっちで見てないか?】

 

【いや、こっちでも見かけない。…狙撃しようにも俺の腕じゃあ止まらないとレールガンで撃てないし。この攻撃ではうかつに接近できないぞ】

 

【……ちぃ、見つかった】

 

総士の思念が一時的に切れる。クロッシングは繋がってるから無事だと思われるが、おそらくは蟹座に見つかり攻撃から避難しているためであろう。

 

「(蠍座がいない…か。……この辺りにはいるはずなんだけどな)」

 

ふと一騎は友奈を見ると走りながらもキョロキョロと辺りを見渡しているのに気が付いた。恐らくは他のみんなの事が心配なのであろう。一騎はみんなの無事を伝えようとした。

 

その時、地面が唐突に揺れた。

 

「え?」

 

「(まさか、隠れてた)友奈ぁー!!」

 

一騎は地面の揺れを何とか踏ん張りつつも友奈を咄嗟に抱えその場から離れようとする。しかし、足元から蠍座の尻尾が現れ、避けきれず2人の体を突きあげる。空中に投げ出された所を蠍座は2人纏めて横薙ぎに振りぬいた。

 

「がぁっ!!」

「きゃぁ!!」

 

「友奈ちゃん! 一騎君!」

 

2人は東郷の近くまで弾き飛ばされる。

 

「い…つっぅ……」

 

一騎は痛みなんとか堪えながらも立ち上がる。手元にはルガーランスが具現化されておりそれでなんとか防いだようだ。すぐに友奈の方を見る。怪我などはないようだが蠍座の攻撃の衝撃で気を失いかけていた。

 

「「(!?)」」

 

ふと見上げると蠍座が接近して尻尾を振り上げた。一騎はすぐさま防御態勢に入った。

 

【!!!???】

 

蠍座の攻撃が突如止まる。見れば、その真上から光り輝く玉が6つも接近していた。それが弾け金色の正体が現れる。

 

「フェストゥム!!」

 

前回の戦闘で現れた新型のフェストゥムである。

 

「…これは…きついな…」

 

一騎は友奈と東郷の姿を目配せる。彼にとって分の悪すぎる展開となってしまった。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

視点:皆城総士・犬吠埼姉妹

 

「……ちぃ、見つかった」

 

蟹座に再び見つかったため矢の雨からの退避を余儀なくされた3人は再び走り出した。

 

「どうするのよぉ~これぇ~!!!」

 

「(!?)あぁ! 友奈さん、一騎先輩!」

 

樹が異変に気付き指を指す。それに気付いた総士と風もその方向を見ると一騎と友奈が蠍座の一撃を喰らう瞬間であった。

 

「ぐぅ…!」

 

「総士!」

「総士先輩!」

 

「……大丈夫だ。ッ!」

 

すると、総士が何かに堪えるように顔をしかめる。風と樹が駆け寄ろうとした時に3人の周りを取り囲むかのように3つの光球が出現した。それが弾け、その正体が現れる。

 

「(!?)フェストゥム!」

「え…えぇぇぇ! お…多すぎない…」

 

3体のフェストゥムが徐々に3人ににじり寄ってくる。

 

「(乙姫はいないが仕方ない)……一時的に、ジークフリード・システムを『分割統轄モード』へ移行」

 

総士が端末を操作するとガルム44と呼ばれるライフルを具現化させる。

 

「って、総士。あんたも戦えるの!?」

 

「この状況じゃあ仕方ない」

 

ガルム44を構える総士。だが、

 

「(!?)また来ました」

 

蟹座から矢の雨の反射攻撃が降り注いだ。3人は咄嗟に避ける。

 

【【【!!!】】】

 

しかし、それは3体のフェストゥムにも降り注がれる。さらにその攻撃は何故かフェストゥムに続けて行われた。

 

「同士討ち!?」

 

「ど…どうなってるんですか?」

 

「(どういう事だ? あのバーテックスはフェストゥムを明らかに狙っている…まさか)ともかく、態勢を立て直すぞ」

 

総士が冷静に状況を分析しながらも3体のフェストゥムにガルム44の弾幕を浴びせる。バーテックスの援護もあってか2体程消滅した。

 

【総士!】

 

【一騎、どうした】

 

【フェストゥムが現れた! 何故か友奈を狙ってる! 蠍座にも狙われててやばい!】

 

【なんだと!】

 

総士は動揺するも一騎の言ったある事に疑問をもった。

 

(一騎を無視して結城を狙ってる? ……前回の戦闘や2()()()の事もある…まさか!)

 

総士はその疑問を並列思考で考え確信を至るも銃身下部に装備されているミサイルで残った1体も消滅させた。

 

【一騎、フェストゥムの狙いは!】

 

しかし、ここで一騎からの思念が切れてしまった。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

side:東郷美森

 

友奈ちゃんと一騎君がバーテックスの攻撃で弾き飛ばされた。その一撃で今友奈ちゃんは動けなくなっている。さらに、総士君が言ったフェストゥムまで私達の前に現れた。

 

その窮地に一騎君は、

 

「くそぉ!」

 

友奈ちゃんを守るために彼女を抱えながらフェストゥムの触手攻撃を槍で切り裂き捌いている。だけど、抱えている分制限が出来てしまって思ったように戦えてない。それでも3体は仕留めたからそのまま離脱したいところなんだけど、

 

「はぁ…はぁ…しまっ!」

 

ついに疲れが出てしまって膝をついてしまう。そこに蠍座の尻尾でも攻撃がとんでくる。

 

「(!?)お前…」

 

それを友奈ちゃんの精霊が必死で防いでるも蠍座は何回も針や尾で叩きつける。そのたびにピンク色の閃光が散る。見れば防ぐのが辛そうだ。

 

それを目の前に見せつけられた私は痛めつけられている友達の姿を見て思い出す。足が不自由になって記憶を一部失って不安になっていた私に手を差し伸べてくれた2人の事を……。

 

「…やめろ」

 

自然と私にかられていた恐怖心以上のある気持ちが芽生える。

 

「……やめろ!」

 

救ってくれた人が酷い目にあっている。たしかに怖いけど、それ以上に失うのも…嫌!

 

「友奈ちゃんを…一騎君を……いじめるなぁぁぁぁぁ~!!」

 

大切な人を…みんなをこれ以上傷つけないで!!!

 

「(!?)東郷、逃げろ!!!」

 

……蠍座の尾が私に襲い掛かってきたけど、目の前に卵の形をした存在が現れ攻撃を防いだ。これが…私の精霊…。

 

「東郷さん…」

 

「私、いつも友奈ちゃんや一騎君に守ってもらってた。……だから、次は私が勇者になって、みんなを守る!!」

 

神樹様に私の戦う意思を示しアプリに触れる。すると私の姿が青のインナーに白を基調とし帯が垂らされた衣装を纏う。朝顔の刻印が私の胸元に刻まれた。

 

「綺麗……」

 

変身が完了したと同時に狸のような精霊も現れる。いつの間にか右手には拳銃が握られていた。

 

(どうしてだろう…変身したら落ち着いた。武器を持っているから?)

 

私はその拳銃で蠍座の針を撃つ。放たれた弾丸は針をあっさりと砕いた。

 

「もう、2人には手出しをさせない!」

 

金色の体をもったフェストゥムも私に迫る。私が手をかざすと今度は青い火が揺らめく精霊も現れると2丁の銃が具現化される。

 

「心を読むけど、これなら!」

 

銃から散弾が放たれる。フェストゥムも広い範囲に攻撃する散弾をさすがに大きく避ける。避けられたけど蠍座には当たり、その身体に無数の弾痕を穿つ。避けたフェストゥムは私に迫るけど、

 

【【【!!!???】】】

 

一騎君が1体に槍で切り裂き、残り2体を長銃の2射で仕留めた。切り裂いた個体には槍を変形させ内部から撃ち貫いた。

 

私の姿に気付いたのか友奈ちゃんと一騎君が歩み寄ってきた。

 

「東郷さ~ん!」

「助かったよ、東郷。それに、その姿は」

 

「うん、私も『勇者』としてみんなと一緒に戦います!」

 

「(!?)うん!」

 

side out

 

 

 

――――――――――

 

 

 

No side

 

「あーもー! しつこい男は嫌いなのよ!」

 

「モテる人っぽく避けてないでなんとかしようよ。お姉ちゃん!」

 

「(そもそもああいうのに性別はあるのか!?) 【総士、蟹座から離れてくれ!】…ん?」

 

一騎からの思念と同時に蟹座の上に蠍座が落ちてきた。その勢いに蟹座は押し潰された。

 

「よっと、そのエビ運んできたよ~」

 

「サソリ「でしょ!」だ!」

 

風と総士から突っ込みが飛ぶ中、東郷と一騎が友奈の両隣りにやってくる。足が不自由な東郷は衣装の4つの帯が足代わりとなっている。

 

「東郷先輩…!」

 

「遠くの敵は私が狙撃します」

 

「…東郷、戦ってくれるの」

 

「はい…風先輩、総士君、部室では言いすぎました。ごめんなさい……」

 

「……アタシの方こそ…ごめんなさい」

 

「……僕も気にはしていない。それよりも今はバーテックスを」

 

「…はい。援護は任せてください!」

 

「…わかったわ、東郷。みんな散開、手前の2匹まとめてやるわよ」

 

風の指示で友奈・東郷・樹は動き出す。

 

「一騎、東郷と共に射手座を。僕は3人の援護だ」

 

「お前、指示しなくても戦えたのかよ」

 

「時には前線に出ることもおり込み済みだ」

 

一騎や総士も援護のために動き出す。

 

「こいつがみんなを苦しめた……おとなしくしてて!」

 

東郷は銀色の長銃を具現化させるとうつ伏せとなる。射手座が仕留めようと大型の矢を撃ってくるも彼女は冷静に引き金を引き放たれた大型の矢を撃ち落とす。そして、射手座に狙いを定めると連射での正確無比な狙撃を何発も叩き込んだ。

 

(東郷のやつ…遠見並の腕前…だな)

 

一騎は率直な感想を呟きながらも配置についた。その間に友奈・風・樹は蟹座・蠍座に対し封印の儀を発動。光に包まれた2体から本体である御霊が転げ落ちた。

 

友奈は蠍座の御霊に目掛け拳を突くが、突くたびに御霊はすばやく避けて捉えられない。

 

「かわって、友奈ぁ~はぁああ! 点がダメならぁ~! 面の攻撃でぇ~!」

 

風は大剣を巨大化させ刃ではなく大剣の腹で殴り飛ばす。飛ばされてバーテックスの一部に衝突した御霊を総士が長剣(レヴィンソード)で斬りつける。

 

「ッ! 浅いか……!」

 

御霊は浅く斬られ罅が入るも今度は空中に逃げた。

 

「だったら、最後は押しつぶ―――す!!!」

 

風は上段に大剣を構えると御霊を地面に叩き落としそのままの勢いで押し潰した。

 

「ひとぉぉぉつ!!! 次!」

 

「次は……あれれ~!」

 

友奈が蟹座の御霊に目をやると彼女の目の前で御霊が増殖した。

 

「厄介だな…」

 

「あの私に任せてもらってもいいですか…!」

 

樹は右手の飾りを前にかざすとそこから放たれた緑色の糸が増殖した御霊を捉える。

 

「数が多いなら…まとめて、ええぇい!」

 

そのまま引っ張り上げると糸の結界に捉えられた御霊を縛り上げる。縮まった糸の結界は増殖した御霊を豆腐のようにスライスしていき、最後には本体がバラバラになった。

 

残った蠍座と蟹座の抜け殻ともいえるそれは砂となり分解され始めた。

 

「ナーイス樹ぃ~! あと1体よ!」

 

《精一杯援護します!》

 

「次で最後だよ! 封印開始!」

 

東郷と一騎が狙撃で射手座の動きを止めている間に最後の封印の儀を展開。しかし、出てきた射手座の御霊は射手座の抜け殻の周囲を目にも止まらない速さで周回し始めた。

 

「この御霊…動きが早い!」

 

「…ッ!」

 

一騎がレールガンでの1射を放つも高速で動く御霊を捉えられずに外れた。

 

(さすがにうまくはいかないか…)

 

「一騎君…十分よ……」

 

東郷が引き金を落とすと銀色の長銃から弾丸が放たれる。それは寸分たがわず一撃で御霊を撃ち抜いた。御霊は砕け散り、射手座の抜け殻も砂と化した。

 

「東郷先輩…!」

「1発で撃ち抜いた…!」

 

「状況終了…みんな…無事でよかった…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視点:謎の存在

 

【あは。中々やるじゃないか】

 

戦闘の一部始終を見ていた少年のような存在が勇者たちに賛美を送る。

 

【勇者たちの戦いも良かったけど、これでやっと判明したよ】

 

その視線は一騎と総士の方に向けられる。

 

【見せてもらったよ。僕と違うミールの子たちよ……なら、これはどうかな?】

 

少年のようなものは右手を翳す。すると、砂となったバーテックスの残骸が集まり何かが生成し始められた。もう片方の手もかざすと翡翠色の物質が出現し、その生成された何かに物質が溶け込んだ。




ゆゆゆ界のマークゴルゴである東郷美森の大覚醒回でした。

余談ですが、ゆゆゆのキャラソンの乃木園子の曲名が『EXODUS』ねえ。もしや公式はこのクロスを・・・いや、話がそれました。

以下、解説
●総士の通常時の戦闘スタイル
スパロボでのマークアインの武器とスタイルと使用。RoLでは起動実験で総士はマークアインを使っていたためでもある。

先の事ですが、一騎と共に切り札として例のアレになりますよ。

●乙姫の行方
次回では大活躍の予定。

以下、次回予告
「ソロモンに応答…また新型だと」

「攻撃が……」

謎の存在が使わした新型に苦戦する一騎たち。

「このまま放っておくなんて…私にはできないよ!!!」

何もできない勇者たち。

【総士、あなたはまた選ばなければいけない時がくる】

(この事なのか、乙姫…織姫…)

総士が下した決断は?

次回第1章最終話、第11話『クロッシング』

【私も戦うよ…新たな居場所を守るために】

…「「「「私達……はここにいる!!!」」」」

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