絶望を超えし蒼穹と勇気ある花たち   作:黑羽焔

27 / 58
夏凜の誕生日会となります。


第5話 変化(後編)

土曜日、翌日のレクリエーションに備えてのある準備のために一騎は喫茶楽園に顔を出していた。昨日、総士から大赦から監視されていることを知った一騎だったが、総士からは「今はあくまで監視されているだけで、あちら側からは何もできないはずだ」と言い切いきった。しかし大赦の事に関しては総士も聞かれたくない内容の話だったのか

 

「しかるべき時と場所ですべてを話す」

 

と言い残しその日は別れた。

 

(どうなるかと思ったけど、総士の言う通りなのかな)

 

「一騎、お疲れさん。…悪いな、明日は新しい部員の歓迎会だっていうのに」

 

「仕方ないですよ。週末ですしね」

 

店前でそんな事を考えていると店長である溝口から声がかかる。終末は平日の倍くらいの客が訪れているため一騎はそちらの対応も並行しておこなったためかいつの間にか夕日が沈みかけていた。

 

「それじゃあ、溝口さん明日宜しくお願いします」

 

一騎は帰路につこうと振り返ったが

 

「……あ」

 

「……三好?」

 

店前にて夏凜とばったり出くわした。

 

 

 

side:三好夏凜

 

夏凜は土曜日の半日授業後まっすぐ家路につくと砂浜にて鍛錬に励んだ。日も赤く夕暮れになった頃に切り上げ夕食を買いに近くのコンビニに寄っていた。

 

(…明日か。こんな非常時にレクリエーションだなんて…)

 

夕食の調達をしレジへと向かおうとしたところ、ふと明日の勇者部のレクリエーションの事を思い出した夏凜はレジへ向かう途中にあったある商品に目がいった。

 

(…ね、念には念をってことよ)

 

その商品も手に取り買い物カゴに入れ会計をした。帰路につこうと自転車を走らせた夏凜はある喫茶店の前を通り過ぎようとしたが見慣れた姿を見つけ足を止めた。

 

「……あ」

 

「……三好?」

 

店内から出てきた真壁一騎がそこにいた。

 

side out

 

 

 

「なんだ、一騎。知り合いか?」

 

「ええ。この前中学に転入した子で、勇者部にも所属しているよ」

 

「ちょっと入部は形式上よ!」

 

「…なるほどね。(一騎の言っていた子はこいつみたいだな)」

 

溝口が頭を掻きながら納得した。

 

「偶然だな」

 

「…偶然、通りがかっただけよ。もうあたしが住んでいる家まで目と鼻の先だし」

 

夏凜の話では楽園からそう離れていないマンションが讃州地方で住んでいる所らしい。

 

夏凜の格好はこの前と同じ鍛錬時の服装である事に気づいた一騎は夏凜が今日も鍛錬に励んでいたのかと思った。

 

「今日もなのか。随分熱心なんだな」

 

「ふん、当然よ。…あんたこそこんなとこで油売ってるんじゃないわよ」

 

「こんなとこで悪かったなお嬢ちゃん!」

 

「……明日来るんだよな」

 

「そう言われなくても行ってあげるわよ!」

 

溝口の軽口や一騎の賛美も流し夏凜は自転車を走らせて帰ってしまった。明日の事も軽く話すつもりだったが夏凜の自転車カゴに入っていたある物を一騎と溝口は見てしまった。

 

「コンビニ弁当…それにサプリ…?」

「はぁ…年頃の女の子にしちゃあ随分と偏ってんなあ」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

――― 6月12日日曜日

児童館でのレクリエーションの日がやってきた。

 

「「「到着~~!」」」

 

一騎と総士は乙姫やその友達2人を引き連れ現地に着いた。総士はスマホの時計を見るとどうやら集合時間の10分前に到着したようだ。

 

「早かったかな」

「いや、ちょうど良かったらしい」

 

乙姫ら小学生組はこの日を楽しみにしていたのかテンションは相当高い。そんな乙姫の和気藹々とした姿に総士は僅かに微笑んだ。

 

「なんだかうれしそうだな」

「(!?)兄としては…当然だ!」

 

「みんな~こっちだよ~」

 

正門の方には勇者部の女子陣が待っていた。先に到着し残りの参加者が到着するのを待っていたようである。

 

「「「おはよう~」」」

 

「おはようございます。ふふ、特別部員たちは今日も元気ね」

 

東郷が代表して小学生組に挨拶を返す。

 

「……三好が来ていないような」

 

一騎が夏凜の姿が見えない事に気づき勇者部の女子陣に尋ねる。

 

「そうなのよ。予定がないって言ってたわよね」

 

一同は頷いた。どうやら夏凜だけが来ていないようだ。

 

「昨日偶然会ったときは行くって言っていたのですが…」

 

「(!?)一騎君、夏凛ちゃんに会ったの!?」

 

「あぁ、楽園の前でばったりと」

 

一騎が昨日にあった事を一同に話す。友奈がその事に驚いた。

 

「…まあ、真壁の言う通りならそのうち来るわよ。ひとまず入りましょうか」

 

夏凜の到着を待たずに一同は児童館へと入る。これまでも夏凜は嫌々ながらも時間通りに勇者部部室へと顔だけは出していたことからそのうち来るだろうと信じて。

 

 

 

――― 10:01:45

 

「お姉ちゃん。もう、時間だけど……」

「夏凜は遅刻か」

「道に迷ってるとか!」

 

現地集合時間の10時になったが夏凜は来ない。勇者部の女子はそのことにどよめき始める

 

「ん~。夏凜ちゃん来ないのかな~」

「もう少し待ってみましょう」

 

レクリエーションの開始時間までは十分にあるということで一同は子供たちの相手をしながら夏凜を待つことにした。

 

――― 10:31:18

 

「風先輩、子供の興奮が最高潮に……」

「あ~~~れ~~~ぇ~~~!」

「「乙姫ちゃ~ん!!!」」

 

東郷が申し訳なさそうに風に言う。子供たちの津波ともいえるそれに乙姫が飲まれていた。

 

「夏凜はサボり決定ね」

「現地じゃなくて部室の方に行ってしまったのでは」

「現地集合と書いてあるし彼女がそれを見逃すとは思えないが…万一もあるな」

 

風が呆れた表情となり、一騎はもしやと思ったことを言うが総士がプリントに書いてあったことを示唆し返す。

 

「私、電話してみます!」

 

友奈がスマホに登録してあった夏凜の番号に電話を掛けるが……、

 

「あっ、夏凜ちゃ……! ・・・あれった……? 一瞬、繋がったのに切れちゃった」

「何も言わずに切ったの?」

 

「もう一度かけてみたらどうですか? ひょっとしたら、シャワー中だったとか!」

「あぁ、それなら手が滑ったとも考えられなくないわね」

 

「リダイヤル、リダイヤル……ん……あれれ? なんか……、今度は呼び出し音も鳴らない」

 

「もう何よ!? こうなったらあたしがかけてやるわ!」

 

友奈がリダイヤルするも今度は応答がない。風が怒り交じりに電話を掛けようとしたが、

 

「ひゃうっ! もう無理ですよ。子供たちが興奮状態に!」

「ぐっ…髪を引っ張るな!」

 

子供たちの行動がエスカレートし、樹には何人もの子供に纏わりつかれ、総士は男で長く伸ばしてしているのが珍しく思ったのかやんちゃな子供に髪を引っ張られていた。

 

「でも……」

「友奈、気持ちはわかるけど…今は勇者としての任務に集中しましょう」

「……はい…せっかく、色々買って来たのに残念……」

「三好……いったい何があったんだ」

 

なんとかしたいと思う友奈を風がたしなめる。一騎も夏凜のことを気になった子供たちの相手に戻ることにした。

 

――― 11:40:00

 

「すみません楽園です。昼食を届けに参りましたー」

 

おりがみ教室も終わり自由時間となった頃に溝口がやってきた。

 

「溝口さん、相変わらず時間に正確ですね」

 

一騎と総士が応対にあたる。溝口は子供たちの様子を伺いその元気にはしゃぎまわる姿にいいねえと頷いていたが、

 

「? 新入部員のあのお嬢ちゃんがいねえな」

「それが…時間になっても来なくって」

「おいおい…あのお嬢ちゃん来てねえのか。どうすんだよこれ」

 

申し訳なさそうに言う一騎に溝口も驚愕し参ったような表情となる。元々この子供会用の昼食を届けることは事前に子供会からの主催者から受けていたが、今回はそれに勇者部からの要請により用意してあったものもあった。

 

「……あのお嬢さんが誕生日だっていうから色々追加で用意しといたんだけどなあ」

 

今日は夏凜の誕生日である。友奈が入部届に書かれた彼女の生年月日を発見し、勇者部は子供会と重なるのを利用し誕生日会を開こうと準備を進めてきたのだ。その事を溝口にも相談したところなんと自腹を切ってまでその誕生日会のパーティー食も用意してくれたのだ。

 

「仕方ない。一騎、プランの変更だ」

「あぁ」

 

風とも相談し夏凜がこの子供会に来ない事を想定した上で一騎と総士は行動を開始した。

 

 

 

その後、子供会は夏凜が不在なものの滞りなく進み最後のメインイベントとも言える『勇者と魔王の人形劇』も前回の失敗もなく大盛況に終わった。

 

「すっごい♪すっごい~♪」

 

その劇を始めて間近で見た乙姫は大変はしゃいでいた。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

side:三好夏凜

 

-夏凜のアパート-

――― 17:32:02

 

(…関係ない。部活なんて最初から行きたかったわけじゃないし……)

 

夕方、夏凜は自分のアパートにいた。トレーニング着にて室内に備え付けたルームランナーで走っている。

 

(…私はあんな連中とは違う…私は…期待されているのよ)

 

子供会に行こうとした夏凜だったが、迂闊なことにプリントにあった現地集合を見逃してしまい集合時間の15分前に勇者部の部室へと出向いてしまっていた。部室内で待っていた夏凜だったが11:30頃に友奈が連絡がきたが反射的に切ってしまい気まずくなったのかそのまま電源まで落としてしまった。

 

「(…だから『普通』じゃなくていいんだ ――― )…滞りなし」

 

自分は大赦に期待された『勇者』。そう自分に言い聞かせながらいつもの勇者の鍛錬という彼女の日常をこなした夏凜。それだけ彼女の勇者に対する意識は高い。だがらこそ彼女は自分の青春を捧げてまで費やしてきた。本来の勇者であるための『理由』をその心の内に隠して ―――。

 

「……誰?」

 

突如家のチャイムが鳴る。来訪者に心当たりもなく夏凜は首をかしげる。

 

「ひぅ……ッ!?」

 

チャイムの連打に夏凜は思わず声が出て身がすくんだ。女子中学生の一人暮らし、それだけでも襲う理由ともなりえるため急に怖くなる。夏凜は木刀を手に取ると玄関のドアへと手を掛ける。

 

「だ…誰よ。さっきから…もぉ…!」

 

「「「「「「「うひゃあああああ!?」」」」」」」

 

夏凜が木刀を構えたが来訪者の姿を見て手を止めた。そこにいたのは驚きの表情の勇者部の女子4人に見た感じから小学生の女子が3人…一人は彼女にとって見覚えがある子だが

 

「あれ? あんたたち…」

 

「あ…危なかった」

「……そんなものを持って出てきたら…さすがに僕も驚くぞ」

 

それと一騎と総士の姿であった。全員それぞれ荷物を持ち歩いていた。

 

side out

 

 

 

「まったく~何度も電話してのに電源オフにして…心配して見に来たのよ」

 

「心配…?」

 

風が来訪の理由を告げると夏凜ははっとした表情となる。今日子供会に顔を出さなかった事を思い出した。

 

「じゃ、あがらせてもらうわよー」

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

「……いいのですか?」

「気にしないでいいわよ~」

 

「何勝手に上り込んでんのよ! 意味わかんない!」

 

夏凜の静止も聞かずに夏凜の部屋に上り込む女子陣。一騎と総士は部屋の主である夏凜からの許可が出ていないのでどうしようかと思っていたが風に促され2人も続いた。

 

「殺風景な部屋……」

「どうだっていいでしょ!」

 

「! これすごいスポーツ選手みたい」

「勝手にさわんないでよ!」

 

「わあぁぁぁ…水しかない」

「勝手に開けないでよ!」

 

好き勝手に部屋を物色し始めた女子たちを後目に友奈と共に冷蔵庫の中身を見た一騎が夏凜に尋ねた。

 

「失礼だけど、お前…普段の食事どうしてるんだ?」

 

「ふぇ…ちゃ、ちゃんとバランス考えてとってるわよ。それがどうかしたの?」

 

「いや、本当に食材とか全くないから…もしや弁当だけなのか」

 

一騎は昨日夏凜が恐らく買ったであろう弁当を思い出す。まさかだと思い可哀相になって訊いた。

 

「う…でも、ニボシやサプリとってるし栄養も考えているから」

 

「食事ってそれだけか? …なんだか寂しくないか。自炊とかしているのか?」

 

つい出てしまった一騎の言葉に夏凜は項垂れた年頃の女の子がコンビニ弁当とサプリ・にぼしだけで生活していることを他人に心配され指摘されたためである。一騎は夏凜の昨日の買い物の品や口調から自炊が出来ない事を確信した。

 

「一騎のお節介さが出てしまったか」

 

一騎は自分以外の人に対しては人一倍気にかけ方である。総士もその事には見覚えがあり小声で呟いた。

 

「…やっぱし、持ってきて正解だったな。三好、台所借りてもいいか」

 

「ふぇ…あ、その…」

 

「使うが帰る前には片づける。結城」

「はい。夏凜ちゃんはこっちだよ」

 

項垂れ即答できない夏凜を友奈が引っ張っていった。一騎と総士は台所にて持ってきた品を使い作業を開始し始める。

 

「一騎君、総士君。手伝いましょうか?」

 

「いいよ。それほど時間はかからないし。東郷はそっちを頼むよ」

 

「ふふ、了解したわ」

 

「……全く勝手に使って」

 

「ほら、夏凜。次期勇者部部員でもある子たちを紹介するから顔をあげなさい。1人は知っている顔だけどね」

 

友奈たちが何かの準備をしているのを後目にぶつくさ言う夏凜に対して風は乙姫たちを紹介させようと促した。

 

「こうやって顔を合わせるのは初めてだね夏凜。私は『皆城乙姫』。総士の妹よ。で、こっちが私の友達の」

「『立上(たてかみ)(せり)』です」

「『西尾(にしお)里奈(りな)』よ」

 

この2人は一騎たちの世界で仲間だった人と同じ名を持っているが前世の記憶はない。乙姫本人も讃州地方に来てから出会ったときには大変驚いたが今は前の世界と同じ友人としてふるまっている。

 

「よ…よろしく」

 

「それにしてもよかったよぉ。もしかしたら寝込んだりしてんじゃなかったんだね」

 

「…別に…健康には気を付けてるし…」

 

「そっかぁ」

 

「総士、そっちは?」

「温め直しまで後10秒、盛り付けを含めれば規定より5秒遅い。若干の修正が必要だ」

「そこまでしなくていいから。出来たぞ」

 

「あっ、準備ができたみたいだね」

 

「な、何よこれ。どういうことなの!」

 

テーブルには一騎と総士が用意したフライドチキンやサラダなどの豪華な食事がずらりと並んでいた。

 

「――― あのね。ハッピーバースデイ! 夏凜ちゃん!」

「「「「「「「「おめでとう!」」」」」」」」

 

友奈が机の下に隠していた箱を開けその中身を見せる。中にはホールケーキが入っており、『誕生日おめでとう』と描かれたチョコ板も乗っている。

 

「何で、誕生日を知ってるのよ?」

 

「これよ、これ」

 

風は夏凜の入部届を取り出し見せた。生年月日が『神世紀286年6月12日』。つまり今日の事である。

 

「友奈ちゃんが見つけたんだよね」

「あって思っちゃった。だったら誕生日会しないとねって!」

 

友奈たちは夏凜の誕生日会をしたかった経緯を語る。本来なら児童館でやる予定だったが、夏凜が来なかったためできず、合間に迎えに行こうとしたが子供たちのはしゃぎっぷりに抜け出せなかったことも。

 

「乙姫ちゃん、幼年組の列に流されちゃっていたもんね」

「うん」

「でも、流された乙姫ちゃん…可愛かったなあ~」

 

「ん、どうした? ひょっとして自分の誕生日も忘れてた?」

 

夏凜は僅かに震えていたが小さな声で返す。

 

「…………あほ…ばか……ぼけ………おたんこなす」

 

「何よそれ?」

 

「誕生会なんてやったことないから…祝ってもらったこともなかったから……何て言ったらいいかわかんないのよ……!!!」

 

照れながら罵声を浴びせる。しかしそれは怒りというより戸惑いで出た言葉であった。それを聞いた友奈と乙姫は微笑むと

 

「「――― お誕生日、おめでとう。夏凜ちゃん」」

 

「さぁ、盛り付けるぞ。ケーキはご飯の後だ」

 

そう言うと一騎はひときわ目立つ大きな鍋を開ける。中身はカレーのルーでご飯をよそうとそれをかける。夏凜はそのカレーの香りに思わずごくりと生唾を飲んだ。

 

「さあ、座って」

 

友奈に促され夏凜が席に着く。主役なので一番目立つ中央の席である。風がジュースをコップに注ぎ全員に渡すと

 

「それじゃあ乾杯するわよ!…それでは乾杯!」

「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」

 

乾杯をすると料理をつまんだりおしゃべりしたりとそれぞれ過ごす。そんな中主役の夏凜は、

 

(こんなもの食べたら後が大変じゃないの……)

 

明らかにカロリーが高い料理にしり込みする。食べたらその後の消化が大変じゃないか等と頭の中で考える。

 

「一騎君のカレー美味しいよ」

 

友奈に促されスプーンに手を伸ばす。自分のために作ってくれたのもあって残すのも申し訳ない。夏凜は意を決して一騎カレーをひとすくいすると一口味わった。

 

「(!?)」

 

一口味わった夏凜に衝撃が走った。これは普通のカレーではない。程よい辛さと濃厚な味のバランスが見事にとれており明らかに手の込んでいるものだ。こういう美味しいものをあまり味わった事のない夏凜にもその違いは理解できた。そして、一騎カレーは夏凜の食欲中枢を刺激した。

 

「美味しい? 夏凜ちゃん」

 

夏凜は無言でうなずく。いつの間にかがっつきあっという間に平らげてしまった。顔をあげると一騎と目が合った。

 

「…お代わり…あるぞ」

 

夏凜は皿を差し出すと一騎はそれを受け取るとお代わりをよそった。

 

その後、楽しい時間はあっという間に過ぎた。途中、樹が夏凜が折り紙の練習をしていた成果である鶴を見掛け顔を真っ赤にして夏凜がそれを隠したり、友奈が夏凜の家のカレンダーに予定を勝手に書き込んだ際に彼女の頭のアイデアで劇をやることを思わず口走ってしまい文化祭の出し物が決定したりとともかく色々あった。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

side:三好夏凜

 

「――― あいつら勝手にゴミを大量に増やしていって…、まったくどれだけ食べるのよ」

 

ゴミを出し終えた夏凜は自分の部屋へと戻る。ふと台所を見るとメモ紙が置いてあるのに気づく。

 

『量はあるからしばらくはもつよ。米もあるし炊飯器も貸しておく。鍋は合間を見て回収しに来るよ。冷蔵庫にサラダが入っているから忘れずにな。』

「まったく、あいつときたら…」

 

ふとスマホに着信が入っているのに気づく。

 

「何これ……招待?」

 

内容は勇者部が利用しているSNSの会話チャットへの招待であった。そのSNSへの招待を了承する。

 

 

 

ベットに潜り込むと流れて来る会話のログ(今回は友奈・東郷・風・樹のみ)を見る夏凜。内容は他愛のないものだらけだが、

 

「…ぼた餅って」

 

東郷からのメッセージに思わずツッコミを入れる。

 

「はぁ。了解…と」

 

返事を送ると時間もたたないうちに勇者部からの返事が返ってきた。

 

「わっ…わ、わ! も…もう!」

 

騒がしくなった会話に困り果て動揺し「うっさい!!」と返してしまう。案の定餌ともいえるレスが投入された結果、会話はさらに騒がしくなった。

 

「何なのよ、もう……」

 

『これから全部が楽しくなるよ!』

 

すると友奈からこのメッセージと共に写真が添付される。それを開くと今日の誕生日会の模様が映っていた。それを見た夏凜はなぜだかわからないが心の底から暖かくなるような錯覚に陥った。それを最後にスマホの電源を落とすと仰向けに転がる。

 

「…全部が楽しくなる…か。……世界を救う勇者だって言ってるのに…バカね……」

 

その言葉には棘のあるような感じはなくむしろ夏凜の本質ともいえる優しさが込められていた。夏凜は今日の楽しいことを思い穏やかに眠りにつこうとした。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――― ッ!」

 

スマホからのアラームに飛び起きる夏凜。反射的にスマホを掴むとその画面を見る。

 

「樹海化警報!?」




悩んだ末にファフナーキャラの2人はこのポジで落ち着きました。最初は参戦させようかと考えましたが扱いきれないと思い日常キャラとして出します。ただ、芹に関しては最後らへんで重要な役目があるかと……。

●本作品の夏凜の誕生日
原作通りに子供会はドタキャンしていただきました。これは続章2であるフラグを建てるためです。

●一騎の夏凜に対する生活態度の突っ込み
最初から一騎にやらせるつもりでした。家事従事してましたし、こういうのを見たら心配で何か言ってくると思います。

●一騎カレー
これにて勇者部部員全員に普及完了。園子様と()()1()()は最後らへんとなるかと。

以下、予告(次回はオリジナル回。追加戦闘回となります)

「フェストゥム!」

突如の樹海化警報に出撃した勇者部一同であったが突如として襲来するフェストゥム。

「いい…一人でやる!」

その脅威を知らない夏凜は1人突出してしまう。

「いや…やめて…心を見ないで!」

囚われる夏凜。

「お前は1人じゃない!」

一騎たちは夏凜を救い出せるか。夏凜はこの戦いで知るものは?

次回第2章最終話、第15話『現実』

「あたしは…ここにいる!!!」

●お知らせ
夏凜のエピソードが終わったら風と樹のエピソードをやる予定でしたが変更し、原作3話と4話に起きたあのエピソードを先にやります。ヒントはある勇者によって引き起こされた設定のストーリーとなります。

追記(2016/10/16):ゆゆゆ2周年か…(放送17日だけど)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。