絶望を超えし蒼穹と勇気ある花たち   作:黑羽焔

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プロローグ
序章1 僅かな異変


炎のように燃え上がるかのように辺り一面赤く染まった世界。そこには生きているものは全くといっていい程存在していなかった。

 

そんな赤き世界に突如天から翡翠色の光が流星のように地表へと降下する。地面に衝突する前に光を発すると減速し、その場に安置されるようにその場に留った。

 

その留まった物体は、金色に輝くクリスタルともいえるがボロボロで今にも砕け散りそうである。

 

その物体の周辺に不自然なほど白く、人間のよりも遥かに巨大で、不気味な口のような器官を持つモノが集まってくる。それらは、人類の生存圏を後退させ後に『バーテックス』と呼ばれることになる生命体である。

 

赤く染まった世界の実質的な支配者とも言える奴等は日本に残された人類安寧の地のひとつを攻め滅ぼし、もう1つの安寧の地へと侵攻を開始していたのだが、異変を察知した一部の個体がここに集まってきたようだ。

 

【!?】

 

その中のバーテックスがその口を開け物体を喰らう。ここには不必要であると判断したのか、物体をまるで飴を砕くかのように噛み砕こうとする。

 

【!!!!!】

 

だが、ここで物体を喰らったバーテックスに異変が起こる。その白き体を覆うかのように翡翠色の結晶が口周りから生成され全身を覆い、完全に結晶に飲まれると一斉に砕けた。

 

【これが…『星屑』…。だが我々が我々たるには足りない】

 

覆われた結晶の中から出てきたのは少年ともいえる姿をした人のような生命体である。

 

【我々はお前達から理解する必要がある】

 

人のような生命体はゆっくりと地面へと降りる。バーテックスが仲間の敵討ちでもあるかのように生命体を喰らおうとするも地面から触手のような根が生えバーテックスの巨体を刺し貫く。刺し貫かれたバーテックスはジタバタと抵抗を見せるもすぐに動きを止め、その身体のいたるところに翡翠色の結晶に包まれて、そして砕けちる。

 

その光景は人のような生命体が逆に星屑のバーテックスを片っ端から食らいつくすにふさわしいといえるものであった。

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

-四国大赦本部 神樹の間-

人類がバーテックスの襲来を受け世界中が蹂躙された中で残された安寧の地『四国』。ここには『神樹』と呼ばれる特殊な樹木……一説には多くの土地神が人々を守るために集まったもので、瀬戸内海に巨大な植物の根が幾層にも重なり作られた『壁』という結界を張り、結界内に恵みをもたらしている。

 

ここは、そんな神樹を管理し、またバーテックスに関するあらゆる対応を行う『大赦』と呼ばれる組織の本部である。神樹と呼ばれる樹木もここの一室に安置されていた。

 

そんな外の世界に起きている異変を察知したかのように神樹の輝きが一層増していく。

 

輝きが頂点に達すると、目も眩むほどの閃光が解き放たる。光が治まるとそこには1人の人間の女性の姿をしたものが現れた。

 

「なんていうことなのでしょう……あのような生命体までいるなんて……」

 

この女性のような姿をしたのは、かつての西暦に土着神と呼ばれた神の内の1体。便宜上「彼女」と呼ぶことにするが、彼女は四国にいながら壁の外の状況を見た際に異変を見つけた。彼女は目をつぶり神樹に触れるとその樹は淡く輝く。そして、手を放すとその瞼が開き呟いた。

 

「あれはこの世界のものではなく、他の世界から来たもの。星屑と事を構えるくらいですから友好的とは言えませんね。……今は対策を講じなければ」

 

金色の生命体が脅威とみた彼女は考えを巡らせ対策をたてようとする。……が、突如電流が走るかのように思考が彼女の中に流れ込んだ。それは未来の記憶とも呼べるもので、最初に流れ込んできたのは、金色の生命体の復活までの時間・今現状での未来についてだった。

 

「(!?)嘘……私達じゃあ…勝てない!」

 

結果は最悪なもので、金色の生命体は四国へ侵攻。四国中の戦力を結集させ対抗するも生命体に食い尽くされ神樹まで取り込まれるというものであった。

 

「事が起きるまでの時間がありますが…いったいどうすれば。……これはなんでしょうか。あの生命体が出てきた空付近に歪みみたいなのが見えますね」

 

金色の生命体が降ってきた空にわずかな時空の歪みともいえるものを見つけた彼女は再び神樹に手を翳し歪みを探った。

 

「これは、あの生命体がいた世界なのでしょうか?」

 

彼女は金色の生命体がいた世界を垣間見る。

 

その世界は本来なら知識を記憶し続ける『ミール』と呼ばれる光子結晶体が「極稀な行動」を起こしてしまったがために悲劇が起こってしまった世界で、その世界の人類はミールから派生した金色の生命体『フェストゥム』の侵略から生き残るための戦いを続けていた。

 

彼女はその世界での記憶、つまりは歴史を紐解く。瞬く間に異世界を調べ尽くしその中で、世界を大きく動かしたある記憶を発見した。

 

人類をフェストゥム等の危険な存在から守り、文化と平和を次代に伝えることを目的とし「楽園」と呼ばれた島の人たちの物語である。島の人たちの活躍により、ミールを人類に有益なモノに変容させる事に成功させたり。ある時は間違った事を覚えてしまったミールに対して生命の循環を学ぶことで共存を望むようになり行動を促せ。比較的最近の記憶では、後にエクゾダスと呼ばれる過酷な旅を達成、島に戻り戦い抜き多大な影響を及ぼすある事態を乗り越えた。

 

その島の人たちの事に興味をもった彼女はさらに深くまで知ろうとする。そしてその出来事の中心にいた2人の少年の姿を見つけた。1人は光沢のある銀白色の『存在』の名を冠し、もう1人は紫色の『否定』の名を冠する巨人のような兵器に搭乗し過酷な世界の現状と戦っていた。その活躍は英雄2人ともいえる程凄まじいものであった。

 

「……この2人なら実力も申し分もありません…ですが……」

 

英雄2人に至るまでの彼らの人生は凄惨で辛いものであった。彼女はその内容を見てしまったためか目に悲哀の色が深く漂った。

 

そして、閲覧を終えると彼女の瞳にその搭乗者が砕け散る光景が映る……つまりは世界を救う代償としてその命を燃やし尽くした2人の少年の最期の姿である。

 

「……表向きは世界を救った英雄のように見えますが、いくつもの辛く悲しい出来事を乗り越えてたからですね」

 

彼女は呟き少し考え込んだが、この2人を候補者として選び行動に移ろうとした。その時、

 

 

 

 

 

【そこでみているのは誰?】

 

 

 

 

 

「(!?)繋がり過ぎた!」

 

【…もう一度言うわ。島をみているのは誰? 何故、見ているの?】

 

不意に異世界からの突如の交信が来たため彼女は愕然とする。だが、すぐ冷静になり思考を巡らせる。

 

「あの、……申し訳ありません。貴方らの島に興味があって見させていただきました」

 

【……まあいいわ。敵意というものを感じないから。ところであなたの名前は?】

 

「え?」

 

【互いを認識するにはまず名前から知った方がいいわ】

 

苦し紛れの答えを出した彼女は異世界からの交信から相手がかなり幼いということを見抜いた。さらにあちら側からは敵意もなく、純粋にこちらが気になった事もあってか警戒を解き、まずは互いの存在についての証明をすることとした。

 

「(達観しているようだけど、声の感じからして素直な幼子みたいな感じですね。敵意もないですし、もしかしたら交渉できるかも)……わかりました。とは言っても、私はある集合体の代表みたいなものですけど…一先ずは『神樹』と呼んでください」

 

【わかったわ。……私の名前は『皆城(みなしろ)織姫(おりひめ)』。あなたの世界でいえば竜宮島の神様とも言える立場みたいなものよ。それで何故、島を見ていたの?】

 

神樹と呼ばれる彼女は正直に織姫という存在にこちら側の世界の事情と異変を打ち明けた。その上で異世界の存在と交渉ができる可能性もある事でそちらの旨も伝えると織姫も興味をもったのかそれに応じる。

 

今ここに、2つの異なる世界の神様のような存在との邂逅が実現した。




前回投稿した短編がそれなり好評だったのと連載作品の1つがトラブルで駄目になったため新たな作品に着手してしまった作者です。

プロローグ的な0話が完成したため投稿。今話では、2作品のキーパーソンである神様的な存在の2人の出会いとイレギュラー的な事態の発生の語りとなっております。

意外と共通点が多いこの2作品ですが注意書きにもある通り、鬱成分はほどほどに書き上げたいと思っています。

なお、現在明かせませんが介入するファフナーキャラは既に決めてありますので、誰がくるか楽しみに待っていてください。

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