絶望を超えし蒼穹と勇気ある花たち   作:黑羽焔

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2015/12/19 誤字及び表現修正
2016/1/29 前話との繋がりのため若干修正


序章3 命の終わりと再起

真壁(まかべ)一騎(かずき)』と『皆城(みなしろ)総士(そうし)』はシュリナーガルで生き残った人たちを新天地まで退避させ、竜宮島へ戻り戦い抜き希望を勝ち取ることができた。だが、その代償なのか2人は島からいなくなる……存在と無の世界にて同化現象で死んだ……はずだった。

 

「総士、どういう事だ? 俺たちは確かに……」

「僕にもわからない…しかし、ここは?」

 

気付けば知らないどこかの世界とも言えるような幻想の世界に2人はいた。

 

(死んだから島に還るはずと思ってたのだが、僕の肉体が違うからなのか?……いや、それなら一騎がここにいる理由にならない)

 

【私がここへと呼びました】

 

思慮へと耽る総士だったが突如頭に直接語りかけるような声に2人は辺りを見渡す。だが、そこには誰もおらず、2人の目に映っていたのは1本の大樹であった。

 

「誰だ? 僕と一騎を何故ここに呼んだ?」

 

【私の名は『神樹』……とある世界での神様。あなた達の世界でいう『ミール』のような存在ですね。ここに来ていただいたのは、貴方達にお願いをするためです】

 

「(!?)この声は…あの樹からなのか」

 

2人は未知の存在からのコンタクトに驚くも同様な存在と対話したことがあるためかすぐに平静となる。

 

「大丈夫よ。あの存在は敵ではないわ」

 

ふと声が聞こえそちらの方へと振り向く。そこにいたのは、彼らにとって見慣れたアルヴィスの制服に身を纏った1人の少女である。

 

「……織姫か。コアへ還ったはずでは?」

 

「還ったのは事実よ。そして、ここにいる理由は彼女が説明してくれるわ」

 

「ここにいる…理由?」

 

織姫が一騎と総士の間に並び立ち、神樹と呼ばれる存在と向かい合う。

 

【織姫さん、こうして実際に会うのははじめてですね。…彼らも連れてきてくれてありがとうございます】

 

「構わないわ。神樹、彼らにも説明してあげて。…2人共、これから話す事はすべて事実よ。ありのままに受け入れて」

 

織姫の言葉を聞いた2人は頷く。

 

【わかりました。まずは私の事と世界のことから説明します】

 

神樹から自らが異世界の神様の集合体である事、彼神のいる世界の現状、自らが守護する四国の事について話す。

 

そして、神樹からここに呼んだ事に関する本題へと入る。

 

【今、私達の世界を無にしようとする存在…今まさに敵が干渉しようとしております。そこで、貴方達に世界を救ってもらいたいのです】

 

「敵とは?」

 

【あなた方の世界でいう『フェストゥム』と呼ばれる存在です】

 

フェストゥムと聞いた一騎と総士は驚愕した。彼らの世界に悲劇をもたらした存在に対する脅威を知っているためである。

 

【私達の世界は『バーテックス』と言われる存在により人類の生存圏はかなり縮小してしまいました。ですが、バーテックスの対処法はあるのですが、フェストゥムと呼ばれる存在に対する対抗手段は私達の世界ではありません。……この世界の事は対策を建てようとした際に偶然見つけ島の事を知りました。織姫さんとはその時に…私がそういう対策をして無かったのもありますが】

 

「島を見ていた割にアザゼル型みたいなはっきりとした敵意を感じられなかったし、最初はまた新たなミールかと思ってたわ……ちょっと話から外れたわね。ここまでの経緯は理解できたかしら?」

 

織姫のフォローもあってか、神樹の話を理解した一騎と総士は頷く。そして、総士から質問が投げかけられる。

 

「それで僕と一騎に何をさせたいんだ?」

 

【ある手段を用いて私達の世界に介入し、来るであろうその存在に相対してほしいのです。本来なら私達の世界の住人で解決するべきですが、私はこういう異変が起きた場合のあらゆる行使が認められています。はっきり申し上げると今回の件は私達の手に負えません】

 

「つまりは僕たちの力を借りたいと?」

 

【そのとおりです】

 

「だが、どうやってそちらの世界へ介入する?」

 

【手段は『転生』という手段をとります】

 

「転生?」

「それは『輪廻転生』という類でいいのか?」

 

【そのとおりです。通常なら世界への介入は不可能に近い行為ですがその人の生をやり直す『転生』ならその問題を解決できます。……ですが】

 

神樹は一瞬押し黙り、その様子に一騎は首を傾げ、総士は怪訝そうな顔を浮かべる。

 

【『転生』はまさにその人の命をやり直す事です。本来の転生とは違って私等神が介入する事になるのでその生が終わった後の保証が出来ません……もしかしたら元の世界に戻ることができなくなるかもしれません】

 

神樹の一言に辺りの空気がズシリと重苦しくなる。一騎と総士は押し黙ってしまう。

 

【……ごめんなさい。私は神としては新米の方ですし転生に関してはこれ以上はわからないのです。それに身勝手ですよね。命が終わってしまった貴方達を突然こんなところに呼び出して、勝手な事を頼んでしまって…】

 

「俺は行くよ」

「……僕も行こう」

 

【……え?】

 

「話も聞いてしまったし、俺としては放っておけない事だと思う」

 

「そのフェストゥムとやらがもしかしたら誤った学習をし、他の世界やまた僕たちのいた世界…島を襲うかもしれない。それなら、僕達がやるべきだと思います」

 

【で…でもいいのですか!?】

 

「『かもしれない』という事なら、戻れる可能性もあるという事だ」

 

「神樹、先に言ったでしょ。私達の島の戦士はそれぐらいでは折れないわ」

 

彼らの目に浮かぶ覚悟を感じとった神樹は決意した。

 

 

 

 

 

【……分かりました。それでは貴方達を『転生』する形でその世界へと送ります。一騎さんと総士さん…それに協力者としてもう1人と共に!】

 

「もう1人?あとは誰なんだ?」

 

【織姫さんこちらに】

 

神樹の呼びかけにより前へと出る織姫。一騎と総士は何事かと互いに顔を合わせる。

 

「どういう事、一騎と総士以外にだれか必要なの?」

 

【一騎と総士さんは転生の条件を満たしていますが、実はここにもう1人条件を満たす人がいます。……織姫さんにゆかりのある人が】

 

「誰……(!?)まさか!」

 

【そのまさかです……】

 

神樹の輝きが増していき、織姫の周りに虹色の光に包まれる。さらに織姫から輝きが発せられる。

 

咄嗟に腕で光を遮った一騎と総士だったが、光が治まり腕をどけ目を開けると、

 

「(!?)な!」

「…織姫が…2人!」

 

「……久しぶりね。総士、一騎」

 

島のコアである織姫とうりふたつの少女がそこにおりその瞼がゆっくりと開かれる。そして彼女は織姫とは違い高飛車な物言いではなく歳相応の少女のように話した。その違いに気付いた総士がその少女の名を言う。

 

「(!?)…まさか『乙姫(つばき)』か!」

 

「そうよ、総士。…ええと、はじめましてかな?『織姫』」

「…そうね、『乙姫』」

 

乙姫が織姫の姿を見つける。2人は見つめ合った後感極まったのか互いに抱き締めあう。

 

「……お母さん……」

「よしよし。…でも、見た感じ私達姉妹だよね」

「……その方がいいかも。乙姫姉さん」

「(!?)うん、織姫ちゃん」

 

「こうして見ると姉妹ぽく見えるな。なあ、総士」

「……そうだな」

 

「もしもまた『ここ』にいたらね。次はこうしたかったの!」

 

満足したのか2人は離れ、一騎と総士の間に並び立つ。

 

【織姫さんはまだコアとしての役目が残ってますから乙姫さんを2人の協力者として同行させます。次は……貴方達の戦う力ね】

 

「それならもう来ているわ」

 

織姫が視線を送ると、3人はそちらの方へ振り向く。

 

「(!?)…『マークザイン』!」

「『マークニヒト』まで…」

 

そこに光沢のある銀白色と紫色の巨人のような兵器が鎮座していた。一騎と総士にとって最期まで戦い抜いた機体、フェストゥムに対抗するべく開発された「思考制御・体感操縦式」有人兵器『ファフナー』のザルヴァートル・モデルとも呼ばれた規格外兵器である。

 

「こんなものまで……」

 

ザルヴァートル・モデルの危険性から忌むべき存在だと認識している総士はニヒトを見ながら怪訝そうな顔で言う。それとは対照的にザインを見ていた一騎が呟いた。

 

「総士、大丈夫だと思うよ」

 

「いったい何を根拠に……」

 

「総士、ニヒトの事をありのままに感じなさい」

 

織姫に言われニヒトを見上げる総士。見ているとふと気づく、内蔵されたコアの意思のようなものが随分と様変わりしたように感じられた。強いて言えば、解体作業や作戦行動中のあの不気味さがすっかりと鳴りを潜めたように思えた。

 

「……ザインもなんだ。今は俺らと共に行きたいって言ってるように思えるよ」

 

「私がいなくなった間に、このコア達も変わったみたいね」

 

【私達の世界ではファフナーを整備できるような環境や技術は伴っておりません。よって、この2機には私達の世界に合わせた力となっていただきます。それでなら連れて行くことができますので】

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

――― 紆余曲折もあって、数時間後に準備は完了した。

 

【これで転生の準備は完了です。…何か思い残すことは?】

 

「島の事はどうなる?」

 

「島の事は任せなさい。あの出来事の影響かしばらく平和は続くから問題はないと思うけどなんとかしてみせるわ」

 

織姫に島の事を託した3人は神樹にその旨を伝えた。

 

【それでは、転生後のお話をします。前世の記憶は転生直後から残っているので話し方や振る舞いには気を付けてください。あちらの世界のサポートのために必要な端末にすべて情報を載せておきます。最後に…私のわがままですが、どうか貴方達の新たな人生に幸がある事と私達の世界の『勇者』の事をどうか宜しくお願いします】

 

「一騎、総士…姉さんの事を頼むわね」

 

一騎・総士・乙姫は最後に神樹の言った『勇者』という言葉が気になったが、神樹がまた光り輝くと辺り一面の花びらが舞い上がりその瞬間光に包まれて意識がとんでしまった。

 

 

 

―――こことは違う場所、自らが住む楽園と呼ばれる島、そして世界を守った2人の少年。

 

その代償はあまりにも多く、楽園へ還ることはできたがその世界からいなくなった。

 

だが、異世界と呼ばれる場所の神と呼ばれる存在によりその身を移した。

 

そこで出会いがある事を今の僕たちは知る由がない。

 

君たちは知るだろう。

 

これから語るのは本来なら交わりもせず記されることもない物語を―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ったようね」

 

【はい。無事にこちらの世界へと転生しました】

 

3人の旅立ちを見届けた織姫であったが、不意に足音が聞こえすぐに後ろへと振り向く。そこには1人の少年が立っていた。

 

「こんにちは」

 

「やっと来たようね。3人は先に行ってしまったけど」

 

「ええ~行っちゃったの……。少しは話したかったんだけどなあ」

 

【さて、次は貴方とですね】

 

簡単なあいさつを交わし、織姫と神樹は新たに来た少年との話し合いを始めるのであった。




ファフダス24話見てからのテンションで組み上げましたので色々超展開気味かもしれません・・・。版権キャラの『神様転生』物ですしこんなものでしょうか?

導入部はこれで終了で、次章からは『~は勇者である』の世界に転生した直後の真壁一騎の主観でしばらく進めていく予定です。あまり多くは話さない彼のイメージが強いのか今話では台詞少なめでしたが次話ではそれなりに多くしたいと思います。

以下、アニメ『結城友奈は勇者である』式の次回予告
「ここが神樹の言っていた世界か」

【貴方方にはこの世界でそれぞれ役目があります】

「君は?」

「私は『結城友奈』よろしくね!」

第1章「真壁一騎の章【転生-はじまり-】」
3話目にしてようやくゆゆゆ主要キャラ登場。

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