絶望を超えし蒼穹と勇気ある花たち   作:黑羽焔

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第4話は2部構成となります。これはその前編となります。

今話は、原作開始から約3か月前にもう1人の主人公候補の転入と残りの主要キャラとの顔合わせとなります。


第3話 集う者たち(前編)

中学へ入学後、『勇者部』といわれる校外活動などのいわゆるボランティアに近い事を行う部活動に入った一騎・友奈・東郷であったが設立してから間もないということで色々と奔走した。例えば勇者部の決まりのようなものを作ろうと部長である風が提案し、4人で悩み提案を出し合った結果、

 

「これだーーー!!!」

「出来たーーー!!!」

 

一、挨拶はきちんと

一、なるべく諦めない

一、よく寝て、よく食べる

一、悩んだら相談!

一、なせば大抵なんとかなる

 

という感じの『勇者部5箇条』が誕生した。なお、一騎が関わったのは3つ目の項目である。中々意見を言わない一騎に対して友奈が「何か好きなものはないの~」と聞いたところ、

 

「美味い食事」

 

と応えたら風「よく食べる…かな」にいった所友奈が直感的に「たた食べるんじゃなくって、食べたら寝なきゃ」と返したら風のフィーリングがきたのかアイデアが膨らみ3つ目の項目に仕上げた訳である。

 

 

 

活動の方だが地道に学校内で成果を挙げつつも結果を公開しないといけないということで、

 

「と、いう訳でホームページの方を開設しました」

 

「「「おお~」」」

 

その模様をパソコン関連に知識があった東郷がネット上にホームページを作り更新するという手法をとった。東郷の多彩な一面を垣間見た3人は大変驚いたのは言うまでもない。

 

 

 

勇者部の活動を広めるための手段も出来た事で後は実績をあげるだけである。幸い地道な営業や広報活動のおかげか風が依頼を受けてくることが多くなってきた。幸い部内でも様々なタレントを持っている部員だったので、パソコンを使えるためか機械系に強い東郷がホームページ管理やそういった系統の依頼担当、運動能力に長けた一騎と友奈が雑務並びに運動系の助っ人、万能型である部長の風がそういった営業といった感じに役割が分けられた。

 

「友奈ちゃん凄い!」

「えへへ~ぶい!」

 

友奈は今日も校外試合の助っ人として精を出していた。その一方で我らが主人公一騎も

 

――― カキーン!

 

「しょ…初球満塁サヨナラホームランだと」

 

野球部の人員が足りない事での助っ人として今回は打率8割、50メートル5秒台をいかした走・守で大活躍だった。そしてこうやって試合を決めチームメイトからの熱烈な祝福を受ける。まんざらでもなかったが謙遜しながらも一騎はそれを受けた。一騎は前の世界ではある出来事のせいで協調性もなく人付き合いには無頓着だったが今は精神的に成長しそれなりに向き合えるようにはなっていた。

 

「一騎君だっけ。ある意味凄すぎるよねえ」

「幼馴染だし、友奈ちゃん羨ましいなあ」

 

「え、なんで?」

 

「「(幼馴染なのに、なんもないの!!!)」」

 

女生徒からの評価も上々である。それに対する男子の羨望があるそうだがそれはまた語るとしよう。ともかく、一騎もそれなりに学校生活を満喫していた。

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

-神世紀300年 讃州中学 1年教室-

年も明けたある日、一騎・友奈・東郷がいつも通りに登校した。教室に入りクラスメイトと軽く談笑すると担任の教師が教室に入ってきたので席に着いた。

 

「はい!皆さん、おはようございます」

 

『おはようございます』

 

「こほん、皆さん。突然のお知らせですが今日は転入生を紹介します。…入ってきてください」

 

にわかに教室がざわめく。担任が誰かを呼び、それに応じたのか教室の扉が開かれる。そこに1人の薄めの土色で長く伸ばした髪の男子学生が入ってきた。

 

「(!?)」

 

一騎は驚愕する。何故ならその男子学生には見覚えがあるのだ。

 

「静かに。――― 今日から皆さんのクラスメイトとなる『皆城総士』さんです。…皆城さんご挨拶して」

 

「『皆城総士』です。宜しくお願いします」

 

教室が再びざわつく。反応は三者三様である。

 

「(……何も聞いてないぞ)」

 

「(あれ、総士君ってたしか?)」

 

「(……どうしてなのかしら……あの男の子を見るとなんか…この心にひっかかるこの感じなんだろう?)」

 

友奈は一騎から聞いていた事を思い出し、東郷はみんなとは裏腹に心にひっかかるような違和感を感じたが頭を振り自分を持ち直した。

 

 

 

皆城総士の転入により騒がしくなった1日だったがあっという間に放課後となった。

 

「総士君が一騎君の言ってた親友なんだ~」

 

「そうだな。引っ越す前からの付き合いだけどまさかこっちに来るなんて聞いてなかったが…」

 

「突然の事だったからな連絡が出来なかったんだ。……それにしてもすまないな助けてもらってしまって」

 

「いいわよ。困っている人を助けるのはお互い様だしね。さあ、着いたわよ」

 

転入生ではもはやこの世界でも伝統なのか質問攻めにあった総士だったが、一騎・友奈・東郷のフォローもあってかなんとかこなした。その時に一騎が昔総士と知り合いだった事がクラス中に判明し大変驚かれた。

 

そんな事を話しているうちに勇者部に宛がわれた部室であるに辿り着き4人は部室へと入室した。

 

「こんにちは。友奈・東郷・一騎並びにお客様入ります」

 

「お、来たわねー…ってお客様?」

 

友奈達は風に転入生の総士についての事情を説明した。

 

「そっかー。今日騒がしいと思ったらそういうことね」

 

「そこまでだったんですか?」

 

「まぁね。それでなんで転入生の…ええと」

 

「『皆城総士』です」

 

「皆城をここに連れてきたわけ?」

 

「今日は休みをもらおうかと。総士はそれの付き添いで」

 

「転入して一騎がこちらの学校にいたと聞いて…是非とも会いたいという人がいまして。それで許可ももらえたらなと……」

 

「(ほほう)律儀ねえ…いいわよ。依頼もない事だし今日は休みにする予定だったから問題ないわよ」

 

話を聞いた風は何か考え込む動作をしたがあっさりと許可を出した。

 

「「ありがとうございます」」

 

「親友同士仲良くね」

 

「それじゃあ俺たちはこれで」

 

一騎と総士は先に部室を後にした。既に友奈と東郷には事情を話しており先に帰ると伝えている。

 

「東郷さん、休みになったしどうしようか?」

 

「そうねえ…あら、風先輩何をしているのですか?」

 

友奈・東郷が休みをどうしようかと話し合おうとしたが、東郷が振り向くと風が帰り支度をささっと終えていた。

 

「ふふふ……一騎の親友って奴がどんなのかが気になるしあたしはこのまま追ってみようと思うわ!友奈と東郷はどうなの」

 

「風先輩それはあまり「いいですねえ。私も付き合いますよ!」…ゆ、友奈ちゃん!」

 

「東郷はどうするの?」

 

「東郷さんも行こうよ~」

 

「……はぁ。友奈ちゃんもこう言ってるし私も行きます」

 

友奈がいないとあまり自由には動けない東郷も風の提案に乗ることにした。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「総士、俺に会わせたい人って誰なんだ?」

 

「来ればわかる。連絡したらすぐにでも会いたいと言ってたぞ」

 

「お前この辺の道知らないだろ。大丈夫なのか?」

 

「これから行くところなら大丈夫だ。端末に地図と案内のアプリもある。極めて便利だ」

 

「……なじみ過ぎだろ」

 

総士の案内で街中共にを歩く一騎。周りから見れば仲の良い親友のように見える光景である。

 

 

 

 

 

「何処に行くんでしょうかね?」

 

「それに誰かと会うって言ってたよ。風先輩はどう思います」

 

「ふっふっふ。アタシには分かっちゃったかな」

 

「おぉ~~~!!!いったいどんなのですか?」

 

「ずばり……昔好きだった女の子よ!」

 

「風先輩…流石にそこまで都合よくいかないのでは……」

 

一方、一騎・総士の後を追跡中の友奈・東郷・風は総士が会わせたがっている人の予想を風が大胆に推理するが流石に「それはないでしょ」といった感じで友奈と東郷は苦笑した。

 

 

 

 

 

「……一騎」

 

「なんだ?」

 

「さっきから追ってきているが…放っておいてもいいのか?」

 

「特には害はないと思うよ」

 

どうやら2人には既にばれている様だ。

 

 

 

 

 

そうこうしている内に目的地に着いたようだ。友奈・東郷・風は近くの物陰からその様子を見ていた。

 

「…あれ、ここ小学校じゃん」

 

風がポカンとした表情になる。総士が案内したのは讃州中学校からそう離れていない小学校である。ちなみに一騎と総士は正門の所で誰かを待っている様だ。

 

「ここで待ち合わせなんでしょうか?」

 

「2人共見て、手振っている子が2人に近づいているよ」

 

一騎と総士の元に黒髪の少女が近づいてきた。2人の背丈もあるせいか少女はかなり小さく見える。……が、同時に彼女たちの背後から誰かが迫っていた。

 

「お、お姉ちゃん!どうしてこっちの学校に?」

 

不意に声が聞こえ振り向く3人、そこにいたのは風と同じ黄色の髪だがショートヘアーで前の横らへんを2か所まとめ、アクセントに花飾りをつけた風よりも一回り小さな女の子であった。

 

「い、樹!」

 

風の実の妹『犬吠埼(いぬぼうさき)(いつき)』である。樹は特にこれといった事もなくいつも通りに帰ろうとしたがその際に3人の姿を見つけ声をかけた。なお、既に姉である風の紹介で勇者部の人たちとは顔を合わせている。

 

「(!?)友奈さんに東郷さんまで……ここでなにをしてるんですか?」

 

「えっと…樹ちゃん」

 

「……ごめんなさい、これにはちょっと訳が」

 

妹の突然の襲来により混乱する風、それに慌てふためく友奈である。比較定冷静だった東郷は樹に事情を説明しようとし、風と友奈が樹に向き合った。

 

 

 

 

 

「こんにちは~♪」

 

「「うひゃあ!!!」」

「ッ―――!」

 

突如聞こえてきた無邪気な声に悲鳴をあげる友奈と風、東郷はギリギリ踏みとどまり、事情がわからない樹は突然の事に目が点となり固まっている。

 

「…やぁ、真壁サンに皆城サン……偶然デスネェ」

 

友奈・東郷・風が振り向くとそこには一騎・総士と黒髪の少女がそこに立っていた。突然の出来事が続き風が一騎たちになんとか応対するも完全な棒読みだ。

 

「偶然も何も着いてきてるのはわかってたんですが…気になるなら一言声をかければよかったのでは……」

 

「……それは(もっと)もです」

 

総士の意見に風は萎縮する。もはや部長という威厳も面影はそこにはない。

 

「そういえばその子は誰なんですか?」

 

そんな風を置いて我にかえった友奈が総士に純粋な疑問を投げかけた。

 

「この子は僕の妹だ。一騎に会いたがっていたのもこの子だ」

 

「始めまして、『皆城乙姫』です」

 

 

 

「なんだか…おいてかれている感じです」

 

「ご…ごめんな、樹」

 

「ちゃんと事情説明するから…ね」

 

片や乙姫が自分の名前を紹介した一方で事情が分からず展開についていけない樹を一騎が慰め東郷がそれをフォローしているという状況になっていた。

 

その後、風がなんとか立ち直るのを待ってから互いの自己紹介と状況の把握という事になった。




以下、解説
●皆城総士
今作品の第2の主人公。後に専用の章で活躍を語る予定。

●友奈フラグ
現時点では一騎の事は男友達程度としか思ってません。

●東郷フラグ
後に語りますが、前日談に繋がります。

にぼし大好きのツインテールの子は原作第3話で出す予定なのでそちらのファンの方はもう少しお待ちください。

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