大変励みになります。
「え??」
全く予想もしていなかった事態が起こりモモンガは狼狽えながらもその姿を見て歓喜の声を上げる。
「お…おいもさん? おいもさんなんですか!? 来てくれたんですね!!」
三メートル程はあると思われる巨躯に頭からは二本の角、更に耳の辺りからも長く立派な長い角が二本伸び、口からは鋭い牙が覗く。
また黒く艶やかな強固な鱗に覆われた長く伸びる尻尾には六つの棘が飛び出しており弱き者など簡単に引き裂いてしまいそうな力強さが窺える。
身体を覆う金色に縁取られた漆黒の全身鎧、まさに暗黒の龍騎士といった出で立ちであった。
比較的後期にギルドへ参加したものの、その後中心メンバーの一人となっていったかつての仲間、龍人のおいもがそこに立っている。
「モモンガさんお久しぶりです。 そしてすみません。 もう少し早くインするつもりだったのですが・・アップデートやらなんやらでギリギリになってしまいました。」
そう言うとモモンガに向かって頭を下げる。
「謝らないでください! おいもさん! 来てくれただけで本当に・・本当に嬉しいですよ!」
ユグドラシル上では泣くことは出来ない。
しかしながらモモンガ=鈴木悟は本当に涙を流すほどかつての仲間の突然の来訪を心から喜んでいた。
現実世界において親しい友人、また恋人もおらず、両親もすでに他界している。
仕事もただ生きる為にしているに過ぎず、やり甲斐などはこれっぽっちも感じてはいない。
モモンガ=鈴木悟にとってはユグドラシル、ナザリックの仲間達が全てであり、ナザリックで過ごしてきた日々はかけがえのないものだった。
「でもいったいどうやってここへ? 全く気がつきませんでしたが・・」
通常であればギルドメンバーやフレンドなどがユグドラシルへログインすると画面上にログが表示される。
「いや、モモンガさんがうあぁあああ!!!とか頭を押さえながら玉座の横でのたうち回って悶絶してる時にあちらの扉を開けて普通に玉座の間に入ってきましたけど笑」
「ええぇえええ!!!??? ぜ、全部見てました、よね??」
「見てましたよ 笑」
は、恥ずかし過ぎる…モモンガ=鈴木悟はリアルで顔全体を真っ赤に染める。
穴があったら入りたいとはこの事か…
「ってもう時間がありませんね、モモンガさん。」
おいもに声をかけられ、恥辱の海に沈み込んでしまった意識を急速に立て直す。
「はい、なんでしょう? おいもさん。」
「モモンガさん、自分はモモンガさんやアインズ・ウール・ゴウンのメンバーの皆さんのおかげで本当に楽しかった。始めた初日にPKされ、モモンガさん達にそこで出会わなければきっと直ぐにユグドラシルを辞めていたと思います。」
「あなたたちがいたからこそ、ここまで熱中出来たんです。でもその後仕事の都合などでイン出来なくなってしまった事、本当に申し訳なく思っていました…」
おいもはモモンガへ再度深々と頭を下げる。
「ちょっ! おいもさん、やめて下さい! アインズ・ウール・ゴウンは社会人ギルド、現実世界での生活が一番の優先事項なんです。それはわかってますから謝らないで下さい。」
「はい…ではこれだけは言わせて下さい。モモンガさんありがとう。アインズ・ウール・ゴウンを今まで守ってきてくれて本当にありがとうございました。そして、お疲れ様でした。」
鈴木悟は泣いていた。
無駄では無かった。
その思いが全身に込み上げる。
たかがゲームだ。
側から見たら気持ち悪いと思われる事であろう。
だが鈴木悟にはこれが全てなのだ。
「最後にどうしてもお礼が言いたかったんです。間に合って本当に良かった。」
時刻は既に23時59分を回っていた。
サーバーダウンの時間は24時である。
おいもはモモンガに手を差し出し、モモンガは感極まり震えてしまっている手で固く握手する。
「おいもさん、こちらこそ、ありがとう。本当にありがとう…」
栄光の時間は永遠には続かない。
必ず終わりが来るのだ。
そして二人は目を閉じ、ユグドラシルの終わりの時を待つ…
23時59分55秒…56…57…58…59…0…1…
「っんんん???」
「あれ??」
どういう事だ??と二人は顔を見合わせる。
本来であればサーバーがダウンし、視界はブラックアウトされ、また普段の日常に戻っていくはずであった。
だがこれはどういうことであろうか。
2人がいるのは先程までいたナザリック地下大墳墓十階層、玉座の間だ。
「何らかのトラブルでサーバーダウンが遅れてるんでしょうか?」
「うーん、とにかくGMコールしてみましょうって、!? コンソールが表示されない??」
「こちらも同じ状況です、モモンガさん。」
「アイコンも表示されていない…くそっ…どういう事だ…」
GMコールしようにもコンソールが表示されず、この為メニューからのログアウトも不可能な状態だ。
途方に暮れる二人にさらに信じられない事が起こる。
「どうかなさいましたか? モモンガ様。そしておいも様、おかえりなさいませ。ナザリックへのご帰還、シモベ一同心よりお待ち申し上げておりました。」
「「おかえりなさいませ、おいも様。」」
二人に対し深々とお辞儀をし、こちらへ話しかけて来たのはなんと守護者統括NPCのアルベドであった。
そしてそれに続き執事のセバスやプレアデス達までもおいもの帰還に喜びの声を上げ、頭を下げる。
「!?」
事態を全く把握できない二人は同時に呟く…
「こんな事ありえるはずが無い…」
絶対的支配者である二人から言葉がない事を不思議に思ったのか首を傾げながら、再度アルベドが口を開く。
「何か私共に不備がございましたでしょうか…?」
不安そうな顔をしこちらを真っ直ぐ見つめるアルベド。
このまま二人揃って狼狽えているのは流石にマズイと判断したモモンガは咄嗟のアドリブでアルベドに声をかける。
「っん、あ、えっと、オホン、アルベドよ。少々このナザリックで問題が生じているようだ。」
(さすがモモンガさん! ロールプレイはお手の物ですね!)
「も、問題でございますか!!それであれば私共にて直ぐに解決致します。ご命令を!」
ゲームの中のキャラクターと会話が成立している…こんな馬鹿な事ある訳がない。
しかし目の前で起こっている事は紛れもない真実なのである。
(っく! もうどうにでもなれっ!)
「セバスよ!」
「はっ! モモンガ様。」
「どうやら問題が生じているらしい。プレアデスから1名連れて行き、地表に出て周辺地理の確認をせよ。 範囲はナザリックから半径1キロとする。 なお何らかの知的生物がいたら連れてくるんだ。ただし戦闘は極力避けろ。戦闘が避けられないような状況であればプレアデスをこちらに戻して状況を伝えさせろ。」
「はっ!かしこまりました。モモンガ様。」
「念の為、残りのプレアデス達は八階層から上を警護させた方が良いかもしれません。」
おいもがモモンガに提案する。
「確かにそうですね、うむ。今おいもから聞いた通りだ。セバスと共に行かぬ残りのプレアデス達は八階層まで上がり周辺の警護にあたれ。」
「「かしこまりました。モモンガ様。おいも様。」」
「では直ちに行動を開始せよ!」
「「はっ!!」」
一同一斉に頭を下げ、スッと立ち上がると行動を開始する。
「ふぅ、これで取り敢えずは大丈夫ですかね。」
深い息を吐きながらおいもに声をかける。
「モモンガさん、アルベドはどうします?」
まだ命令を与えられてないアルベドはジッとこちらを見つめている。
「ん?」
ここでおいもがある事に気がつく。
こちらを見つめているアルベドの瞳が潤んでいるような…
いや、正確にはモモンガを見る目が潤んでいる。
「モモンガさん、なんかアルベドの様子がおかしいような気がするんですけど…」
「え? 本当ですか? どうかしたか、アルベド。」
そう言いながらモモンガがアルベドに振り返るとビクンと体を震わせその白く美しい顔を真っ赤に染める。
「い、いえ、至高の御方であるおいも様の帰還という大変喜ばしい事があったばかりか、モモンガ様の支配者たる圧倒的な存在感を目の当たりにし、私めの身体が火照ってしょうがないのです…あぁ…さすがはモモンガ様…私の心より愛するお方…はぁ…はぁ…」
甘い吐息を吐き出しながら何やらブツブツと呟いている…
完全に妄想に取り憑かれているようだ。
「お、おい…愛するお方って…あっ!!」
モモンガはすっかり忘れていた。
何気なくアルベドの設定を見返していた時に発見したあの一文。
「なおビッチである。」
それをこのままでは可哀想だと消去し、軽い気持ちで書き換えたあの一文の事を。
「モモンガを愛している。」
(そうだった…書いた後に消そうとしてたらそこへおいもさんが現れて、そのままサーバーダウンの時間に…消せないまま上書きされてしまったのか…)
「おいもさん…どうしましょう…俺の勝手でタブラさんが精魂込めて作ったアルベドの設定を変えてしまったようです…」
なるほど、あの事によってアルベドがこんな事になってるのかとおいもは納得する。
「まぁ、でもいいんじゃないですかね。タブラさんギャップ萌えですし。主人を好きかと思いきやモモンガさんを愛してるなんてなかなかのギャップかと。笑」
「良くないですよ!! はぁ…どうすれば…」
「まぁまぁ、とにかく今はアルベドに指示を与えて二人で今後の事を相談してしましょう。 アルベド! 愛しき主人からの命があるぞ。一語一句聞き逃す事がないように。」
「はい! おいも様!」
妄想から帰ってきたアルベドはモモンガの命を待つ。
「ちょっと!おいもさん、また面白半分でそんな事を言って…もぅ……ゴホン、では、アルベド。」
「はい! モモンガ様、何なりとお申し付けくださいませ。」
「第四、第八階層を除く各階層守護者を今から一時間後、第六階層のアンフィテアトルムに集まるように伝えよ。それとおいもの帰還については伝えなくても良い。私自身の口から皆に伝えようと思う。」
「かしこまりました。直ぐに行動致します。」
命令を聞き終えると二人に頭を下げアルベドは玉座の間を後にした。
「やれやれ…」
考えなくていけない事は山積みであった。
次からいよいよ階層守護者達が出て来る予定です。
が、想像以上に話を書くのって大変ですね…
他の作者さん達みたいな文章表現ができませぬ( ´•̥_•̥` )