さいよわ───チートなエルフと魔人が護る最弱な彼女が綴る異世界黙示録   作:ぴんぽんだっしゅ

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雨降って大嵐が過ぎ去りました

「そうかー、そーなんだー。」

 

うん、料理を一人で食べたの悪い、悪かったって思ってるから許してよ京ちゃん。さっきから言ってんじゃん。起こしても起きなかったんだし。

 

「ふーん。よかったぬー」

 

良くない良くない。京ちゃんが絶体良くない顔してるから。許すつもり無いよね。こんなに謝り倒してるのに。これ以上ないくらい悪いって思ってるから許してよ、ホントに。

 

「こっちは寝ててお腹空いてるってゆーのにねー。」

 

唐揚も食べて悪かったよ、お寿司も。どこまでも平謝りしてるじゃん。わたしまだパジャマのままなんだよっ。

 

「じゃあー、ワーム倒したのは誰だったのかなー?」

 

京ちゃんだよ、京ちゃん居なかったら皆ヤバかったよ。だから感謝してるってば。ね、起きて即土下座で頭あげれなくて説教受けてんだよ。これ以上の謝り方はわたしには解らないから。ってか、京ちゃんに強制的に土下座させられたわけだけど頭あげずに平謝りなのはホントにホントにホントーにわたしが悪いって思ったから自主的にやってるんだよ。・・・もう、許してよ。足が痛いよ。

 

「解ればいいんだ。宿のご飯も美味しいし。お米食べられるだけで充分だわ。」

 

やっと許して貰えた時は、泣いて顔から出る液体全部出てる状態でした・・・朝一でどこまで追い込むんだよ、鬼だね。鬼みやこ。

そんな私を見て満足そうに微笑む京ちゃんはどうみてもいじめっこのそれです。爪先で顎クイやるなんて。

 

「それで、相談したい事があるんだけど。」

 

宿のご飯を食べ終わって落ち着いた京ちゃんに朝の事もあってちょっとビクビク話し掛けた、その時。

 

 

 

 

誰かー。誰かー。誰かー。

「これって、エリアチャット?」

 

エリアチャット、名前の通りエリア全体に届くチャットで、街の外からのチャットも空にオレンジ色の文字で表示されて中で見れる。

不便なトコは1度エリアチャットをするとしばらく出来ない仕様で、こっちが気づいて返事をしたら相手が移動してもう居ないって事で。

 

「誰かが迷い込んだのかな?」

 

京ちゃんは、さあねと言って透けるような酒をグラスで飲んでいる。飲んで即気に入ったみたいで小さい樽一つ買ったよ、この成金様は。

 

「返してみたけど。うーん。返事無いね。」

 

「近くに居るのは確かなんだけど、エリアチャットは範囲広い癖にずれると相手に見えて無いからね・・・」

 

その後、エリアチャットが飛んで来ることは無かった、

 

「さっき言ってた相談って何?」

 

グラス片手にケロっとした顔で呟く京ちゃん。そうだ。京ちゃんに話さないといけない事があった。

 

「シアラと姫様がそんな事を。」

 

京ちゃんの寝てた間にあった事で話さないといけないかな?って思った事を説明すると、

 

「その神様と会ってみたいけど、」

 

当然そうなるよね。でもそれはちょっと無理。大昔に一度きり、しかも声だけで現れた神様で誰も会ったことも顔を見たことも無いんだから。神様っぽいって言えばポイよね、精神的存在って感じがして。

 

「だよね。龍神様居たんだったら、知ってないかな?大昔の神様のこと。」

 

大昔に神の声がこの人魚の街に齎した日本食に似た料理の数々と、城内や街のあちこちに見られるどこか懐かしい日本ぽい風景。外見は彼等が暮らしやすいようになのか瓦が無いのか酷くシンプル。

開けてびっくりほとんどの家に襖があり、ちょっと前の日本の暮らしが其処には見られる。

 

「それじゃ、わたしも会ってみたいし龍神様に会いにいこ。」

 

「ヘクトルも行く?」

 

視線はわたしに向いたまま横に座っている、樽からグラスに透明の酒を注いでいたヘクトルに問い掛ける京ちゃん。

 

「鍛治屋と話したくてな、そっち方面行ってみる。」

 

好きにしてくれって感じだ。

 

「あっそ。」

 

口に出すと椅子を立ち上がり、わたしの首根っこを掴んで歩き出す。

 

「じゃ、いこっか。」

 

ちらりと横顔を見れば酒が入っているせいか朱が頬に浮かび上がって小悪魔のような微笑みを見せて。

 

 

 

 

「この子が龍神様?」

 

シアラは親衛隊の隊舎で警邏から帰って遅い朝食を帰りを待っていたシファと食べているトコだった。

隊舎は城の西側、森の突き出して来た民家の無い静かな場所に建っている。

隊舎の窓から覗き込むとちょうど他の隊員は出ているようで見当たらない。

 

軽く朝の挨拶をお互い交わして空いている椅子を借りてシアラと同じテーブルに付くと、シファの頭をくりくりと撫で上げていた京ちゃんが、

 

「可っ愛いー!何かきつそうな瞳も、・・・あ。何でも無い。」

 

頬を擦り合わせてから両肩に手を置いて見詰めると、婀梛っぽく瞳を濡らしてゴクリっと生唾を飲み込んでから口ごもる。

何を言おうとしたの?途中まで言うと後半は口ごもって苦笑いを浮かべ喋るのを止める。

 

「龍神様、大昔からここに居たんだよね。」

 

目を点にして吃驚していたシファは我に還ると頷く。

 

「ここさ、わたし達の国に酷く似た物が多い気がして、ね。それで、ぶっちゃけシアラの言う神様って日本から来た迷い人なんじゃないかなって。」

 

興味津々に食い気味にシファをじぃっと見詰め京ちゃんが質問を投げ掛ける。

日本人に限りなく近い何か。シアラから聞いただけじゃ得体の解らない神様ってしか。

 

「何を話せば有益なのかはわからぬ、我にはその神の声は聞こえ無かった。届かなかったのじゃろぅな。」

 

京ちゃんを見詰め返すシファの可愛い口から畏まった喋り口調で喋られると何か違和感があったり。

 

「聞こえ無かったんですか・・・」

 

神様なら神様同士解るものなんじゃないの。

 

「残念じゃがの。ちょうど春になって森の生き物が活気づく時期で我も祭壇を離れ、ここからも遠かったのが仇になったのかもわからん。」

 

俯いてモジモジしながら一生懸命喋る幼女、中身は人魚の街の歴史の生き字引。

 

「だがね。当時の事は憶えておるのよ。神の声を聞き頭に宿した者の事も、の。」

 

チラッチラッとこっちを見ながらも視線を膝の上で動かしている指先に戻す。

膨大な記憶の海から少しずつ、問われる先の事柄を探しているようにも見えた。

 

「それって、」

 

「どんな人だったんです?」

 

わたしと京ちゃんはシファの思い出話を中断して問い掛けた。

 

「いざ話すとなると長くなる、のう。まだここに人魚達が棲みかを移してそうは経って無い頃の話よ・・・」

 

「長話をテーブルを占領して続けるのは他の子達に悪いです。上司も帰ってくるです。今日はもう引けるので部屋の方に行きますです。」

 

シファが場を外していたシアラにちらりと振り返ってまた、視線を指先に戻して喋ると、長話になることを解っていたようににこにこ笑うシアラは早引きをしたから部屋に移動しようと言う。

 

長い、長くなるとは言ってたけど、長すぎるよ・・・昼前に来たのにもう陽も傾いて。

シアラの部屋に移動してしばらく。人魚が棲みかを追われてここを安住の地にした頃から始まり・・・

城が建った。

 

「・・・で、城が立ち・・・」

 

「そうだ。そろそろ休憩いれましょ、そうしましょ。」

 

痺れを切らしたように苦笑いを張り付けた京ちゃんがシファの語る人魚の歴史を中断した。ぐっじょぶ。

思わずわたしも親指を立てて感謝する。

 

「まださぁ。城が立った話なんだけど、いつ終わるのよ?」

 

「長いよね〜。」

 

休憩に入ってシアラが用意してくれたお茶を一口含んでから。

わたし達はシファに悪いのでヒソヒソ話をしている。

 

「流石にヘクトルも帰ってきてるわよ・・・龍神様ぶっ飛ばしたくなってきたんだけど。」

 

そうとう京ちゃんはイライラが収まらない様子でぎゅっと握った拳がプルプルと震えていた。

 

「いやいやいや、我慢して京ちゃん。」

 

慌ててシファを睨んで拳を振り上げる京ちゃんを止めるわたし。

 

「お茶飲んで落ち着いて。シアラ、お茶、おかわり。」

 

キレ気味の京ちゃんを落ち着かせようと御変わりを催促した。

自生していたのか探して人魚達が育てているのか日本茶のような、そんな懐かしい味。

 

「茶葉は南東です?北です?」

 

お茶の種類じゃなくて茶葉をシアラに聞かれる。そんなとこも日本ぽいんだー。茶葉の名前が生産地だなんて。

 

「ズズッ、で。どうする?明日にしようか。」

 

御変わりを飲んで、落ち着いたような京ちゃんにお茶を啜りながらそう言うと、

 

「それがいいかもね。シアラ、お茶ありがと。」

 

「明日また聞かせてね。ばいばい、またね。シファ、シアラも。」

 

さっさとお礼と挨拶を済ませて部屋を出ていく京ちゃんに、追うように二人に挨拶をして出ていくわたし。

シファの話が長すぎてわたし達二人共辛くなってたのは事実。

明日も長話になるとヤだなー。

 

「どうだったの?」

 

宿に辿り着くと他の客に紛れてヘクトルが既に焼き魚とご飯と何か麺のようなソースまみれの料理を食べていた。

宿の1階は朝、昼、夕と食事を出す食堂もやっているから食事時は喧しいくらいに人が多い。見た目は人魚に見えないけど、エルフやドワーフが居れば目立つのが人魚の街。

ぐるり見渡せば皆そろってゴム服ばかりなんだけどたまに革服を着た人も。そうだった服装や容姿は日本と似てもつかない、人魚の街のこんなとこを思いだし、一人ニヤつく。

 

先にテーブルについた京ちゃんを追って席についたら。ヘクトルが追加注文に男の店員を呼ぶ。

それを見てメニューから京ちゃんはグリル肉、玉子丼、生刺しを頼んだからわたしもメニューを見返して卵焼きに肉かけ丼、それに隣のテーブルで美味そうに客が食べている麺料理を指差して頼んだ。

 

 

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