さいよわ───チートなエルフと魔人が護る最弱な彼女が綴る異世界黙示録   作:ぴんぽんだっしゅ

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のんのんな時間

「うん、ダメだった。やっぱりカルガインか直接ドワーフに持ち込みになるか。」

 

頼んだ料理がまだ来ないのでヘクトルが口をつけていない何やらソースまみれの麺料理を摘まむ。美味しっ。

それにしてもやっぱり箸なんだよね。日本ナイズされてるからか。さすがに割りばしは無いんだけど。

 

「ゲームなら性能が下がるだけなのに。」

 

川魚を塩焼きにしたのにも箸をつける。うん、まずまず。欲を言えば醤油が欲しいかな。京ちゃんは自分の樽からグラスに酒を注ぎながら話を聞いている。グラスは2つだからヘクトルの分もなのかな。

 

「完全に使い物にならなくなってるのはわかる。それなりに思い入れあってな。」

 

確かに使っていた剣は溶けて刃が無くなってたから、あれじゃ何も切れないよね。刀身も短くなってたけど、直せるの?疑問だわ。

ヘクトルは注いで貰ったグラスを受け取り1口含み嚥下するとポツリポツリ喋った。

 

「言いたい事わかるよ。わたしにも思い入れあった剣、・・・別の剣にされた事あるから。断りもなくね。」

 

グラスを持ち上げ口に付けた時に、店員が料理をテーブルに運んできて並べ始める。それをちらりと見てぐいとグラスを空ける。

 

「地味に酷いな。フレに、か?」

 

運んばれた料理を見て食事の挨拶を済ませるとヘクトルの箸がソースまみれの麺料理を掴む。

美味い、美味いと声をあげながらぢゅるるるっと麺を口に運んで。むっちゃむっちゃさせながら喋ると京ちゃんが片眉をついっと上げてチョップを脳天に叩き込んだ。

 

「行儀が悪いって言われなかった?・・・契約神よ。」

 

店員が料理を並べ終えるのを待ってて食事の挨拶を再び皆で済ませていざ料理を頂く。いただきます。美味っ美味っ。この油でギトギトな麺料理はなんだろ?スープ無しのラーメンみたいな。昨日は城でいいもの食べたけどわたしの喉や舌が求めてるのはこんな味。

ディアドの料理も、ごめん。マズく無いだけで物足りない味なんだよね。

 

朝だってメニュー見て濃い料理があるのはわかってたけどさすがに朝からは。

昼は軽く隊舎で出されたご飯を頂く事になったし、京ちゃんに取ってはノルン初の手の掛かった日本料理ってわけだし。

それは何食べても美味し美味し唱えっぱなしになって不思議は無いかも知れない。

始終満面の笑みを浮かべて周囲の目も気にせずご飯を食べ終えた京ちゃんは改まってヘクトルに釘を刺す一言を呟いて彼が頷いたのを見た上で続きを話し始める。

 

「ああ、それは残念だな。」

 

ぺろりと指についたソースが気になるのか舐めとると軽く返事を返したヘクトル。そーゆー態度を続けるのは京ちゃんを怒らせる元だからやめよーね、うん。

 

「鍛治屋に何日も通って作った一振りだったのに。」

 

何度目かの中身を嚥下したグラスをテーブルに置いてヘクトルを睨みつつ。

注がなくなった京ちゃんに気づくとヘクトルは面白く無さそうに追加の樽を頼んで、メニューと睨めっこ。追加の料理も頼むみたいだ。もう、入んないからね、わたしは。

 

「・・・ゲームの金で腹いっぱい毎日食えるから俺はいいんだぜ。」

 

仄かに酔ったヘクトルがそんな事を呟く。おそらく本心じゃないかな。ヘタな事をしない限り死なない魔人の体を持ってるんだし、ノルンでのあれこれがコイツには楽しくてしょーがないんだもん。

 

酔っ払い二人の話も長い・・・わたし、その話わかんないし!

 

「もう寝るね。」

 

「おやすみー。」

 

「俺もう帰りたいんだがな。」

 

追加の樽と遅れて料理が運ばれてきて両手で顔を覆いうんざりと、わたしは。

立ち上がろうと椅子を下げると二人から声が上がる。うん、おやすみ。それは良いとして、ヘクトルなんで?こんなに美味いご飯が食べられるんだからもうちょっと、ここでゆっくりしたいよ。

 

「龍神様の話にヒントありそうなんだよ。」

 

ヘクトルに向かって諭すようにそう言うと、

 

「飯は美味いんだけどな。やることが出来たんだよ、あっちで。」

 

こっちを向くでもなくむっちゃむっちゃさせながら答える。

 

「ヘクトルもやること無いならきたらいいじゃん。」

 

そっちがやることなくてもあるんだから、こっちはこっちで。

 

「あ、そーいえばアスカムどうしたの?しばらく見てないけど。」

 

あ゛。居なかったね、そう言えば。

 

「・・・忘れてた。きっとまだ城に居るんだと思う。」

 

「あー、なるほどね。じゃあ、明日シファに話早くしてもらってから迎えに行きましょう。城の料理も食べてみたいし。」

 

「解った、明日は着いてくよ。転位アイテム、ここでは何故か反応がないから。」

 

「・・・何、それって。ヘクトル抜け駆けして帰るつもりだったの?」

 

衝撃の一言。コイツ抜け駆けして一人で帰るつもりだったんだ。二人はグラスを傾けながら終わらない話を続けている。

 

「試し、な。それにな、俺が必要そうな場面になっても・・・剣無いだろ。ここには剣が売ってないし。鍛冶屋は剣を打ったことがない。」

 

悪びれも無いように淡々と弁解をするヘクトルにイラっとしたのか京ちゃんがチョップを脳天に軽く落とす。

 

「わたしのアイテム箱の肥やし渡すわよ。初期に使ってたツヴァイハンダーかクレイモアあるんだから。言ってくれたら。」

 

そう言うとヘクトルから手を下げて、メニュー画面から長物の剣を一振り取り出してヘクトルに『ん』と突き出す。

 

「ごめん。お前から貰うって考えは無かったな。」

 

「いいって。相談さえしてくれたら話乗るってだけのことよ。」

 

「わたしも武器欲しいなー。ずっとスリングだけだし。」

 

「言ってくれたら剣でも、槍でも、弓でも買ってあげるのに。」

 

「・・・シェリルさんに頼ると、後が怖いもん・・・」

 

岩風呂でみやこちゃんが言ったこと忘れない、わたしは。

 

「そういうこと言うとそういうことにもなるわね。」

 

岩風呂での事を京ちゃんも思い出したのかわたしを見詰め艶っぽくぺろりと舌舐めずりをして、グラスを飲み干す。

 

「そーいえば温泉とか無いのかなー。」

 

そんな京ちゃんを見ちゃうとビクビク震えて、言葉も出なくなるよ。思案を巡らせ、話題を変えようと温泉の話を振ってみる。

 

「さあね、聞いてみたら?シファに。」

 

チッと舌打ちを一つ。視線をわたしから外すと並べられた料理を摘まむ。

今度こそおやすみなさいの挨拶をして2階に上がってベッドに滑り込むと安心して直ぐに寝落ちてしまったみたい。

「さてと、おはよう。」

 

「ああ、・・・うん。おはよ。」

 

次に気付けば朝になっていて起こそうとしている京ちゃんの顔が目の前にあった。

あれだけ飲んでて寝て起きるとケロリとしている京ちゃんは凄いなと正直思う。付き合って飲み続けたんだね、ヘクトルは辛そうに部屋から出てきたし。わたしの顔を見て、ああいうのは蟒蛇って言うんだ、だって。ウワバミ?

 

「おっはよーう。元気?シアラ、シファも。」

 

シアラの部屋を三人で訪ねるとシファが振り向いて迎えてくれる。

シアラはちょっと出てるみたいで姿は見当たらなくて。

 

「で、昨日の続きなんだけど、もう少し抜き出して話してくれないかな?」

 

こらこら、幼女に凄むのは止めなさいって。中身が幼女じゃなくてもプルプル震えてるのは幼女なんだよ?それに、この辺の神様なんだよ、シファって。

忘れているかもだけど、龍神様だもん。

 

「ううむ、・・・なるだけそうする努力をしてみようかの。」

 

京ちゃんを難しい顔で見詰めながらシファがわたし達に話し始めた。

 

「ジジババ喋りもなるべく無しの線で、ね。」

 

嫣然とした笑みを浮かべ『ね』と言う京ちゃんに目を点にして震え上がる龍神様を見てにやけてしまう。

可愛い。想像だけど龍神様にこんな事をする人なんて、京ちゃんが現れなかったら居なかったんじゃないかな。だから、免疫・・・無いんだろーな。

 

「が、頑張る・・・ゴクッ。」

 

食べたりしないよ、怖いだけだから。って、安心出来ないよね。免疫無いってそれはつまり、天敵だもん。

 

「城が建ったんだけど、・・・喋り慣れないな、えーと。神の声を聞いた男を男の知り合いが我の、私に連れて来た事で神の声がした事を知った。」

 

京ちゃんの顔色を窺いながらビクビクしつつ、伸ばした膝の上で指先を遊ばせる、あの記憶の海を探る仕種をしながら言葉を選んで話し始めた。

 

「男には神の宿った頭で作った卵焼きを馳走になった。卵焼きは初めて食べたものの絶品で。おっと、余計な事は話したらダメでした、ね。神の宿った頭でも作れなかったものがあると、男は言うので皮を手渡して絵を書かせて見た。で・・・」

 

ビクビク顔色を窺っていたシファの顔色がぱあっと明るくなった。絶品の卵焼きの味を思い出してるのかも知れない。

そこでちらりと京ちゃんの顔色を窺ってビクビクっと小気味に震え、話を続けた。

 

「その男の書いた絵を覚えてる?見たいんだけど。」

 

遊ばせている指先を握ってシファの顔を見詰める京ちゃんの団栗眼はぐうっと力が籠って。

龍神様が怖がってるから。ね、止めようね。そういうこと。

 

「ううむ、此のような絵を我、私は見たことも無かったので覚えてるよ。えっと、・・・」

 

「・・・これって。」

 

「貴重なお話しありがとう、シファ。」

 

絵を見たわたし達は顔を見合せ吃驚。

良く知ってる、または見たことがある。男の書いた絵を思い出しながら書いているんじゃないかな、小さく唸り声を洩らしながら絵を書く龍神様。

 

それを見た京ちゃんは話を途中で、もういいからとお礼をシファに言って立ち上がる。

 

「シェリルさん、途中じゃ無いですか。」

 

失礼じゃない?でも考えあるんだろうね、京ちゃん。

 

「あ、ああ。また我に聞きたい事が出来たらいつでも話そう。あう、・・・私でした。」

 

ほら、ビクビクしてんじゃん、シファ。もう怖くないからね。いいこいいこしてあげたら、目を閉じて気持ち良さげ。んー、可愛いなー。

 

「聞きたい事は聞いたでしょ?あれってどうみても・・・」

 

「うんうん、鰹節のパックだね。神の声の主は日本人て事でほぼ確定したと思う。」

 

そう、シファの思い出した男の描いた絵はほぼ鰹節のパックに印刷されている鰹と鰹節のイメージなんだと思えるもので。

一目見ればノルンに元々あるものでは無いってわかる。

 

「ほら、起きて。城に行くよー。」

 

二日酔いになるくらい京ちゃんと飲み交わしてここまで来ても、辛そうな顔をして話を聞く所では無さそうだったヘクトル。

どんだけ飲んだんだよ・・・京ちゃん。

ヘクトルを起こしてわたしとヘクトルもお礼をして、シアラの部屋を立ち去る。

 

 

次は城で食事をして、アスカムの所在を確認しないと。

 

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