さいよわ───チートなエルフと魔人が護る最弱な彼女が綴る異世界黙示録   作:ぴんぽんだっしゅ

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急がないといけない理由ができました

わたし達に成り行きで加わった新たなNOLUN・ユーザーのクドゥーナこと六堂愛那(りくどうあいな)。彼女に頼み込まれて、アスタリ山をドラゴンを探して歩く事になったんだけど。

 

ふよふよと飛べる彼女は良いよね、わたしはさすがに疲れたよ。ずっと先頭を歩いてるヘクトルは種族の強みかまだまだ元気そうで、クドゥーナと軽口を交わしている分、余裕を感じるかな。

 

案内をかってでたクドゥーナは陽気に声をあげて笑いながら、どんどん奥に入って行くんだけどね。

 

足が重くなって来たらヒールを掛ければマシになるって。そりゃあね、徹夜で歩き通すとかだったらヒールだけなんて足りないんだろうけど。

ヒールを京ちゃんに掛けて横目で窺う。苦しそうってわけじゃない、これはきっとそう。退屈。

オークも京ちゃんには出番無かったもん、その後クドゥーナに付いて別の道から山の奥に入って行くんだけど。モンスターの気配は残念なことにまだ無い。

 

歩いて積もったダルさが抜ける頃には、する事はクドゥーナの軽口に横槍を挟むことくらいになっていた。

 

「ん、村人もね。どこに居たかまではっきりしゃっきり覚えて無いらっしぃんだけどー。山の洞窟は村の収入源で鉱石を取れなくなると生きるか死ぬか?って追い込まれるみたい。」

 

ジェスチャー混ざりで大袈裟にオペラ仕立てのエチュードをわたし達の前でしてみせるクドゥーナ。

あはぁ、演劇部に入ってたりしたんだよね、きっと。ただただ五月蝿いとも感じちゃう彼女だけど、その明るさも無駄ではないのかも知れないなー。下手ってワケじゃないし。

 

「いきなり現れたみたいな?」

 

クドゥーナのエチュードをみる限り、ずっとドラゴンが居たかって解んないんだもん。彼女は小首を傾げて、

 

「どうだかねー。眠ってた竜を掘り出したってコトかもだし?行ってみないと解んないってか・・・」

 

そう言って目の前で腕組みをして俯いた。

話途中に思わず口を挟んじゃう。てっきり、様子くらいは見て諦めたのかなって思ってたからさぁ。

 

「あ、行ったコト無いの?」

 

「当ったり前じゃーん。うち、オークに連携取られたらまず勝てないもん!ここ、オークの巣あるんだって!」

 

 

それって、そっか。オーク──豚の顔をした小肥りの汚い亜人、見た目はそのもの豚。種によっては綺麗好きで、水浴びもしょっちゅうするものもあるみたいだけど基本はズバリ、汚い。

 

知能はゴブリンより高くあって連携を取って『人狩り』をする。

ゲームなら手込めにされそうになったって、キャンセラー機能が働くからオークに捕まったって、助けを待ってオークとお喋りするくらいか無かったみたい。運営のおふざけプログラミングだよね、殺さずに巣に連れ帰るモンスターとかね。

って、京ちゃんにお伽噺替わりに聞いたんだけど。

 

「別件でヤバくない?それ。」

 

問題なのは罠を張って巧みに狩りをするところ。何の為ってそれは。繁殖の為。

基本オークに牝は居ないみたいで、他種族に種付けをして、種族の継続を図るので他の獣人と違って、年中発情期と言う、困ったちゃん。捕まれば男子は餌に、女子は苗床にされてしまう。

 

 

「うちら女子には寒気する事実だったね。村人もソコも強調してたわ、うん。そーいえば。」

 

「村人が襲われたとか?」

 

「それは無い。けど、ね。他に集落が襲われて無いとも言えないんだよなー。だから、オークの巣をぶっつけ本番で叩き潰さなきゃってコトかもだし?・・・ヤバいの見るかも。」

 

「じゃ、急ごっか。先も1匹居たんだ。」

 

「数え方って匹だっけ?」

 

「豚だもん、匹でいんじゃない。」

 

「それもそっか。あはは。」

 

あ、ははは・・・笑ってる場合じゃないんだよね。でも、無理に暗い雰囲気で居なきゃいけないってコトでも無いし。

 

「シェリルさん、ドラゴン退治の前に汚いのやることになったけど、どーします?」

 

振り返って後ろを警戒する為に少し遅れて歩いている京ちゃんに視線を移す。退屈で退屈で、腐っていた京ちゃんでもやっぱりオークの群れは嫌みたい。どうも、ゲームの時のトラウマが関係してるのかも。

 

「ゆーつだわぁ・・・聞こえてたわよ?オークでしょ、トラウマなのよね。汚いじゃない。」

 

「クドゥーナもヘクトルも、やる気満々だから諦めて。」

 

悪いけど、京ちゃん以外はやる気なんだから!わたしだって。ここのオークの話を聞いてすぐ頭に浮かんだのは、いっぱいいーっぱい倒してさレベルアッープ!にはは。

 

「イキイキしてますなあ!豚小屋って感じですか。」

 

それから10分歩いたかな。オークの群れに出会った。クドゥーナが声をあげる頃には、ヘクトルが勢いよく走り出していた。

 

「うえ、いっぱい居るのかな。」

 

ビジュアル的にあんまり見れたものじゃないよ。群れるオークに向けて矢を番えた。

 

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