さいよわ───チートなエルフと魔人が護る最弱な彼女が綴る異世界黙示録   作:ぴんぽんだっしゅ

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ドラゴンは倒せない4

睨み付ける瞳に気圧されて場の空気が固まった気さえした。その大きさが桁違いだ。これは、もしかして・・・ヘクトルが無理って言ってた、京ちゃんが会ったら逃げるって言ってたドゥーム・ドラゴン(?)。

 

とか言っても瞳と、壁の中に見える鱗?か、肌くらいしか目の前には表して無いからこのドラゴンが何かなんて誰にも解らないだろうね。

そんな事考えてるわたしだって、スケールの違う金色の瞳に見詰められたら空気が重いよ。

 

「仕事にならないってーぇ、聞いてたけど。これは、ホンっト下に行けないよねー。」

 

そんな場の空気が理解らないクドゥーナが間延びした、まったりと甘ったるい声を上げる。

すると何かに気付いて横を窺うと京ちゃんが何とも言えない顔で彼女を眺めていて思わず、わっと戦慄か驚愕か判断出来ないけど、すぐ青い顔で黙り込み俯いてしまった。

クドゥーナには目の前のドラゴンより、散々やっつけられた京ちゃんの方がずっと怖い、そう言うことなんだよ。きっと。

空気読もうね、クドゥーナ。

 

「動かないね、なんで?見えてるのに。」

 

 

壁の中で蠕動する紺紫の鱗。品定めする様にギョロギョロと忙しなく動く金色の瞳。でも・・・それ以外が全く出てこない。動けないんじゃないかって思っちゃうくらい。

 

「まだ、離れてるでしょ?一定のラインに近寄ったら戦闘開始ってパターンよ。」

 

 

言いながら京ちゃんは素早く青い刀身の剣を構えた。予想外な巨大な敵に恐怖を感じているのかな?握った剣先が揺れる。ガタガタと京ちゃんが震えているせいだ。

同じ様にヘクトルがクレイモアと碧の刀身の巨大な剣───ヴァイヴァミアを取り出しクレイモアを床に突き刺し大きな碧の刀身の剣を握る。えっと、戦う気なんだ。二人とも巨大竜は無理だから逃げるって念押ししてきたのに。逃げれないって思ってるの?あっちから何にもしてこないのに?でも、二人とも戦う気ならわたしも───戦う!

弓を取り出しドスタの特殊矢を番えた。金色の瞳に狙いを定め弦をゆっくりと引く。弦を引っ張る音だけが耳に聞こえる。

 

わたしだって。怖い。京ちゃんが戦う前から慄然と震えてるなんて今まで無かった。それはそれだけ、わたしは京ちゃんに頼り切って、京ちゃんの背に隠れて戦ってた証拠。

もっと強くなりたい!こんなとこで死にたくなんて、無いんだっ!どこかその一連の動作がわたしの目には非常にゆっくりと映っていた。

 

「トロンどうしたの、脅えて・・・?こいつ、そんなに強いの?」

 

洞窟へ足を踏み入れる準備を整えて居た時にクドゥーナが呼び出していた雷の妖精・トロン。クドゥーナの声にそのトロンの顔を窺えばさっきまで彼女の周りをふわふわ舞っていたのに怯え切り、今は彼女の翼の影にしがみつく様に隠れている。

妖精は圧倒的な力に敏感だって聞いたけど、こんなに小さくなって震えてるなんて。

相当ドラゴンが恐いらしい。

 

「オークに確実にダメージを与えてたのにっ?」

 

 

京ちゃんが駆け出したのを合図にヘクトルが飛剣を、わたしは狙いを定め矢を放つ。風切り音を上げて力ある剣撃が、威力を増した矢が金色の瞳に襲いかかる。

衝撃音を上げて炸裂した飛剣。ついで軽快な爆音が聞こえて煙がドラゴンの前で上がり晴れると・・・ドスタの矢が効いてない?ノーダメージみたいに見えるんだけど。

そこへ矢に負けない速度で走り込んだ京ちゃんが飛び込む。ドラゴンの瞳の前へ翻り一閃。

その剣は金属音を上げて皮膚に弾かれる。舌打ちを一つ付いて、そこから壁の様な皮膚を蹴り上がって再度、睨み付ける金色に向かっていく。

刃が輝る。京ちゃんの渾身の剣突。するとその時、されるがままだったドラゴンに動きが。目蓋を閉じて瞳をガードした。剣突はそのまま目蓋を襲う。本来なら突き刺さり追撃が入るんだけどっ。だけど。

 

「───レイジングスラッシュ!・・・くっ、固いっ!!」

 

叫び声も虚しく響き渡り、剣突が刺さらず追撃は発動しないで、京ちゃんは目蓋を蹴ってその場を離れる。次の仕掛けに備える為に。そこへ、すかさず勢い込むヘクトル。

 

「これでぇっ!」

 

吼えて両手で掲げた碧の刀身を振り下ろす。力の限りっ。反撃を受けるでも無く、硬質的なキィッンと音を立てて弾き返されただけでダメージを与えた様に見えないけど。

一振りでオークをバターみたいに寸断したヘクトルの一撃が。

 

「なんだとっ・・・」

 

ヘクトルが思わずに上げたその叫びは戦慄か、驚愕の声なのか────ドラゴンに二人の強力な斬撃も勿論わたしの矢だって、一切の傷を負わす事が出来ていなかったんだけど。

 

 

 

 

「──満足したか?」

 

フフフと、止まない連続した笑い声がどこからか聞こえて、辺りを見回してみるけど特に誰か居るってわけじゃない。ふいにその低い笑い声が止んだと思ったら、壁が───金色の瞳が喋り始めた。

 

笑っていたのもドラゴンだったと気づく。そして、ほぼ同時に洞窟全体を揺るがすような地響きが走る。

 

ドッ!!!ゴォアオオオオンッッッ!

 

「な、何っ?喋ってる・・・」

 

喋る筈の無いドラゴンから話し掛けられて一様に動揺するわたし達。クドゥーナもヘクトルも黙って唯一点を見詰めている、ギョロリと動く金色の瞳を。

 

「なら──、此方からも返させて貰う。なに、手加減してやる───ほんの一欠片でも儂の力を喰らえば、手向かいは済まいよ。」

 

 

低いドラゴンの声が洞窟に響くと止まない地響きが更に激しくなって床がうねる刹那、轟音と供に崩れ落ちていった。

地響きが激しくなった時点で、入って来た孔に飛び込んでいなかったらと思うとゾッとした。危険と察知した京ちゃんの走れ!の一言でクドゥーナ以外が一斉に走り出し、床が崩れる前に孔に辿り着けたんだ。

遅れたクドゥーナには翼があるからフワフワ浮かびながら逃げてればいいけど、わたし達はそんな訳にはいかないから、ね。

フワフワとこちらに向かってくるクドゥーナの後ろで変化がある。

音だ。

 

コォオオオアアアアアアア!!!!

 

金属でもバーナーで焼ききる様な高質量の気体をぶつける音だ。その音は孔から離れた所を通過したのに耳鳴りが凄い。音は段々と小さくなりやがて聞こえなくなった。

 

すると、血の気の無い表情でクドゥーナが穴に飛び込んでくる。正確には吹き飛んで孔に叩きつけられたんじゃないかなー。

絶体何かヤバいことになってる筈だもん、さっきまで居た部屋は。

 

 

「ふむ、ブレスを『見せた』だけだぞ?もう、やる気にはならんか?早いな、諦めが。」

 

土煙の向こう側から喋る金色の瞳を覗き込む。アレはブレスなの?

その声に怒気や狂気は感じられない。ただ淡々と無感情に喋っているドラゴン。

地響きも収まり土煙が晴れると愕然となる。う、嘘っ。

 

「わざと当てなかった・・・。」

 

「音・・・だけで。」

 

ブレスが貫通して行った空間には何も無くなって、只瓦礫が転がる。驚愕したのは更にその奥、山があった。筈の、10㎡以上の穴の向こうには空が見えていた。外気が吹き込んでいる。ドラゴンが吐くブレスは凶悪と聞いたけど、ここまでスケールが大きいと自然に笑いが込み上げてくる。あはははは!こいつ、山を吹き飛ばしちゃったや。

 

「まだまだっ、だあああっ!」

 

あのブレスを見た後なのに。勇敢にも無謀にも?ヘクトルは吼える。崩れて平坦で無くなった床だけど踏み場が無くなってしまったわけじゃない。ぐんぐんとスピードを上げて今にも崩れそうな床を蹴って飛ぶ。

碧の刀身を両手で掲げ、

 

「──奥義っ!ぐっ。」

 

渾身の一撃を振り下ろす。けどっ、その剣はドラゴンには届く事は無くて。

鼻息、だろうか?ドラゴンが何をしたかヘクトル本人も解らなかったんじゃ無いかな。後ろで眺めているしか無かったわたしにも見えないけど。ヘクトルは軽くふわりと吹き飛んだ。届かなかった斬撃は空を切ってブォッンとバイクの空噴かしみたいな爆音をあげただけだった。

 

「ぬるいっ、軽く相手をしただけだぞ?」

 

欠伸でもしそうな口調でヘクトルを挑発するドラゴン。軽〜い気分でいるこのドラゴンに、わたし達は為す術が無いって言うのに。

 

「はぁっ・・・はっ、ま、まさか・・・空振りさせられる、はぁっ・・・なんて、な。」

 

やっとの思いで声を絞り出すヘクトルに目掛け、ヒールを唱える。

心の芯から折れてしまってそうだけど大丈夫?わたしは遠くからヒールを掛けるので精一杯。

 

「ふむ、用事はもう済んだか?では──さっさと去ねっ!」

 

無感情に喋っていた声が語尾を跳ね上げ、刺さる様な威圧感すら感じさせ響き渡る。

 

「わたし達じゃ無理だわ。」

 

心からの京ちゃんの言葉。この場に居るわたし達も同じ言葉を脳内で響かせていた筈で。

 

完敗、何をしても傷一つ付けられないドラゴンの皮膚を見て?誰がわたし達を責められると言うんでしょう。

 

充分やったよ、わたしはそう思うけどなあ。ここは退いて・・・もっと凄い作戦も練って、人もいっぱい集めないと勝てないんじゃない?

かと言って───京ちゃんの勝てない敵にここの騎士や戦士が勝てるなんて。わたしは思えない!

なんだろジレンマだね、どうやっても勝てないって脳内で警鐘を鳴らされてるのは確か。

 

 

悔しい・・・

 

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