さいよわ───チートなエルフと魔人が護る最弱な彼女が綴る異世界黙示録   作:ぴんぽんだっしゅ

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やってきた冒険者

街道外れの村への道を目に止め、山道を抜けた先に丘が見えその丘の上に件の村らしい集落が集まっている。

後は坂を上るだけと顔をあげ見上げてみた感じ、煙も上がって無いし火の手も無い、鼻孔を擽り心を燃やす、戦場特有の染み込んだ血の臭いも漂っては来ない。

 

丘の上までの坂を上がれば、ドラゴンが現れたという火急を報せた村だ。

何と言ったか───そうだ、フィッド村。

元々、湖の魚を捕るくらいの集落が鉱山が見つかってあっちこちから出稼ぎが来てる、って話。

だから給金は常の倍でる、儲け話には違いないんだが。ドラゴンの凶暴さにも依るだろう、既に村は襲われた後で、依頼主が国に移るって事になれば給金は常より期待出来ないわ、払いがあるかも解らないと来てる。

 

まだ、襲われては無いみたいで内心、ホッと胸を撫で下ろす。もう仕事は無いかもと、焦って足を運んだんだから間に合って良かったという所かもな。

 

村が無くなったら給金は当然、補償金だって国が出すか解んないのがなあ。

 

その証拠に訪れた村は平穏そのものだった。

外からは入れて、内からは外へ出さないと言う所謂、戒厳令的なものが掛かっていたとしても、だ。

 

 

「ドラゴンが居るんだから当然か、準備整えて会いに行くか。」

 

 

俺はゲーテ。日銭稼ぎに飽き飽きしてたとこに、ドラゴン退治と聞いて近隣の街から駆け付けて来たんだが・・・騒ぎになってる風にもないぞ?ドラゴンと言えばピンキリだとは思うが、ピンだろうとキリであれ、棲みかに近づける人間は限られる。

そんなもんだろ、ブレスは強力で牙に、爪にかするだけで毒やら火傷やらだ。

ただし、人に害を為すドラゴンを倒せばその者は国王から表彰を受ける栄誉が与えられる。

 

 

10年も冒険者を続けてこんなに村やら街の近くにドラゴンの棲みかがあった事なんかは無い。

ある意味チャンスである意味ピンチでもある、退治する前に村が襲われたら栄誉も何も。

栄誉は欲しいがスピード勝負になる・・・。

 

 

「酒場にでも行けば情報も耳に出来るだろ。遅れてる奴らも待たないとだしな。」

 

 

俺はぶらりと村の一つしか無い大通り───ってもこの村、この通りしか無いんだけどな。

お、あったあった酒場。

酒の匂いがまだ昼に早い時間だと言うのに近くに寄るに連れ強くなる。

避難しなかった、暇になった炭鉱夫が行き場を無くして酒でも飲んで時間を潰してるといったとこか。

スイングドアを潜ると俺とは違う種類の獣人が目に付いた、カウンターに座る蹄獣人(ギブリミス)が。

思ったより避難しなかった炭鉱夫は居ないのか空いたテーブルも有ったし、カウンターには一人。

他にはエルフ耳やら、この国じゃ珍しい魔人も酒を酌み交わしているのが目の端に映る。

大方、ドラゴン退治に集められた口か。

魔人の固さは獣人のそれとは比べないでも解っちまう。

 

 

「よう。ここ座って良いか?」

 

 

 

まあ、深く考えんでもやることをやろう。

カウンターは話の切っ掛けには持ってこいだ、空いてて助かる。

 

「お好きに。」

 

蹄獣人もチラッと俺の顔を見て、面倒そうに自分の手に収まった酒のグラスに視線を戻した。馴れてはいるが目くらい合わしてくれると良かったんだが。

 

 

「ドラゴンが出たってな?」

 

 

炭鉱夫なら当たり、違うならテーブル席を当たらなきゃな。

 

 

「・・・らしいな。」

 

 

 

 

 

 

蹄獣人の語気が弱くなる、が。当たりだ。

鉱山に出入りしてる、それか知り合いが居るか。

ドラゴンが出ようと、一般人にはそうそう伝わらないもんだ。

せいぜいが普段出ない魔物、マーダーベア辺りが出たって事にして隠すって聞いた事がある。

 

「お客さん、冒険者?地酒の良いのがあるよ、どう?」

 

 

 

恰幅のいいマスターの女が酒を薦めて来た。

好都合だ、これも情報を聞き出す切っ掛けに変えてやる。

 

 

「それでいいや、となりの・・・誰だっけ?」

 

 

 

まずは名前を聞こう、女の名前以外はどうでもいいって奴も仕事上知ってるには知ってるが、スマートな関係を築くには名前から入るべきだと、俺の持論だ。

 

 

「僕はマッガンだが。」

 

 

どうやら蹄獣人の名前が解ったぞ、マッガンと言うらしい。

気に入らないのはチラッと見ただけで視線を合わそうとしないとこ。

 

「マッガンにも一つ、それを奢る。出してやってくれ。」

 

 

 

いい関係がいい情報を引き出してくれる。取っ付きにでもなってくれれば酒の一杯、安いもんじゃないか。

 

「はーい。」

 

 

マスターは俺の顔を見て、ニヤリと何か含んだ笑いをすると、後ろの棚からグラスを二つ出して順繰りに注いでいく。

酒が注ぎ終わって俺と、隣のマッガンの前にコトリとグラスが置かれ、ここで初めてマッガンが俺を向いて視線を合わしてきて、黙って手で礼をした。いい感じだ、上手く行くといいなあ。

 

「それでよ。マッガン、村に出たって言うドラゴンの情報が欲しいがいいか?」

 

 

知ってる事を全部吐きださせてやる、なあに、手管ならいくらでもある。

こっちの仕事だって解ってくれてるのか、ドラゴンの一言に、マスターの眉根が揺れた気がしたが、口を挟んで来ないとても利口さんなマスターだね。

 

 

「知ってることなら・・・」

 

 

マッガンはチビチビと、グラスに口を付けながら思案する様に俯く。

そうそう、それでいい。

思い出せるだけ特徴を思い出して教えてくれよ。

 

 

 

「まずデカさだ、それに角の数、重要なのは古代種かどうかだ、牙の色で解る。」

 

サイズは重要な点。

いくら向かうとこ敵なしな俺でも、城ぐらいデカくなるとなあ、この仕事を考えることになるかもな、それに角は次に重要なトコだ、場合によってはそのpartyのいさかいを生む。

ドラゴンの素材はなんであれ高値で買い取られるが、最も値が張る角は冒険者が商人に言い値でフッかけられる。

それだけ優秀な素材だし珍しいものだ。

そうなると少ない場合、誰のものだとpartyのものとで奪い合う羽目になるって話。

死人が出ても普通じゃないね。

 

 

「大きさは普通って、鉱山の上役から聞いてる。角の数、牙の色なんかは解らないな。」

 

「あ、そんなもんか。バジリスクよかはデカいんだな、そうなると。ふむ・・・」

 

 

なんだよ、期待した分ガッカリだ。

サイズが普通じゃ価値は対して無いんだけど。

一年、遊べるくらいの金にはなるがな、国一つ買えるとは行かないか。

そんなの出たら、この村くらい焦土にしてなきゃおかしいとも言える。

村が残ってる時点で小物決定的なんだよな・・・

 

 

「ああ、瞳の色は金色だったそうだ。ドラゴンが出たのは地下4階の壁からだったんだってよ。奢り賃に足りたかい?」

 

 

なんて思って口ごもった俺に、マッガンは目が捲り上がる様な一言をかましてくれた。おい、それって・・・

 

「金色・・・古代種かも知れねえな、面倒な事になったぜ。」

 

 

サイズが普通でも古代種か。小躍りしなくなる、ったくよお、俺のpartyだけでもそいつは無理して退治できそうだし、おまけに稀少価値がある。

口では面倒と言ってても顔を見たらにやけてた筈さ。

俺は握りこぶしをマッガンに向けて突きだし、相手も一瞬ぎょっとしたが理解したのか握りこぶしで返してくれ、俺は口端を吊り上げてコツンと返した。

人生最上級の獲物がお宝を背負って、俺を待ってくれてるんだからよ。

 

 

「おお、そうだった。鱗は黒でツルハシを一発でへし折る。掘ってた階は違うが噂で聞いたのさ。」

 

そいつを聞いて俺はげんなりとマッガンを見詰める事になった、そいつはつまり。

 

 

「・・・そりゃ、堅いな。俗な武器じゃ歯が立ちそうに無いんじゃ無いか?」

 

 

傷をつける事も出来ないってことかよ。

 

「お前さん、虎人(ピューリー)だろ。武器じゃなくて爪に自信があんじゃないのかい?」

 

口髭を引っ張る真似をして笑い、そう言うマッガンの言葉にハッとなる。

そうだ、俺は誇り高き虎人の戦士・ゲーテ。

何物だろうと俺を形づくる先祖の血によって、牙が、爪がそいつを地べたに這いつくばらせて噛み砕き、切り裂いてきた、そうだがよ。

 

「ピューリーの爪でもな・・・限度がある。ツルハシが弱ってたってのを祈るばかりだな。」

 

バジリスクだって話に挙がるだけで、俺は見た事も無いんだからなあ。

少し、弱気になるのも仕方ないだろ?やっぱり、成り上がるにはそうとう高い壁だぜ、ドラゴンってのは。

 

「よう。ゲーテ、待たせたな。」

 

後ろで大きな音がして、背中に俺の名を呼ぶ声がする。

勿論、よく知ってる声だ。

 

「大して待ってねえは、他の奴らは?」

 

 

声に振り向くと青の革ベストに白い綿のジャガードシャツ、厚手のズボン姿の相棒でもある獣人が近づいて来ていた。

 

「ゴブリンの巣に手間取ってる、まあ明日には発つんじゃねえか。俺にも一杯。」

 

 

こいつはジピコス。もう、一年組んでる。他の奴らは更に遅れるのか。ドラゴンを相手にしようって言うのにゴブリンぐらい後に回せないのか。

ジピコスは俺の隣に腰を納めると、女マスターが声をかけるより早く俺のグラスを指差して酒を注文する。

 

 

「ジピコス、面倒そうだぞドラゴン───古代種かも知れない。」

 

 

 

言葉とは裏腹に俺はニカっと牙を見せて笑い掛ける。

 

「ぶっ、は。マジか、御決まりのブレスから外れるな。それに・・・魔法を使うんだったか、な?」

 

 

俺の反応に半分まで飲んでいた酒を、グラスに吹き出すジピコス。すぐにリーゼントの様な自らの前髪を弄りながら俯く。

付き合いの長い俺にだけ解るこいつはビビッた時の癖だ、ビビッてる場合じゃ無いぜ。

鱗の1枚でさえ、お宝に変わるんだからな。

 

 

「大昔に西の端で出たドラゴンは焔じゃなく鉄の礫を吐いたって言う。羆人(ゴーギャニル)か魔人の壁役が要るかもな。」

 

 

だが、ジピコスの言うことも最もだ、ブレスが決まったものじゃない古代種は、何を吐き出すか解らないってのは考え様によっては、ドゥームドラゴンよりも危険だからかも知れないからだ。

固い前衛が要るな、と口にすると、

 

「魔人なら、あれ、後ろに居るじゃねえか。ゲーテ、あいつを引っ張るってのはどうだ?」

 

 

俯いてビビッていた筈のジピコスはそう言って、グラスを手にそのまま後ろに向く。

その方向には店に入るときに目に止めたエルフ耳と、紫の肌の魔人。

 

「稼ぎが減るぞ、隣のエルフ耳も人間もpartyなんだろ。」

 

 

魔人が入れば自分は、ドラゴンに直接襲われないとでも思ったか?ジピコスの奴、エルフ耳と気付かない内に合流したのか人間の女まで増えてるだろ、あんなの入れたら稼ぎどーすんだ。

 

「そんなの魔人だけ引き抜くに決まってんだろ───な?ゲーテなら出来るさ。」

 

 

 

魔人だけpartyに加えて他は要らない、なるほど。

 

 

 

「ちっ、確かに。魔人だけ引き抜くってのなら一人分で済む。ふむ・・・待ってろ、行ってくる。」

 

それだけならまぁ、分け前で揉めるほどじゃあ無いか、他の奴らも納得させられるだろう。

俺にはどんな奴だろうと丸め込んできた手管が、経験と自信があった。

ポリポリと頬を掻いてカウンターを立つと舌舐めずりを一つして、魔人の元へむかう、視界にもぅ他の雑魚は写らなかった。

 

「ちょっといいかい?」

 

「ズっ・・・ヤだ。」

 

 

魔人に話しかけたんだが、返事を返したのは珍しい黒髪のエルフ耳だった。

俺が人買いのつてがあって、こいつを調教できる技でもあれば今直ぐに言い含めて調教場に連れてくぐらいには珍しいんだが、俺にはそっちの手管もつても無い、残念な事に。

 

 

「俺はこっちと話したいんだが、じゃああっちで飲み直さない?奢るよ。」

 

 

俺の声が届いてないのか、魔人はうんともすんとも言わない。

手管を振るおうとしたって肝心の相手が意識が無いんじゃ御手上げだな。

 

「もう、潰れてるわよ?いい地酒って出されて、重かったんでしょ。」

 

そう言うエルフ耳の前には空の酒瓶がずらりと並ぶ。

飲んだので解る、軽い酒とは言えなかったぞ。

 

「・・・強いんだな、10本も空けたのか・・・」

 

 

蟒蛇(うわばみ)って奴か、可愛い顔をして大の男でもブッ倒れる量をケロリと飲んでんのかよ。

 

 

「これくらいで?舐めたのと変わらないわよ。」

 

 

俺の視線と態度にもこっちを向く訳でなく、黙々と酒を飲み下していくエルフ耳と空になる酒瓶を黙って苦笑いを浮かべながら見詰める他無かった。

酒をまるで水か空気ぽくパカパカと嚥下する様は、気違いにしか思えないんだが。

違う意味で関わり合いたく無い手合いだなこいつは。

 

「ズっ・・・こんなの暇潰しよ、役人が来るまで外に出れないんじゃ、ズズズ・・・ね。」

 

 

 

暇潰し、口で言うのは容易いが、

量をかんがえろと言いたい。

村からしばらく離れられないのは解らん事も無いが、冒険者なら暇潰しにドラゴンとは言わなくても、

他の多数居るだろうモンスターでも狩りに行けば済むし、稼ぎにならない筈は無い。

冒険者なら街道側に出られないだけで、山側にはいくらでも出ていけるからである。子供の使いと言う訳でも無いんだから、門番もそれくらいは口で説明すれば、出してくれただろうにな。

酒の量に圧倒されて俺としたことが悪い癖だ、他人の事に足を突っ込み過ぎた、いけないいけない、何よりも優先すべきは魔人とのコンタクト。

 

「悪いんだけどこっちの魔人と話したいんだが、いいか?」

 

 

 

意識が無いんじゃ引き摺ってでも仕事の話の出来る様に連れ帰らないと。

酒の勢いの収まらないエルフ耳を横目に声を掛けると、

 

 

「持ってけば?」

 

 

魔人に今は興味が無いらしく快く了承して貰えた。

 

「あ、この人犬耳だ。アスカムみたいだねー。」

 

 

酒とは違う甘ったるい匂いのする、グラスの向こうから今度は人間の女が、エルフ耳に向かって俺の耳の事に触れた。

それを聞き流しながら俺は魔人の肩に触れ、起きるよう促すが起きる様子は無い。

 

 

「ズ・・・そうね。」

 

 

俺が苦労して、テーブルから引き起こした魔人を肩に担ぎ、その場を後にした後、面白くもなさそうなエルフ耳の声が俺の背中に響いた。

 

「引っ、・・・、張っ・・・、て来た、・・・ぞ。」

 

 

 

ジピコスの眉が段々と吊り上がっていくのが解り、俺は気付いていた、ああ、俺は半人半獣の姿に戻りつつあるな、と。

 

「おい、大丈夫か?」

 

 

「ぜはー、・・・コイツ、重かった、ぜ。はぁー。」

 

 

魔人を空いていたカウンター席に座らせ、肩で息する俺にいくつか含みのある言葉を掛けてくるジピコス。

こんなとこで獣化(アニミテージ)してるぞ、大丈夫か?と、凄え重そうにしてるけど大丈夫か?と言う意味で、だ。

 

 

「引っ張るってのはそう言う意味じゃあ無かったんだが、ま、いいか。」

 

 

そう言うジピコスをギロリと睨みつけてやると納得した様ではなかったが青い顔して黙り込みやがる。

ジピコスはラミッド辺りじゃ一番の数を誇る獣人の端くれだ、砂ギツネ、と言ったか。

種族ではそのものラミッド族と言う、数だけで言えば国内最大最多を誇るがそれだけに混血が酷い、種族の血の誇りより安寧を望んだら結果は薄い、薄っぺらな血しか残らなかったそう言った雑多な良く居る種族だ。

獣化が進んだとこで人間より強く、ドワーフに劣るそんな弱い種なもんだから、俺の獣化の進んだ姿を見て震え上がったんだろう。

 

取って付けました的な獣耳と尾が現れ、御飾りかと思える牙と、爪しか獣化した所で、持ち合わせ無いのだから当然か。

愛玩犬よりはマシな戦闘種族って訳なんだからな。

 

「うー・・・」

 

 

 

睨み続ける俺を俯いたまま怪訝な視線を送ってくるジピコス。

言っとくが、俺は引かないからな?ジピコスよ。

そんな静かな殺気のぶつかり合いに挟まれた魔人から、低い唸り声にも寝言にも聞こえる声が洩れゆっくりと、顔を持ち上げ廻りを見回す。

 

「兄さん兄さん、奢るよ。何にしようか、辛いの、甘いの、どっち?」

 

 

その様に優先すべきはジピコスじゃあ無かったと自分に言い聞かせ、視線を魔人に動かし歩み寄る。

ジピコスの軽い舌打ちが隣から聞こえる。後で解らせてやるから!待ってろよ?

内心はジピコスに怒りをメラメラと燃やし、魔人の背に触れて介抱をしつつ、猫撫で声を装い声を掛ける。

ふいに目に止まった、魔人の背に触れた俺の手は、獣化が戻り普段の人間の手に戻っていた。

 

「軽いので・・・ぇ。」

 

 

魔人は振り向かずに、場所が移動してカウンターになっている事にも吃驚する事も無く弱々しい声を上げる。

 

 

「マスター、軽いの一杯よろしくぅ。」

 

 

魔人の背を介抱する様に擦りながら、俺はマスターを向いてそう言うとウインクをした。

視界の端にマッガンが目に止まるが、特に変わりなく静かに酒を飲んでいる。

 

 

「・・・今日は、もぅ飲みすぎた。」

 

「へへっ?まだ昼前なんだが、何時から飲んでんだよ。」

 

「朝一・・・?」

 

 

 

あのエルフ耳どれだけこの魔人に、酒を飲ませたんだよ?

 

「・・・そっか、ゾッとしないなそりゃあ!ほら、軽いのだ、飲んで飲んで。」

 

 

マスターが静かに置いたグラスを掴んで魔人に薦める。

 

「もぅ・・・飲めねぇ。」

 

「あちゃあ、しょうがない。じゃあ、仕事の話と行こう。・・・そういや、名前がまだだったよ、聞いていいかい?」

 

 

 

焦って俺としたことが、名前を聞き出して無かった事を思いだし、どう言いくるめ様か考えて居た所にジピコスが横から口を挟んできやがる。

 

 

「そうだ、あんな女しか居ないparty抜けて俺らと組まねえ?」

 

 

すると、憤懣とした怒りがジピコスへと自然と向いて、

 

 

「ジピコス・・・、任せるんじゃ無かったのか。お前がオトすんだな?どうなんだ?」

 

 

俺も驚くような低い威圧的な声がすぅと口から滑り出す。

 

「協力して丸めこみゃいいじゃあねぇの、あっちの女に負ける気なんかしねえしよ。」

 

 

俺の態度に直ぐ様、青い顔してジピコスが震え上がったんだろう、ぶるぶると唇を震わせながら目を合わせまいと必死に他所を向いて弁解しようと言葉にする。

喧嘩売るつもりなら買うんだが?魔人の事をつい忘れてギリギリと歯軋りをして、尚もジピコスを睨み続けてしまったのは失策だと言えなくもないか。

 

 

 

 

「・・・そう思うか、ハーフエルフは少しはやる。ナリで解る。」

 

 

何よりジピコスは間違っている点がある、重要なのはエルフ耳が俺より、強い可能性を考えていない事だ。

 

「ん?良く居るエルフにしか見えな・・・ッ!黒髪か。」

 

 

そう言う俺の声に、エルフ耳に視線を向けるジピコスが、やっと気付いた様に興奮して叫ぶ。

 

「ダークエルフか、人間かに因るがな。人間のハーフエルフなんかが、俺の牙と爪に敵うか?ふっ、まず負けは無いと言い切れる。」

 

 

そう、黒髪。

ダークエルフだった場合、強力な魔力に近づくのは簡単じゃあ無くなる、人間なら獣化なんてした時点で俺の毛ほども触れる事が出来ないだろうが。

万一の事は無いだろう、その証拠にエルフ耳の肌は白い。

 

「・・・お前らがー、シェリルに勝てるとはっ・・・想像できないん・・・だが。ああ、中々口を挟めそうに無かったんで・・・見てたんだが。俺の・・・名前だったらヘクトルだ。」

 

 

俺達のやり取りにすっかり気抜けしたのか、ヘクトルと名乗った魔人はぺらぺらとそれでも酒が回って苦しそうに喋ってくる。

俺もジピコスもその内容に吃驚して、合わせたようにヘクトルに目を落とした。

 

「言うなあ?」

 

「自信があるんなら兄さん、こうしよう。俺が今からあのエルフを痛めつければ───兄さんはうちの壁役に来てくれ。これであのpartyに未練は無くなるだろう?」

 

 

奮起するでなく、歓喜するでなくその時俺の頭にピーンと音がなった様に閃きが生まれた。

 

表に引き摺りだして、ヘクトルが納得するまでエルフ耳をいたぶったら、この魔人が俺の元に転がり込んで来るのでは無いか?と。

 

「・・・酔ってたっ・・・とか、言い訳に・・・すんな?」

 

「ん?ああ。」

 

 

 

自信がよほどあるのか煽るようにヘクトルは俺の提案を了承した。

さあ、エルフ耳をボロ着れに変わるまでいたぶって、公開処刑といこうじゃあ無いか。

 

その時、俺はヘクトルがくつくつと含み笑いを止めないのをおかしく思ったが、すぐに、こうやってpartyを渡り歩いて来てるんだろうと思い直す事にした。

たかがハーフエルフなど恐れるなどあり得ないからだ。

 

 

 

 

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