さいよわ───チートなエルフと魔人が護る最弱な彼女が綴る異世界黙示録   作:ぴんぽんだっしゅ

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そうだ 温泉へいこう!7

 

逡巡した京は帰ったらどうなるか、日本での自分の事を考えていた。

またウザい教授と、エロ目の講師と顔を付き合わせて日々を送るんなら、こっちに居た方が・・・いやいや、アイツの事もあるもんな、振るにしても、振られるにしても決着だけはつけないとなぁ・・・ねぇ?凛子ちゃん。

 

「京ちゃん、帰りたくなくなっちゃったの?」

 

そんな京を見上げながら視線を絡ませていた凛子がぎゅっと唇を噛み締め、不安そうに問い掛けると、

 

 

「へー、シェリルはぁ、みやこって言うんだぁ〜。」

微睡んで、寛いでいた筈のクドゥーナから声が上がる。

 

「──言って無かったっけ?」

 

「・・・うん、コクコク。」

 

視線を一度、クドゥーナに絡ませてから戻すと溜め息を一つ吐いて、素の表情で京が訊ねると、ジト目になったクドゥーナが、何事か思うことでもあるのか悔しげに、恨めしげに唇を噛んで何度も頷いた。

 

「あ、そー言えば気に入らなかったから。言って無いんだったわ、ゴメン。」

 

ピン!と思い出したと言いたげに閃いて、京はにまっと口端を持ち上げると、目蓋を閉じて出逢った頃でも反芻しているのか、しきりに頷いてからクドゥーナに顔を向けて心無い口調で謝罪を口にする。

 

二人が、初めて顔を会わせた頃の京の態度を思い出してみると、確かにクドゥーナと好んで関わろうとしていないのが解るかも知れない。

何て事の無い、気に食わない態度を取られたから頑なに、名前を言うつもりも無かったのだから、凛子が口にしなかったら・・・三人でマッタリする機会が無ければ・・・京から名乗る事は無かったんじゃないだろうか。

 

「ちょ、京ちゃん!ぶっちゃけ過ぎだってば。」

 

「いいよぉ、凛子ー。うちだってねぇ、精神的に避けてたし、・・・恐すぎだからぁ。えっと、みやこは。」

 

「そんなに気にするなら、シェリルで通せば?嫌ならそれで、良くなイ?」

 

凛子がフォローに入るも、クドゥーナが突っぱねて、更なる挑発的な視線と言葉を京に浴びせた。

すると、応酬する様ににこにこと笑う京が訊ねて。

収集が付かなくなるのを嫌って、凛子は唇を噛んで逡巡すると、

 

「あ、あのね。京ちゃんはホントいい人だよ、ときどきね、変態になったり。ほんのチョット怖ーくなったり、するけどっ!ぇ──」

 

もうフォローにもなっていない。

フォローしようにも優しい?もちょっと違う、いざとなれば頼れる存在と言える、だけどそれを帳消しにした上で、天秤の秤を更にかさまして変態だった。

嘘をつけないとフォローにならないくらい普段の言動が凛子にとって、京は逸脱している、その上チョット怖い。と、そういう評価に至った。

 

「それ悪口?フォローしてるつもりぃ?身に覚えはあるけど、そんな風に思ってるんなら──ベットの上が楽しみね。」

そんな凛子のみずからの評価に更に調子づく京だったりする。

ビッチとヘクトルに言われ様が・・・これはヘクトルが、勘違いしているとは思われるのだが。

ヘクトルは京をビッチと言うより、正しくは痴女だと言いたかったんだろう。

露出高めで、ディアドの店では脱ぎ癖も披露している。

どちらに並ぼうと変態に違わないのが、京と言う存在を極めて正確にいい表しせしめていた。

少し考えると艶っぽく舌を出して京がペロリと舐めとり、最後の台詞を嫣然と微笑み口にする。

態度、仕草、言葉全てから凛子を欲しているのが解り、当人の凛子もクドゥーナも青い顔に瞬間的に変わる程だ、二人がそれだけで純真無垢だと解る。

 

「・・・ゴメン。」

 

「許さなぁい。」

 

震え上がった瞳で、京の視線を受け止める凛子が口詰まりながら謝ると、京はそんな薄っぺらな謝罪は要らないと笑い飛ばして、更に凛子の視線に金色の双眸を重ねた。

クドゥーナには女子と男子の、よくある痴話喧嘩に見えてどこか気分が悪い。

男子はこの場にはいないのだが。

 

「うっわ、みやこってチョット怖いじゃないよ、超わがままだよぅ。ね、凛子もそ・・・」

 

だから、ついつい必要ない口を挟んでしまった。

だがしかし、言い終わるのを待たずに京はクドゥーナの喋っている口を無造作にくいっと逆手に掴むと、切れ長の瞳を細めて冷ややかに笑いながら、掴んだ頬を引き寄せて鼻先まで覗き込み、

 

「どの口がぺちゃくちゃ囀ずるのかしらぁ。」

 

嘲る様にそう言ってクドゥーナの返事を待った。

 

「うぎゅ、むぐぅぐ。おぅもぇんわあえぃっ。」

 

「ここでそんなの始めちゃったら、京ちゃんてばっ。ジピコスとかこっち見てるからぁ。」

 

「ちっ。んん・・・わたしぃ、二人からはそんな悪者に見えてるの?」

 

正直、京と言う猛獣に捕らえられた愛玩鳥でしかないクドゥーナは、謝るしか逃げ出すすべも無い。

凛子が横目でチラチラと視線でゲーテと、ジピコスの方を指し示すと京は、小さく舌打ちをして掴んだ手を緩め、複雑な顔をして弱気な口調で訊ねた。

 

「・・・ほんのチョットは、そうかも・・・」

 

おずおずと凛子が返答すると、訊ねる前から態度で解っていたんだと言いたげに京が、静かに怒りを湛えた瞳で凛子を刺すように見詰め、溜め息を吐いてから口にした。

 

「そんなの言われて怒るなって、無茶言ってると思わない?」

 

「・・・ゴメン。」

 

「・・・言い過ぎたと思うぅ。」

 

「ま、ベットの上は予約しといたから。」

 

心の底から真剣に謝る凛子、怒りの色に染まった金色の瞳を見詰めながら。

しぶしぶクドゥーナも俯いてではあったが謝罪する様に呟くと、クドゥーナの事など耳にも掛からない様子で軽口を叩く京はいつもの調子に戻っていた。

凛子を見詰める瞳はやさしく包みこむ様に輝いていたから。

 

「みやこちゃぁん、何?何されるの、わたし。」

 

もの凄く嫌な気配をその瞳から、台詞から感じた凛子が怯えたように訊ねると、

 

「・・・んん、期待しちゃった?寝るだけに決まってるじゃない、変態なの?」

 

くつくつと含み笑いをしながら、にまっと笑う京が可笑しくて堪らないと言う風に答えた。

変態呼ばわりされたので意趣返しと、軽い罠を張った所へまんまと凛子が嵌まったらしい。

 

「ち、ち、ちっ!違うし、わたしはノーマルだもんっ。」

 

「なら、女同士、寝て何か?何も無いわよね?」

 

すぐさま凛子が否定の声をあげると、くす、と小さく京が笑い声を溢して真に仕掛けられていたトラップが発動する。

一緒に寝ても何にも不思議の無い状況だと、知らず知らず京に導かれて、凛子が認める様に開けられた言葉の落とし穴、その奥には蟻地獄の姿さえ見えてしまいそうで凛子はぶるぶると震えが止まらない。

ハメられた?

そう思ってももう遅かった、頷く以外に反論も出来ない巧妙で、逃げ道も見付からない罠。

 

「・・・う、うん。」

 

「うゎあ、あくじょってこういうこと言うんだねぇ。」

 

認める様に凛子が躇いがちに頷いてからクドゥーナが、この仕組まれた罠に気付いてうゎあ!と言いたげにジト目で舐め廻す様に京を見てから呟いた。

 

すると、クドゥーナににこりと笑いながら顔を向けて、

 

「──人生、後悔してみる?」

 

婀娜っぽく微笑んで京はそう言うと、艶々しく唇を結んで舌舐めずりをする。

 

後悔させる、と言うフレーズは非情にもクドゥーナの胸に刺さる、嫌な思いでを強制的に脳内にリピート、リフレインさせた。

焦ってクドゥーナは思い出したくない記憶を吹き飛ばす様に、ぶんぶんと首を振って、

 

「い、いやぁ。うち、まだ大人にもなってないし。ちょっと、心の中ぶっちゃけたくらいで、大人ならキレ無いでよぅ。」

 

そう言うと唇を噛んで襲い来る恐怖に打ち勝とうと体を強張らせながらも内なる記憶からの恐怖にガタガタと震えた。

すると、クドゥーナの言葉に言い終わるまえから、こちらもぶるぶると震えてふつふつと怒りを募らせ、

 

「子供って言葉を楯に何でも出来るって思った?そう取るわよ、そんなに──教育されたい?頭の中空っぽにしてあげましょうか・・・ッ!」

 

クドゥーナの小さな肩を握り潰しそうな勢いで掴むと、我慢しきれないと言いたげに喉から吐き出すように言葉にする。

以前にも、京はこの様に『弱いんだから助けてよ』的な言葉に異常な反応を示している事からも言葉に含まれる姿勢が我慢ならない程度に気に入らない様子だった。

別の言葉で解り易く説明すると京の『逆鱗に触った』。

 

 

 

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