さいよわ───チートなエルフと魔人が護る最弱な彼女が綴る異世界黙示録   作:ぴんぽんだっしゅ

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そうだ 温泉へいこう!10

 

 

 

「京ちゃんっ、最後まで言わせてあげようよ・・・」

 

すると、凛子がすがり付く様に口を挟んだので京は仕方ないと黙る。

凛子に視線を移して微笑むと愛那は真剣な表情で、

 

「──やっぱり見えない壁があって、仲良くしてとか、当たり前の事も言えなくて、いっぱい、いっぱい!酷い悪口言っちゃってごめんなさい!・・・」

 

視線を京に戻し真っ直ぐ金色の瞳を射る様に見詰めると、用意していた言葉を再び紡いだ。

 

もう、京は諦めていた。

及第点ではあるが、これを突っぱねる余地も無い、追い詰められてしまった京は悪女を演じる仮面を脱ぎ捨てる事にする。

 

「んー、20てんっ!でも、今夜は温泉たのしかったねーぇって言いたいわ。」

 

わざと低い点数をつけて、愛那、凛子を順繰りに見詰めながらおどけた様にそう言った。

これは折れないとまずいなと思いながら。

 

「じゃあっ!あいなと。」

 

間髪入れずにパァっと華が開くように明るい表情で凛子が訊ねると、伏し目がちに愛那もチラリと京を窺って、

 

「う、・・・み!みやこぉ、仲直り、してくれる?」

 

そう言うと唇を噛み締めたので、それに気付いた京は碧色の頭をポフポフ叩きながらポッキリ折れた。

 

「みやこが、じゃぁ無くて・・・まずは、みやこちゃんって呼ぼうね?あいな。」

 

「──うんっ、みやこちゃんっっっ!!!」

 

感極まったのか、涙腺が弛みっぱなしだったのかまたも熱い水滴を撒き散らす様に愛那は隣の京に飛び付き、ぎゅぅーっと抱き締めた。

あらん限りの力を振り絞って喜びをぶちつける様なその態度にふふっと京は微笑し、

 

「飛び付くな!バカ鳥。」

 

愛那を引き離すものの、言葉、態度と裏腹に優しい気分になって、京は両手でぐいと振り向かせ愛那を見詰める。

 

「え、そんな優しい顔、初めて見せてくれたぁ、みやこぉ。・・・ちゃん、が。」

 

それを見て、にへらと笑いながら愛那はそう言って再度、京の首に飛び付き手を回して抱き締める。

 

 

この時愛那は自分に対する京の態度が今までと全く違う、怖くもない、拒否するものでもない、受け入れてくれるものになった事がただ純粋に嬉しかったのかも知れない。

 

「うんうん、良い、いいっ。ほら、握手握手。」

 

「んー、仕方ないわね。」

 

「へへっ。」

 

「そのまま、ゆびきり指切りっ。」

 

「えーーー。」

 

「しよ、しよぉっ。みやこちゃんっ、──びっきった。」

 

「はいはい、やくそくげーんまん、ゆびきったっ。うん、水に流せそう。・・・許してないとこもあるけどね?」

 

その後は感動したのか、笑いながら涙を流したままの凛子の仕切りで、愛那、京ともに握手から始まり、指切りまでして仲直りが滞りなくなされていった。

京はもう少しくらいギスギスした空気と楽しみたかったのか分かりやすい毒を吐くと、

「京ちゃーんっ、一言多いよっ。」

 

凛子が頬っぺをぷりぷり膨らませて可愛く怒る。

 

「うちら、これでっ仲直りもしたし、仲良し三人組だよねぇっ?凛子ぉ、みやこちゃんっ!」

 

今にも飛び上がってしまうんじゃないかと思われるくらいに白い翼をはためかせて、テンション高めに凛子と京の首に腕を回しながら、そう叫ぶと愛那はウインクを一つして二人を抱き寄せる。

 

「あー、暑っくるしいから。ひっつくな!バカ鳥。ふふっ。」

 

「えへ、あははははは!いいね、仲直り、スッゴくいい!超さいっこおっ!」

 

愛那を右手で押し退け様と手を伸ばす京だったが、本気で嫌がってないのが、棘のない笑い声と雰囲気で解って、愛那は更に力を手に込めて引き寄せる。

 

「ふふふふっ!あっあははははは!皆で、笑えてホンっとさいこー!ほら、京ちゃんも。笑お?」

 

「そう?うふふふふ。あっはははははははっ!!!」

 

アハハハと嬉しそうに、楽しそうに笑い声をあげる凛子に促されて、にこっと可愛く微笑んだ京は、凛子を見詰めると二人にまけないくらいに声を張り上げて笑い始める。

 

「壊れましたか?姐さん。」

 

「急に、三人バカみたいに笑いだして、どうしたんすよ?」

 

笑う三人を見て、心配そうにゲーテとジピコスが声をかけてきた。

長い喧嘩をウンザリとしながら見ている内に、京から怒りとか、憎しみと言った暗いオーラを感じられなくなったのに真っ先に気付いたのはゲーテだった。

 

誇れることでないが、ゲーテは京の悪意という悪意、嫌悪という嫌悪を浴び続けて何度も殺されかけた・・・本当ならとっくに死んでいる身だったりするので、そのどす黒い悪意やら、負の感情を京が出していないのに気付いた、と言うわけだったりする。

 

だからか、口を挟むことなく楽観してゲーテは自分等も楽しむか、と観戦していたくらいだ。

 

「あれは喧嘩、じゃないな?ゲーテ、そうだろ。途中から雰囲気ってか、何か違う、殺気も感じなくなったしよ。」

 

少し遅れてゲーテにジピコスが訊ねると、

 

「あぁ、姐さんは楽しんでるみたいだな。」

 

そう言ってジピコスも納得させたので、しばらく見守っているとやがて壊れた様に、三人が笑い始めたので吃驚して近寄ってきたのだった。

 

「こっち見んな!下がれ、下がれっ。」

 

照れたのか、真っ赤な顔で子分であるゲーテとジピコスを下がらせようと京が手を振って叫ぶと、

 

「ゲーテも、ジピコスも皆で笑おっ?あっははははははは!」

 

ケタケタ、くすくすと笑い続けている凛子が呼び止めて、更に誘う。

一緒に笑おうよと。

 

「──へ?俺が?」

 

「俺もかよ、ふわあっはっはっはははははあっ!ゲーテも、やれよ。」

 

戸惑うゲーテだったが、すぐさま声を上げて笑い出すジピコスを見て、その場で大きな声で笑い出す。

突如として温泉は笑い声が沸き起こりある意味異常で、ある意味平和に見えた。

 

「え?、がああっわっはっはっはっはあっはははは!」

 

うふふふふふ!

あははははは!

えへへへへ!

ふわあっはっはははあっ!があっわっはっはっはっはっ!

 

五人の笑い声は鳴り止むまで大空に届かんばかりにクインテットになって響き渡ると、やがて何事も無かったように融けて消えた。

 

 

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