さいよわ───チートなエルフと魔人が護る最弱な彼女が綴る異世界黙示録   作:ぴんぽんだっしゅ

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グラクロと小さな影

 

 

もう一人この場に喋る事が出来る人物(?)が居たことをお忘れでは無いだろうか?時を少し戻す事にしよう。

 

凛子が京に脱がされ、わーきゃー逃げ回っていた、同じ時、もう一人の登場人物の元に近寄り、辺りを窺う小さな影が一つ。

魔法を使ったのか、臆病で、警戒心の高いシャダイアス達の筈なのに、寝息を立ててその小さな影に気付かない。

 

闇に融けこみながら小さな影はシャダイアスに近寄り、シャダイアスに付けられた鞍の上に残されている青いリュックサックの革紐を弛めると中を覗いた瞬間、影は口端がにいっと持ち上がった。

 

勿論、リュックサックの中身は彼のドラゴンのなれの果て、グラクロと言う名の、しかし今はどこに出してもぬいぐるみにしか見えない、・・・黙っていれば。

 

知らぬ者なら、話し掛けはしないだろう、ぬいぐるみに話し掛けるのはイタイ人だけ、そうだろう?

なのに闇に融けた小さな影はぬいぐるみにしか見えないグラクロに呼び掛ける。

 

「起きないか。ん、違った。起きましょうね?」

 

「──誰、か?」

 

小さな影は彼のドラゴンに優しく喋りかける。

 

しかし、目蓋を閉じたぬいぐるみは瞳を開けてくれないのでリュックから取りだし、起こそうとゆさゆさと揺さぶっていると、ぬいぐるみは可愛らしい金色の瞳をパチリと開いて、小さな影のピンク色の双眸を覗き込んで訊ねる。

 

クドゥーナじゃぁないなと思いながら。

 

「グラクロデュテラシーム・・・──オリテバロー。」

 

「──ふむ、俺の名を全て知るお前は、神の一柱の某か。」

 

小さな影は答えた。

満足げに微笑うと、彼のドラゴンの本名をすらすらと全て言い当てる。

 

そんな芸当ができるものなど、神かそれとも邪神か。

どちらにしても、いい気分のするものでは無かったグラクロは特に何の感情もこもってない口調で神と思われる小さな影と言葉を交わす。

 

影の声は幼い。

セフィスと同じくらいか、それとも下かも知れないくらいにただ、幼さの中に威厳があった、この瞬間までは。

 

「えへ、お久しぶり。だねぇー、えっと。今は、ぐーちゃんって言うのがお気に入りなのか、なるほど。うぐぐ、可愛くなっちゃって、このこの!」

 

セフィスと同じ様にぐーちゃんと呼び、セフィスと同じ様にぬいぐるみをぎゅっぎゅっと抱き締めて頬に額にキスの雨を降らす今は、威厳が消え失せて、ただの幼子のようだった。

更にはグラクロの両頬を掴むとぎゅーっと引っ張る。

態度、仕草、声、容姿の全てが幼子と見間違えてしまいそうな小さな影は、きゃはははははと何が愉快なのか、力のこもってない小さな掌でぽふぽふとグラクロの頭を叩くと、またきゃはははははと笑い声をあげる。

 

「──用があるのだろ、神が遊びに来た訳じゃあないよな?」

 

ぬいぐるみの様にあやくられるままに、小さな影に身を委ねていたグラクロが口を開いた。

 

「うんうん、ぐふふふふ。話が早くて助かるよ。わたしが来たのは、ね?──と、云うわけ。解ったら、さっさっと元に戻りなさい。」

 

するとまとわり着く様に消え失せていた威厳が蘇り、小さな影は長い長い説明を始めた。神である小さな影がここにやって来た理由を。

 

話終えた影が、グラクロをピンクの双眸で見詰めると、グラクロは逡巡し、静かにだがキッパリと断りの言を入れる。

 

「──理解った。だが──断る。」

 

「ひゅえっ?」

 

まさか断られるとは思って無かったのか小さな影は眉をひそめて、吃驚した様に小さな叫び声を上げるとグラクロを見詰めていたが、何やら思案した後で、いいアイデアが閃いたのかむふっ!と悪戯っ子めいた微笑いを浮かべる。

 

逆三日月の瞳と、三日月の形の口と言えば解りやすいかも知れない。

 

「くふふふ。そのままじゃ魔法の一つ、使えないのに?ひんと、ね。あなたの主はだぁれだ?」

 

「──神々か?」

 

無い胸・・・幼子の容姿なのだから当然、無くて当たり前な胸を精一杯張って小さな影は、悪戯っ子めいた微笑いを変わらず浮かべたまま、グラクロに訊ねると当然だと言いたげに、ピンクの双眸を覗いてグラクロは答える。

 

しかし、ちちち!と小さな影は顔の前でピンと立てた人差し指を振って、

 

「違う、ちっがーぁうっ!」

 

と否定した後、大袈裟に深い深ーい溜め息を一つ吐くと言葉を続ける。

 

「それ、当たり前の答え過ぎてつまらなくない?そうじゃないでしょ。あなたの主はだぁれ。」

 

「──ふむ、俺の主は?では、シェリルか?つがいたいと・・・」

 

短い両腕を差し出してグラクロを見詰め再び、問い掛ける様に小さな影が訊ねると、グラクロはしばしの逡巡の後、小さな影に問い返す。

 

主が神で無いなら、好いた女が主なのか?と思いながら。

 

「あったま固いってば。じゃぁコレっ!」

 

だが、その答えも正解では無かったのか、事が上手く運ばなくてイラっとしたぽく小さな影はその場で地団駄を踏んでキーッと悔しがった後で、呟きながら空間に融ける様に右手が消え失せたと思うと、何事も無かった風にニマニマと笑って、何かを右手に掴んで取り出した。

 

「──何だ?」

 

小さな影が掴んだそれを、凝視してグラクロが思わず声に出して訊ねると、

 

「くふふふふ、コレね。わたしのつがいたい神がね。創ってくれたのぉー、ガチャって言うんだよ♪」

 

小さな影は可愛らしく口元に手を当て笑うと、頬っぺたをピンク色に染めて、照れた素振りでくねくねと胴を揺らして、両腕を頬に寄せると恥ずかしがりながら喋った。

 

影は神であり、神がつがいたいと言うならばそれも神だろうか、あるいは・・・。

何とは言え、しばらくの間グラクロは小さな影が一人、照れてモジモジ、ぐねぐねとしている様を黙って眺めていた。

 

 

 

 

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