さいよわ───チートなエルフと魔人が護る最弱な彼女が綴る異世界黙示録   作:ぴんぽんだっしゅ

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第69話

 

わたしは──笹茶屋京。性悪エルフって、今居るフィッド村ではね・・・悪目立ちし過ぎちゃったかなぁってのは、ある。

 

ありすぎる。

 

 

 

村に一つの酒場が、わたしの毎日の舞台(ステージ)になってたわけよ?でもね、わたしを畏怖を込めて見る視線は感じても、間違っても喧嘩を売りそうな視線は今は無い・・・どうしてかな?こんなにか弱そうな、ってアレっ・・・わたし、パジャマ姿でここまで来ちゃってた。ま、いいっ。

 

ちょっと露出がキツいかも、でも、カルガインじゃ良く上は脱いでたみたいだし、・・・覚えて無いけど興奮しちゃったら、トぶのよね、記憶。

 

 

 

「ズ・・・ズズ。」

 

 

 

いつものテーブル。

 

いつもの地酒。

 

いつものジョッキ。

 

でも、今日は何かいつもと違うと感じる。

 

 

 

まあ、シースルのベビドール姿で酒場にいるってのは、いつもとは違うんだけどねぇ。

 

 

 

冒険者の皆さん方には刺激、ありすぎたのかしらぁ。

 

 

 

「姐さん、さすがに姐さんに喧嘩売る奴いなくなっちゃいましたね。」

 

 

 

そう言うとゲーテは振り向いて酒場を見回す。

 

やめてあげなさいよ、皆さんあんなに震えて。

 

瞳を逸らして怖がってるじゃない?

 

 

 

別にゲーテを怖がってるわけじゃぁ、無いのよね?わたしが、怖いんでしょぉ?ふんっ、

 

 

 

「ゲーテ、相手してくれる?」

 

 

 

「ははっ、血だるまにならない程度に加減して貰えるなら、付き合いますっ。」

 

 

 

誘う様に、ゲーテの顎を弄びながら見詰める。

 

なんだっけ、クドゥーナが怖がってた表情なんだっけ?獲物を求めてるときの、わたしの貌。

 

 

 

今のわたしは、きっと。

 

血だるまになったゲーテを見たいんだと、思う。

 

だから、試すように。

 

 

 

「あー、そう、それだとストレス溜まりそうだからパ・・・」

 

 

 

スと言いたいとこを遮ってくる。

 

 

 

いい度胸じゃない!その身に刻んであげるわよ?わたしを、わたしと言う存在を。

 

 

 

「加減なしでいい!揉んでやってくれ。」

 

 

 

絡み合うわたしと、ゲーテの視線。

 

求めてる映像(ビジョン)は違うだろうな、ゲーテがわたしに見てるのは、強者への憧憬(あこがれ)。

 

 

 

「へーえ、ちょっといい顔するようになったじゃん。でもね、加減しないから、いこ。」

 

 

 

憧憬だけじゃ、ダメだって事解らせてあげるよ、ゲーテ。

 

カエル皮のぴっちりした二の腕まであるグローブを着ながら、入り口の扉にわたしは向かう。

 

 

 

その背にジピコスの応援・・・じゃあないか?まあその、ゲーテを心配する声が聞こえたんだけど、あなたはわたしともう戦りたく無い?ふふっ、戦る前から降参なの?

 

なっさけないわね。

 

 

 

「ズズっ・・・ゲーテ、死ぬなよ。」

 

 

 

ゲーテが今日は得物に選んだのは、木刀じゃない。

 

そんなのでいいの?確かにクドゥーナに簡単に壊れなくて、良くしなる素材でって頼んで作らせたけど。

 

 

 

それじゃ、殺せないわよぅ?

 

 

 

「ぬぅおおっ!」

 

 

 

「あっまいっ!ほら、ほらほら。やる気にさせて見なさいよ、のろまっ、ブタねブタ。」

 

 

 

吼えてゲーテは顔の横で木刀を構えて振り下ろし、一歩踏み込む、そのまま連続で何度も突いてくる。

 

 

 

軽〜くそれを躱してわたしは、ゲーテの腹を中段蹴りで払う。

 

あ、残念。

 

それは空を切る事になっちゃった、だってね?

 

 

 

へぇ、ちょっとマシになったわね?前へ前へだけのゲーテが、後ろへ飛ぶなんてね?

 

 

 

「俺だってね、稽古したんだって!!」

 

 

 

「えぇと、見てればいい?やり返して平気?」

 

 

 

プッ!と唾を横に吐き捨てゲーテが、下から掬いあげるっ!けど、遅い遅い。

 

よゆー、よゆー。

 

 

 

くすりと嘲って、ゲーテを見詰めるとゲーテの眉がぴくんと跳ね上がる。

 

 

 

稽古って凛子ちゃんとでしょ?その稽古じゃゲーテは強くならないわよねぇ。

 

 

 

強者との稽古なら得るものあるんだろうけど・・・ざぁんねん、死闘を楽しんでたのよ?わたしはっ。

 

 

 

濃い経験と、薄っぺらな稽古じゃ熟練度だって違うと思うんだけど?

 

今のゲーテじゃ、躱してるだけでいい、一つも入らないのが、手に取るように解っちゃった。

 

 

 

「くっそぅおおおっ、あたんねえええっ!ひらひら、躱しやがってえっ、このぉっ!」

 

 

 

「そう、見て捕えようとしてもっ、無駄よ?、っんっっ!」

 

 

 

でも、それは詰まらない、そうよね?ゲーテ、加減は要らないって言ったわよね?

 

 

 

掠りそうで掠りもしない上段、中段、下段と連続突きが執拗に。

 

それを挑発しながら躱し切る、ちょっと髪に触ったかな、まぁいいけど?

 

 

 

獣化──しないのぉ?

 

速さは格段に上がるじゃない、的が広がって蹴り易くなるのよね、アレ。

 

 

 

「しゃべってようが、隙だらけだろうが、あたんねえ!くっ、解ってたっ!けど格が違うっ。」

 

 

 

「や、最初よりはっ、マシよ。ま、マシってだけっ、んっっ、メスブタがオスになれた、くらいの小さい差だけど、っんっ、ね!」

 

 

 

木刀を振り回すゲーテ。

 

軌道が読めない、けど。

 

 

 

まだ躱し切れないってほどじゃないのよね、読めるけど躱せない突きって言うのはね、もっと殺意のない鋭い一撃だもの。

 

 

 

殺気や、殺意を消せないのは致命的なのよ?読める敵を相手にするには。

 

ゲーテ、あなたの剣の軌道には殺気が乗ってる、残念だけどそれじゃ、見えちゃう、ふふっ。

 

 

 

「くっそぅっ、隙だらけだろうがっ!何でだ、何であたんねえんだっ。」

 

 

 

ワザと隙を見せてるのに、まだ当てられないのかしらぁ。

 

野次馬から詰まんないって言われてるわよ?可哀想に。

 

 

 

解ってないのかしらぁ、詰まんないって言って良いのは、わたしだけ、そうじゃない?おまえじゃ、ゲーテにも負けるでしょう?

 

 

 

「んふふ、それはー、ひ・み!つっ♪」

 

 

 

それじゃ、そろそろこっちからいかせて貰うわね。

 

 

 

「ぐ、・・・ごぅっ、おっぼぉうっ!」

 

 

 

わたしは右足を軸に、腰をぎゅんと捩って振り抜く。

 

上段、中段、下段の華麗にコンビネーションキックを首、腹、膝裏に叩きこんだ。

 

 

 

「アハハハハ!ブタがブタなりにガード出来てるわねぇ、ね?いつになったら牙を持ったトラに戻れるかしらぁ。」

 

 

 

ちょっとだけ、褒めてあげる。

 

 

 

上段はガードされちゃった、当たり前よね。

 

見え見えだったから、それでもガードされたってゲーテを壊してあげられると思ったんだけどなぁー、ねぇ?わたしが渾身の力を込めた蹴りは美味しかったの?ふふっ。

 

 

 

腹は確実に抉れたものね、当然かぁー。

 

リバースしちゃってさ。

 

汚いわね。

 

 

 

「・・・うぐ、参りましたっ、最後の試合ありがとう、ございます。」

 

 

 

「はやっ、・・・でも何か変わりがすぅぐ見つかりそ♪」

 

 

 

ちぇっ、ゲーテめ。

 

まだ戦れる癖に。

 

逃げたなぁ?

 

 

 

でも、まぁいいけど?次の獲物が殺気ギラギラさせて飛び込んで来たみたいだしね。

 

 

 

ようこそ。わたしの独壇場へ。

 

 

 

「往来でなぁに、やってますのっ!」

 

 

 

群衆を掻き分けながら、吼えて駆け込んだのは意外に女の娘だった。

 

 

 

わたしと同じくらいか、ちょっと年上かなー?喧嘩を売ってくる冒険者たちとは、毛並みが違うんじゃない?身なりのいい紅い丈の短めなワンピース・ドレスを着てて。

 

それに高そうな花の飾りがついた、赤いつば広の帽子に、白いブーツ。

 

 

 

それに比べて、わたしはシースルのベビドールにぴっちりグローブとぴっちりタイツに、ハイヒール。

 

 

 

旅の人っぽいし、初見ならわたしはそれなりに奇異に映るんじゃない?今日は上、ベビドールだけだしね。

 

 

 

何か羽織るものっと、竜頭のマントが目に付いたから取り出す。

 

ん?ベビドールを傷物にしたくないだけよ。

 

 

 

ビジリアンめいた深い緑の皮製マントを羽織るとわたしは、相手の出方を見たいからゆっくり、後ずさって女の娘との距離を取る。

 

 

 

女の娘のその手に、握られた得物はエストック。

 

それも特注したのか、妙に片刃だけが鋭い。

 

アハハハハ!良いの?わたしも得物使わせて貰うよ?

 

 

 

「っん!、飛び入りもいいよー、楽しみましょう?」

 

 

 

「仲裁に入っただけですっ。」

 

 

 

真っ正直な殺気の塊が。

 

半身でヒラリと躱したわたしの前を通り過ぎていく、その刹那。

 

お互いの声が響いて。

 

金色の瞳と金色の瞳がぶつかる。

 

視線と視線が交錯する。

 

 

 

あぁ、同類だ。

 

それ、その瞳はわたしの求めてるもの。

 

血泥を見たくって堪らない、そうよね?あなたの瞳はそう語ってる。

 

 

 

きっと、わたしだって。

 

 

 

「そのわりに、殺気のかたまりじゃない?んっ、キレいいわね。なかなかよかったわよぅっ!」

 

 

 

「剣がっ!?」

 

 

 

刃の腹を狙って左足を軸に、腰をためて捻ったそのまま渾身の力と疾風の速度で振り抜いた、後ろ廻し蹴りが襲う。

 

 

 

手を離せば、折れなかったかも知れないわね?終わった事だけど。

 

突きを繰り出したのを躱した後、引き戻す隙を狙い澄まして、半分に叩き折ってあげましたわ。

 

 

 

「アレッ、それが無いと何も出来ないってわけじゃぁ、無いでしょ?」

 

 

 

「うっ、仕方がありません──受けましょう?この勝負。わたしはイライザ、貴女も名前、あるでしょう?」

 

 

 

皮肉をたっぷり含んで挑発をしてから、両手を広げて呼び込む。

 

わたしの舞台上へ、この娘をあげて、そこでっ!壊す!楽しみましょうね?村でのわたしの最後の舞台。

 

 

 

しばらく折れた剣と、わたしの顔を交互に見てたけど、うまく挑発に乗ってくれたみたい。

 

折れた剣をそのまま構えて、静かにでも、威圧する様にその娘はイライザ、と名乗って。

 

わたしの名前を聞いてきた、んふふ、忘れられなくなるわよ?あ、死んでも恨まないでね、てへっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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