さいよわ───チートなエルフと魔人が護る最弱な彼女が綴る異世界黙示録   作:ぴんぽんだっしゅ

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第70話

 

 

「すっごぉい!・・・村に来て初めて、胸が高鳴るのっ!んー、と。わたしの名は、シェリルって言うの。きっと、忘れられなくしてあげる。」

 

 

 

「そう、・・・その余裕──無くさせてあげますっ!シェリル、覚悟っ。」

 

 

 

このヒリヒリする様な空気、これよ・・・これなのよ、わたしが求めてたのはっ。

 

イライザはフェンシングの様な体捌きで、一歩踏み込んで払う、一歩下がると突いてくる・・・そんな戦り方でイライザの間合いってのを守るスタイルみたい。

 

 

 

良いよ、いい!

 

その間合い・・・まずはそんなもの意味無いんだって、教えてあげる。

 

 

 

突いてくれば半身でヒラリと躱して、ごきげんよう、とニッコリ笑って見せ。

 

 

 

払ってくれば横っ飛びに避けて、いい昼下がりですね、と微笑みかける。

 

 

 

「ま、まさか?ってじょーだんっ!見えてるわっ、よっ!」

 

 

 

ワザと隙を作って誘う。

 

未だに折れた剣でイライザは近づいては離れて、突いて払う。

 

 

 

それをヒラリ、さらり、ピョンと躱され続けてもイライザはまだ妙に冷静で焦りを見せてくれない。

 

 

 

何を狙ってるのか解らないけど、厄介なのはどう見ても間合い。

 

強引に突破しようとしても躱される、となったら躱し合いになるわよね、当然。

 

 

 

「ひらひら、ひらひらとっ!これでっ〈レイジング〉っ」

 

 

 

〈レイジング〉は当たれば追加で強力な攻撃を敵に与える突きスキル。

 

 

 

解っていれば怖くない、解っているから余裕、基本となるスキルの一つ。

 

 

 

当たれば大ダメージって言っても、基本スキルじゃぁね。

 

 

 

「あっまい!それ、わたしも出来るもの。当たらなければ怖くない。」

 

 

 

あぁ、解った。

 

イライザ、距離感を量っていたのね、折れた剣を突いてきたり、払ってたのは。

 

 

 

一瞬にやりと微笑むイライザが、さらりとわたしに〈レイジング〉を流すようにのけ反って避けられると、可愛いくらい悔しげな顔で睨んできた。

 

 

 

「なにをっ、これならどう?〈スラスト〉!!」

 

 

 

〈スラスト〉も突きの基本スキルの一つ。

 

 

 

突進力のある突きと言うだけで、わたしが驚くわけないじゃない。

 

 

 

わたし目掛けて突っ込んできちゃうと、躱されたら背後全部がら空きになっちゃうけどいいのかなー?

 

 

 

こんなの躱せば、そのままがら空きの頭を、首を狙って渾身の蹴りを叩き込むっ!

 

 

 

「うーん、惜しいっ!30てん。発展が無いと躱されて、こうなるっ、わよ!」

 

 

 

渾身の蹴りをイライザの首に叩き込んで、勝負は決まるはずだったのに。

 

 

 

空を切る。

 

読まれた?横っ飛びでわたしが放った蹴りをイライザが回避した。

 

 

 

「ちぃ、いっ!はああっ、〈レイジング〉!」

 

 

 

更にそのままイライザは、わたし目掛けて駆け出し叫んだ。

 

 

 

「基本技を続けるだけ?そうじゃ、っんっ、無いでしょ。そんな単調な繋ぎ、見せ技にもならないっ、んっ!」

 

 

 

「躱すなあっ、当たれっ?当たれぇっ!」

 

 

 

呆れたように、挑発する様にイライザの放った〈レイジング〉を喋りながら余裕で躱し、後ずさる。

 

ことごとく放つスキルを躱された時の、悔しそうに整った顔を可愛いく歪めてるイライザの表情を見たらゾクゾクしたわぁ。

 

 

 

「よっ、んっ。っと!にみぃ、ふうー。終わり?」

 

 

 

それでも必死に向かってくる健気な姿勢だけは褒めてあげなきゃよね。

 

 

 

 

 

スキルを当てれば勝てるって思っちゃってるから、わたしが体勢を崩したフリをしたら。

 

 

 

間合いを捨ててひたむきに〈スラスト〉をそこに仕掛けるのはいいんだけど、地面をわたしが軽やかにバク転で躱すと飛んだ先を狙って、渾身の突きを繰り出して来たから一瞬、ヒヤリとしたわね地べたに這わすなんて・・・イライザ、あなたにも同じ事させてあげるわよっ。

 

 

 

「はぁっ、はぁっ、・・・化け物が。ちょっと仲裁に入っただけですのに、ホントは、ほらほら。疲れちゃうからやりたく無いんですよ?あなたには、わたくしの初めてを教えて貰えたから、見せてあげます──おおおっ──あああっ!」

 

 

 

渾身の突きをわたしに躱された、イライザは泣き出しそうな顔で躊躇いもせずに吼えるの。

 

 

 

やりたくないなら、降参すれば良かったのにね?

 

 

 

群衆の前で獣化をするのよ、えっとゲーテの時は着てた服ビリビリに破けちゃったんだっけ。

 

身なりのいいドレスが勿体無いわね?醜態さらすがいいわ。

 

 

 

「それ、待たなきゃダメ?」

 

 

 

何と言ったらいいか解らないけど、隙があったらそれは蹴られても文句言えないわよね?イライザは気張ってる様に掌をぎゅっと握り込んで立ちつくしていたんだから、ガードがお留守な首を差し出してるのも変わらないわ。

 

 

 

何気無くひょいっと上段蹴りで気を失わないかしら?と思った時には足が出てたわね、左足が言うこと利いてくれなくって、ふふっ。

 

 

 

「卑怯よっ、獣化《アニミテイジ》してるんですよ、途中なんですよっ?」

 

 

 

「ああ、はいはい。待つわけ無いでしょ。」

 

 

 

蹴りは避けられちゃった。

 

けど、イライザの半べそも見れたし悪く無いわね。

 

駆け寄って膝を叩き割ってあげたらどんな可愛い声で囀ずるかしら、楽しみ!

 

 

 

 

 

「くっ、ざぁんねん、でしたっ!キッカケは終わりましたのっ!あとは時間待ちですっ。」

 

 

 

あぁ、膝を狙ったのにしゃがまれて太股に。

 

ちゃんと後ろに振り上げて、フリーキック気味に全身のパワーを注ぎ込んで、蹴ったのに、残念。

 

 

 

楽しみな事に獣化は進んでいるみたい、イライザ早くぅ、わたしを楽しませてよ?

 

 

 

「あっまい!って、やっ、・・・」

 

完全な獣化前からなかなかよかったら、獣化されちゃったら・・・負けちゃうかも?まさかね、わたしは負けるはず無いっ。

 

 

 

獣化始まってからエストックを投げ捨てて、組み臥せるつもりなのかしら?腕を掴みに来たり、足を払おうと低姿勢からの廻し蹴りなんてしてくるようになったのは。

 

 

 

「しゃべってる暇くれないていどはマシになれたかしらぁ。」

 

 

 

「やあああぁっ!」

 

 

 

瞳と瞳がぶつかる。

 

以前よりもイライザの瞳に色濃く浮かぶのは、狂気めいた歓び。

 

 

 

これほどの強者を、この手でたおす事が出来るかも知れないと言う思いから、確信に変わっていく。

 

シェリルからは余裕が薄らいでいる、一度捕えれば骨を砕いて、踏みつけてやる・・・そんな事でも考えてるんでしょう?でもね、イライザ。

 

 

 

わたしがただで負けてあげるなんて思うんじゃあないわよ。

 

 

 

「んっ、女の子でも、容赦しないわよっ?」

 

 

 

「うるさいっ、ゴロツキっ!」

 

 

 

わたしの言葉に釣られたイライザの眉がピクンと一瞬跳ねてそう言った。

 

えー、と。

 

・・・ゴロツキ?そんなの、初めて言われたんだけど。

 

 

 

「ふふふっ、・・・ゴロツキ?そう、そのほっぺ倍に腫れ上げさせてあげるっ!」

 

 

 

イラってしたのは認める。

 

余裕はもう無いから、それも認める。

 

でも、でもでも。

 

ゴロツキって正面切っていわれたら、性悪って言われるより傷つくわ、決めた、泣かしてやる!

 

認め無いから、わたしはゴロツキ呼ばわりされるような生き方はしてないもん。

 

 

 

「ゴロツキ風情にっ!」

 

 

 

「痛みで忘れられないようにっ!」

 

 

 

また、また言った!わたしわゴロツキじゃないし!そもそも女、♀(メス)、女の子なんだよ?ゴロツキって言うのは酷いんじゃない?ねぇ、イライザ、今。

 

 

 

すっごくあなたを張り飛ばしたいの。

 

何度も。

 

何度も何度も。

 

這いずらせて、這いずるあなたを何度も踏みつけてやりたいの、あなたの皮なら気分良さそうよね、虎皮かしら、それとも豹?ううん・・・

 

 

 

「・・・ライオン?」

 

 

 

ぐるる、と唸り声をあげる目の前のイライザの可愛らしかった口には牙が生え、口は耳まで裂け、こんじきの瞳は猫科の猛獣のそれになって広がる。

 

ううん・・・豹かも、でもデカくなったわね。

 

 

 

さっきまで凛子ちゃんよりちょっと高いくらいだったのに、今じゃわたしより高いじゃない。

 

 

 

解っている事が一つだけ、何か恐怖っぽい、わたし、猫好きなんだけどな?足がガクガク、ぷるぷる止まらない。

 

強がりを演じてる場合じゃ無いのかも知れないわ、ね。

 

 

 

「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ・・・」

 

 

 

イライザの一撃、一撃が重くなったカンジ。

 

地面に穴が、亀裂が。

 

 

 

「一発貰ったらヤバめねっ。」

 

 

 

「姐さぁん、それっ、その方は、王族ですっ。」

 

 

 

「リオグリスなのが、その証拠すっよお。逆らったら、ヤバいんで、大人しくしてください。」

 

 

 

舞台から下がったゲーテと、群衆その1でしかないジピコスの声がわたしの耳に届く、と、右手をゲーテ。左手をジピコスに抑えられる。

 

 

 

「ゲーテ、何す・・・!」

 

 

 

何で今、あんたたち獣化してんの?そこまでしてわたし、引かなきゃなんない訳?知らなかった、こんなにゲーテの腕って掴まれたら、抵抗出来なくなるなんて。

 

ま、負けないけどね。

 

ゲーテくらいじゃ、わたしの床マットくらいにしか使い道無いもの。

 

あ、ジピコス?獣化しても狐になりきれてなかった、ホント薄い血なんだなぁって。

 

 

 

「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、戦わせてくださいっ!そのっ、無礼者をっ切り刻みたいのですっ!」

 

 

 

イライザの方も、群衆をイライザ側の人らしい、身なりのいい黒コートのつば広の黒い帽子を被った男の指揮で取り抑えられたみたいね。

 

 

 

イライザが負け惜しみを言ってるのを黒コートに言い含められてるカンジかな、えー、とゲーテが確か、王族って言った?身なりいいと思ってはいたけどね。

 

 

 

「あっちが止めなきゃあ、私も止めないつもりで居ましたよ、そりゃあ、王族に喧嘩売るバカを見てるのは楽しかったですから。それに、楽しんでましたね?イライザ様。」

 

 

 

「ダンゼっ、よもやこの姿を曝して、そのっ、無礼者をっ!・・・なに、止めるなっ、こらっ!」

 

 

 

 

 

 

 

黒コートはわたしに向かってダンゼと名乗り、一方的に用件を言うと群衆の中にイライザを連れ消えてった。

 

 

 

「イライザ様も悪いと思いましたから、不問にしよう、と言いたいんですが。落ち着いたら、話だけいいですか?何、手間は取らせません。私、ダンゼ、と申します。お見知りおきを。では、後程。」

 

 

 

えー、と。

 

わたし行くなんて言ってないよ、勝手に決めないでよ、村出れるようになったらすぐに、発つつもりなのに。

 

勝手なヘクトルを張り飛ばしたいし、久々にディアドの顔だってみたいし、レットと打ち合いたいしなぁ・・・

 

あ、イライザはそこそこ良かったよ?長引くとマズイかなぁって思うくらいには。

 

 

 

それにしても、ゲーテ、ジピコス!後で、・・・解ってるでしょうね?どこ踏まれたいのかなぁ?首、耳、指とか痛みなかなか取れなくて、いいわよぅ。

 

あはっ、出逢った頃を思い出して、頭ギリギリッ踏みにじるのもいいわね?わたしの床マットだもの、たっぷり楽しませてアゲルわ。最後の夜、たのしみましょう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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