さいよわ───チートなエルフと魔人が護る最弱な彼女が綴る異世界黙示録   作:ぴんぽんだっしゅ

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叶い難き幼き願い

 

 

 

 

 

 

全く、毎回毎回。

 

お嬢様は何故一人で歩かせれば問題をこうも呼び寄せるのか、小一時間問い正したい。

 

 

 

私はダンゼ。

 

急報を受けて役人が向かわねばならなくなった鉱山へどこからか聞き付け、お嬢様が・・・あの、『歩く迷惑』が陛下に直訴して、お目付けに私と側役のデカットが付けられ、こうして件の鉱山に一番近い村にまで足を運んだわけなのだけど。

 

 

 

歩く迷惑はまた、面倒を呼び寄せて衆目の集まる面前で、獣化をしようとする。

 

しかもその相手がエルフとは・・・廃人になる程度ならまだいいが、殺したとなっては陛下に何を言われるか・・・村長から報告のあった性悪エルフなのでしょうが、イライザが獣化しようものなら勢いで付近の群衆も危うい。

 

 

 

なんにしろ止めることが出来て良かったよ、あちらも下がってくれたからイライザだって言い含める事が出来た訳だし、こちらの事情が解るものが、あちらにも居たようで何よりだった。

 

 

 

「ほら、行きますよー、イライザ様。」

 

 

 

半分ほど獣化が進んでイライザ様は興奮気味。

 

やれやれ、何とか納得していただかないと。

 

 

 

「ふっざけるなっ、戦わせてくださいっダンゼ。あの者と戦いたいっ、承服しかねますっ、わたくしは、悪くないっ!こらーっ。」

 

 

 

見れば獣化に耐えれなかったドレスがあちらこちらビリビリになっていたりする。

 

高いものだ。

 

イライザ様がお召しになる物だから当然・・・という訳でもない。

 

見栄だ。

 

イライザ様のお母上は家格がそう高くない辺境の地主の出だ。

 

 

 

陛下の側室、といっても4、5番手だったらしい。

 

イライザ様は10の時まで陛下の子だと知らずに育ったほど。

 

 

 

「旅のドレスもびりびりですよ、いいんですな?公衆であられもない姿を曝す事になるんですよ?獣化、強くはなります、それはもう。凄く強くはなりますが、イライザ様の場合、不安定でしょう?ね、納得していただけますね。」

 

 

 

辺境の地主、お母上の実家で育てられた理由も笑えるもので、格上の側室に子が宿らず拗ねた。

 

あろうことか、生まれて間もないイライザ様を手に掛けようとしたとか、うーん、側室の争いとは恐ろしいものだな。

 

 

 

そのせいで、実家に避難なされていたのだ、公式に発表できぬまま、イライザ様は育ち、全てを知ってお母上に会いに都に出た事で、イライザ様が陛下の子だとついに公表される、しないままだと隠し子ということで闇に葬られる事にもなりかねないので、まあイライザ様ほどはっきり陛下に似ている上、獣化すれば一目瞭然だったりするのだが。

 

 

 

「はい・・・。解りました、わたくしの事を思って、止めてくださりありがとう、ございます。ダンゼ。」

 

 

 

いやぁ、頑丈なイライザ様の事です、心配など致しませんよ。

 

ドレスです。

 

ブーツです。

 

お召しになられているものの心配をしているのです。

 

陛下の贈られた品々に身を包んでいながらすぐに壊しやがりますからね、イライザ様は、ええ、歩く迷惑と呼ばれるのも当然かと存じますよ、ダンゼは。

 

 

 

「有り難きお言葉、ダンゼには全く勿体無き事にございます!なぁーんちゃって、衆目が無ければ不敬もクソも無いぜ、このいかず後家が。衆目にあんな真似曝すから嫁の貰い手に断られ続けんだよっ。」

 

 

 

路地裏に入ればもう大丈夫か。

 

ああ、キツッ。

 

畏まり続けるのって性にあわないな、イライザ・・・ラザの前だと。

 

 

 

「ああ、キツい事を言うわねっダンゼ。そ、そうね、確かに?旦那様は?今は、居ないけど、その内きっと。」

 

 

 

ラザとは年も近い、1つ違いでラザが上だったせいもあり、幼い頃からずっと、腐れ縁って事か。

 

ラザが王族って知った時は驚いた、覚えてる。

 

あの時が歩く迷惑の初出現だったしな、ラザの獣化何かそれまで見たことも無かった。

 

幼い頃に発現してたら私はとうに死んでた、そんな気がする。

 

コントロールをラザは出来ない、リオグリスの強力なパワーをコントロール出来ないとなれば、致命的欠陥となる。

 

例えば・・・そうだ、夫婦喧嘩になるとしよう、ラザの獣化が完全になった時、旦那は生きちゃいない。

 

そう、断言できる。

 

ラザは初めて行った都で暴れ、陛下麾下の鍵の十二騎士まで出動する騒ぎを起こしたしな。

 

別に、我儘でそれをやったんじゃない、それは知ってる、伊達に腐れ縁を続けてない。

 

お母上に会わせて貰えなかった為に証拠を見せろと言われた結果、城門を破壊して狂気のままに城内に侵攻したんだラザのバカは。

 

そんなラザには・・・致命的にろくな縁談は上がらない。

 

良い話が舞い込んでも、ラザ自らがぶち壊し。

 

後で謝って廻らなきゃならない側役や後見人の立場から言わせて貰うと、ずばり歩く迷惑。これに尽きるということだ。

 

 

 

「いいですかぁ、ニンゲンより寿命が短いんだよっ。だ、か、らっ、早く、なるだけ早くっ嫁に行って、子を作るのが、お前の幸せにも繋がるんだろうがっ!」

 

 

 

辺境の地主みたいなマシな縁談はもう二度と舞い込まないだろう、町を半壊させるだけの騒ぎを起こしたらな。

 

そりゃあ、王族でなければとうに首と胴はサヨナラしてなきゃ、平和が保たれない。

 

 

 

こんな移動する活火山を嫁に取ろうなんて好き者、陛下に取り入ろうしたい奴だけじゃないか。

 

その魂胆を知るや、ラザは噴火して町を半壊させた。

 

危険物、確かにそう。

 

でも本来のラザはお転婆でおしゃまな田舎のおしゃまお嬢様以外の何者でもないはずなんだ、ちょっと、度の過ぎた正義感の塊であるとこを除けば・・・田舎の娯楽なんてたまに回ってくる吟遊詩人の語りを聞くか本くらいだ、それがラザの原点であるのは揺らがないと思う。

 

英雄のような素晴らしい正義に憧れ、染まっていった事を誰よりも近くにいた私が知っている。

 

 

 

「だから、その内きっと。」

 

 

 

だが、都みたいな魑魅魍魎がばっこする土地に、ラザは綺麗すぎた。

 

合わない、悪を見過ごせないラザは次第に煙たがられるようになっていく。

 

清いだけでは魚も住まないとは良く言ったものだと、思う。

 

ラザは清すぎた、清すぎた故に誰からも迷惑がられる、ラザが現れて獣化ともなれば良くて一軒更地、悪ければ町ぐるみで被害を被る。

 

 

 

「はぁー、ラザとは腐れな縁だが、私じゃ嫁には貰ってやれないんだぞ、バカラザっ。」

 

 

 

そんなラザにも最初はいろんな人が後見人に付いていた。

 

まあ、魂胆を知ったラザに蹴散らされて、離れていったんだけどな。

 

 

 

『なあ、ラザ?どうして大人しくなれませんか?』と聞いた(・・・説教の途中だったかな)、事がある。

 

答えはこうだった、『あら、わたくしは嫌いなものを嫌いと言っているだけです、悪は滅っすものでしょう?』・・・あぁ、ダメだこの姫様と、思ったよ。

 

縁談なんて、纏まるはずがないってね。

 

 

 

そう言うと必ずラザは訊ねてくるんだ。

 

『ダンゼなら許せますか?』と、許すも何も権力には敵わない事を知ってる、私は。

 

だから、二人は結ばれることは無いんだよ・・・待たないでください。

 

・・・ラザ。

 

 

 

「降家すれば、・・・」

 

 

 

縁談が流れて説教をすると、決まってラザの口にする言葉。

 

降家してしまえば、ラザの大好きなお母上とも会えなくなるんですが。

 

解ってないんだ、ラザは。

 

 

 

「簡単に言うもんじゃねぇんだって、解るだろ。ラザに家族を捨てさせられねって。」

 

 

 

お母上とも会えなくなったら悲しむよな、ラザは。

 

後悔してからじゃ、降家してからじゃ遅いんだって事わかってない。

 

 

 

「きっと、このまま・・・死ぬまで独りなのよ。」

 

 

 

それまで俯いたり、明後日の方向を見ていたラザが私に向き直り、

 

 

 

「それより、ダンゼの元に行ったほが良くない?継承権だって・・・下から数えたほが早いのに、王族に拘る必要ないもの。」

 

 

 

そうなんだ。

 

いつも、ラザ・・・君は無茶を通そうとする。

 

そんな小さな抵抗は、権力の前で悪あがきに等しい。

 

そもそも、陛下に私がどの面提げて『ラザを私に下さい』なんて、言えると思ってるんだい?

 

 

 

「いや、私の給料で王族の生活なんて無理なんで。」

 

 

 

ラザに背を向ける。

 

使用人と姫の結婚なんて、吟遊詩人の歌の中でだって悲恋に終わってたじゃないか。

 

 

 

 

 

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